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第4楽章 ジーグ
槌 コンテナ埠頭に並ぶ巨大なクレーンが見え始めると、一定の速度で塊になっていた隊列が崩れ始めた。ロードスターのリアビューミラーには回転灯を灯しながら近づく道路公団の黄色い車両が映し出され、前方では追い越し車線を走る車両が次々に右に車線変更し始めた。 「みほ、頑張ったな。カーテンコールだ」 「。。。」 一旦視線を後部に向けた後無言で頷いたみほも、道路公団の車両のサイレンに異変を感じていた様子だった。身なりを整え始めたみほの頭を優しく撫でた後、左手をトレーラーの運転手に向けて左右に振った。運転手は貨物船の汽笛のようなエアホーンを鳴らすと満面の笑みを浮かべ親指を立てるサムアップのサインを送って来た。突然のホーンの音に驚いたのか、みほが一瞬身を縮めた。 「みほ、あれは彼からのお礼だよ。投げキッスでもしてやれば?」 「それは恥ずかしいですぅ」 甘えた声で答えると、みほは左上に見えるトレーラーの槌運転手槌に向かってお辞儀した。運転手は何か言ったようだったが、言葉は数台後に迫って来た道路公団の車両が鳴らすサイレンにかき消されてしまった。左にウィンカーを出して少し加速しながらトレーラーの前方の走行車線に入った。トレーラーの運転手がみほの野外露出のデビューを観るため並走し、前走車とは長い車間距離をとっていたため車線変更は楽だった。並走から追走に変わったトレーラーの運転手に向けて右手を挙げた。 レインボーブリッジのシルエットがビルの合間に表れると故障なのか追い越し車線で停止しているトラックが見えた。発煙筒の煙が海からの風に乗り漂っていた。通過しながら見るとトラックの左前輪のタイヤが完全にバーストしていた。 「トレーラーの彼はなんか叫んでたけど、なんて言ってた?」 「サイレンの音でわたしも聞き取れませんでした」 「ありがとうかな? それとも『調教ですか?』かな」 みほは、瞬間的に頬を染め恥ずかしそうな表情を見せながら後ろに振り返ると手で拡声器を作るように口の横に置いて叫んだ。 「調教していただいてました」 槌槌 低速走行の原因になっていた故障車を越えると走行車線も追い越し車線もスムーズな流れを取り戻した。みほの叫びは残念ながらトレーラーの運転手には届かない、ただ助手席で露出しながら自慰行為を見せてくれた女が振り返って何か言ったことは理解した筈だった。 「投げキッスより恥ずかしくない?」 槌「だってぇ、質問されたかったし、答えたかったんです」 「じゃあ、彼はお礼じゃなくて質問だったんだね」 「はい、そうだと思います」 槌全裸露出や不特定多数のパブリックの前で行うストリーキングのような過激な露出ではないが、みほは初めての露出を経験したことになった。みほは身体そのものの露出槌行為より、心の内面を吐露する願望が強いタイプだと感じていた。並走したトレーラーの運転手にが『投げキッス』の指示は正解ではなく、槌『恥辱調教なんです』と言わせることが正解だったのだと感じた。 首都高は分岐点に近づき少し通行量が増え、車速が下がった。槌分岐点を東京タワーに向かうと環状線となり、長い直線と緩やかなカーブで構成される横羽線とは景色も運転も変わる。短い直線と左右に連続するコーナーによりロードスターの操る楽しみが加速する。 「みほ、初めての露出はどう感じた?」 「ドキドキでした、でもそれは心地良いドキドキと言うか。。。調教していただいてる感覚を実感できました」 横羽線の長い直線だったらキスしたくなるような模範解答であったが環状線では出来ない行為だった。左手の人差し指と中指でみほの唇に触れるとそのまま自分の唇に押し当てた。みほは指を介した関節キスの意味を理解し嬉しそうに微笑み肩にもたれかかって来た。 「みほ、少しスピード出していい?」 「はい、運転がお好きなんですよね」 そう言いながらみほは助手席に姿勢良く座り直した。両手をステアリングホイールに添え、Rの小さいコーナーへのアプローチにはダウンシフトすることにした。首都高環状線で心地良く走るための性能は十分に持ち合わせ槌、オープンカーとしての専用設計だからエンジンとシャシのバランスが感じられた。東京タワーを抜けて飯倉に差し掛かると残念なことに渋滞が始まってしまった。 暫く何も言わずに助手席で景色と風を楽しんでいたみほが口を開いた。 「ああん渋滞が始まってしまいましたね。なんか不思議な感覚でした」 「えっ何が不思議な感覚だったのかな?」 「同じ車とは思えないくらい。。。ハンドル切らずに曲がってるみたいでした」 「そっか、ある程度スピードに乗せてしまえばハンドルは合わせる程度。走り方によってはハンドルを大きく切ったり、カーブと逆に切ったりもするんだよ」 「運転お上手ですね、横に乗って安心感が」 「ありがとう、みほの車も一緒に調教してるみたいなものかな? 運転が下手な男に調教されたくないだろ?」 「はい、そう思います」 「渋滞が始まったから少し会話を楽しもう。さっきの続き、調教の話」 槌渋滞の中、再び左手をステアリングホイールから離し、みほの右肩に乗せた。ワンピースには隠されているが、手のひらには縄の感触が伝わっていた。 「顔を見ることは出来ませんでしたが、視線は痛いくらいに感じてました。でも、ピンポイントでおひとりにだけお見せしたから、あの程度で済んだのだと」 「タイミングが良かったし、丁度良いターゲットが見つかったよな」 「はい、不特定多数の方への露出だったら出来なかったかも知れません。あるいはまた失禁してしまったかも」 「失禁してしまったらシートが大変なことになってしまう」 「ドキドキで心臓が破裂しそうでした。思い出しながらオナニーしてしまいそう。でも、安全に配慮いただいたことがわかったので、思い切れたのだと思います」 「そう感じてくれたんだ? 並走するのが観光バスだったら躊躇してしまうよな、指示する方も指示される方も」 「かおりさんがおっしゃるように、女性に見られる方が感じてしまいそうです」 「じゃあ、それが事実か確認しなきゃね」 典型的な4楽章形式のバッハならぬみほの舞曲ジーグは、初めて体験した露出、しかも走り続ける車から行ったものであったが不特定多数の好奇の視線、あるいは蔑むような視線の対象では無かった。それでも露出を体験したみほの恥辱調教体験は舞曲を締め括るシャコンヌに繋がっていく。
2018/12/16 22:03:20(jnlXNbm6)
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