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第3楽章 クーラント
みほは自身の青いロードスターの傍らに背筋を伸ばした姿勢で立っていた。事前に服装を伝えていたためか視線が交わった瞬間に迷うことなくはにかんだような微笑みを見せてくれた。更にロードスターに向けて歩を進めると、ゆっくりと深いお辞儀をしてくれたのだが、その姿勢の良さからかエレガントな立ち振る舞いだと感じた。 インディゴブルーのワンピースに合わせた足元のレザーのブーツからアーリーアメリカンの雰囲気を醸し出していた。 「おはよう、ようやく会うことが出来たね」 「ヒロ。。。ヒロ様、本当にお会いしているのが夢のようです」 「素敵なワンピース、とても似合ってるよ。それにブーツを合わせたセンスが好きだよ」 「嬉しいです、プレッピーなスタイルがお好きと伺っていたので、きっとこのスタイルもお好きなのではと思いました。でも、普段はスーツが多いので同僚が今のわたしを見ても気付かないかも知れません」 みほは地方自治体に勤務し、教育関連の担当であると聞いていた。そのため人前で大人数の会議で発表する機会もあるらしい。そのためか、あるいは声のトーンのためかハキハキと話をする印象を受けた。 「運転させてさせてくれない?ロードスターを運転するの久々だし、そもそも運転する機会も無いからな」 「よろしいんですか?ではお願いします」 「こんなにいい天気だからトップを下げないか?せっかくだから」 左右に分かれてラッチを外しロードスターの幌を下げた。幌をリッドに格納すると完全なオープンになりサンルーフやコンバーチブルでは味わえない開放感が楽しめる。 「さあ行こうか?」 そう言いながら助手席側のドアを開け、みほに着席を促した。 「さりげなく紳士ですね」 助手席に座りながらそう言うみほの胸元を指先でなぞるとブラにより抑え込まれていない乳房の先端を探り当てた。 「中身はただの変態だよ」 みほは約束を守りブラを着けずに来ていた。 コックピットに滑り込むとシートのスライドとシードバックを自分に合わせシートベルトを締めた。 「緊張してないみたいだな?」 「緊張してますよ。でも、声を掛けいただいてから少しずつ治まってきました」 ハキハキと受け応えするみほからは緊張していない印象を受けたが実際には緊張が解けてないようだった。これからどんな調教をされるかを考えれば当然のことだろう、みほの心臓は3拍子を装っているが、槌実際は4分の6拍子デ刻まれるバッハのピアノ独奏曲『パルティータの第3楽章-クーラント』のようなものだろう。 槌「みほ、足元に置いてくれるか?」 そう言いながら、ローター、麻縄、赤い蝋燭を潜ませたバッグを手渡した。 「そうだ、中を見てごらん。ローターだけ出しておいて」 待ち合わせの目印に持ってきたヴィクトリノックスの赤いバッグのファスナーを開きながら、みほが頬を赤らめるのを横目で見ながらシフトをドライブに入れ軽くアクセルを踏み込んだ。 ロードスターでオートマティックのトランスミッションを運転するのは初めてだが、運転しながら助手席に座るみほに悪戯するにはちょうどいい。 「行きたいところあるか、みほ?」 「いえ、どこでも」 観覧車を横目に見ながらロードスターのオーディオをオンにすると車内に流れてきたのはドリームシアターの曲だった。みほの兄がコピーバンドとして演奏し、そのバンド名にもしていたと聞いていた。 そして何よりも、自らのIDに用いたことで今日の出会いに繋がった『クリムゾン・サンライズ』だった。 「仕込んだな、みほ」 「はい、最初にメッセンジャーで話しをさせていただいた時に、ドリームシアターのことをご存知でしたね」 槌赤レンガ倉庫をかすめアクセルを少し踏み込み加速するエンジンは決してパワフルではないが、車体の軽さの効果なのかオートマでもみほのロードスターはキビキビと反応してくれた。 「ブログではクラシックのお話が多かったので、ドリームシアターをご存知なのが以外でした」 「でもオーケストラとも共演してるじゃないか。初めて聴いのがレコード屋でBGMで流れていて、店員さんに『このBGMで流れているCDください』って買ったんだよ」 「そうなんですね」 「みほ、話を逸らされれるな。ローターを出してごらん。使ったことあるか?」 みほは、手に取りじっくりと眺めていることから使ったことはないんだと判断した。 「リモコンが入ってるだろ?こっちに貸してごらん」 リモコンを左手で受け取るとローモードでスイッチを入れる。 「きゃっ」 手のひらで振動を始めたローターに、みほは驚きの声を上げた。 「乳首に当ててみな」 右手で持っていたローターを左胸に当てるのを横目で見るとスイッチをハイモードに切り替えた。手のひらで強く振動を始めたローターに驚き、みほはローターを落としそうになる。 「首都高に入ったらパンティの中に入れてもらうからな」 恥ずかしそうに頷くみほの頭を軽く撫でた。 「みほ、なんでM女を体験したいと思った?」 「ブログでかおりさんへの調教日誌を読ませていただいて。。。かおりさんへの憧れかしら」 「なんだよ、おれへの関心じゃないのか?」 「もちろんヒロ様のお力によってかおりさんが覚醒して輝かれたと思ってますよ」 「みほは、あの全てが出来ると思う?」 みほは答えることなく、手にしたローターに視線を落とした。答がイエスなのかノーなのかは伺い知ることは出来ないが、答を出せないことに葛藤しているように見えた。 「その場になってみなければわかりませんが。。。ランジェリーを買いに行ってその場でブラのサイズを計ってもらったのは、元々計画の中にあったのですか?」 「いや、思い付きだよ。そんなことを頼めるかどうか、店員さんの表情や態度を見てからじゃないと判断できないだろ? あの時、かおりが女性の視線の方が気になり、感じたと呟いたから思い付いた」 「あのシーンは読んで本当にドキドキしました。かおりさんは『気絶しそうだった』っておっしゃってましたけど、わたしも自分だったらと想うと身体が火照りました」 「そんなことを聞くと、同じことをして欲しいと言われているようだ」 そんな会話を重ねるうちにロードスターは首都高の料金所に到着した。 「さあ、みほ。約束の料金所だ」 軽く頷くとみほは、インディゴブルーのワンピースの裾のボタンをふたつ外し、視線を落としたままローターをパンティの中に潜ませた。ちょうど先端がクリトリスに触れる頃、リモコンのスイッチをローモードに戻した槌。首都高はスムーズに流れている、渋滞によりスピードが落ちるのはまだ先だ、そのときまではじっくりとゆっくりと感じさせようと思ったからだった。
2018/11/25 22:25:20(gpH6S4x.)
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