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1:嗜虐の求婚 ②
投稿者:
司馬 名和人
「はい、それでは宜しくお願い致します」と言って由香は藤蔵、源蔵兄弟に頭を下げるのであった。
「いえいえ、奥方様にそのようにされますとこちらこそ今恐縮してしまいます」と言って源蔵は頭を下げるのである。 そうこうしているうちに籠がやってきて由香はそれに乗せられたのである。 そしてこのやや怪しげな町家までその籠で連れてこられたと言う訳であった。 2、 由香が恵比寿屋源蔵の案内でその町家に入るとすぐに女中らしい老婆に奥にある小部屋に通された。その部屋は客間にしては余りにも殺風景な部屋であった。 その部屋で待たされている間にも源蔵はそれこそ愛想よくいろいろな話をしたが由香の耳にはよく入らなかった。 由香と源蔵はその部屋で四半時[30分]ほど待たされて、さすがに由香も少々焦れ始めた頃にようやく二人の男女が姿を現したのである。 その内、女の方は年の頃は三十半ばから四十近いぐらいでずんぐりと肥え太った体型をしていたが、そんな体つきにも関わらず、その顔には険がありその目も細くじっと由香の姿を眺めているような感じであった。 それに対して男の方は対称的に小柄で痩せておりその表情も余り勘定を表さない感じの年は四十過ぎと思われる男手その男も女と同様にじっと由香の姿を見つめていた。 そのようにその二人の男女が由香を余りにも長くじっと見つめているのでさすがに由香も何か言おうとして口を開きかけた瞬間であった。 「この女かい、源蔵さん。あんたが言っていた腐れ旗本の女房ってのは」 そのようにその女は由香を見ながら言い放つように言った。その口調は何か蛙が踏まれたようなシャガレタ声であった。 その女の言葉に対して源蔵は薄笑いを浮かべて横目で由香を眺めながら言った。 「ヘヘヘヘ、そうですよ。姐御さん。とにかくいい女でやしょう」 その口調は先ほどまで由香に対するものとは違っていた。 「ふん、ふん。まあ確かにその女の顔は綺麗だけど。まあそれだけではねえ」 その女はそのようなことを呟きながら背後を振り返り連れの男に言った。 「鬼八さん。あんたどう思う」 その男は依然として由香を見つめながらぼそっとした感じで口を開いた。 そうですね。女将さんの言われるようにさすがは源蔵さんが連れて来た女で。ご面相の方はなかなか可愛い顔をしていますが、その体つきの方はじっくりと調べて見ないと何とも」 そこまで言われてさすがに由香はむっとして言った。 「ああなたたちは難なんです。さ先ほどから黙って聞いていたら、余りにも無礼な雑言を」 由香はそのように叫ぶとやや苛立ちながら傍らの源蔵の方を振り向いて「源蔵殿、これは一体、どう言うことでございます。だいぶお聞きしていたお話とはだいぶ違うようですが」とやや咎めるような調子で尋ねるのであった。 その由香の詰問に源蔵はやがて「フフフフフフフフフフフフフフフ」と忍び笑いを漏らし始めた。そしてその笑い声は段々と大きくなった。さすがに由香も不安になり、「げ源蔵殿、そそなたは一体?」と呟くように言った。 源蔵はやがて笑いを修めるとニヤリといかにも告白そうな微笑を口元に浮かべて由香の方を振り向いて言った。 ヘヘヘヘヘヘ、関口の奥方様。あんたに話した話はあんたをここに連れてくる為の方便だよ。第一にあんなあんたに都合の良い話なんかあるものかい」 「そそなたは」 「ヘヘヘヘヘ、俺もこんなに上手く事が運ぶとは思って居なかったがね。しかしあんたもだいぶおめでたいな。やはり世間知らずの奥様、お嬢さんだな」 「一体、ここれはどう言う意味なのです。わわたしにはあなた方の言っている意味がよく判りません」 その由香の叫びにも似た言葉をさも楽しそうに聞きながら源蔵は言った。 「つまりだね。奥方様。あんたは売られたのだよ」 「わわたしがう売られた そそんな」 「フフフフフフフフフフ、あの公事師の権兵衛だけどね。あの男ははね。あんたに借金を返せと迫っていた連中に頼まれてあんたを俺たちに売り飛ばしたんだよ」 その時に例の女がそのシャガレタ声で突然に笑い始めた。 「アハハハハハハハハハハハハアハ、あんた。まだ良く判っていないようだね。この源蔵さんはね」 その女は悪戯っぽい目で源蔵を眺めながら言った。 「この源蔵さんはね。女衒なんだよ」 「女衒?」 由香は女衒なる言葉をいままで聞いた事が無かった。 「つまりね、この人はあんたの様に借金を返せなくなった女を買い取ってをこのような場所に女郎として売り飛ばすのが稼業なんだよ。ふふふ別名人外の源蔵と呼ばれているよ」 「フフフフ人外とは姐御さんも人聞きが悪いな」 源蔵は頭を掻きながらも薄笑いを浮かべて「まあそう言うことですよ」と言うのである。 「そそれではここはままさか遊郭なのですか」 「ヘヘヘヘ、ようやくあんたにも判ったようだね」 「しかし、、、、ここは吉原とは芳香が違うようですが」 「そうだよ。ここはあんたがさっき察した様に深川の中にあるんだよ」 「ででも江戸御府内で遊郭が許されているのはよ吉原だけの筈では」と由香は半ばうわ言のように呟いた。 「ほう、良く知っていなさるね」と源蔵はやや驚いた様に言った。しかしすぐに薄笑いを浮かべながら言った。 「ヘヘヘヘヘヘ、しかしね。ここは吉原じゃないが岡場所なんだよ」 「岡場所ですって、そそれは」 「さすがにお旗本の奥様であったあんたは岡場所なんて知らないだろうね」 源蔵は愉快そうに由香の横顔を眺めながら岡場所なるものの説明を始めるのである。 確かにさきほど、由香が言ったように幕府は江戸市中に措いて唯一吉原にだけ遊郭の営業を認めていた。あとは江戸近郊に措いて公儀が正式に遊郭の営業を認めているのは東海道、甲州街道、中仙道、奥州街道のいわゆる4街道の最初の宿場である品川、内藤新宿、板橋、千住にだけ認めているのみであった。 つまり、岡場所とはそれら公儀が正式に認めている遊郭以外に江戸の繁華街にあった非公認の遊郭のことであった。正式に認められた存在ではなかったが既に半ば公然の存在となっていた。 「エヘヘヘヘヘヘヘ、つまりですね。ご公儀の建前とは裏腹にこのようなところは江戸御府内にはいくつもあるんですよ。フフフフここは牡丹屋と言ってそんな岡場所の中にある遊郭ですよ」 そのようにとくとくと説明する女衒の源蔵の話を由香は顔面蒼白になって聞いていた。 「つつまりああなたたちはこここでここのわたしには春をひさげと言うのですか」 その由香の叫びにも似た言葉に女将と思われる女はまた再びそのシャガレタ声で笑い始めるのであった。 「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハアハハ、春をひさぐとはさすがは元はお旗本の奥方様らしい言い草だね。あんたにはここで客を取って貰うよ」 「客をとる?」と呟いて由香は顔を引きつらせた。 「しかしね。さすがについ最近までお旗本の奥方様だったあんたにいきなり客を取らせる訳にも行かないので、こちらの鬼八さんにあんたを十分に仕込んで貰うよ」 牡丹屋の女将はそのように嘯き、鬼八と呼ばれた中年男を改めて紹介した。そして由香の傍らにいる源蔵も「この鬼八さんはね。仕込み師といってね。あんたのような素人の女を立派な女郎に仕上げるのを仕事にしているんだ。まああんたも安心してその身を任すんだな」とあざ笑うような調子で言うのであった。 「いずれにしろ。この女の体を調べないことにはなんともご返事は」とその鬼八と呼ばれた男はそれこそ由香がぞくっとするような冷たい口ぶりでそのようなことを言うのである。 その鬼八の言葉に源蔵は大きく頷くと尚も蒼い顔をして半ば呆然としている由香の横画を眺めながらやや諭すように言った。 「ヘヘヘヘヘヘヘヘ、関口の奥様。もうこうなったら仕方がありません。まあ悪いご亭主を持ったと諦めることだね」 それから源蔵は目で女将に合図すると女将も頷いて口を開いた。 「さあさああ、すぐにでもこの鬼八さんにあんたの体を調べてもらうのだから、フフフフフフさっさとその綺麗なおべべを脱ぐんだよ」 「エエエエエ、そんな」と由香はそう言って絶句した。そして弾かれたように顔を上げると大声で叫ぶように言った。 「ウウウウウウウウウウ、そなたら無礼な」 その由香の言葉に女将はぬうとその顔を由香に近づけていたかと思うといきなり由香のその整った美しい顔を平手打ちした。 「ピシャアピシャアピシャアアアアアアアアア」 そのような音がしたかと思うと顔を打たれた由香は思わずその場にへたり込んだ。そして由香の顔には明らかに脅える表情が現れていた。 「な何をするんです」 由香は顔を引きつらせて叫んだ。 「無礼者とはなんだよ。今後はそのような生意気なことは許さないよ」 そう言って女将は由香を睨みつけるのである。 「ヘヘヘヘヘ、この女将さんはねおもんさんと言ってね。ここの女郎たちからは鬼のように恐れられているんだよ。まああんたもせいぜいこのおもんさんを怒らせないように気をつけるんだね」 女衒の源蔵は薄笑いを浮かべながら由香にそのようなことを言うのであった。 そして更に「だからまたこの女将さんを怒らせないうちに早く、その着物を脱ぐんだよ。武家の奥方様」とニタニタしながら言うのである。 その源蔵の言葉を空ろな様子で聞いていた由香はやにわに懐剣を取り出そうとしたがすぐにその手を源蔵に取り押さえられてしまった。 「ヘヘヘヘヘヘヘヘおっと。そんなな物騒なものはこちらで預からせてもらいますよ」 そう薄笑いを浮かべながら源蔵はその懐剣を由香から取り上げて部屋の隅に放り投げた。 「ヘヘヘヘヘ、もうこうなったらジタバタせずに覚悟を決めるんだな。関口の奥方様よ」 その言葉を聞くと由香はすぐに顔を上げてきっとした調子で言い放った。 「どのように脅してもわたしはもうそなたらの言いなりにはなりませんよ。そなたらがこれ以上無理強いするとわたくしにも覚悟があります」 「ヘヘヘヘヘヘヘ、その覚悟とやらをじっくりと見さしてもらいますよ」 源蔵はそのようなことを言いながら由香に顔を近づけていくのである。由香は思わず、その顔を背いて後ずさりしながら叫んだ。 「ここれ以上、わわたくしに近づけばし死にますよ、し舌を噛んで死にますよ。そそれでもいいんですか」 源蔵とおもんはその由香のその迫力にややたじろいた様子であったがやがて互いに顔を見合わせてともに含み笑いをした。 「う嘘だと思っていますね。わわたしも武家の妻です。ここれ以上辱めを受ければ本当に舌を噛み切手氏に増すよ」 その由香の言葉を聞くと源蔵はにわかにそれまでの笑顔を消して厳しい表情になり由香を睨みながら言った。 「そうかい、そうかい。ウフフフフフフフ、そんなに死に低なら俺たちに遠慮するこたあねえ。ささあ舌を噛んで新で皆」 「ウウウウウウウウウ」 「さあどしたどうした。本当に死に低なら。新でミロや。しかしなあ。そのあととでどうなっても知らねえよ」 「そそれはどう言う意味です」 「フフフフフフフフフフ、あんたがもしも、ここで舌でも噛んで死んで見ろ。そんなことをしたら、あんたの死骸を裸に剥いてお江戸の街中にわざと捨ててやるよ」 その源蔵の脅しの言葉に由香は唇を震わせて呻くように叫んだ。 「そそんな余りにも無体なことを」 「ヘヘヘヘヘヘヘ、無体でも何でもあんたの全裸の骸が街中に晒された場合にあんたの実家はどうなるのかね」 「ウウウウウ、そそれは」 「ヘヘヘヘヘヘ、あんたの親父さんはお奉行所の与力様であんたの弟もその見習いだそうだね。その与力様のお嬢様で元お旗本の奥方様がそんな状態で死んでいたら。さぞかし評判だろうな」 「そうだねええ、瓦版も大いに書き立てるだろうよ」 横合いからおもんもいかにも酷薄そうな笑みを浮かべながらそんなことを言った。 「ヘヘヘヘヘヘ、もしもそんなことになったら、あんたの実家もただではスマナイカモしれんよ。へたすればお取りつぶしだよ」 「そんな」 「フフフフフそうなったら奥方様よ。どうする。病で臥せっている親父さんやようやく見習いに出たばかりの弟さんらが嘆くだろうよ」 「そそなたらそんな卑怯な」 「ヘヘヘヘヘヘ、何とでもいえよ。ささあどうしたどうした。そこまでの覚悟があるんだったら死ねばいいんだよ」 由香はそれまで奥歯を噛み締めて押し黙っていたがやがてヘナヘナとその場に座り込んでしまった。そしてその場につっぷしてから嗚咽しはじめるのである。 その由香の姿を見ておもんは顔を曇らせて「あんた、泣けば許されるもんじゃないんだよ。全く、あんたそれでもお武家の女なのかい」と憎憎しげに言った。 「まあまあ。女将さん」 源蔵はおもんを宥めてから嗚咽している由香の背中にそっと手を置きながら先ほどとは一点した優しい声音で言うのである。 「なあ奥方様よ。俺たちは出来ればあんたに手荒なことはしたくねえんだよ。あんたが大人しく俺たちの言うことを聞いてちょっとのばかり我慢してくれればいんだよ。それにだ」 源蔵は尚更、猫なで声で由香の耳元で囁くように言った。 「あんたみたいな美人がここで働いて稼いでくれれば、旦那の残した借金を返すのにそんなにかからないよ。とにかく借金を綺麗に返して貰えばすぐにでもお屋敷の方に帰れるよ」 その源蔵の言葉に由香はふと顔を上げるとすがり付くような表情で言った。 「ほほんとうに少しの間、わたしが我慢すれば家に帰して貰えるのですね」 「ああ、あんたのその器量ならあっという間にそんな借金なんか返せるよ。女将さん。あんたもそう思うだろう」 そのように問われたおもんも初めてニコヤカナ笑みを浮かべながら「そうだよ。あんたがここで真面目に勤めれば早いとこ。お屋敷に戻って親御さんらにも会えるよ」 「そのためにもあんたは俺たちの言うことを素直に聞いてくれなくちゃ。困るんだよ。判っているね」 源蔵が由香の顔を覗き込みながら確かめるように言うと由香は顔を引きつらせながらもかすかに小さく頷くのである。 その由香の返事に源蔵は満面の笑みを浮かべながら「それじゃあ、俺たちの言う通り、ここで大人しくその綺麗なお着物を脱いで下さるので」 「ははい」と由香はうなだれたままでかすかに頷いて小さい声で答えた。 「じゃあ、早速、ここで脱いで貰おうか」 「こここですぐにですか」 由香はそう言ったもののその声は弱弱しいものであった。 「あんた、まだまだ、愚図愚図言っているのかい。さあグダグダ岩内でスッポンポンになるんだよ」 そのようにまたおもんが声を荒げたがすぐに源蔵がまたそれを抑えてから由香に諭すように言った。 「あんたがまだこれ以上、俺たちに手数をかけるようだと。すぐにここの若い者を呼んで無理やりにでも着物を脱がすよ。それよりも自分から脱いだ方があんたの為にも良いだろう」 その源蔵の言葉に由香は顔を強張らせながら「わ判りました。じ自分で脱ぎますのでま待ってください」と言ったのである。 そして由香は意を決したように立ち上がると一旦、目を閉じていたかと思うとやが身に着けている着物の帯に手をかけてそれを解き始めたのである。 シュルシュルシュルと衣擦れの音を出しながら由香は余り派手ではないものの武家の女としてそれなりに優雅な着物を脱ぎ始めた。そしてそれを三人の男女が固唾を飲んで見守っていた。 やがて由香は薄桃色の長襦袢姿になった。そしてさすがにその長襦袢の細帯に手をつけるのは躊躇っている様子である。 「どうしました。奥方様。あっしらは身に着けているものを全部脱げと言った筈ですよ」 「そそれは判っておりますが」 「あんたがこれ以上愚図愚図していると先ほども申し上げた様に若い者に手伝わせますよ」 その源蔵の脅しの言葉に由香はびっくとしたように体を震わせて「わ判りました。ま待って下さい」と言ってついに長襦袢の細帯にを解き始めた。 シュルシュルと再び衣擦れの音がしたかと思うとついに由香の上半身が露になったのである。 「ほうううううううう、これは」 期せずして由香を見つめていた三人の男女からそのようなため息とも簡単ともつかない言葉が出た。 そのように由香の上半身は染み一つない真っ白な肌であった。 「やあまるで雪みたいに真っ白じゃないかい」と源蔵が言えばおもんも「ああ、女のあたしが見ても惚れ惚れするような肌だよ」と言う。それに例の仕込師・鬼八は無言ではあったがそのじっと由香の上半身を見つめている表情を見ていると簡単していることがその表情に見て取れるのである。 その三人の視線に耐えられないとでも言う様に由香は思わず両手で左右の乳房を覆い隠しながらその場に蹲った。 その由香の行動にはっとしたように源蔵は気を取り直してことさら冷酷そうな表情になって由香に言うのであった。 「奥方様。まだ終わっちゃいませんぜ。その腰のものも脱いでスッポンポンになってもらうお約束ですよ」 そんなことを言う源蔵の顔を恨めしく見上げながらも由香は依然としてその場に蹲ったままである。 そんな由香にやや業を煮やしながら源蔵は背後を振り返り鬼八の方を振り向いて言った。 「鬼八さん。どうするよ。若い者でも呼んで来る会」 「いいえ、差配さん。腰のものはあとでじっくりと外して観音様はその時に拝見させてもらいますよ」 その鬼八の言葉を聞くと源蔵は頷いて「そうかい、そうかい。よし。あとはあんたに全て任せるよ。姐御さんもそれでいいですね」 源蔵がそう確かめるとおもんも黙って頷くのである。 「じゃあ、あとは鬼八さん。あとはあんたの思うようにこの奥様を料理するんだな」 その源蔵の言葉に鬼八は頷くと傍らに置いてある風呂敷袋を解いてその中からどす黒い縄を取り出して、由香の方に近づいて行った。 その鬼八が近づいてくる異様な気配に気が着いた由香はハットして鬼八が持っている縄を見つめながら思わず叫んだ。 「ああなたはななにを私になさろうとするんですか。ままさかその縄でわわたしを」 もう由香はあとの言葉が出なかった。 鬼八は何の表情も見せずにただただ淡々とした口ぶりで言った。 「由香様とおっしゃいましたね。大人しく、そのお手手を背中に回すのです」 「そそんなそんな括られるのはイヤアアアアアアアア」 そのような叫び声を上げて由香は後ずさりしたがすぐに鬼八に肩をつかまれてしまったのである。 「由香様。大人しくして下さいよ。そうしねえと少々手荒な真似をしねええとならないですからね」 そのようなことを呟きながら鬼八は由香の両手を背後に捩じ上げて言ったのである。 そうしておいて背後にねじ上げた由香の両手首を重ねあわすと口に銜えていたどす黒い縄で縛り始めるのである。 「ううううし縛られるのはイヤアアアー」と由香の劈くような悲鳴が上がったが鬼八はそれに構わず由香を後手に厳しく縛り続けるのである。 武家に生まれた者に取って縄目の恥辱はまさに死にも劣らぬ屈辱である、しかもいま由香の上半身は裸に剥かれているのである。 こうして鬼八は由香のキャシャな手首を背後に重ね合わせて緊縛するとその重ねて縛った両手首を更に上の方に引き上げたのである。 「ウウウウウウウウ、い痛いいいい」と由香は思わず呻き声を上げたものの鬼八はそれに構わずその縄を前方に回すと左右の乳房の上下にを厳しく縄で締め上げたのである。 どす黒い縄で締め上げられた由香の左右の乳房は縄で縊られた格好となり、いかにも痛々しい様子である。 更に鬼八は乳房を締め上げた縄で舌から上に上げるような形で背後に回して首縄とする形で縛り上げたのである。 こうして由香は鬼八の手で上半身を裸に剥かれた素肌に直接高手小手・後手に緊縛されてしまったのである。 「フフフフフフフフフフ、由香様。さすがにお武家様の奥方様です。きめの細かい肌をしておられる。源蔵さん。女将さん。久しぶりにこれは縄の似合う女ですよ。この奥方様は」 鬼八はそう言いながら初めて笑顔を源蔵とおもんに向けるのであった。 「そうかい。そうかい。フフフフフ、それはそれは。まあ俺たちが苦労してここまで連れてきた甲斐があったというものだぜ」 「さああ、由香様、立つんですよ」 鬼八はそう言って由香の縄尻を引いて立ち上がらせるとその部屋の鴨居に縄を繋ぐのである。 こうして由香はその緊縛された体を釣られた格好となったのである。 「さあ、源蔵さんに、女将さん。これからじっくりとこの奥方様の観音様をじっくりと拝んで見ようではありませんか」 鴨居に釣られた由香の露になった体に見とれていた源蔵とおもんはハットしたように頷くのである。 「それではこの由香様のあそこを覆っている腰のものを源蔵さん、いえ差配さんにやって貰いましょう」 「ええ、鬼八さん。お俺にやらせてくれるのかい」 そのように言う源蔵の目は既に血走っている感じである。 「ええ、なにしろ。この奥様をここまで連れてきたのは差配さんですからね」 その鬼八の言葉に頷いた源蔵はやや興奮した様子で由香に近づいてゆくのである。 源蔵は由香の身に唯一つ残された薄桃色の腰巻に手を書けながら羞恥の為に俯いている由香の耳元に囁くように言った。 「さあ奥方様。これからゆっくりとあなた様の女の あ そ こ を眺めさせて頂きますよ」 その言葉が終わるか終わらないうちに源蔵は由香のその腰のものをさっと引き剥がすのである。 「イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」 その部屋ばかりでなく遊郭全体に轟くような悲鳴が由香の口からほとばしった。更に由香はその絶叫と同時におのれの女の秘部を隠そうと必死に足を閉じたのであるがたちまち鬼八に背後から強引に足をつかまれて割り咲かれたのである。 こうしてついに由香の女の源泉が源蔵とおもんの目の前に曝け出されたのである。 「ほう これがこの奥方様の観音様か。フフフフなかなか綺麗じゃないか」 源蔵がそのように嘯くと傍らのおもんも目を輝かせて言った。 「あたしもお武家の女の こ こ を見るのは生まれてはじめてだけど。本当に綺麗だね。まるで生娘のようだよ」と言うのである。 その二人の言葉を聞いた鬼八も顔を綻ばせて「そうですかい。それではわたしも奥様の観音様を拝見しますか。それでは差配さん」 「うん、何だ。鬼八さん」 「誠に申し訳ありませんが、わたしと場所を代わってもらえませんか?」 「うん まあ仕方が無い。代わるよ」 源蔵は不承不承ながら鬼八と交代して背後から由香の足をつかんで足を割り策のである。 そうして源蔵と代わって由香の目の前に座り込んだ鬼八はそれこそ食い入るように由香の女の秘部を見つめるのである。 そうしてしげしげと由香の女の秘部を眺めていたかと思うと鬼八はさっとおのれの指を由香の秘部に差し入れたのである。 「アアアウウウウウウウウウウウウウウ」 由香はたちまち喘ぎ声を出したが鬼八は表情も変えずにこう呟くのだ。 「うむうむ。まだまだ潤いが足りんな それから鬼八は由香の両足を背後から抑えていた源蔵に声をかけた。 「源蔵さん。もう足を押さえなくても大丈夫でしょう。それよりも少しわたしの仕事を手伝ってくださいませんか」 「ええ、何をすれば良いんだい」 「へええ、後ろからこの奥方様の乳を揉んで下さい。それに」 鬼八は傍らで依然として由香の秘所を覗き込んでいるおもんにも声をかけるのである。 「恐縮ですが、女将さんも少し手伝って下さい。この奥方様の首筋などを可愛がってくだせい」 その鬼八の頼みに源蔵もおもんも喜色満面の表情で頷いた。 それからすぐに源蔵は背後からどす黒い縄で緊縛されて普通よりも膨らみがより強調された由香の左右の乳房をそっと両手で持ち上げるような格好で揉み上げ始めるのである。 「アアアアウウウウ、止めてええ」 由香がか細い声で抗いを示したが源蔵は構わずに由香の左右の乳房を揉み続けるのである。更にそれに加えておもんが前の方からそっと由香に寄り添って由香の首筋をなめ上げ始めるのである。 「ヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘヘ、こりゃたまらん。この奥方様の乳はまるで餅のように柔らかいよ」 由香の左右の乳房を揉んでいる源蔵はそのような喜びの声を上げ、おもんも横から由香の首筋やその耳元あたりを口で愛撫していた。そしてその一方では鬼八がただただひたすらにおのれの指を由香の股間の秘部に差し入れしているのであった。 「アアアアアウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ」 「アアアヒイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ」 「イヒイイイイイイイウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ」 由香はそのような悲鳴とも喘ぎ声ともつかぬ声を出しながら悶えていたがその間、鬼八は何も言わずに相変わらず指で由香の女の源泉への愛撫を続けていたのである。 「フムフム、ようやく少しは潤いが出てきたかな」 約半時[一時間]程そのような由香への愛撫を続けたのちに鬼八はそんなことを呟くとそれぞれに由香を愛撫していた源蔵とおもんにこう声をかけた。 「差配さん。それに女将さん。今日はこれくらいで終わりにしましょう。この奥方様も始めてこんなところに連れてこられてさぞお疲れでしょう。今日のところはもう休ませてやりましょう」 「ええ、鬼八さん。もう終わり海。もう少しはこの奥様を可愛がっても良いんじゃない回」 源蔵はやや口を尖らせたが鬼八は宥めるように「まあまあ。焦っても仕方がありません。それに」 この時に鬼八は改めて源蔵とおもんの両人を見渡しながら「この奥様の仕込みはこのわたしにお任せ願えるとのことですよ」と言った。 「判ったよ」と源蔵は不承不承にそう返事を返すのである。 その源蔵の言葉に頷いた鬼八はやがて由香を繋いだ鴨居の縄をとくと縄尻をもって由香を引き起こすと「さあさあ奥方様。歩くのですよ」と言いながら由香を歩かせるのである。 そのような訳で由香は全裸に剥かれた上にその素肌に直接縄を打たれた誠に惨めな格好出その遊郭の内廊下を歩かされたのである。 緊縛された由香の姿が廊下に出た途端にいかにも人相が余り良くない数人の男どもがぬっと現れて由香の周囲を取り巻くのである。 「これから、この女を屋根裏部屋まで連れてゆくのでお前たち、他の客が見ないようにしてろ」 そのように女将であるおもんがそのように言うとその男らは頷いて由香の周囲を取り巻いていった。 「じゃあ奥方様。いや由香様。まいりましょう」 由香の縄尻を持った鬼八はそう言いながら由香の背中を押しながら歩かすのである。 こうして由香はその遊郭の屋根裏部屋までつれて行かれたのである。その屋根裏部屋は六畳ぐらいの広さであり中にはただポツンといかにもみすぼらしい煎餅布団があるだけであった。 「さあさあここが今日からあんたが寝泊りする部屋だよ」 鬼八はそう言って由香をその煎餅布団の上に投げ出すように緊縛したままで横たえたのちに出て行ったのである。
2017/08/02 13:44:49(ixBQtg.T)
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