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1:妄想小説
投稿者:
奈緒
◆izXORZkVZs
「ふぅ…」
今夜も訪れる客の少なさにアダルトショップの店主・谷井はため息をついた。 (いよいよ店を畳む潮時かな) この店は立地がよくない。 繁華街から外れた裏通りからさらに路地に入った雑居ビルの地下にあった。 小さな看板は出しているが、こんなところに店がある事自体分かりにくいし、 仮に店の前を通ってもわざわざ狭い階段を下りて来る物好きもいない。 (おや?) そろそろ閉店の準備に取りかかろうとした時、店の扉が開く音がした。 (客か…?) 谷井は来客の様子を探った。 (女じゃねえか!) 女は扉を開けたもののすぐに中へは入らず、しきりと店内の様子を窺っている。 谷井がいるレジはお客との間に代金をやり取りする小窓が付いただけの仕切りがあり、 女からは中が見えなくなっている。 女はオドオドと店の中まで入ってなお、用心深く周りを見回している。 ようやく店にいるのが自分一人だと思い安堵したのか、商品棚のアダルトDVDや AV女優のポスターに目をやる。 女は膝ほどのスカートとライトグリーンのパーカーを羽織り、小ぶりなポシェットをぶら下げていた。 清楚な佇まいはどう見てもたまに酔客と冷やかしに来る安っぽいホステスとは違った。 谷井が驚いたのはほとんど化粧っ気のないその美貌である。 目鼻立ちは整い、涼しげな瞳は理知的な印象を与えていた。 それでいてどことなくあどけなく、華奢な感じが彼女の可憐さを際立たせている。 (女子大生か?それとも…) いずれにしてもまぎれもない美少女だった。 店主である谷井でさえ、こんな美少女がこんな店にいるの場違いと思った。 実際、アダルトショップに来るのは初めてだと、彼女の初々しく儚げな物腰が それを物語っていた。 少女は依然谷井が自分を観察していることに気がついていないようだった。 店に自分しかいないと思い込ん様子で、恐る恐るどぎついパッケージの DVDを代わる代わる手に取って食い入るように見つめている。 谷井の目にも白い女の顔がほんのりと上気して行くのが見て取れた。 (それはハードなSM調教モノだぞ!) 谷井は年甲斐もなく股間を熱くさせた。 女性がSMモノの写真にウットリしている姿は、谷井ならずとも強く好奇心と劣情を煽られる。 ましてやそれが清楚で可憐な美少女となると尚更である。 DVDが並んだ隣りは大人の玩具の売り場になっている。 少女はひとしきりDVDパッケージを眺めると再びキョロキョロ周りを見回して、 大人の玩具売り場に足を踏み入れた。 陳列棚の傍らには谷井が亀甲縛りを施した裸の人形が飾られていて、 女の目が釘付けになる。 谷井は女の肩が小刻みに震え、微妙に腰が揺れているのを見逃さなかった。 商品陳列棚の前には見本として数点のバイブレーターが並んでいる。 女は恐る恐るそれを手にすると、興味深げにその器具を観察し始めた。 そして本体から延びたリモコンを覚束ない手つきでスイッチを入れる。 うぃーんという振動音とともに男性器を模した部分が妖しくうねり出す。 それを潤んだ瞳で凝視し、しきりと膝をすり合わせ、 呼吸を荒げているのが、 谷井にもはっきり分かった。 (間違いない…この娘、興奮してる!) そう確信した谷井はもう少女に対する好奇心を抑え切れなくなっていた。 静かにレジを出ると、そっと少女に歩み寄った。 少女は手にしたバイブに目を奪われて、谷井が近づいたのも気付かない。 「お嬢さん、ずいぶん熱心だね。」 突然話しかけられ、振り向いた少女の表情が一瞬で凍りついた。 目を大きく見開き、驚愕の表情が浮かぶ。 小さく悲鳴を上げると、みるみると怯えの色に染まって行く。 「お嬢さん、レジはあそこにあるんだよ。 顔見られるお客もいるから目隠ししてあるけど、中からは店の様子がよく分かるのさ。」 えっ…と言う表情を見せた少女は自分一人しかいないと思い込んでいた場所で、 見られてはいけないことを覗かれていたことを知って、哀れなほど狼狽する。 「お嬢さんのような可愛い女性がSM好きとはうれしいねぇ。」 (行ける!…) 予想通りの少女の反応に谷井の心は高揚した。 「お嬢ちゃんはそういう玩具が欲しいのかな? こいつはかなり評判の品物で、すぐに気持ちよくなれるんじゃよ。 ほれ、このスイッチで強弱の調整も出来る…」 谷井が少女が手にしたバイブを受け取ると少女の顔の辺りで操作した。 「あ…いや…」 消え入りそうな声で目を背ける少女は、首筋まで真っ赤に染めて俯く。 (こんなうぶな女、珍しい…) 少女の反応に谷井の嗜虐心はますます煽り立てられる。 「興味あるんだろ? SM好きなんだよな。 わしがバイブの使い方教えてやる!」 谷井は衝動的に少女の腕を掴んでいた。 ちょっと強引かと頭の片隅をよぎりながら、劣情を押さえきれない。 グイっと少女の身体を引き寄せた。 谷井は何が起こったのか分からなかった。 胸に強い衝撃を受け、一瞬天井が見えたかと思うとしたたか腰を商品棚にぶつけた。 追い詰められた少女が谷井を力任せに突き飛ばしたのだ。 (この…アマ…!) 谷井が体勢を整える間もなく少女の次の反撃が襲った。 少女のポシェットがもろに谷井の顔面を直撃したのだ。 少女は長い肩紐を振り回し2度3度と谷井を叩く。 谷井はたまらずそこに膝をついていた。 谷井が怯んだと見るや少女は谷井をすり抜けて、脱兎のごとく店を飛び出してしまった。 「くそ…早まったか!」 みすみす少女を逃した後悔と若い女に叩きのめされた屈辱に谷井はそこに しゃがみ込んだままである。 (あの娘、二度と来ないだろうな… ワシとしたことが、せっかち過ぎた…痛たたたっ…) ぶつけた腰の痛みを忌々しく思いながら立ち上がろうとする谷井は床に何かが 落ちているのに気がついた。 (手帳?…) あの娘が落として行ったのか? (生徒手帳じゃないか!…) その落し物を手にした谷井は思わぬ幸運に喝采を上げた。 「光教学院高等学校2年B組…深沢恵理子…」 光教学院と言えば名門中の名門じゃないか! まさかその名門校の生徒だったとは… ククク…恵理子ちゃんとは楽しく付き合って行けそうだな。 谷井は生徒証に貼られた澄まし顔の女子高生の顔写真に卑猥な笑みを 湛えて話しかけるのだった。
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2013/05/18 11:43:03(OCHNcFH0)
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