3

「まあ、随分とお楽しみね」
声の主はもちろん摩尋さんだ。

「亜矢ちゃ――ミストレス、お出でがあまり遅いので、予備検査だけでも済ま
せておくことにしましたのよ」
麻紀先生の声には少し言い訳がましい響きがあったけれど、摩尋さんは気づか
なかったように話を続ける。
「で、どうだったの?」

「クリトリス、Gスポット性感ともに極めて優秀。ポルチオ性感もあるわ。刺
激に対するポルチオの反応もとってもいい。いい赤ちゃんがたくさん産めるわ
よ」

「あら、あなたは生殖器官としての女性器には重きを置かない人じゃなかった
かしら」

「勿論、快楽器官として、殿方を愉しませる器官としての機能が最優先よ。こ
のコはその機能も優秀そうね。ほら見て、すごい襞でしょ。ミミズ千匹ってや
つね。食いつきも強いわ。鍛錬すれば殿方を虜にする名器になりそう。だけ
ど、いずれにせよ、生殖能力も大事よ。それ無しでは、殿方を愉しませるプレ
イのバリエーションがいくつも減ってしまうもの」

「まぁ、麻紀ちゃんたら…とにかく、テストを続ける上で肉体的な問題はまっ
たく無いってことね」

「ええ、問題が無いどころか、ご覧の通りまったく綺麗なものよ。身体の外も
中もね。壊してしまうのは惜しいわ」

「もう、あんまり美紗緒さんを脅かさないで。まだ壊すと決まったものでもな
くてよ」
摩尋さんが、宥めるようにわたしの頭を撫でながら言う。
でも、わたしは「壊す」と聞かされて、むしろ密かに興奮してしまっている。
膣口をクスコで固定されていなければ、激しく収縮させて、盛大にいやらしい
蜜を溢れさせていたかもしれない。

「それにしても、性感に全く問題が無いってことは、オーガズム不全の原因は
やっぱり心理的なものってことなのかしら」

「そうでしょうね。実際本人も乱暴にされればイケることもあるって言ってい
るんだし」

「では、麻紀先生の診立てでは、テストは予定通りに、ってことかしら」

先生はちょっと考える素振りを見せてから、ちらりとわたしの方を見やって答
える。
「そうね。ええ、そう進言するわ」

それを聞いて摩尋さんが、わたしに話しかける。
「美紗緒さんはどう? テストを始めてもいい? ここでやめてもいいのよ?」

「あの、今までのは」

「あくまでも予備検査。テストはこれからよ。どうする? 始める? やめる?」
摩尋さんの目は真剣だ。わたしに最後のチャンスをくれていると感じる。

わたしも精一杯真剣に見つめ返して答える。
「お願いします。テストを受けさせてください」

摩尋さんは、つと目を逸らせて溜息をつく。
そして、そのままわたしとは目を合わせずに、先生の方に向き直る。
「じゃ、始めて頂戴」

摩尋さんは壁際に下がり、先生が再びわたしの脚の間に入る。
先生はクスコを閉じて、わたしの膣からそっと引き抜く。

「あぁん」

壁面ディスプレイではクスコから解放されたわたしの淫らな膣口が愛液を滴
らせて物欲しげに蠢いている。

「じゃあ始めるわよ。ここからは泣いても喚いても、テストが終わるまで聞く
耳は持たないけど、覚悟はいいわね?」

「はい…始めて下さい」

「いい子ね」
そう言うと先生は新たな器具を取り出す。
さっき使った針金状の器具に似ているけれど、今度は先端に輪のようなものが
付いている。

「ちょっとさっきのに似ているでしょう?　実際やることも同じようなものな
の。ここにこうして――」
「あっ」
ディスプレイの中では、フードの中へと戻りかけていたクリトリスが、輪にま
さぐられ、再び勃起を取り戻していく。
そのクリトリスに輪が掛けられると、しゅっと締まって固定される。
「――こうすれば、ほらもう逃げられない。で、お待ち兼ねの電気よ」

今度は最初から、さっきの最後のときほども強い刺激がわたしのクリトリスを
襲う。
「あっ、ああっ、あーっ」

「今度はこんなものじゃ止めないわよ」
先生は更に電流を強める。
間断無い強烈な刺激に、わたしのクリトリスは自分のものでないかのように勝
手に痙攣し始める。

「あーっ、いやっ、あっ、駄目ーっ」

「あらあら、もう弱音を吐くの? でも駄目。泣いても喚いても聞く耳は持たな
いって言ったでしょ。このまましばらく愉しんでいて頂戴ね」
そういうと先生は摩尋さんを促してドアへ向かう。
摩尋さんも、一度だけ振り返って、物問いたげな、心配そうにも見える一瞥を
わたしに向けてから、一緒に部屋から出て行ってしまう。

「えっ、あっ、待って、くうっ、あっ、あっ、あーっ」
部屋には拘束されたままクリトリスを痙攣させる惨めなわたしの啼き声だけが
空しく響き続ける…