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後悔14
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:シナリオ 官能小説
ルール: エロラノベ。会話メインで進む投稿小説
  
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1:後悔14
投稿者: まさ ◆72/S7cCopg
「川上くんに、結婚してくれって言われた」
 予想以上の話に、健介は驚愕した。思わず奇声を挙げると、朝香は少し慌
てて補足した。
「今すぐってわけじゃなくて、要は、婚約してくれってことみたいだけど」
 そうだとしても、健介には直人の了見が理解できなかった。借金を負って
いる身で、どうしてそんなことが言えたものか。
「どうしよう?」
 朝香は、しんから困惑しているらしい口調で言った。どうするもなにも、
健介からすれば断固反対する外なかった。が、その前に確認することもあっ
た。
「借金はどうしたの? 返したの?」
「まだみたい」
「じゃあ、駄目じゃないか」
 朝香は沈黙した。
「借金があるのに、結婚だなんて、ふざけてる」
「でも、それは、絶対大丈夫だって、言ってる」
 健介は、朝香が直人を擁護したのを意外に思った。こんな話を承知してい
るはずがないと確信していたのである。
「大丈夫なもんか」
 健介は少し苛立ちを覚え、やや語調を強めた。朝香は再び黙った。
「小嶋は、正直、どうしたいの?」
 結局は、それが最も重要であった。朝香は、そう言われても、ううんと唸
るばかりで、中々答えず、ようやく、
「わからない」
 とだけ言った。わからないことあるものかと、健介はまた苛立つような気
がしたが、そう言いたいのも解らないではなかった。
「次の日曜、だから、土曜の夜にそっちに行くよ。それで、ゆっくり話し合
おう。三日あるけど、その間に返事をしちゃいけないよ」
 電話ではどうにも話し辛いと思って、そう提案した。朝香は泣声のまま、
「来てくれるの?」
 と言った。
「うん。待ってて」
「うん。待ってる」
 それで通話を終えた。電話を切る間際、朝香は、ごめんねと呟いた。
 直人が、朝香に結婚を申し込んだ心境は、想像できなくはなかった。パチ
ンコのために借金するの如き愚行は、元から健介の頭にはないから、それは
除いて考えなければならなかったが、仕事や生活が辛いだけに、恋人を拠り
所にしたいという気持ちは理解できた。きっと、朝香もそれが解るから、本
来なら断然拒否するべきはずの話にも、悩んでいるのだろうと思った。自分
が必要とされるのは嬉しいし、必要としてくれる者の存在はありがたいし、
それに応えればその者が救われるかも知れないと想像するのは愉快なもので
ある。とはいえ、客観的に見れば、こんな話は絶対に許すべからざる話でし
かなく、両親が、今の直人がしているようなことのために離婚している健介
にとっては、それは尚更であった。
 それから三日間、健介は、どのように朝香にこの話を断らせようかを思案
した。きっと、朝香にとってもそこが一番の悩みどころなのだろうと思っ
た。弱い態度では、諦めなかったりしつこくしてきたりしかねない。だから
と言って、心優しい朝香には、あまり手酷いことを言えそうもない。人を傷
つけることを恐れる子だというのを、健介は知っていた。結局、相手が諦め
るまで、根気よく交渉させるしかないだろうかという程度の案しか捻出でき
なかった。
 午後五時に仕事を終え、すぐに東京へ向けて出発した。電車を乗り継い
で、府中に着いたのは七時過ぎ。一旦実家へ行って、そこから自転車で朝香
の住んでいるアパートへ向かった。ようやく到着したのは、すでに八時頃で
あった。
 朝香は笑顔で健介を出迎えた。健介はその笑顔にいくらか安心を覚えた
が、顔色の悪さや、やつれ具合が、以前よりも顕著になった気がして、それ
を甚だ心配に思った。
 そういえば、この前は中にはあがらなかったなと思いながら、健介は朝香
の家へ入った。このときも、昔は平気で彼女の部屋などあがっていたのに、
今ではすこぶる緊張すると彼は思った。
 中は、六畳間一つに、台所、風呂、便所がそれぞれ別にあるという具合
で、一人で住むには不足のない部屋であった。どこも綺麗に整理整頓されて
いて、とても清潔なのが朝香らしい。健介は、見覚えのある犬のぬいぐるみ
を発見した。昔から朝香が部屋に置いていたものであった。懐かしく思いな
がらそれを見ていると、朝香はその視線に気付いたらしく、
「あれね。あれだけは愛着がすごいあるから、持ってきたの。さみしくて眠
れないときは、ぎゅってして寝るんだよ」
 と言った。昔の朝香も、そんな風にしていると言っていたのを思い出し
て、そういう彼女の変わらなさが、健介には微笑ましかった。
 部屋にはベッド、ローテーブル、テレビ、CDMDプレーヤーなどが置い
てあった。物だけ見れば、地味で質素だが、部屋全体の色調や内装はやはり
女らしかった。健介は、幼馴染の部屋というよりも、女の部屋にいるのだな
という実感がして、どぎまぎした。特に、ベッドを見ると、どうしても邪な
想像が脳裏をよぎって、興奮せずにいられなかった。そんな健介には頓着し
ない様子で、朝香はコーヒーを淹れ、出した。何故か、健介にちょうどいい
甘さであった。
「来てくれて本当にありがとう。ごめんね」
「ううん。電話の後、変化はあった?」
「あれから話はしてこないけど、私からも何も言ってないし、多分、返事を
待ってると思う」
「そうか」
「どうしよう?」
「まず、小嶋自身はどうしたいんだ?」
「私は」
 朝香は俯いた。この期に及んでまだ悩んでいるようだ。
「結婚は、無理。でも」
 朝香はぼそぼそと小声である。
「気の毒で」
「気持ちはわかるけど、同情で、自分の人生を犠牲にするっていうの?」
 健介は、我ながら意地の悪い追い詰め方だと思ったが、朝香に決断をさせ
るには必要なことだと信じて言った。
「犠牲」
 朝香は、恐ろしいことを想像しているかのような表情をした。
「川上は変わってしまった。昔のあいつなら、俺もそんなに言いはしない
が、今のあいつだったら。誰にも結婚なんか勧められない」
 すでに別離の気配をさせはじめているとはいえ、人の彼氏の悪口を、本人
の前でするのは心苦しかったが、何としても間違ったほうへ進ませないよう
にと、健介は必死であった。
「そうよね。やっぱり健くんもそう思うの」
 朝香は俯いたままで呟き、頷いた。健介は、彼女の消沈した顔をよく見て
いた。唇が震えていた。二、三度瞬きをした後、睫毛も細かく震えだし、突
然眼から涙が溢れた。健介は驚いた。
「仕事始める前まではとても優しかったの。だけど、それからはだんだん冷
たくなってきて、ちょっとしたことで怒るようになって」
 朝香は手で涙を拭いながら、震える声で喋った。健介は狼狽して、腰を浮
かせたり下ろしたりした。
「昨日も、借金のことで言い争いになって」
 変化はないと言ったはずなのに、昨日あったことを言い出した。隠してお
くつもりのことのようであった。
「殴ったのよ」
 ついに朝香は烈しく泣き出した。健介は胸を杭で打たれるかのような深い
衝撃を感じた。直人に対して凄まじい憎悪が湧いた。彼はひとりでに立ち上
がり、朝香のすぐ横に跪いた。
「小嶋。一番大事なことだ。小嶋は、川上のことを愛しているのかい?」
 出来る限り優しく、しかし真剣に、はっきりと言った。その言葉に朝香は
顔を挙げて健介を見た。顔色いよいよ蒼白で、眉を顰めながら首を横に振っ
た。全てに苦痛の表情が漲っていた。その眼は、助けを求めているかのよう
であった。
 それは強奪に違いなかった。けれども、健介はそれを、救出であると信じ
た。
「朝ちゃん」
 無意識に、朝香の両肩に手をかけていた。
「俺は朝ちゃんをずっと大切にする。俺が守ってやる」
 その言葉は、理解とかいう範囲を超え、直接朝香の心の深層に届いた。し
かし朝香は表情を変えず、健介を見つめるその瞳からは涙を流し続けた。綺
麗な唇の間から、掠れた息が漏れた。
「いつも一緒だったのに」
 そう言って、朝香は両手で顔を覆い、言葉を続けた。
「何故もっと早く言ってくれなかったの」
 朝香はその体勢のまま泣き続けた。健介は、彼女の肩を掴んでいる手を自
らに引き寄せた。朝香はそれに逆らおうともせず、額を健介の胸の辺りにつ
けた。
「全部俺が悪い。俺に度胸がなかったのが悪い」
 健介はそう言い、朝香の背に手を回して、落ち着かせるようにさすった
が、嗚咽はやまなかった。
「私は、あの、温泉のときに、諦めたのに」
 健介は、八ヶ岳に行ったときの風呂屋で、二人で話したときのことを思い
出した。あのときの会話で、そんな気持ちにさせていたのだと知ると、大き
な悔恨の情が湧いた。
「すまなかった。俺が悪い」
 健介はそう言う外なかった。
 ずっと同じ姿勢のまま、朝香が泣き止むのを待ったが、なかなか泣き止み
そうにないので、健介は不安になってきて、小さな声で、
「言わないほうがよかった?」
 と囁いた。すると朝香は顔を挙げ、頭を振った。
「そんなことない。言ってくれなければ、私は生きていられなかったかも知
れないもの」
 と朝香は言った。健介は戦慄を感じた。もし言わずにいたら、本当にしん
でしまいそうな気がしたからである。
「それじゃあ」
「ええ。言ってくれてありがとう」
 朝香はようやく笑った。健介も微笑んだ。
 健介はさらに朝香の体を引き寄せ、自らの腕の中に抱いた。そうして、唇
と唇を重ねた。
 その日健介は、初めて女を抱いた。相手は処女でなかった。それはとても
悲しかった。けれども、それが朝香であることには変わりなかった。
 朝香の体は思っていた以上に華奢であった。元からそうなのかも知れない
が、健介は、そこに彼女の苦労が表れているような気がして、切なくなっ
た。特に、あばら骨の浮いて見えるのが、ひどく痛々しかった。
 
2006/12/25 21:47:26(cpP/l0RF)
2
投稿者: 錯乱坊
進展がありましたね。今後川上君との対決が楽しみです。
06/12/26 01:42 (40v4pg/w)
3
投稿者: こギャング ◆T4Ts62OtgU
川上のヤロウ!俺が ヤッてやんぜ!
池袋フローレンス13なめやがって!
朝ちゃんは健がアナルまで開発してド淫乱な可愛い女にするから川上は氏んでもいいだろう?
なぁ?みんな!!

池袋ウエストゲートパーク(IWGP)主人公マコトのモデルとなった俺が川上をヤッてやんぜ!
06/12/26 11:05 (dVUVELZ1)
4
投稿者: まさき
おもしろい!
続き早く!!
06/12/26 15:42 (tU8loszV)
5
投稿者: しゅん
今1からすべてよんじゃいました。今後の朝ちゃんに 後悔ってタイトルがひっかかりますが、早く健ちゃん 朝ちゃんを奪えよ!と1からずっと焦れったい(笑) それでも健に心寄せてる朝ちゃんが健気でかわいいじゃん
06/12/26 18:49 (EAazPvnE)
6
投稿者: おやじ
焦れったくなる位の二人のやりとりが切ないです。大変だと思うけど、ジャンジャン続きをお願い。
06/12/26 20:26 (3n/aw1C8)
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