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1:黒い下着2の9
投稿者:
まさ
◆72/S7cCopg
行為を終えて、息を整えていると、母が帰ってきたので、急いで服を着
た。部屋の戸ははじめから閉めてある。ベッドの上に、白井が僕の脚と脚の 間に収まる体勢で座った。そうして小声で話をした。 白井は、先までの狂った表情をなくし、落ち着いていた。しかし同時に、 とてもさびしげな表情もしていた。 「なにかあったの?」 今度は迷わずに問うことができた。白井は、 「たまにはこういうのもいいでしょ」 と言って、さらに、この前喧嘩した後、ちゃんと仲直りをしていなかった ことをずっと気にしていた、本当はすぐに怒りはなくなったから、こちらか らも謝りたかったのだけれど、なかなか言い出せずにいた。 「だから、今日のは、罪滅ぼしのサービス。気持ちよかったでしょ?」 ということを話して、首を捻じ曲げておどけたような笑顔を僕に向けた。 ああ、やはり何でもないんだ。そう思いたくなるような、嘘のなさそうな 顔、態度であった。けれども僕は、信じきることができなかった。僕は白井 を問い詰めた。はじめ白井はしらばっくれた。しかし、白井のほうも気付い てほしかったのかもしれない、明らかに何かありそうな顔をしながら、何で も無いと言っていた。 「何でもなくないだろ。話してごらん」 と僕が言うと、白井は涙を流した。そうしてゆっくりと話し出した。 白井の話はこうであった。合宿三日目の夜、部屋に水谷と二人きりになっ た。どうにも居辛いので、僕のところへ行こうかと思った。が、水谷が捕ま えて放さなかった。それは会話などをして、雰囲気の上で捕まっていたので なくて、実際に体を捕まれていた。またかと思っていると、胸を触られた。 抵抗したがやめなかった。布団はすでに敷いてあって、その上でもみあうよ うな体勢になった。やがて水谷の手は白井の股間に伸びた。白井は本気で怒 鳴ってやめさせようとしたが、水谷は意に介さなかった。 「それで……それから……」 白井は言い辛そうにした。僕は、白井のお腹の辺りに回していた腕を、首 の下の辺りに回すようにして、少し力をこめた。すると白井は、その腕をほ どいて、僕の片腕に自分の両腕を絡ませた。そうしていよいよ激しく嗚咽し た。隣の、居間には僕の母がいるので、声は堪えていた。 その夜、白井はTシャツにジャージという格好であった。水谷はジャージの 中に手を入れてきた。抵抗する間もなく、股間を刺激された。白井はそれ で、反応してしまった。言葉では制止しようとしても、行動には起こせなか った。要するに、なすがままになってしまった。水谷はさらに、Tシャツをた くしあげて、ブラジャーの中に手を入れ、乳首を刺激してきた。パンツの中 にも手を入れられ、直接性器を刺激された。突起をなぶられ、穴の中をかき 回された。水谷は、屈辱の言葉を言い放った。白井は、悔しくて恥ずかしく てたまらなかったが、力が抜けてしまって、どうにもならなかった。やが て、白井には、その時が訪れた。 白井の涙は止まらず、僕の腕にぽたぽた落ちた。僕は、じっと、白井が落 ち着くのを待った。やがて白井は、 「軽蔑する?」 といつかと同じことを僕に問うた。恐らく、それが白井の最も恐れている ことだろうと思った。 「しない」 そう言うと、白井はまた泣き出した。 しかし僕は、言葉では断言したものの、内心は混沌としていた。話を聞く 限り、白井は何も悪くない。水谷の暴行の被害にあっただけのことで、軽蔑 すべきでないはずである。しかし、最後まで抵抗せず、なすがままになって しまったというのが、僕の気に入らなかった。相手は、二歳年下の女なのだ から、何が何でも振り解こうと思えば、できたはずだ。それをしなかったと いうのが、気に入らなかった。が、同時に、相手が女であるというのが、僕 の気持ちを和らげた。白井がよくオナニーをするのは知っている。自らの 手、指でまんこをいじくるのである。水谷の手、指でされたのも、他人にオ ナニーを手伝ってもらったに過ぎないと考えれば、そう思えなくもなかっ た。それは、かなり無理のある、都合のいい解釈であった。しかし、白井は 傷ついていた。僕は、とにかく慰めてやらなければならないと、そればかり を考えていたから、それくらいに解釈しなければ、やってられなかった。た かが後輩の女子に身を任せてしまった白井を、許せないかも知れなかった。 僕は背後から白井の頭を撫でながら、 「とにかく、お前は何も悪くないんだから、もう気にするな。水谷には、俺 から言ってやる」 と言った。すると白井は、激しく首を振って、 「いや! そんなことしないで。私のことなんだから、私が自分で解決す る」 と怒鳴った。僕は、そのときになにもできなかったのに、これからどうや って解決するのだろうと思った。 「できるの?」 「できる。もう、唯ちゃんには関わらない」 「うん。それがいい」 本当に大丈夫だろうかと不安にならないではなかったが、そこは信じるし かなかった。それに、部活動が同じで、いつも一緒なのだから、いざとなれ ば僕自身でどうとでもできると思った。 白井を家まで送った。別れ際、白井は、誰にも言わないでねと、当たり前 のことに念を押した。 時刻は七時を少し過ぎていた。それでも真夏だから、ようやく日が暮れた というところであった。再び我が家へ戻る途中、薄暗い、灰色の空を見上げ ながら、いやな気分にもなったけれど、聞き出してよかったと思った。だん だん、すっきりしはじめていた。白井は悪くない。水谷の行為に対し、決然 とした態度をとらなかったことは、確かに気に入らないけれども、白井の淫 乱な性質を考えれば、しかたないこととも思えた。運の悪い女だと同情さえ 感じた。が、これからは、水谷に気をつけさえすればよい。そもそも、水谷 の危うさはわかっていた。あの夜も、いやな予感がしていた。なのに、様子 を見に行くことを怠けたのだから、悪いのはむしろ自分である。その点から も、白井を責めるべきでないし、僕にはその資格もない。白井のことは許せ るだろう。それらのことは、白井から事実を聞きだしていなければ、考えら れなかったことである。そうしてよかったし、白井が勇気を出して話してく れてよかった。白井を追い詰めるようになってしまったから、それを思うと 心が痛いが、その分、たくさん優しくしよう。そう思いながら、家へ帰っ た。 しかし、甘かった。本当の恐怖は、まだまだ、これからであった。それを 知らぬ僕は、呑気に、安眠をした。
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2006/10/25 22:18:57(/eAEbunE)
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