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黒い下着2の5
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:シナリオ 官能小説
ルール: エロラノベ。会話メインで進む投稿小説
  
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1:黒い下着2の5
投稿者: まさ ◆72/S7cCopg
 水谷の自宅は小金井だという。僕は三鷹だから、僕の帰り道の途中に、水
谷の自宅があるかたちになる。そこまで一緒に、ということになった。
 一人で帰るはずだったところを、いつもの通り二人で帰ることになったわ
けだが、相手が白井でないのがいつも通りでない。僕は、外見上は白井とま
るで異なる水谷を見て、新鮮さを感じた。そうしてそれから、罪のないこと
だと思ってはみても、別の女性と並んで自転車を走らせていると、やはり、
白井に悪いという気もしたが、限がないので、この際それを考えるのは終い
にした。僕は僕の言いたいことを言うために、どう話を展開させようか考え
たが、考えのまとまらない内に、水谷のほうが先に、いつもの調子で話し出
したので、まずはそれに付き合うことにした。
「金子先輩と白井先輩って、本当に仲が良いですよね」
「そうかな」
「そうですよ。いつも一緒にいるじゃないですか」
「そうでもないだろ」
「そうでもありますよ。とぼけちゃって!」
 水谷は自転車をこぎながらでも、ハンドルから片手を離し、僕の上腕辺り
を軽く叩いて、くつくつ笑った。バランスを崩すほどのことはなかったが、
危ない奴だ。
「中学のときから付き合ってるんですよね」
「中三の十月からだな」
「てことは、あと三ヶ月くらいで三年経つってことですよね。中学のときか
ら付き合ってて、同じ高校に来たはいいけど、結局別れちゃうなんていうの
はよく聞きますけど、そんなに続いてるなんてすごいですよ」
 そうかもしれない。色々な人から話を聞くと、三年どころか一年、人によ
っては一月ももたずに別れてしまうなどというのは少なくない。僕と白井み
たいなほうが珍しいくらいである。だから、誰しもが、二年以上付き合って
いると聞くと驚く。さらに、中学のときからだと教えると尚驚く。僕自身、
初めて付き合う人とこれだけ長続きしていることと、長く付き合うことがで
きる人と出会えた幸運に驚かずにいられない。若い内は色々な恋愛を経験し
たほうがいいとはよく言われる。それは真実だろう。けれども、僕の恋愛の
経験は、白井一人でかまわないと僕は思っている。白井と一緒にいる限り
は、他の恋愛をしようなどとは思わない。
「羨ましいなあ」
 と水谷は言った。僕は、水谷の美貌なら男に不自由しないだろうにと思
い、言った。
「水谷には彼氏はいないの?」
「いませんよ。私なんか好きになってくれる人」
「そんなことないだろ」
 ふと、お前が男に興味ないんじゃないか? という言葉が脳裏をよぎっ
た。しかし、そんなことを口に出して言えるはずはなかった。
 それから、とりとめのない話が続いた。その間に、自転車はどんどん進
み、家はぐんぐん近付いてくる。僕は、言いたいことを言い出す機がなかな
か訪れないので、じれったくなってきた。多少不自然でもいいから、強引に
話を切り出してみようかと思い、そうしかけた。そのとき、
「金子先輩と白井先輩って、エッチしてます?」
 と水谷はとんでもないことを言い出した。あまりに無遠慮な質問に、不愉
快になるより先に、唖然とした。無神経も甚だしい。どういう教育を受けて
育ってきたのかと、水谷の両親の人格まで同時に疑った。
「何を言ってるんだお前は」
 僕はむっとして言った。しかし水谷はまるでそれに頓着した様子を見せな
い。
「だから。お二人は普段、エッチしてるんですか?」
 あんまり無邪気なので、反ってこちらが毒気を抜かれてしまう。エッチと
いう行為を恥ずかしいもののように考えているこちらの方が、いやらしいの
ではないかという気さえしてくる。けれどもやはり、そんなことを堂々と言
うことはできない。
「何でお前にそんなことを言わなきゃならないんだ」
 せめてもの反撃のつもりの言葉であったが、水谷は意に介さない。
「否定しないってことは、してるんですね。やっぱり」
 そうして僕は、その言葉も否定できず、水谷の推論の正しさを自ら証明し
てしまった。僕は、していることを、していないと言い切ることはできな
い。
「恥ずかしがることないじゃないですか。恋人同士なら当たり前ですよ」
 そうだとしても、わざわざ人に言うことではないだろう。
「エッチって気持ち良いですか?」
 水谷の遠慮の無い質問は留まるところを知らない。僕は、一度彼女にうま
く遣り込められた体なので、半ば観念した。
「まあ、な」
 水谷は、へえと言ってにやにやしている。僕は、水谷がセックスを知らな
いはずはないと思った。無論それは憶測だが、水谷の表情、態度、仕草、そ
の他ことごとくからは、どうしても処女の匂いが感じられなかった。
「水谷はしたことないの?」
「ありませんよ! 相手がいないですもん」
 僕は考えた。考えて、やはり水谷は女色なのではなかろうかという考えに
再び行き着いた。水谷が処女だとは思われない。しかし本人はセックスをし
たことはないと言う。嘘をついているとすればそれまでだが、それが本当だ
とすると、僕の憶測が間違っていることになる。もし、同時に僕の憶測も正
しいと仮定すれば、処女でないのにセックスをしたことがないという、矛盾
が生まれる。しかし、水谷の言うのが、正確な意味でのセックスをしたこと
がない、ということだとすれば? つまり、女性同士のセックス、それは厳
密にはセックスとは言えないだろうが、それを経験しているとしたら、処女
の匂いが感じられなくてもおかしくはないのではないだろうか。処女でない
と言い切ってもいいのではないだろうか。そう考えれば、セックスをしたこ
とはないが処女でない、というのは矛盾ではなくなる。この考えが真実であ
るためには、水谷はレズビアンでなければならず、僕は、きっとそうなのだ
ろうと思った。
 どうして、これほどまでに水谷をレズにしたがっているのか、自分でもわ
からなかった。しかし、水谷の白井への接し方を見ると、どうしてもそれを
想像してしまい、頭から離れなかった。どんなことでも、水谷がレズである
という根拠に結び付けようとしていた。
 僕は考え事をしている中で、白井が水谷に胸を触られたことなどを思い出
し、それでようやく自分の使命を思い出した。考え事をしている場合ではな
い。その、水谷の過度の接触をやめさせなければならないのだ。
 ここまでの会話の間に、だいぶ走ってしまっていた。水谷の自宅の詳しい
場所は知らないが、そろそろ別の道になるのではないかと思われたので、す
ぐにそのことを言おうと思った。すると、
「白井先輩って、美人で優しくって、女の私から見ても憧れちゃうような人
ですよ。先輩は果報者ですね」
 と水谷が言ったので、しめたと思った。もともと、その辺りに談判を落と
すつもりだったのだから、その機を見過ごすはずはなかった。
「水谷は、しょっちゅうあいつにくっついてるよな」
「そう、ですね。何故だか、つい甘えたくなっちゃうんですよね」
 僕は、白井を慕ってくれるのは、恋人の僕としても嬉しい。が、くっつき
すぎるのは気になる。女といえども、恋人がべたべた触られるのは、心中穏
やかにはすまない。やらないで済むことならあまりやらないでほしい。とい
うことを、できるだけ優しい口調で、水谷の心が傷つかないように気にかけ
ながら話した。水谷は、はじめは笑っていたが、僕の真面目な口調に釣られ
たのか、だんだん顔が引き締まっていった。話し終えると、まず、
「すいませんでした」
 と言った。えらく素直なのが意外であった。平生の調子で混ぜっ返してく
るのではないかと予測していたので、拍子抜けの感さえあった。
「実は、私も先輩に悪いなっていう気はしてたんです。気を悪くしてないか
なって。でも、白井先輩って本当のお姉ちゃんみたいに優しくしてくれるか
ら、ついつい甘えちゃってたんです。これからは気をつけます。すみません
でした」
 僕は、自分のほうが大人気なくて、悪いという気がしてきてしまった。へ
どもどしながら、わかればいいんだと言うことしかできなかった。可愛い後
輩の純粋な心を汚している気さえした。
「あ。私はここで曲がります」
 ある交差点で水谷がそう言ったので、自転車を止めた。水谷はもういつも
のような笑顔であった。落ち込んでいないようなのが僕に安心を与えた。い
つもよりとりわけ明るい笑顔に見えた。
「気をつけてな」
 と僕が言うと、水谷は軽く頭を下げて、自らの自宅の方角へ走って行っ
た。体が小さいくせに大きな自転車に乗っているものだから、しきりに体を
動かして、やけに必死でこいでいるように見えて、その様が可愛らしかっ
た。
 目的は達したはずなのに、達成感は微塵もなく、煙を掴もうとして手を閉
じて、開けてみると何も無い時のような感じだけが残った。
 そのまま白井の見舞いへ行った。
 
2006/10/21 22:39:10(QbBuUfWh)
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