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1:黒い下着2の10
投稿者:
まさ
◆72/S7cCopg
合宿が終わって間も無く、ある一年生の男子部員が突然、退部すると言い
出した。コンクールを目前に控えているのにどうしたのかと訊くと、詳しい ことは言えないが、どうしても部活動を続けられない事情ができてしまった のだと答えた。数ヶ月とはいえ、せっかくここまでやってきたのだから、せ めてコンクールが終わるまではいないかと説得すると、渋々納得した。コン クールが終わると、そそくさと、逃げるように退部してしまった。なにをそ んなに急いで退部しなければならないのか、いぶかしく思ったが、人には、 本人にしかわからないことが色々あるものだと思った。 コンクールは銀賞に終わり、全国大会出場は果たせなかった。非常に残念 だったが、しかたない。僕らはそれで引退ということになった。これから は、大学受験ないし就職活動に専念しなければならない。僕は、将来どうし てもこれをやりたいという希望がまだなかったので、文系の普通の大学を志 望した。我が高校には、指定校推薦という、三年間の欠席または遅刻回数が 極めて少なく、素行が優秀であれば、学校の指定する大学へほぼ確実に入学 できる制度があった。指定されている大学の数はそう多くなく、定員も少な かったが、三年間無遅刻で、病欠が数日のみ、素行とやらも悪くなかった僕 は、それを受けることにした。案外、上首尾に合格できそうな気配があった ので、僕は進路に関して楽観的であった。白井は、音楽大学を志望した。将 来、音楽の先生になりたいと話していた。白井らしくていいと思った僕は、 全力で支援することを決めた。白井の実力ならきっと大丈夫だろうと思った が、指定校推薦でのほほんと進学できてしまいそうな僕と違って、受験戦争 を勝ち抜かなければならないので、息を抜くことはできなかった。 引退したのだから、部活動には出なくてもよかったが、僕は以上のような 理由で割りと暇があったし、白井も、部活で歌っていればある程度声の練習 になるからと言って、部活にはよく顔を出した。僕は、自分はいいが、白井 は、わざわざ水谷に接近するようなことをしなくてもいいのにと思った。ま た良からぬことが起こらねばいいがと心配した。が、それは取り越し苦労で 済んだので、幸いであった。水谷は、意外なほど白井へ接触しなかった。あ るいは、白井がそうなるように気を付けていたのかも知れない。実際、白井 の水谷への警戒は、時々目に見えてわかるほど顕著であった。周囲からすれ ば、突然そんなになったのは不思議なことであったろう。 白井は、水谷へのそういう態度以外は、以前と全く変わらない、明るい彼 女を友人らに見せていた。会話をしているところなどを見ても、女に強姦さ れた傷を心に負っているとは到底思われない表情をしていた。僕はそういう 彼女の強さに感嘆した。僕が彼女だったら、当分の間寝込んでいるであろう に、そういう風にできるのは、全く彼女の芯の強さのために違いなかった。 ところが、僕と二人になると、途端に弱くなった。以前より僕に気を遣うよ うになった。というより、顔色を窺っているようであった。前より放課後に 時間ができたので、勉強をしなければならないにも関わらず、やたらとセッ クスを求めてきた。僕は、彼女の傷を少しでも癒せるならと、なるべく彼女 の望みに応じるようにした。白井は、行為の最中、 「私の体は、俊くんだけのものだよ」 と口走ることが多くなった。そう言いたくなる心境は、理解できなくもな かった。また、そう言ってくれるのは、僕にとってはなによりも幸福なこと であった。そうあるべきはずであった。僕は、なんとなく、そういう白井の 態度が気に入らなかった。僕には、白井を責める気は少しもないのに、白井 の方がやたらと僕に気を遣っているのがいやだった。もっといつも通り、事 件のある前の白井でいてほしいと思った。無論、それは急にはできるはずの ない、無理な注文かも知れなかった。が、いつまで経っても、白井は、そう いう僕に遠慮をするような態度を変えないので、うんざりしてこないではな かった。そういう点で、僕と白井の気持ちはなかなか噛み合わずにいた。 そんなある日。僕はいつも通り部活に出て、白井は、受験のために少し前 から通い始めた、声楽の個人レッスンがあるために、先に帰った。部活に出 ている三年生は小数であった。部活の中心はもう二年生に移っており、僕ら 三年生はいわば隠居の身なのだから、あまり出しゃばらないように心掛け た。 練習は、まあ普通にして、帰ろうとした。昇降口に行くと、そこで偶然、 水谷に会った。僕は不意にいやな心持ちを感じた。それは当然である。女と はいえ、僕の恋人に性的暴行を働いた犯人なのだ。女だから捨て置くもの の、男だったらぶちのめしているところだ。僕は、顔を見るのもいやだか ら、なるべく避けるようにしていた。このときも、無視をして行こうとし た。しかし、水谷のほうがそれを許さなかった。 「先輩。一緒に帰りませんか?」 水谷は笑いながら、僕にはとっても卑屈に見える笑い方をしながら、そん なことを言った。どういう神経をしていたらそんなことが言えるのか、彼女 の人格、魂、生命、存在そのものを疑った。 「いやだ」 僕は邪険にした。それでも水谷は全く動じず、いやな笑みを絶やさなかっ た。 「あら。ひどいんですね。話したいことがあるのに」 と水谷は言った。話といえば、僕のほうにもないではなかった。すなわ ち、何故白井にそんなことをしたのか、その理由を問うてみたかった。が、 それよりも、もう関わりたくない気持ちが強かったので、それはせずにしま っていた。このとき、この機会にそれを問い質してみようかと考えた。しか し、一緒に帰るのは何としてもいやだった。その理由は、いちいち説明する までもなかろう。僕は水谷に、話ならここでしろと言った。水谷は相変わら ずにやにやしながら、口を開いた。 「最近、白井先輩、元気ないみたいですね」 僕は、矢庭に、ぶん殴りたい衝動に駆られた。 「お前のせいじゃないか!」 つい、大きな声を出してしまった。水谷は表情を変えない。僕は何とか心 を落ち着けようと、深く息をしながら、声をやや落として、 「お前は、何だって、あんなことを」 と言った。 「あんなこと? 金子先輩は、見てたわけじゃないでしょう?」 「由紀から聞いたに決まっているだろう。お前が、由紀にしたこと」 僕は興奮して、白井以外の人の前では、白井を下の名前で呼ばないように していることを忘れていた。それより僕は、水谷が何を言っているのか、何 を言おうとしているのか、要領を得なかった。すると水谷は、こんなことを 言い出した。 「やっぱり、白井先輩、それだけしか言わなかったんですね」 途端に、恐るべき戦慄を感じた。要領を得ないことに変わりはなかった。 が、その言葉には、僕の総身を震え上がらせるだけの、異様な威力があっ た。 「それはどういう意味だ」 僕の問いに水谷は答えなかった。ただ、果てしなく奥底のほうに、とてつ もなく邪悪な気配を秘めた眼を僕に向け、冷笑するばかりであった。 いつの間にか、水谷は立ち去っていた。僕は、追いかけることもできず に、立ち尽くしていた。心の内に、とても恐ろしい何かが接近してくる気配 を感じながら。
2006/10/26 22:31:01(IBo2g9/B)
投稿者:
(無名)
黒い下着番外編までで終われば良かったやんヮラ
06/10/27 08:30
(g54Xcs3K)
投稿者:
(無名)
お願いだからこれ以上書くのはやめてくれ。
パート2になったことで完全にこのサイトの他の小説と変わらなくなったよ。俺達はこんな話を期待して応援してたわけじゃないのに。パート1の印象が台なしだよ。
06/10/27 18:19
(UcMM0OzY)
投稿者:
まさき
毎回楽しみにしてます!イヤな奴らは読まなければいいだけでしょ?書き込まないだけでファンは沢山いると思うのでぜひ続けて下さい!!
06/10/28 00:17
(5Vl2qyNt)
投稿者:
ゅん
マヂ大ふぁンですがんばって!
06/11/15 15:52
(2J9uiqrN)
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