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1:黒い下着8
投稿者:
ま
◆72/S7cCopg
二月になった。僕は、都立高校一般入学試験を受験するため、志望校のF
高校へ向かった。交際を始めて以来、ほとんど行動をともにしてきた白井が そばにいないのが、少しつまらなかった。代わりに、同じくF高校を受験す る、我が校の同志たちが一緒であった。白井は、先月の推薦入試において、 見事合格していたのである。試験は日曜日に行われるから、学校はないが、 とうに合格したものがのこのこくっついてくるのは、他の者の気分を害する だろうということで、白井は応援の言葉だけを託して、あとは謹んで自宅で 祈っていてくれることになった。 「俊くんなら絶対に大丈夫だから。頑張ってね」 応援の言葉は頗る単純なものであったが、僕には絶大な威力があった。そ の言葉に応えなければならぬ。僕は気持ちを強くした。 白井ははじめ、推薦入試を受けたがらなかった。白井なら推薦での入学も 高確率で有り得ると信じていた僕は、当然、そのわけを聞いた。二人一緒に 合格できれば良いが、もし、自分だけが合格してしまったら、僕に悪いから だと言った。僕は、俺も見くびられたものだと心の内で苦笑したが、白井 の、自惚れといえばそうとれなくもない思惑は理解できた。実際、白井に比 べれば僕の合格率は遥かに低いと考えられたので、それには納得するしかな かった。けれども、可能性が高いのに受験しないのはあまりに勿体ないの で、僕は白井を説得した。推薦入試などは受かれば儲けたもの、例え俺だけ 落ちても、一般入試で合格するのだから、心配することはない。そう言う と、渋々ながら承諾した。怒らせさえしなければ、白井は僕に従順であっ た。一度、白井は僕に、 「俊くんはきっと亭主関白になるよね」 と言ったことがあった。僕の態度や言動に、厳然たるところがあるからだ という。そういう僕に接すると、逆らうことができなくなるのだという。白 井が、自分が僕の女房になるつもりで、そういうことを言っているのかわか らなかったが、そうだとしたら、それはどうだろうかと思った。僕の方で は、白井が本気になったら、絶対僕は彼女に逆らえない、最終的な決定権は 彼女にあると思っていた。とはいえ、普段、大人しくてよく言うことを聞い てくれるから、つい上からものを言ってしまうことはあるように思われた。 特に顕著だったのは、いつか、白井と二人でいるときに、どうにも性欲が昂 ぶってきて、射精をしなければ気がすまなくなったので、 「フェラチオをしてくれ」 とやや強い語調で口走ったことである。突然、命令口調で、高圧的に言わ れたので、白井は目を丸くして驚いていた。その顔を見て、僕はすぐに、し まったと思い、謝ろうとした。ところが白井は、はにかんだような顔に表情 を変えると、何故か、 「はい」 と丁寧な返事をして、僕に近寄り、跪いて、ズボンからちんこを取り出し て、それを口に含んだ。その刹那、僕の脳裏に、性処理奴隷、という言葉が 浮かんで、嫌になった。何かというと、そういう方向にばかり想像力を働か せる自分を、ぶちのめしたく思った。そんなのではない。彼女はそんなもの ではない。と必死になって頭の中で否定をした。しかし、僕が射精すると、 白井はそれを全部吸い取って、飲み込み、おどけた顔をして、 「これでよろしいですか?」 などと言うのだから、白井だって悪い。 話がだいぶ逸れた。僕ら二人はF高校の推薦入学試験を受験し、僕は落第 し、白井は合格した。成績の良し悪しを考えれば、妥当な結果であった。そ れに加え、僕は面接で激しく緊張してしまって、終わった後、何を聞かれ、 どう答えたのかほとんど覚えていない有様であった。それに対し白井は、 「ああ、すっごい緊張した!」 と終わった後の安堵感を満面に表しながらそう言いつつも、どういう道の りでここまで来たのか、志望動機は何か、我が校を見ての第一印象は何か、 我が校に入学したら何をしたいか、最近社会で起きた出来事で、最も関心を 持ったのは何か、と、質問されたことを全て言ってみせた。それにどう答え たのかも概ね記憶しているようであった。 「ありきたりなことばっかり言っちゃったから、駄目だと思う」 と言ってあっけらかんとしていた。それだけの余裕があったから、合格す ることが出来たのであろう。こういう場面での彼女の胆力、度胸の強さは、 男の僕を遥かに凌駕している。こういうところからも、僕は彼女には敵わぬ と思うのである。そうしてそれから、僕が亭主関白になるであろうという白 井の説も、これにて瓦解するのである。 我が校からF高校の推薦入試を受験したのは、僕と白井だけであった。二 人でF高校まで行って、帰ってきたわけだが、流石にそんな日にいちゃつく 気にはお互いならず、手も繋がずに歩いた。合格発表の日も同じであった。 その結果を見たとき、僕は、半ばそれを予想していたから、予想通りになっ たと思っただけのことで、多少は残念だったが、落ち込む気にはならなかっ た。合格した白井のほうが、ひどく落胆した。今にも泣きべそかきだしそう な顔であった。合格したのに泣くなんて、落ちた者に対して失礼極まりない だろうと思い、 「由紀! やったな、おめでとう!」 と言って祝ってやったが、しばらくの間白井の眉毛は下がりっぱなしであ った。 白井は、合格しても浮かれようとはせず、ずっと僕の勉強に付き合ってく れた。僕はそういう彼女がありがたかった。由紀のためにも絶対に合格しな くてはならぬ。白井が先に合格してくれたおかげで、僕は勉強に一層身が入 った。白井もそれを察して、セックスのおねだりを自分からは決してしなく なった。時々、欲情を堪えるためか、もぞもぞと内股を擦り合わせているこ とがあったが、それ以上のことはしなかった。勉強に関しては、いや、勉強 に関しても、白井のほうが上手だったから、わからないところは白井に聞い たりなどした。白井は僕の先生であった。しかし、以前は自分の勉強があっ たからいいが、他人の勉強を見ているだけというのは退屈なもので、勉強し ている僕の横ですやすや眠ってしまうことがあった。僕はそれに腹を立てる ことはなかった。むしろ、もう合格して、遊んでいたっていいはずのところ を、眠くなるまで付き合わせてしまって、申し訳ないという気がした。そう いうとき、僕は彼女を起こさないように気を付けながら、ベッドに移動させ てやった。自慢ではないが、僕はそれなりに腕力があるから、軽い白井を抱 きかかえるのは容易であった。ベッドに横になった白井の寝顔を見ている と、とても安らかな気持ちになれた。そっと口付けをすると、元気百倍、勉 強の意欲が増すのであった。 そうして僕は、戦地に赴く兵士の心境で、F高校に向かった。一度、自分 の学校に行き、先生たちに激励の言葉をもらってから、志望校の同じ者たち で一丸となって、行った。 F高校には推薦入試のときよりも多くの受験生たちが集まっていた。職員 の指示に従って試験会場に入る。席についてから、試験開始時間まで十分程 度の時間があったので、最後の復習をした。僕はどのような問題が出るのか 不安であった。問題を見た瞬間、まるで解らず、パニックに陥って、ますま すわけがわからなくなったらどうしようなどと考えた。僕はどうもこういう とき、悪い方向にばかり考えを広げるので、白井のように落ち着いているこ とが出来ない。白井のことを思い出して、一緒に頑張ってきたのだから大丈 夫。白井のためにも絶対に合格するのだ。と念じ、深呼吸をすると、少しは 落ち着いた。心に支えがあるというのが嬉しかった。 試験開始。先にざっと問題に目を通すと、僕の不安は杞憂だったことがわ かった。わかるのである。難しくないのである。僕は自信をもって解答欄を 埋めていった。一問や二問は、不覚にもど忘れなどして、自信を持てない問 題もあったが、解答欄は全て埋めた。どの科目も同じ手応えで問題を解いて いった。僕の学力が増したからというよりも、問題そのものが簡単だという 気がした。学校の定期テストと違って、出題範囲は遥かに広いが、その分浅 いという印象を受けた。教科書さえ読んでいれば解けそうな問題ばかりであ った。それだけに、僕の心には別の不安が生じた。僕がすらすらと問題を解 いていったのと同じように、他の受験生たちも容易に解答していったのでは ないかという不安であった。先の期末テストで、高得点を出しても成績が上 がらなかった如く、周りの受験生が僕同様、あるいはそれ以上の得点を出 し、そのために僕は合格者の定員から漏れるのではないかと心配した。しか し心配してもしかたなかった。手応えは確かにあったのだ。人事を尽くして 天命を待つというやつである。あとは合格を祈るのみであった。 白井に会うと、まず試験はどうだったか聞いてきたので、僕は、問題は簡 単だった。手応えはあった。四百点はとれているだろうと言った。四百点と は、五教科の合計点数のことである。つまり一教科平均八十点である。これ は、僕にしてはかなりの高得点である。 「すごい! それなら絶対大丈夫だよ!」 白井は満面の笑みを浮かべて喜んだ。僕のことを自分のことのように喜ん でくれるのが嬉しかった。しかし、僕は結果を見るまでは安心しきるわけに はいかなかった。とはいえ、試験は終了し、そのための勉強の必要はなくな ったので、僕らは気兼ねなく遊んだ。セックスもいっぱいした。コンドーム は、一箱ではすぐに足らなくなった。コンビニエンスストアで買ったが、二 日同じ店で買うのは恥ずかしかったので、わざわざ少し離れたところへ買い に行ったりなどした。このコンドームにかかる金も、僕らには馬鹿にならな かった。しかし、快楽と、安全と、白井のためには、欠かすことができなか った。 試験から数日後の合格発表日、僕はやはり志望校の同じ連中とF高校へ行 った。僕は不安になりながらも、あれだけ手応えがあったのだから、多分大 丈夫だろうと思っていた。が、やはり見てみるまではわからなかった。F高 校に着き、張り出されている合格者の受験番号が書かれた紙を眺め、自分の 番号を探した。あった。見つけた瞬間は、喜びというより、猛烈な安心を感 じた。ため息つかずにいられなかった。幸い、我が校の同志たちもみんな無 事合格した。誰か一人でも落ちたら、その人をどうにか慰めてやらずばなる まいなと考えていたので、その点でも安心した。 何よりもまず白井に報告したかったが、どうしてもその前に学校へ行っ て、先生に報告せねばならなかった。先生は、素直に祝福してくれた。格別 好きな人でなかったが、その時ばかりはなんとなく感傷的になり、お世話に なりましたと心の内で言った。 白井に報告すると、彼女は気違いみたいに喜んだ。僕にしがみついて、や たらと顔にキスをして、 「これでまた一緒にいられるね」 と言った。 三月になった。まだまだ気温は低かったが、どことなく春の空気を感じな いでもなかった。 その日は、合格発表の日に採寸した、F高校の制服が郵送で届くはずの日 であった。そのため、白井はやけに上機嫌であった。
2006/09/08 22:33:00(Is00sHFQ)
投稿者:
W210
◆CwESQHIYSc
いよいよ中学編も終わりそうですね。
そろそろ高校編に突入でしょうか。 これから先、どんな展開がどこまで続くのかとても楽しみです。 投稿は大変でしょうが、頑張ってください。 期待しています。
06/09/08 23:03
(yH/39dn.)
投稿者:
(無名)
◆KnFHojOWaA
この感じで長く続けて欲しい
06/09/09 08:22
(6Crtikz.)
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