駅前を発車したバスは、郊外の目的地までいいしばらく田んぼや畑の中を走っていくのだった。
登下校の子供たちの中に、ひときわ目立つ成人した女性の、たおやかな姿があった。
目がどうしても吊革につかまるその女性のほうに向いてしまうのだった。
とあるバス停で降車ボタンを押す。
それは、その女性と同じタイミングだった。
「としお君？」
えっ
一瞬どぎまぎしてしまう。
バス停でバスをやり過ごすと、そこで降りたのは、叔母のみおりさんと僕だけだった。
何年かぶりで会うみおりさんは、すっかり主婦が板についたようだった。
「来るなら一言言ってくれたらよかったのに」
その日はたまたま小用があって、これから住むことになる下宿屋の確認に来たのだった。
大学に入ったら、と考えると、田舎から出ていくことでもあるし、知り合いがいるならそこから通わせてもらおうか。
そこで、たまたま候補に挙がったのが、叔母のみおりさんが大家をやっている件の下宿屋だった。
「何にも用意してないわ」
気をつかっていただいて、申し訳ない。
こっちも手ぶらで来てしまった。
バス停からすぐのところにその下宿屋はあった。
「お帰り」
旦那の男が声をかける。
「ああ、その子か。新しい下宿人は」
別にどうということもなく、男は散歩に出かける。
鉄製の外階段を下りてくる男。
下屋の下で暮らすビーグル犬が吠える。
それは、下宿人であろうか。
こちらを見る風でもなくそばを通り過ぎる。
そこへ黄色い帽子をかぶった赤いランドセルの少女が帰ってきた。
ポピィーちゃんと呼ばれる犬が嬉しそうにしっぽを振った。
二階の東南の向きの角部屋で、叔母さんは愛嬌がよかった。
黒いニットに紺のデニム。
男好きのする体つきだった。
「ここは先客がいるの。この隣の部屋がいいわね」
よくわからないが、ともかく僕はここから四年間大学に通うことになったのだった。
都会の暮らしは味気ない。
受験勉強を経た大学生生活は、平々凡々順風満帆に過ぎていく。
コンビニで買うエロ雑誌だけが楽しみの暗い学生生活だった。
ある日、何かの気分転換になろうかと、通販でビニール製の抱き人形を買った。
口をぱっくりと開けており、股間にはローターが入るようになっているのだ。
覆いかぶさり、腰を動かす。
ローターの振動が伝わる。
ふいに、それはやってくる。
しばらく下半身の震えが止まらなかった。
部屋には押入れがあった。
抱き人形は封印され、押し入れの中に放置されたのである。
番犬のポチが吠えた。
向かいの部屋の下宿人が帰ってきたに違いなかった。
「ポチ、ポチ」
男は吠える犬に満面の笑みでいなそうとしたが、犬は吠えたてるばかり。
そうした喧騒が日常だった。
「おい、おまえ」
旦那の声がした。
何かまずいことでもやらかしたのかそれ以来向かいの部屋の男は戻ってこなかった。
「トビー、トビー」
旦那は犬をトビーと呼んだ。
僕は犬に吠えられることはなかった。
昼も薄暗い下屋の下で一度間違えたのか吠えられることがあったが、すぐにすまないと言わんばかりに詫びを入れたのである。
部屋は南京錠。開けようと思えば簡単に開けられた。
はっきりとはしないが、どうも誰かに開けられているようだ。
押し入れの抱き人形のことはすっかり忘れていた。
そうしたなかとうとう部屋の鍵が開いたまま、帰ってきた僕を迎え入れたのである。
戸を開けると、みおりさんが仰向けになって気絶していた。
薄目を開け半開きの口からはすやすやと寝息が聞こえる。
押し入れはあけ放たれ中で抱き人形がぱっくりと口を開けていた。
憧れの叔母さんのあられもない姿に僕は動転し、しばらくたち尽くした。
穿いていたスパッツを脱がせ、下着も下した。
足を開き、タマランチ開帳。
ぱっくりと開いた淫肉が濡れそぼって未知の物体の挿入を誘っていたのである。
拝むようにしてインサート。
その時脳裏にはバスの吊革につかまるみおりさんの姿や、愛嬌のある笑顔が浮かんだ。
そして一瞬意識が飛ぶ。
みおりさんの膣内にごぼごぼと湧いてきた濁液を思う存分注ぎ込んでいたのである。
ズボンのチャックを上げると男は真昼の街に飛び出した。
男の行方は杳として知れなかった。

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