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1:池袋の映画館の出来事
投稿者:
Y香
――上野の成人映画館で触られるんだから、池袋でも触られるはずだ! そんな私の傲慢さは、映画館に入った直後、粉々に打ち砕かれることとなる。 映画館の入り口――自動ドアが開いた瞬間から、そこは上野とはまったく違っていたのだ。 (人が……いない?) 上野であれば、映画上映中であろうとロビーに人がある程度いて、歓談があちらこちらから聞こえてくるのが常だった。 しかし、池袋の映画館のロビーには、ソファが置いてあるにもかかわらず、ひとっこひとりいなかった。もう何十年も人が立ち入っていない廃墟のような不気味さすら漂ってくる。 予定外の状況に面食らった私は、ひとまずお手洗いに行き、自分の心を落ちつけようとした。映画館に入る直前に用を足したばかりだ。尿意などない。 お手洗いから出、ロビーに戻ると、シアターへの扉が開け放たれていた。シアター内をのぞきこむと、中は明るい。映画の上映が終わったらしい。 「あの……中へ入ってもいいんですか?」 「構いませんよ」 受け付けの男は、事務的に答えた。その冷たさすら感じる口調におじ気づきながらも、意を決してシアター内に足を踏みいれた。 (誰も、私を見ていないんだけど……) シアター内には、まばらとは言え、20人程度の客がいる。 ――にもかかわらず、だ。その誰ひとりとして私を見ていないのだ。 (こんなにも上野と違うなんて……) 上野であれば、シアター内に入った瞬間、無数の針のような突き刺さる視線を感じる。 それが今は……。 (目立たない席に行こう……) 疎外感。間違えて隣のクラスに入ってしまった時のような、肩を縮めたくなる感覚。私は一番後ろの列の、左から二番目の座席へと腰をおろした。 (早く映画が始まらないかな) 映画が始まって暗くなれば、お触りが始まるかもしれない。私はそんな淡い期待を抱きながら、映画の開始を待ち望んだ。 数分も経つと、シアター内の照明が落ち、スクリーンのカーテンが開いた。映画の始まりである。 「なんだよ、おまえ寝てるのかよ」 映画は裸で行為をしている男女の、男が愚痴を言うシーンから始まった。挿入中に女が寝てしまったら、確かに文句のひとつも言いたくなるだろう。 映画開始から一分、二分……何も起こらない。上野であれば、私が座席についた瞬間に、客たちが私の周りにこぞって移動してくるのだが、ここ池袋では、誰も席を移動しなかった。いや、ひとりの男性――ロマンスグレーの髪。初老のようだ――だけは、私の斜め前の席に移動をした。しかしながら、特に私に興味はないようで、私を一瞥したあとスクリーンに顔を向けてしまった。 (これって、まじで触られないんじゃ……) 不安と悲しみ――私の頭の中を占めるものはそれだけだ。 「先生、お願い、奥さんと別れて!」 スクリーンでは、不倫をしているらしい男女の交わり。私は、誰からも見向きもされない悲痛な現実から目を背けるために、まったく興味のない映画を見ざる得なかった。 自己防衛本能であろうか。 悲しさが一定の度合いを越えると、人間なぜか愉快になってくるものである。無理やり楽しいことを考えた。 (そうだ! 「池袋の成人映画館に行ったけど、誰からも触られなかった(TT)」とツイートすれば、受けるかも?!) きっと笑いが取れる! その希望だけが、今の私――絶望的な状況の中にいる――の唯一の救いだった。 「あん、あん、気持ち、いいッ!」 男女の激しいセックスがスクリーンに映し出されているそのときだった。 (ん……私、見られてる?) 斜め右前にいた初老の男性が、後ろに振り向き、私の顔をチラチラと見てくるのだ。 (なんだろう……) その後映画は話が進み、何回か濡れ場が登場した。そのたびにその男性は様子をうかがうように私を見てきた。 (私が濡れ場を見たときの反応を確かめようとしているんだよね……?) 要するに私に興味はあるようだ。 誰からも関心を持たれなかったさきほどまでの状況からすれば、一転して、地獄から天国である。 (けど……) 何もされない。ただ見つめてくるだけで、触ろうとはしてこない。 (これじゃ蛇の生殺しだよ) 期待させるだけさせて、何もしてこないとは。結局男は、それ以上何もしてこようとはしなかった。ため息をつき、私は再びスクリーンを見つめた。 「何しようとしてんだよ」 映画開始からすでに20分以上が経過した頃にそれは起こった。 私の席の隣の隣――すぐ隣は空席だ――に座っていた男性と、その向こう側にいる男性がなにやら揉めていた。 「お姉さんの隣に移動しようと思って。お姉さん、隣に座っていい?」 話しかけられたのは私だ。 (私の隣に座りたいってことは……要するに……) 私を触りたいということだ。 (座って、座って! もう絶対座って!) ようやく霧が晴れたと思った。頬がゆるむ。 勢いよくうなずきたい気持ちを抑え――いかにも触られにきたと思われるのは恥ずかしい――、ゆっくりと、だが深く私はうなずいて見せた。 現実は無情だった。 「いや、おまえこっち来んなよ。そっち座っとけ」 なんと、私の隣の隣にいた男性が彼の行動を制してしまったのだ。彼は結局私の隣にはやってこなかった。 (なにそれ……せっかく触ってもらえると思ったのに……) 下を向いてうなだれたい気分だったが、私はまた見たくもない映画の続きを見るため、スクリーンに顔を向けた。もう泣きそうだった。 それから数分といったときだった。 隣の隣にいた男性が、ふいに立ち上がり、私のすぐ隣の席にどっかりと腰を下ろしたのだ。彼の右腕と私の左腕は、今にもふれ合いそうなぐらいの距離にある。 (こ、これって……) 胸が大きくドクンと鳴った。その直後、男性は私の腕に自分の右腕をゆっくりと当ててきた。それから私の反応を探るように、肘で私の腕のいろいろな場所をつついたり、二の腕を密着させてきたりした。 (ようやくだぁ……) 映画開始から30分は経過していたと思う。男性は今度は手のひらで私の腕を触りはじめた。痴漢のような手つきだ。 (良かった、やっと触ってもらえるんだぁ) このときは興奮というより、安堵が勝っていた。 ――が。 「あ……」 男性の手が私の胸に伸び、ゆっくりとそれを揉みだした。優しく優しく、包み込むようにゆっくりと。服ごしだが、男性の手の体温が私に伝わってくる。 「んん……っ」 ようやく私の中に興奮が生まれはじめた。 「あ、ダメ……」 男性は私の前開きのトップスのボタンを、ひとつひとつ外してゆく。胸があらわになり、冷房のひんやりとした空気が素肌にふれ、私はぶるっと体を震わせた。 「あ……!」 ふと周りを見渡すと、数人の客たちが、私の席の周りに移動をしていた。乱暴は上野の成人映画館の客たちとは違い、紳士的なまでにゆっくりと、私の体の至るところに手を伸ばす。気が付くとブラジャーは下にずらされ、私は両方の乳首を生で別々の男性からいじられていた。 「いや……」 下着の中に手が入ってきて、クリトリスを刺激する。されるがままに、しばらくの間性器をいじられていた。 (きもち、いい……もっと触ってほしい……) 私の願いが通じたようだ。右隣りにいた男性が、私の足から下着をはぎとった。 (見ないで……) 10人ほどの男性たちに、何もつけていない下半身を見つめられていた。 しかも、 (え……懐中電灯?) 前の席にいた男性が懐中電灯を取り出し、私の局部を照らしたのだ。 「おお……」 感心するような声があがる。秘部を明かりの下で凝視され、私は脳が沸騰するような興奮を覚えていた。 「んあっ」 指が膣内に挿入される。卑猥な水音が響く。その音を聞くと、一層興奮がたかまり、さらに愛液があふれだしてゆく。水音はさらに激しさを増していた。 クリトリスにはさらに別の手が伸びてきて、コリコリと刺激が与えられる。膣とクリトリスを同時に刺激されるのが私は大好きだった。 右隣の男性が、私から手を引いた。疑問に思っていると、彼は自分のペニスをズボンから取り出した。私の手を取り、彼の下半身へと導く。彼のものはすでに硬くなっていた。彼は私の手の上から自分の手を重ね、上下にそれを動かした。しごいてくれということだろう。私が彼のものをしごきだすと、彼は手を離し、再び私の乳房を揉んだ。 左隣の男性が一部始終を見ていたようだ。 彼も自分のペニスをズボンから取り出し、私の手をそこに導いた。初老に近いからだろうか。彼のものは勃起をしていなかった。少し上下にしごいてみると、じょじょに硬さをもっていった。 我ながらすごい痴態だと思った。 乳房、膣、クリトリス、すべてが凌辱されているうえに、右手、左手にはそれぞれペニスが握らされている。そんな非日常的な光景が、この成人映画館では当たり前のように行われているのだ。だから私はここが好きだった。 (もう疲れた……) 数十分と体を弄ばれていたので、脳も体も限界を迎えていた。まくられていたスカートをおろし、ずらされていたブラジャーを元に整えようとすると、男性たちは意図を察してくれたようで、私から手を引いていった。トップスのボタンを閉めおわる頃には、私の周りに集まっていた男性たちは、映画館の自分の元いたそれぞれの座席に戻っていった。 上野であれば、もう少し私に執着を見せるのだが、池袋ではあっさりしたものだった。 (さみしいなあ) などと思ってしまう自分に苦笑をする。 「もう帰っちゃうの?」 「はい、帰ります。ありがとうございました」 私は隣にいた男に礼を言い、映画館をあとにした
2023/07/13 14:30:28(kXnCZmGK)
上野オークラに来るときはご連絡ください
23/07/13 15:06
(WsVWdpmm)
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