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1:密かな楽しみ43~孝史と香奈~
投稿者:
瀬名
年が明け、短い冬休みが終わった。
あの日以来、香奈と中村は毎日のように会い、恋人同士の時間を楽しんだ。 映画を見て、買い物に行き、散歩をして、図書館に行き、互いの部屋で過ごす。 中村は優しかった。 優しすぎるくらいに香奈に接した。 香奈にとっては夢のような幸せな時間だった。 叶うはずのない願いだった筈が、振り返れば中村が側にいて優しく笑っている。 手を繋ぎ、腕を組み、肩を寄せ合う事が出来る。 ただひとつだけ、香奈には気掛かりな事があった。 正確に言えば、解っているが考えないようにしている事。 中村は、一度も「好き」だとか「愛している」という言葉を香奈に向けて言ったことがない。 香奈には解っている。 自分が中村を強引な手段で手に入れた事を。 中村は、まだ自分を本気で好きになっていない事を。 『それでもいい。中村君は、あたしの彼氏。』 そう強く心に念じて、もうその事を考えないようにしていた。 自分を誤魔化していた。 そして、会う度に自分を求めてくる中村に応え続けた。 何回もセックスをした。 中村の部屋で、自分の部屋で。 その為に下着も新しい物を買った。 中村は優しく丁寧に抱いてくれた。 時間をかけて愛撫してくれた。 香奈も中村を一生懸命愛撫した。 自分を求める中村を見るとき、幸せを感じた。 しかし、絶頂を迎える事は出来なかった。 もどかしい感覚だけが残り、発情した体は火照り続けた。 原因は解っている。 神村の巧みな指使いや舌によって抱かれ続けた香奈には、中村のセックスは味気ない物だった。 そして、神村の太く長いペニスに慣れた香奈の性器には、中村のペニスは小さすぎた。 事実、中村のペニスのサイズは標準よりも小さかった。 中村とのセックスに快感を期待した分、体の疼きは増して行く一方、その疼きを満足させる事は出来なかった。 だからオナニーはやめられなかった。 中村と交わった日は特に激しいオナニーをした。 あの、目の前を白く染めていく快感を求め、狂ったように性器を弄り、デオドランドスプレーの缶をも使うようになった。 香奈の性欲は日々膨れ上がる一方だった───。 「あ~あ、冬休みなんてあっという間だよ。1ヶ月くらい休みにしてくれないかなぁ。かなりダルいんだけど。」 体育館での始業式が終わり、教室へ戻る階段を登りながら、聡美が怠そうに言った。 「あぁもう、疲れた。階段もエレベーターかエスカレーターにしてくんないかなぁ。」 聡美のボヤキを半ば呆れ顔で聞いていた香奈は、ふと目の前を通り過ぎていく生徒を見て驚き、足を止めた。 『・・・紗・・耶・・香!?』 茫然と立ち尽くす香奈の横を一度も目を合わせる事無く通り過ぎていく紗耶香。 「えっ!?紗耶香?紗耶香だったよね!?ねぇ香奈!?おーい!紗耶香!学校出てきたの!?心配してたんだから!?ちょっ!待ってよ!?待ってって!紗耶香ぁ!!!」 聡美は目をギョロギョロさせて驚き、慌てて紗耶香の後を追って階段を駆け下りていった。 香奈は、階段を駆け上がると早足で一直線に教室に戻り、席に座った。 『紗耶香が学校に出て来た・・・。どんな顔して会えばいいの・・?直接顔合わせて話すなんて出来ないよ!それに・・・中村君!中村君は!?』 香奈は後ろを振り返った。 教室の一番後ろの席に座っていた中村は、横にいる住田と話している。 『多分、まだ気付いてないんだ・・。でも・・すぐ解っちゃう事だよね・・・。』 そう心の中で呟いた時、未だに紗耶香の影に怯える自分がいる事に気付いた。 『あたしは・・中村君の彼女・・中村君はあたしの彼氏・・あたし達、付き合ってるんだよ?なにも怖がらなくていいんだよ・・・。』 香奈は両手を膝の上に置き、目を瞑って自分自身に言い聞かせた。 奥歯を噛み締め、必要以上に肩に力が入っている。 背中が痛い。 香奈は大きく深呼吸すると、立ち上がり、中村のいる席へ歩いていった。 「中村君、今日さ、部活休みでしょ?帰りにケーキ食べに行かない?」 香奈は、平静を振る舞いながらにこやかに話しかけた。 「ん?ああ、そう・・・。」 中村は途中まで言い掛けると急に立ち上がり、香奈の手を引っ張って教室から連れ出した。 階段の踊場まで来ると、中村は振り返り、困ったような顔をして香奈に言った。 「あのさ・・住田にまだ言ってないんだよ・・俺ら付き合ってるってさ。知ってるだろ?アイツお前の事好きなんだよ。」 「え・・あ・・ごめん・・なさい。あたし・・その・・考えてなくて・・。」 「アイツに気づかれる前にさ、俺から言うからさ、教室ではいつものようにしてくんない?」 「・・うん・・わかった・・・でも・・いつ言うの?」 「え?・・ああ、そうだな・・明日さ、部活が終わってから言うよ。俺、アイツとは一番仲良いしさ、友達でいたいし、傷付けたくないんだよ。」 「・・うん・・そうだね・・。」 香奈は浅はかだった自分の行いを反省しながら、俯き返事をした。 その時、香奈を呼ぶ声が聞こえた。聡美が大声を出しながら階段を駆け上がってきた。 「ねぇ!なんで一緒に来ないのよ!紗耶香来てたんだよ!」 聡美が言ったその言葉に中村の表情が一瞬変化したのを香奈は見逃さなかった。 「やっぱり、あんた達ケンカしてるの?紗耶香と話したんだけど、なんか・・そっけないって言うか・・変だもん。」 「・・ゴメン聡美。別にケンカしてる訳じゃ・・無いんだけど・・ちょっと・・ね。」 香奈は聡美を上目遣いに見ながらおどおどと言い訳をした。 「まぁ・・アンタ達二人の話だからさ、アタシにはワカンナいけど・・。せっかく久し振りに紗耶香と会えたのになぁ・・なんか・・ツラいな。」 さっぱりしない様子の聡美の手を掴み、香奈達は教室へ戻った。 ホームルームが終わり、帰りの支度を終えた香奈は中村をチラリと見た。 中村は住田と話している。 笑っている。 『なんだか、アタシ・・一人で空回りしてるみたい。・・バカみたいじゃん。』 何に腹が立つのかは解らないが苛々が募る。 香奈はそのまま教室を出ると、一人で校門を出た。 『・・折角、学校が始まって中村君と毎日一緒に居れるのに・・。』 胸の中がモヤモヤしたまま、俯いて坂道を下る。 ふと、顔を上げると香奈の前を歩く生徒がいた。 その後ろ姿を見た香奈には、その生徒が誰だかすぐに解った。 『紗耶香!!』 香奈が立ち止まったと同時に紗耶香は歩みを止め振り返った。 「久し振り・・・香奈。」
2009/08/05 19:59:04(KTVwV5Mi)
投稿者:
りりこ
◆dV1mQWt44k
あー いつもいい所で終わってしまう 続きが読みたいです また、どうか更新をお願いします
09/08/06 03:51
(s9MkXu9P)
投稿者:
ハル
続き気になります
09/08/06 11:56
(xMVUCFtw)
投稿者:
瀬名
残念ながら、このサイトで続ける事が出来なくなりました。
ホントに申し訳なく、また御迷惑をおかけしました。 どこかのブログで執筆を続けようとは思っています。 その時はここにお知らせします。 申し訳ありません。
09/08/12 20:39
(EnbQi3Tj)
投稿者:
みなみ
◆S5JAQCd/Ck
いつもありがとうございますすごく楽しみにしてますなので、続きの場所が決まったらお知らせくださいね楽しみにしてます
09/08/13 00:07
(Zfrjb/WU)
全部読みました。凄く続きが読みたいです!楽しみにしてます。
09/08/16 11:16
(upHFR17U)
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