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1:熱病
きっと暑さのせいだったんだ・・・。
あの日は朝の準備に手間取って、 社長に厭味を言われた。 仕事用の軽トラはエアコンがちっとも効かないし、 いつもの販売機のお気に入りのコーヒーは売り切れていた。 そんなささいなことがきっと、 俺の歯車の一コマを、微妙に狂わせた。 噛み合わせの狂った回転運動は ガリガリと音を立て、次々に連鎖し、 予想もし得なかった出力軸へと俺を導いた・・・。 きっと、暑さのせいだったんだ・・・。 ------------------------------------------------------ あの日、あの場所の蒸し暑さが、 私を狂わせたのです。 その場を支配するような、圧倒的な湿度。 隠すことのできない、お互いの息づかい、体臭・・・。 わずかばかりの、 無防備な布地に包まれただけの夏の肌が、 表の私の意識を私から遠ざけ、 裏の私が心の「芯」で望んでいるものを発露させた。 あの日、あの場所の蒸し暑さが、 私を狂わせたのです。 ------------------------------------------------------ マリが住んでいたのは、都心から北へ電車で45分ほど、 隣県の中核都市であるS市の外れにあるアパートだった。 マリは28歳、 2年前に職場の同僚と、平凡な結婚をした。 子供はまだいない。 夫は平凡ゆえに、マリに専業主婦になることを望んだ。 今までの仕事にも、それから将来の目標も、 特段希望のなかったマリは、その提案を受け入れ、 結婚と同時に仕事をやめ、今日に至っている。 マリもまた、平凡な女だったのだ。 アパートの部屋は広くも狭くもない2DKで、 二人だけの暮らしには十分広かったが、 子供ができれば手狭になることは容易に知れた。 もっとも夫一人の稼ぎでは、 都心から離れたこのあたりで、 この程度の広さの住まいが限界だった。 だから意識的に、マリ近所の婦人科から、 ピルを処方してもらっていた。 マリたち夫婦の住戸は、1階の一番奥で、 どこからともなく微かに漂ってくる下水の匂いと、 無駄に昼間陽射しの入る風呂場が、 マリには少し不満だった。 瀟洒なサイディング貼りの建物は、 しかし軽量鉄骨構造ゆえ、 隣や上階の振動や物音が伝わってくる、 それなりの建物でしかなく、 周辺にはまだ農地が広がり、 夏の夜にはたくさんの昆虫たちが、 網戸に張り付くようなところだった。 だからマリには此処が「我が家」という感覚はなく、 新婚当初の甘い一定期間を過ぎた後は、 充足感のない、退屈な日々を過ごしていた。 最近ではその退屈さにも慣れてしまい、 ただ慣性に任せて、毎日を送っているような、 そんな夏の日の出来事だった。 その日、マリは夫を送り出した後、 いつものように洗濯機を回すと、 窓を開け放ち、掃除機をかける。 午前中だというのに、太陽は暴力的な熱線を投げかけ、 眼前に広がる田んぼからは、夏の匂いが立ち昇ってくる。 むせ返るようなその空気に押し戻されたマリは、 ソファに横になってテレビのスイッチを入れた。 暦の上では立秋を過ぎたというのに、 既に30度を超える暑さに、体のだるさを覚えながら、 退屈なワイドショーの芸能レポートを聞いているうち、 マリはつかの間、眠りに落ちていってしまった。 激しい渇きに目を覚ますと、すでに時計はお昼近くだった。 全身に噴き出した汗が、肌を覆っている。 部屋着専用にしてしまった、 くたびれかけた薄い生地の花柄のワンピースは、 汗に濡れて肌に張り付いていた。 マリはシャワーを浴びようと浴室に向かった。 ドアを開けると、むっとした熱気が漂っている。 真上に近い太陽は、しかし午前中たっぷり、 この浴室に陽射しを差し入れ、温度を上げていたのだ。 マリは換気扇を回したまま、 湯沸かし器のスイッチを入れて、 とりあえず顔を洗おうと、脱衣場の洗面台の蛇口を捻った。 おかしかった。 いつもなら30秒ほどでお湯が出てくるはずなのに、 この日はいつまでたっても、 やる気のないぬるい水が出続けるだけだった。 ふと湯沸かし器のスイッチに目をやると、 見慣れないランプが点滅している。 故障だと理解するのに時間はかからなかった。 すぐにでも汗を流したかったマリは、 即刻キッチンにとって返し、電話台の下を探ってみる。 雑多に投げ込まれたピザ屋のメニューや郵便物に混じって、 「水まわり110番」と書かれたカードが見つかった。 「お風呂やトイレ・台所、水まわりのことで困ったときは24時間対応しま す。」 の文字とともに、フリーダイアルの数字が並ぶ。 マリは躊躇なくダイアルし、住所と用件を告げた。 ------------------------------------------------------ 水落工務店ではちょうど、 健二が準備を終えて仕事に出ようとしているところだった。 この日は頼んでいたはずの資材が見当たらず、 朝から仕事に出ることができなかった。 結局のところ、健二の発注の仕方が悪く、 朝一番の配達が昼前にずれ込んでしまったのが原因だった。 地元の工業高校をやっとの思いでなんとか卒業し、 知り合いの口利きで、どうにかこの工務店に雇ってもらって3年。 仕事は一通り覚えたとはいえ、 要領が悪く、ミスが多く、 言われたことをこなすのがやっとの健二は、 いつも社長を苛つかせた。 この日も2時間近くを無駄に費やしたことで、 社長からはグチグチと荷物が届くまで厭味を言われ続けた。 おまけにこの日は、資材が届いたところで、 あらかじめ決まっている仕事はなかったのだ。 エアコンの効かない軽トラックで、 音の割れかけたテープをエンドレスでがなり立てながら、 ゆっくりと市内を周回する。 一番嫌な仕事が待っているはずだった。 何しろエアコンが効かないのに、 風が抜けていくような速度で走れないばかりか、 全開にした窓からは、割れ鐘のようなテープの騒音が、 容赦なく浴びせられるのだ。 だから、出かける直前に電話がなったとき、 もうエンジンをかけて乗り込んでいた健二は、 社長がその電話を終わるまで、出発するのを待っていた。 目的の客があれば、少なくともそこまでは普通に走っていける。 それだけでも大きな違いだった。 「おい、仕事だ。湯沸かし器の不調だとさ。」 社長が不機嫌そうに殴り書きのメモを投げつける。 健二はそれを受け取り、地図で場所を確認すると、 社長にわからないように小さく舌打ちをして車を出した。 国道に出る手前の小さなタバコ屋の店先で、 健二はいつも車を止めた。 ささやかな贅沢と言うほどのことでさえもないが、 仕事に向かう健二は、いつも此処の自動販売機で、 お気に入りの缶コーヒーを買うのだ。 しかしこの日は、異様に暑かった気温のせいか、 それとも出遅れてしまった出発のせいか、 いつも健二が楽しみにしていた、 無糖ブラックの缶コーヒーが売り切れていた。 ボタンの下の赤い2文字を見ながら、 健二はさっきよりはっきりと、大きく舌打ちをした。 ------------------------------------------------------ 「ごめんください。」 およそやる気のない声とともに、 健二は目指すアパートの呼び鈴を押した。 電話をした後、コードレスの受話器を持ったまま、 しばらくソファで放心したようになっていたマリは、 その声で我に返って玄関を開けた。 あまり清潔そうでない、作業服姿の青年が立っていた。 ビニールレザーの軽トラのシートは、一切の汗を吸わず、 健二の腋や背中に、大きな汗染みを作り出していた。 もっとも清潔でない、という点では、 マリもあまり変わりはなかった。 昨夜から分泌した汗や体臭を、肌に纏ったまま、 健二を迎え入れたのだから・・・。 「こっちです。お願いします。」 健二が玄関を入って、マリの後について風呂場に向かう。 「こちらです。」 風呂場の入り口で、マリがドアを開け、健二と入れ替わる。 その瞬間、 マリは健二の匂いを、 健二はマリの匂いを、 確かに感じた。 健二は浴槽の上の風呂場の窓を開け、 身を乗り出すように半身を外に出した。 風呂用の湯沸かし器は、窓のすぐ横についている。 通常は外から点検・修理する構造だが、 マリのアパートの敷地に張り巡らされたブロック塀と、 湯沸かし器の隙間はほんの20センチくらいしかなく、 おまけに夏草が生い茂っていた。 「この窓を使って、室内側から修理してもいいですか?」 聞かれても、そうするしかないのだろうから、 マリは「はい」と返事をするしかなかった。 健二が持ち込んだ工具箱を浴槽の中に置き、 留め金をはずして箱を開く。 中から工具を選ぼうとしゃがみこむと、 一段と湿度と熱気が高まったように感じて、 健二の身体から新たな汗が噴き出した。 「暑いですよね、ちょっと待っていてください。」 マリは居間から団扇を持ってくると、 浴槽にしゃがんで工具を選んでいる健二を扇いだ。 上から扇ぐのは何か失礼な気がして、 健二と同じ高さになるよう、洗い場にしゃがんで、 団扇を動かした。 「すいません、どうせ汗だくになるんで、気を使わないでください。」 幾つかの工具を選り分けていた健二が、 そう言いながら、顔をあげてマリを見た。 ズキン、、、とした感覚が、健二の脊椎を走った。 短めだったマリのワンピースは、 しゃがんだことでさらにマリを露にしていた。 着古された柔らかな生地は、尻の側で垂れ下がって、 マリの股間の下半分を隠していなかった。 健二の視線が固定される・・・。 今度はマリの脊椎に、同じ感覚が走った。 見られた・・・見られた・・・。 咄嗟にマリは、今穿いている下着を頭の中で確認した。 何の変哲もない、少しのレースとリボンをあしらった、 白の木綿の下着・・・。 でも、あの明るい風呂場で、 男の目を射たであろう、白・・・。 息苦しいほどの熱気、 纏わり付くような湿気、 お互いの身体から立ち昇る匂い・・・。 マリは少し目が眩み、バランスを崩した。 片方の足が開いて、かろうじてタイルの床に踏ん張る。 合わさった太腿に隠れて、下半分しか見えなかったそこが、 一瞬露わになる。 慌ててマリはワンピースを押し下げ、その隙間を覆い隠す。 実際には一瞬だったが、 2人にとっては奇妙に長い沈黙が流れた。 気まずい一瞬を断ち切るように、 健二は立ち上がり、仕事に取り掛かる。 半身を窓の外に出し、器用に手を動かしながら、 湯沸かし器のカバーを外していく。 健二の腕が、伸びたり戻ったり動くたびに、 作業服の腋の汗染みが形を変えていく。 窓の外へと身を伸ばすたびに、 ズボンの股間の生地が張りつめ、 男の膨らみの形を連想させた。 マリはしゃがんだ姿勢のまま、 その光景を痺れたように眺めていた。 頭の中の回路がどこか、狭窄してしまったような、 奇妙な痺れ。 その痺れは脊椎を伝わり、下半身に降りてきて、 「おんな」の別の「芯」に信号を発した。 マリの股間に、熱いものが溢れ出る気配。 いきなり溢れるのではなく、 マリ自身の奥深く、密やかに分泌され、貯留され、 その後、マリの理性や自制心を一気に決壊させるように、 マリを包んでいる布地の裏に、夥しく溢れ出た。 ゴクリ・・・と唾を飲み込んだマリ。 自分の変化を気付かれたのではないかと男を見直す。 健二は作業に専念していた。 相変わらず汗染みの形を移ろわせ、 湯沸かし器と格闘していた。 気付いていない・・・。 『気付いてほしいの・・・?』 突然、痺れた頭に別の「芯」が問いかけた。 マリは愕然と息を呑む。 『気付いてほしかったら・・・。』 『もっと漏らさないとわからないよ・・・。』 体温が上がり、体臭が高まるような感じがした。 思わず身を捩った太腿の付け根が、 クチュリ・・・ と音を立てた。 「奥さん、コレ。」 「種火点火スイッチのコンデンサーがパンクしてます。」 健二が呼びかけると、マリは我に帰ったように覚醒し、 健二が指先でつまんでいる小さな部品を見た。 とても小さな、アルミの筒のような部品だった。 指は・・・、 油と煤汚れにまみれて、黒く薄汚れていた。 部品だけ見ればいいのに、マリは指を見た。 若い指、汚れた指、ささくれた指、無作法な指・・・。 部品より遥かに長い時間、マリは指を見ていた。 「パーツあるんで、交換しますね。」 再び健二の声で戻されるマリ。 「お願いしま・・・す。」 マリの返事は渇ききった喉に張り付いて、 うまく声にならなかった。 『もっと引き止めて・・・。』 『気付いてもらいなよ・・・。』 再び「芯」の指令が聞こえてきた。 痺れた頭でマリは考える。 「それで、、、お幾らくらいになります?」 健二がこっちを見る。 しゃがんだまま、今度は意図的にバランスを崩した。 片手を浴槽の壁に突き、大きく膝が割れる。 今度はすぐに隠さなかった・・・。 健二からは、 さっき一瞬見えた、白い無防備な布地が、再び見えていた。 今度は時間があった。 目が離せなかった。 白い生地の、二重となって包んでいるその部分が、 一段と濃い色に染みているのがわかった。 汗ではない、その生地の奥から湧き出るように、 中心から外側へ向かって広がる染みだった。 「あ、、あの、出張費も入れて6000円くらいかな・・・。」 少し震える声で健二は答えた。 『伝わったよ・・・。』 マリの心の中で、「芯」がニヤリと笑うのがわかった。 健二は手早く作業に取り掛かった。 まるで頭の中に広がりゆく邪念と、 下半身に澱のように溜まっていくむず痒さを、 振り切るように作業に専念した。 「時間、かかりますか?」 「いえ、交換だけなんですぐです。」 簡単なやり取りが交わされる間に、 たちまち作業は完了したようだった。 「作動するかどうかチェックしますね。」 健二がマリの脇をすり抜け脱衣場のスイッチに向かう。 健二の体臭もまた、強まっているのをマリは感じた。 カチカチカチ・・・ 小さな音が窓の外で聞こえた。 健二が洗面台の蛇口をひねると、 ボッ・・・と炎の燃え上がる音がして、 湯沸かし器が仕事を始めたのが知れた。 「これでOK、あとはカバーを戻して完了です。」 「あ、ありがとうございます。なにか冷たいもの持ってきますね。」 マリは立ち上がってキッチンに行き、 冷蔵庫を開けて麦茶をコップに注いだ。 そのとき、また「芯」が囁いた。 『終わったら、帰っちゃうよ・・・。』 マリは、何かに憑かれたようにゆっくりと、 スカートの中に手を入れると、 穿いていた下着を下ろし始めた。 先程から溢れ続けていたものが、 下着を引きおろすとき、膝の辺りまで糸を引いていた。 そのまま、 拭きもせず、 滑りで裏地の光った下着を洗濯カゴに放り込むと、 マリは浴室へと戻った。 健二は既に作業を終えて、 工具を片付け始めていた。 「ちょっと一息入れてください。」 片付けの手を一旦止めて、 健二はマリの差し出したコップを受け取った。 身体が近付くとき、 お互いがお互いの体臭を、はっきりと感じていた。 マリは浴槽の縁に置かれたドライバーを見ていた。 ゴム製の握りは、ちょうど男性器を思わせる太さで、 健二の指と同じように、油と煤汚れにまみれていた。 じっと見つめ、夢想した。 その様子を、健二は観察している。 健二の視線を確認して、 マリは浴室のドア下の僅かな段差に腰を下ろす。 健二の視線が下に降りてくる。 ミニのワンピースは、ほとんど体育座りのようになった、 マリの脚から腰元へと剥がれ落ちる。 濡れて光った、「おんな」の「芯」が見えた。 コップの麦茶を一気に飲み干すと、 健二はゆっくりとドライバーを手に取った。 マリは催眠術にかかったように、 そのドライバーから視線を外せない。 何か言って・・・何か言って・・・ マリの願いは、その場に満ちた密度の濃い空気を通して、 正確に健二に伝わった。 健二はドライバーの軸をつかみ、 ゴム製の握りのほうをマリに向けて差し出した。 「しゃぶれ・・・」 短い命令だった。 マリは待ち焦がれたように口を開く。 溜まっていた唾液が唇の端から流れる。 そこへ、健二が、 捻じ込んできた。 ぐ、ふぅ・・・ ゴムと、油汚れと、男の体臭の味がした。 滑り止めに刻まれたディンプルが、 舌をざらざらといたぶった。 それだけでマリは軽く昇りかけてしまい、 浴室のタイルに雫を垂らしていた。 健二が近づいてくる。 口にドライバーを捻じ込まれたまま、 マリは脚を開かされる。 さっき、あれほど凝視して、焦がれた指が、 マリの花芯を弄ぼうとしていた。 見た目と裏腹に、最初は繊細な指だった。 焦らすように、ぬめりの上を、 僅かな圧力だけで滑っていく。 もどかしさにマリが腰を突き出すと、 それを予測していたかのようにスッとかわす。 やがて、充血しきった淫核の頂点で円を描くように、 ゆっくりと回りながら圧をかけてきた。 ・・・・・。 くぐもって声にならない声を上げながら、 マリはたちまち昇り詰めてしまう。 「もういっちゃったのか・・・いやらしい。」 お仕置きだ、というように、 今度は指を突き立ててくる健二。 男の長い指は、一気に子宮口まで届き、 それが2本、3本と増えて、 激しい往復運動でマリを責め立てる。 たまらず、ビチュビチュと品のない音を立て、 周囲に分泌物が撒き散らされる。 いやらしい匂いが浴室中を満たし、 油汚れに濁った体液が、タイルの床を流れていく。 ドライバーを咥えた口元は弛緩し、 溢れ出る涎は顎から糸となって、タイルの流れに合流した。 ドライバーが抜き取られ、 今度は健二の「そのもの」が差し出された。 本能に支配されたマリにとって、 この上なく官能的で魅力的な匂いを放ったそれを、 大きく息を吸いながら、喉の奥へと受け入れていく。 陰毛の中の、僅かな匂いも逃すまいと鼻を鳴らしながら、 マリは獣となっていく。 ぐうぅ・・・ぐうぅ・・・ と、マリの喉が歓喜の声を絞り出す。 健二はよりいっそう、大きさと硬度を増し、 何の遠慮もなく、一気に絶頂へ向かうつもりらしかった。 仁王立ちで、マリの髪を掴み、 自分の腰に押さえ込み、 喉の奥底へ届けとばかりに腰を振り立て、 突き入れた。 溢れるほどの圧倒的な肉感を迎え入れながら、 マリは呼吸さえも忘れ、 窮屈な口の中で舌を蠢かせ、喉を絞り、 最後のご褒美を待ち望んだ。 そして、そのときがやってきた。 マリの口の中で、それはひときわ大きくなったかと思うと、 強い生命力を連想させる激しい脈動が始まった。 同時に、今日のこの場の匂いを煮詰めたような、 熱く、濃い健二の体液が、 マリの喉の奥で弾けるのがわかった。 その瞬間、マリは触れてもいない「芯」に、 二度目の絶頂を感じて痙攣した。 健二は終わらなかった。 マリの口の中で放出した後も、 それは硬度を保ったまま、マリの口を犯し続けた。 やがて頃合を見るように、それをマリの口から開放すると、 今度はマリを立たせ、浴槽の壁に手を突かせて、 尻を突き出せと命じた。 マリは躊躇なく応じ、 真昼の明るい浴室で尻を突き出し、 貫かれる期待に身を振るわせた。 例によって最初は焦らすように、 ゆっくりゆっくり、それは進入してきた。 先端から少しずつ・・・、 我慢できずにマリが締めると、ツルリと逃げてしまう。 そんなことを何度か繰り返し、 絶えられなくなったマリは悲鳴に近い声をあげた。 「お願い!早く!」 「早く?なに?」 「早く・・・入れて・・・」 「入れて?なにを?」 「オチ○チ○、、、入れて・・・」 「入れて?どこに?」 「オ・・・オマ○コにぃぃぃ・・・」 やっと貫いてもらえた。 一気に、串刺しにされるように。 その瞬間、マリは顎を仰け反らせ、 性懲りもなくまた絶頂に達する。 「いやらしい女だ・・・いやらしい女だ・・・」 健二の呪文のような声が、 果てしない輪廻を産み出すように、 愉悦の炎を燃え上がらせていく。 止まらない、 止まらない、 もう暴走した快楽はどこまでも止まらない。 マリは健二をしっかりと咥えこみ、 自らをうねらせ、締め上げる。 健二の腰の動きが激しくなる。 耐えられず、床に崩れ、四つんばいのようになるマリ。 また髪を掴まれた。 引き上げられ、手綱のように操られ、 激しく揺さぶられる。 引きつった髪の毛の痛みも、 硬いタイルに当たる膝の痛みも、 全てがマリの「芯」から溢れる物質によって、 この上ない快感へと昇華してしまう。 生きてきた中で、一度もない、 今まで関係を持った男や、もちろん夫でも、 一度もない、目も眩むような絶頂の予感がした。 背後で健二が呻き、渾身の力でマリの髪を引き上げた。 健二の脈動が始まる予感がわかった。 その瞬間、マリの下半身に激しいうねりが襲ってきた。 マリは叫びそうになる。 開け放った窓に向かって、叫びかけたそのとき、 健二の手が口をふさぐ。 油と汗の匂いが鼻腔に広がり、 マリは気が狂いそうに極まった。 「噛め」 健二の指がマリの口を犯す。 その指を噛み千切らんばかりに歯を立てると、 健二は獣そのものの咆哮を上げた。 マリのうねりはいよいよ頂点に向かい、 開いているのか閉じているのかももうわからない眼前は、 真っ白な光が支配するだけだった。 はらわたの全てを搾り出すような収縮の中で、 マリは健二の脈動さえも、 手に取るように感じていた・・・。
2007/08/15 16:21:45(Nd5oWmD2)
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