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1:野良猫少女
投稿者:
貴史
仕事帰りにいつもの場所で俺は小便をする
幹線道路から 寂れた住宅地へと向かう途中にある 用をなさない物が色々置かれている空き地の隅 その日も変わらず ジョボジョボと小便をした それまで気がつかなかったが チャックを締めてから 更に奥の突き当たりに 体育座りのような姿で俺を見つめている少女に気がついた 顔はこちらを向けていたが 俺を見てるのかどうか判らない目をしていた まるで猫が物音のした方向を じっと見てる そんな目だった 驚いたのと小便を見られた気恥ずかしさで しばらく動けずに ただじっと少女を見ていた 少女も しばらくは ただじっとこちらを見ていたが 興味をなくした猫のように背中を向け こちらを見なくなった 俺は何度か振り向きながら その場を離れたが 少女は体育座りで膝を抱えたまま 振り向く事はなかった 次の日も小便をしに その場所へ行くと 昨日と同じ服で同じ格好で 少女はいた チラとこちらを見たが すぐに背中を向け 俺が小便をしてる間も じっと膝を抱えて動かない 小便を終え 間をおいてから少女の方へ近づいてみた わざと音をたて三歩 近づいたが 少女は動かない もう一歩踏み出すと 少女は顔だけ こちらに向け 昨日と同じ目で 俺を見る 悲しい目だった 服が少し汚れ 髪も少しベタついてる 家出か…… 俺の中で天使と悪魔が囁いた 交番へ連れてく 俺の部屋へ連れてく 少女は じっとこちらを振り向き見ていたが 不意に少女のお腹が キュル~ と鳴り 前を向いて 更に小さく膝を抱えだした 「飯 食ってんのか?」 「……」 「部屋来たら何か食わしてやるぞ」 「……」 ずっと膝を抱えたまま 反応がなかった 「食ったら またここに戻ればいいさ」 また 少女のお腹が キュル~ と鳴り 俺が フッ と笑うと 少女は俯いたまま立ち上がり 距離を置きながら 俺の後をついてきた カップ麺を汁まで残さず食べた少女は すぐに部屋の隅で膝を抱えて動かなくなった 煙草を一本吸い終え 少女の手をとり ベッドへ連れてくと 抵抗もなく横になり 服を脱がしていっても無気力なまま されるがままだった
2014/10/31 01:53:31(mbkKiO7o)
投稿者:
貴史
一度目覚ましが鳴ったが 止めた後 俺も少女もまた寝た
次に起きた時 急いで少女に着替えるように言って 俺も慌てて着替え アパートを出て 少女を乗せて自転車を走らせた 少女はずっとしがみついている 空き地の横を通らない様に遠回りをして 駅へ飛ばした 途中 コンビニに寄り おにぎりやお菓子 飲み物をカゴに入れ アレを探した 少女は離れたとこで リボンをじっと見ていた アレとリボンもカゴに入れ駅へ飛ばした 駅で少女にアレを渡し トイレに行かせた 昨夜 少女と交わった後に浴室で見た俺のものに 少し血がついていた だから お腹が痛かったのだろう 電車の中では 少女が俺の隣で あちこちの流れる景色を見たり 離れた席の人を覗き見したりしていたが 混んで来てからは 俺にくっつき ずっと下を向いていた 目的地に着き 券売機で券を買うと 少女は俺の腕を引っ張り ゲートをくぐり 中にいる動物達を見てまわった キリンやゾウを見上げては俺を振り向き 跳び跳ねるチンパンジーを見ては 跳ねながら振り向き 恐ろしそうにライオンを見ては 俺の腕にしがみつきながら振り向く 飽きる事なく 何度も見てまわった 少し疲れて ベンチでおにぎりやお菓子を食べた 動物達に囲まれながら その真ん中で食べた 動物達の輪の真ん中で少女が 今 見た動物達の事を楽しそうに話していた 少女にリボンを着けてやり また何度も動物達を見てまわった 何周したかも判らないくらいに 最後は少女の手を引っ張りながらゲートを出た 少女は振り向き動物園を見ていた 帰りの電車では 少女は寝てしまい 俺も寝てしまった 慌てて駅を降り アパートへ帰る 遅くなり過ぎたせいか 楽し過ぎたせいか ウッカリ 空き地の横を通ってしまった 更地になり 何もなくなった空き地が夜の闇に溶け込んでいた ロープが張られ 《立ち入り禁止》 の札が下がっていた 少女は変わらず 俺にしがみついている 「もう少女は ここには来ないぞ」 心の中で そう呟いた…が 闇の中へと消える 空き地に下がる 《立ち入り禁止》 の札は 少女ではなく 俺に対しての警告だったんだ… お前は闇から少女を救えない そう言いながら揺れていた
14/11/06 21:12
(4w9IOGdV)
投稿者:
貴史
少女との楽しい日々は あと少しだけ続いた
再び 少女のあの携帯を見るまでは…… 仕事から帰ると いつも出迎えてくれる 部屋から顔だけ出していたり 走ってきて抱きついてきたり 体半分 見えているのに 隠れて驚かそうとしたり 少女の好きな おかずをあげると代わりのものをくれたり 嫌いな おかずをあげるとふくれながら食べたり 膝の上で 動物の本を見ながら 一匹づつ説明してくれたり これは大きかった これは恐かった これは寝てばかりだった これは可愛かった 最後のページまでいくと また最初から説明してくれたり ベッドの上で何度も 気持ちいい と言ってくれたり 何度も 出ちゃう と漏らしたり シーツを干してる時に おねしょしたのか?と言うと ずっと怒りながら俺のお尻を叩いてきたり 湯に浸かりながら 声をだして数えてくれたり 俺の隣で 身体を丸め朝までずっと寝てくれていたり ごめんな… 腹の底から 笑わせる事は出来なかったよ… あんなもん 見ちゃったから…… でも 見ないと ダメだったんだよな… ちゃんと 笑わせる為には… 俺は 見てやれないけど… 必ず 笑えよ………
14/11/07 02:09
(kdP6fMyP)
投稿者:
貴史
少女と弁当を食べていた
食べ終わると 少女は立ち上がり 「ウンチ!」 と言ってトイレに行った 少女の携帯を取りだし 僅かな望みを託して 電源をいれた 誰か…誰かが探しているかも知れない 心配しているかも知れない メールが届くのを待った 待った… いつまでも メールは届いて来なかった 少女の携帯から自分の携帯に電話を掛けてみた ツー ツー ツー 少女の携帯の番号を探し 自分の携帯から掛けてみた 《現在 この電話番号は使われて おりま… 》 少女が帰るはずの場所へ 繋がっていた 細い線が切れてしまっていた 切られてしまっていた 全身の血がザワつき始めたが 震える呼吸を整えながら 念じた 何も…考えるな… 感情を…捨てろ… 何かを探した なんでもいい 安心出来るものを ほらっ と少女に見せて みんな心配してるぞ と言えるものを… メールの着信履歴は あれ以来 なかった 発信履歴は随分前のしかなかった 電話の着信も発信も随分前でとまっている アドレスには ちゃんと [お母さん] [自宅] と登録されているのに その番号の着信履歴は 数ヶ月も前だった あんなメールを送ってくるのに 友達登録をしていた 保存されている画像を見た 全身の血がグツグツと煮え出したが 俺は念じた 感情を捨てろ… 感情を捨てろ… 無表情になれ… 画像にはメールより酷いものが いくつもあった 少女のものらしき 上履きが写っているが 便器の中に捨てられていた 学校の机が写っている 机の上には 人型に切られた紙が 胸のところに ゴミ と書かれ 無数の虫の死骸と一緒に置かれていた 食べ残したパンや紙くず 汚れた体操着が詰め込まれた 靴箱が写っていた ウサギ小屋に閉じ込められた少女 頭から水を被った少女 可愛らしい筆箱や鉛筆 ノートがゴミ捨て場に散乱している それを集める少女 感情を捨てろ! 無表情になれ! 俺は更に探した 何か見せてくれと 少女を笑顔で見送ってやれるものを 不意に画面が明るくなった 可愛いキャラクターや動物 花やアニメが出てきた ほらっ あるじゃないか 少女が笑っていた頃のものが…… けど その先に…… ごめんな…
14/11/07 23:52
(kdP6fMyP)
投稿者:
貴史
少女らしい 癒される画像が いくつかあった
俺の血は プクプクと冷めだしていた きっとこの頃は笑えていたんだろうと… そんな画像に隠れて あの おぞましいものが あった 全身の血が一気に煮えたち 毛穴から湯気をたて 流れだし 同時に 感情も俺の中から流れ出ていった 怒り という感情だけを残して 少女がトイレから出てきてて俺を見ていた 大きく上に曲がった口を下にさげながら… 少女に画像を見せて聞いた 「なんだよ…これ?」 少女は何も答えない 「なんだよ!これ!」 画像には少女が写っていたが 顔は下半分しか写っていなかった あと 大人の男の体の一部と その男の腕に添えるように 女性の手だけが写っていた 「なんだ!これ!!」 少女の顔は無表情になり 静かに俺から携帯を取り 電源を切り バッグの奥にしまった フラフラと無表情のまま俺の膝の上に座ろうとする少女を 俺は 突き飛ばし 聞いた 「誰だよあの男…」 「…お父さん」 「…撮ったの誰だよ…」 「…お母さん」 部屋の隅で無表情に少女が答えた 聞きたくなかった… せめて知らない人と言ってほしかった… 「あれが…お…父さんか?あれが…お母…さんか?」 「あれはお前のお父さんでもお母さんでもないぞ!鬼畜じゃないか!!ただの鬼畜じゃないか!!!」 少女は部屋の隅で膝を抱えながら 耳も押さえ 「お父さんだもん!お母さんだもん!」 と言っていた 画像に写っている少女の下半分だけの顔は泣きじゃくっていて 布団に裸で押さえつけられ 少女の下半身を大人の男のものが 貫いていた それを男の腕に手を添えた女が写している 何度も出し入れされた後のように 男のモノは ぬめっていて 半分だけ引き抜かれたモノには 血がついており 布団も赤く染められていた それだけを撮る為だけに まるで楽しんでいるかのように 女が写した画像だった 「お父さんだもん!お母さんだもん!」 少女は そう言った… 鬼畜な二人を… いや…鬼畜な二匹を… 「何故!消さないんだよ!」 その問いかけに少女は無表情に 小さく呟いた 「…あれしか無いもん」 意味が…わからなかった……
14/11/08 01:57
(nX59XI5I)
投稿者:
貴史
俺は少女を掴み 叩き 投げ飛ばしながら言った
「なんでお前はそうなんだ!なんでここに居るんだ!なんで消さないんだよ!メールも画像もなんで消さないんだよ!なんで感情だけ消すんだよっ!!」 少女は何度も俺に 抱きつこうと…抱きしめられようと 近づき 何度も頷いてもらおうと 見上げてきたが 俺はその度に 突き飛ばし 叩き 蹴った やがて少女は 無表情にされるがままに 遠くを見つめて 俺の怒りが収まるまで 叩かれ 蹴られ 転がされ続けた 振り上げた腕が 電球に当たり 留められていたハンカチが ユラユラと揺れ 少女の上に落ち 悲しい歌が聞こえてきた 突然 涙が溢れて 怒りは消え 胸を締め付ける苦しい気持ちに変わり 苦しみから逃れようと 少女に手を伸ばしたが 少女は部屋の隅に行き 膝を抱えて頭を垂れた その夜 俺は朝まで壁を見つめていた なのに夢を見ていた 星ひとつ無い 真っ暗な闇で膝を抱え 上も下もわからず クルクルと回っていた 自分の体も見えず 本当に自分がそこに存在しているのか確認も出来ない 闇の中で 宇宙飛行士のように プカプカと回っていた そこに少女はいなかった すごいなぁ~ … よく感情を消したなぁ 俺は出来なかったよ 全てを消せなかったよ ごめんな… 俺には無理だよ… 助けてあげれないよ… 闇から救ってあげたかったけど 出来ないよ… この闇にも居ないんだろ… もっと違う場所に行ってしまってるんだな…… 少女の心は闇だと思ってたが 違った 少女の心は 黒という たった一つの色もない 『無』の色 だった そんな色 知らないよ… 見た事ないよ… 想像もできないよ… だから助けてあげれないんだ…ごめんな…… 待ってるのにな… いつか友達が 一緒に遊ぼっ て言ってきてくれるのを… 着信拒否してたら わからないもんな… その時に 友達登録 消してたら悪いもんな… 携帯持っとかないと 連絡してもらえないもんな… 自分が消えちゃうもんな… 生まれてきた証拠が無くなっちゃうもんな… 自分がどこから来たのか わからなくなるもんな… たった一枚の家族の写真 消しちゃうと……
14/11/08 11:36
(nX59XI5I)
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