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小学生女子に求婚されたのだが 18
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ロリータ 官能小説   
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1:小学生女子に求婚されたのだが 18
投稿者: たかし ◆vUNIdToRTo

――お父さん、ねえ、お父さんってば
――ん?どうした、裕未
――ママはいつ帰ってくるの?
――・・・ママは、もう
――ねー、私ママにいーっぱいお話ししたいことあるのに、いつ帰ってくるの?
――ママはね、帰ってこれないんだ
――じゃあ迎えに行こうよ
――裕未・・・
――今日行こうよー、ねー、お迎えーお迎えー
――裕未
――ねー、ママに会いたいよー
――裕未
――ねー、お父さん、早く行こうよー
――裕未
――早くママのとこ行こうよー
――裕未
――ねー、おとーさーん、行こうー
――裕未
――行こうよー、行こうよー、行こうってばー
――裕未っ!!
――ひっ・・・
――あ・・・
――・・ぅ、ぅ、ぅ
――ごめん、裕未・・・ごめん
――うあああああああーん
――・・・・ごめん
・・・・・
・・・
・・
嫌な夢を見た。
夢?・・・いや、これは記憶だ。
罪悪感と自己嫌悪が同時に襲ってくる、重く恐ろしい記憶。

 五年前のあの日、知らせを受けて病院に駆け付けた俺と裕未。
由希子の遺体は損傷が激しくて、とても裕未に見せられるものではなかった。
例え見せたとしても、それがママだとは分からなかっただろう。
小学一年生の子供が、死を理解し受け入れるのは容易ではない。
冷たく動かなくなった死体に対面していないのだから尚更だ。
裕未にとっては『ママが急に帰ってこなくなった』としか思えなかったようで、葬儀一式に参列していたけれど、それが何の行事なのか理解できていなかった。
だから時々思い出したように『ママはいつ帰ってくるの?』が始まるのだった。
最初は子供だからと「もうちょっと」とか「次のクリスマスかな」とか適当にあしらっていたけど、それを全部覚えていて、俺の嘘を指摘するようになった。
『お父さんの嘘つき』
そう怒ってしまって、お気に入りの水筒を首から下げて自分で探しに出ようとしたこともある。
確かに俺は嘘つきだ。それも一つや二つじゃない、大量の嘘で誤魔化し続けていた。
それが日に日に苛々に変わり、ある時、しつこくママを迎えに行こうとせがむ裕未を、睨みつけ怒鳴ってしまった。
その時の裕未の恐怖と絶望に満ちた表情は忘れることができない。
一瞬にして強烈な後悔。
目の前で縮み上がって泣いている我が子の泣き顔、泣き声。
裕未は何も悪くないのに、子供が母親に会いたいという自然な欲求を俺に告げただけなのに、俺は聞いてやれなかった。
俺は、最低な父親だった。一歩間違えば殴っていた。
即座に裕未を拾い上げ抱きかかえ抱きしめて泣いた。
俺も由希子に会いたかった。
俺も由希子を迎えに行きたかった。
俺も由希子のところへ行きたかった。
俺も裕未と同じだった。
頭を撫でて、何度も謝った。
謝って謝って謝った。
そして裕未が泣きやんでも俺の涙が止まらなかった。
そんな俺を、裕未が全身を使って抱きしめてくれた。
「おとーさん、どこか痛いの?お医者さん行く?」
そう言って小さな裕未が、俺を撫でてくれた。
父親の情けない姿から何かを察したのか、この日を境に、裕未はママに会いたいと言わなくなった。
会いたかっただろうに、俺に遠慮して、小さな裕未はずっと我慢してきたんだ。
「裕未・・・裕未・・・」

 重苦しいその夢から逃げるようにして目が覚めた。
息が荒い。
あの時の感覚がべったりと残っていた。
「う、うぅ~ん」
すぐ近くで可愛い声がしてびっくりした。
俺は裕未を抱きしめて眠っていたのだった。
幸い目を覚ましていないようで、そっと離してそっと寝かせた。


――昨晩、あれから今後をどうするかという話し合いになった。
裕未の『お父さん補完計画』は白紙に戻されたので、破滅の危機はなくなったのだけど、事のベースとなった裕未の甘え不足が深刻なレベルであることに変わりは無く、俺との距離を見直しながら時間をかけて治していくしかない、となった。
正常な親子関係への第一歩として、一緒にお風呂に入ったり寝たりするのは禁止ってことにしないかと提案した。
「え?  お、父さん・・・ぐすん・・・嫌だったんだ・・・」
まぁ、こういう反応をするってところが、裕未の症状が重いということなんだが、そんな娘を突き放せるほど俺は出来た親じゃない。
「もうここまで病んじゃったのですから裕未ちゃんの好きにさせてあげればいいと思います。下手に隠したり避けたりすると、ぶり返しかねません。昔みたいに何でも一緒でいいんじゃないですか」
という亜季の発言で収まってしまった。
その病んじゃったというフレーズに裕未が眉毛をぴくぴくさせていたが、その後の提案は裕未の希望通りだったようで、黙って頷いていた。
結局はっきりしているのは『親子で子作りは絶対しません』の一点だけだった。
「じゃあ、何か?これからもお風呂も一緒、寝るのも一緒がいいのか?」
「だ、だめ?」
「心配いりません。間違いが起きないように私が同伴します」
「同伴、と言いますと?」
「お風呂は私も一緒に入ります。夜はたっくんの部屋で三人で川の字になって寝ましょう」
「ね、お父さん、それならいいでしょ?」
え?亜季が一緒でもいいんだ・・・。
へー、そうなんだ、二人きりじゃなくてもいいんだ・・・。
ん?何だ?変な感情が動いてるような・・・これは、スルーだ、スルー。
「わかった。じゃ、そうしよう」
「やったぁー」
裕未は知らないんだよな。
俺と亜季がそういう関係だということを。
いくら裕未の子作り願望がなくなったと言っても、無暗にハードピーを見せたり触らせたりしては思春期の好奇心を刺激して『事故』に発展しかねない。だから一緒に入浴してもそれは我慢しなければならないのだ。
それを承知で亜季がこの提案をしたのならば、これは俺に対する攻撃なんだよな。
裕未の裸なら我慢できても、亜季の裸を我慢するのは今となっては難行起苦行でしかない。
裕未が俺とこれからもイチャイチャ、じゃない、仲良くしていくのを認めたはいいけど、やはりそれは面白くないんだろう。
さっきから言葉の端々に棘があるし、表情が明らかに不機嫌だ。
「二年前からやり直しだな」
「えへへ、ごめんね、お父さん」
照れ笑いする裕未に照れ笑いで答える俺。
何気に目に入ったホーコの顔は、目を細めて口元が薄ら笑いを浮かべていた。
いかん!何か見透かされてる!今の俺を見透かされるのはヤバい気がする!
「貴志とはもうちょっと話がしたかったんだけど、今日は帰るね」
「え、ホーコさんも泊まってけばいいのに」
「またいつかそうさせてもらうよ。裕未、お父さんの携帯チェックなんかもうやめなよ。私は貴志には色々用事があるんだから」
「あ、はい、そうでした、もうしません」
「貴志は基本的に誰にでも優しいけどさ、何故か裕未には甘すぎるんだよね」
「そうか?」
「私も前々からそう思ってましたが、今回それを思い知りました。これが溺愛なんですかね?」
「溺愛?お父さん、私を溺愛してるの?溺愛って溺れるほど愛しいって書く溺愛よね?」
「そこ!目をキラキラさせない!」
「ご、ごめんなさい」
「溺愛かぁ・・・そうかもしれないな」
「溺愛・・・溺愛・・・」
「裕未ちゃん、しっかり!」
「まぁ母親がいなくなって寂しい思いをさせちゃったからなー、娘の為になるなら何でもやるのが父親じゃないのか?」
「私にはそんな父親いませんでしたし、いまひとつ理解できませんけどね」
かなり際どい発言のはずなんだけど、その言い方が妙に嫌味っぽくて軽かった。
「それにいくらお母さんがいないといっても、こんなに優しくて一所懸命なお父さんがいてくれるんだから、それで寂しい思いをしたなんて贅沢だと思いますけどね」
ここで引っかかった。

『贅沢、だと?』

確かに『亜季』にはもう両親がいない。
だから普通に考えれば、こんなことを言わせるのはダメダメなんだけど、今の亜季の口からそれが出たのがカチンときた。
「何でも話せて勉強も見てくれて料理も上手で裁縫も出来てってほとんど万能じゃないですか。こんなお父さんがいてくれるんだから、お母さんの一人や二人」
「おい、お前」
我慢できなかった。
心がささくれ立ってしまった。
「え・・・」
亜季がギクッとなって表情を強張らせ固まってしまった。
裕未がぎょっとした表情で俺を見た。
「お前が、お前が 言うな」
「お父さん、亜季だってお母さんいないんだよ、そんな言い方しなくても」
「・・・すまん」
それは分かっている。まだ子供の亜季に何をムキになってるんだって話だ。
でも、今の亜季は、裕未の母親の気持ちも持っているはずなのに、そうとしか考えられないのに、それなのに、そんな事を言うなんて、なんだか我慢ならなかった。
「ご、ごめんなさい」
「・・・」
亜季は俺から強く言われたのがショックだったのか、その場で立ち尽くして俯いてしまった。
意外なほど打たれ弱い亜季に対して、どうしても優しい顔ができなかった。
「ごめん・・・なさい、ぅ、ぅ、うぅ、ひぐ、ひぐ、うぅぅ」
「亜季、泣かなくていいって、お父さんちょっと疲れてたんだよ、亜季、ね、亜季」
びっくりした。こんな程度のことで亜季が泣くなんて。
途端に襲ってくる罪悪感。
どう取り繕っていいのか分からず、俺もその場で立ち尽くしてしまった。
「お取り込み中悪いんだけど・・・」
気まずい雰囲気の中、ホーコが割って入ってくれた。
タクシーで来たから送って欲しいとのホーコのお願いを快諾し、娘二人を置いて、すぐに家を出た。

「今日もありがとうな。本当、助かったよ」
「え?あ、うん」
「子育てって、やっぱ難しいわ」
「あんたたちは特別だよ」
「え?」
「あんた、さっき露骨に亜季ちゃんに苛ついてたけど、どうした?」
「ああ、あれは、お前だって思わなかったのか?お母さんの一人や二人って、そんな言い方あるかよ」
「やっぱりそれか・・・貴志って亜季ちゃんにも甘々だと思ってたけど、違うんだね」
「俺は自分に甘々なんだ」
「わかってんじゃん!」
「お前の仮説が本説なのはもう分かってる。だとすれば由希子は死んだ直後から亜季を追いかけてるんだから、俺や裕未、それにホーコがどれだけ苦しんでたか知らないってことになる」
「そうなるね」
「本当の亜季ならあんなこと言わないだろうし、言えないだろう」

 ホーコを送り届けて帰宅すると23時を回っていた。
俺の部屋を覗くと、本当に布団が三組敷かれていて、そこに裕未と亜季が向かい合って眠っていた。
「寝ちゃったか・・・」
無理もない。
ここ数日、二人とも寝不足が溜まっていたのだ。
小娘二人が寝ているだけで、いつもの俺の部屋の匂いじゃなかった。
なんというか、甘酸っぱいような可愛い匂いが漂っていて、俺のようなオッサンが一緒にいちゃダメなような気になってしまう。
風呂に入り直し、明日の朝食の用意を確認し、今夜はビールを飲まずに寝ることにした。
心なしか裕未に比べて寂しそうな亜季の寝顔に、胸がチクッとなる。
『ごめんな、亜季』
二人はほぼ真ん中で眠っていたので、俺は左右どちらでも入ることができた。
眠るだけなんだからどっちに入っても同じなんだろうけど、何となく裕未の隣を選んだ。
すやすや眠る裕未の背中をさする。
昔はよく背中を掻いてとせがまれたのを思い出し、もしかしたら明日にでもしてくれとか言いだすんじゃないかと思うと、自然と口元が緩んだ。

 今回の騒動で、改めて自覚したことがある。

俺と裕未の関係は、普通じゃない。
親が親として当たり前にあって、子が子として当たり前にある普通の家庭とは違うのだ。
俺には俺の苦難があって、裕未には裕未の苦難があって、それで壊れてしまわないように、互いに頼り合ってきた魂の片割れのような存在。
スペアなんかあり得ない、掛けがえのない存在なんだ。
俺は裕未がいたから生きてこられたし、裕未は俺がいたから生きてこられた。
多分、これは言い過ぎじゃないんだ。
元々こうだったわけではない。由希子の突然の死がなければこうはならなかった。
いくら由希子が留守がちだったとはいえ、完全にいなくなるというのは想像すらしたことがなくて、失って初めて知った存在感の大きさに毎日のように打ちのめされていたのは俺だけじゃなかった。
気丈に振舞っていた裕未だって、いや、裕未だからこそ感じたショックと喪失感は並大抵ではなかったんだ。
互いに心に空いた穴を埋めるように、支え合い助け合い与え合って生きてきた。
それが時として普通の父娘ではしないような接し方になったり、過剰なスキンシップになったりしていたのだろうけど、それは俺たちにとって必要なことだったんだと思う。
だからそれについては第三者や物知り顔の有識者の批評やコメントなどはお呼びじゃないのだ。
更に言うなら、例え由希子であっても、俺と裕未の関係について、とやかく言う事はできないのだ。

可愛く成長してくれた裕未。
でもその心はまだ幼く、そして傷だらけだった。
なのに俺の手を放してしまって迷子になっていたんだ。
そして、迷子になっていたのは、裕未だけじゃなかった。
不安で寂しくてどこへ行けばいいのか分からなくなっていたのは、俺も・・・同様だった。 
でも、それを認められずにいた。
娘が成長して離れていくのを寂しいとか不安だとか、そんなこと思っても口にしてはいけないと思い込んでいた。
みっともないと思っていた。
恥ずかしいとも思っていた。
親としてとか、子供を育てる責任がとか、世間体や一般常識とか、そのような『そうあるべき』姿でいようと頑張ってきたけど、重く切ない寂しさをいつも感じていた。
だから、昨夜の裕未の本心の吐露で、ずっと彷徨ってた俺の心も再び繋ぎ止められ、元の居場所に戻ることができた気がする。

――そして、あの夢を見るのである。
初めて娘を怒鳴った罪悪感、そして初めて娘に慰められたぬくもりと恥ずかしさ。
重く切ない記憶は夢となってリピートされ、俺に何かを教えてくれる。
ふと亜季の方を見ると、ぽつんと一人ぼっちでいるように見えて、急に可哀相に思えてしまい、あんなこと言わなきゃよかったと後悔しながら添い寝した。


 明けて8月23日。
今日は夏休み最後の登校日だ。
久しぶりの学校に娘たちが慌ただしい。シャワーも二人でさっさと済ませてたので、肩すかしを喰らった感じ。基本的に女ってドライな生き物だよな。
「今日は2時から会館行ってくるし、夕飯いらないと思う」
「おー、準備の賄いかー、何でも食べてこい」
「あの、たっくん、私も、一緒に行ってくるね」
「おー、お前も何でも食べてこい」
昨夜のことを引きずってるらしい亜季が、いつになく遠慮がちになっていた。
これはこれで見た目通りというか、上品な顔立ちの亜季にはこういう態度の方が似合っている。
「今日って、できてる宿題を持っていくんだろ?」
「そうですよ」
「裕未って、何か持って行けるのか?」
「あ、ひっどーい、何もしてないわけじゃないんだからね!」
「あはは、すまんすまん、亜季は?」
「一応、ドリル系は始業式の時でいいですから、今日は自由研究と自由創作を持っていきます」
「自由創作?そんなのあるのか?」
「何でもいいので自分で創り出すという宿題なんです。私はこれを持っていきます」
亜季が見せてくれたのは旧式の分厚い職業別電話帳だった。これが一体何だっていうのだ?
「パラパラ漫画です」
「え!マジ?見せてくれよ、俺もよく描いたんだよなー、棒人間が走ったり跳んだり・・・」
亜季のそれは、角と縦のスペースを上手く使って背景動画から始まってちゃんとしたキャラクターが実に滑らかに動いて、それなりの起承転結になっていた。
「・・・」
「どうでしょうか?」
「オマエな、小学校の宿題でここまでのクオリティ誰も求めてないだろうに!たまげたよ、凄すぎだよ、国宝級だよ!」
「えっへっへー」
「裕未は?何創ったんだ?」
「俳句」
これはこれでおったまげた。
裕未が、俳句?
「へ、へえー、見せてくれるか?」
「え・・・はい、これ」
裕未はちょっと躊躇ってから照れながら束ねられた短冊を渡してくれた。
『宿題が なければ天国 夏休み』
すごく良い。
裕未の心が見事に表現されている。
『夏休み あっという間に 終わっちゃう』
これも良い。
裕未の心が見事に表現されている。
『かき氷 赤と緑の あっかんべー』
素晴らしい!これは先日撮った写真を思い出す。
裕未のセンスはマジで凄いかもしれないぞ!
『ヤフオクで 宿題代行 三千円』
これはアカン!
裕未の心が出過ぎている!しかも俳句じゃないし!
「へぇ~、裕未ってこういう才能あったのか」
「えへへ、変じゃない?」
「それが俳句ですかねぇ」
亜季がやれやれといった様子で口を挟んだ。
「五七五にはなってますけど、一服の絵のような情景が浮かんできませんねぇ」
「お前ならどう詠むんだ?」
「そうですね・・・せせらぎや 碧く溶け込む 蝉しぐれ って感じでしょうか」
「うっわ、川に近づくにつれて蝉の声より水音の方が大きく聞こえる場面だな!絵というより動画だな!」
「そんなの!意味わかんないし!」
「いや!裕未のはすごくいいんだぞ、亜季のは大人みたいな」
ハッとなった。
そうだった。由希子ならこんなのお手の物だった。
「亜季のはまるでどこかの本に載ってるのを引用したみたいだな」
「そんなことしません!今創ったんです!」
「亜季、お前は色々できるのかもしれないけどな、学校の先生が何故こんな宿題出したか考えたのか?」
「何故?って言われても・・・」
「創作っていうのはな、難しくて悩ましくて恥ずかしいもんなんだよ。きっと他にもパラパラ漫画描いてくる奴がいるだろうけど、それは間違いなく棒人間レベルなんだよ。でもな、それが亜季の見事な作品に劣るかというと決してそんなことはないんだ。お前がパラパラ漫画を選んだ動機は何だ?」
「やってみたかったから」
「裕未が俳句を選んだのは?」
「簡単そうだったから」
「それでいいんだ。動機なんか人それぞれで、そこにスキルや知識があるかないかは関係ない。先生は、お前たちに未熟でも未完成でもいいから、勇気を持って創り出した物を描きなぐるカンバスを用意してくれたんだ」
「みんなが描くの?」
「そうだ、俳句の横に複雑怪奇な折り紙があるかもしれない、パラパラ漫画の横にちょっとエッチな恋愛小説があるかもしれない、それら全てが恥ずかしい創作物で、どれも等しく価値があるんだ」
「批評は失礼ってことですか?」
「そうは言っていない。批評は自由にすればいい。褒められる物があれば貶される物もある、そんなの当たり前じゃないか。創作はな、発表されて初めて完成するんだよ」
「沢山の人に見てもらうってこと?」
「そう。公衆に曝すんだ。そして容赦のない批評を浴びて完成する。その発表する場所が、自由創作って課題なんだと思うぞ」
「下手くそとか言われても気にしなくていいってこと?」
「そう、人間だから気にしちゃうだろうけど、料理と一緒で百人が百人美味しいって褒める物なんてないんだから」
「あー、それわかる。そうか、もっと何でもやってみていいんだ」
「そう!算数のドリルが未完成でも創作意欲を買われて怒られないかもしれないじゃないか!」
「それはないわ」
「もう少し夢を見ろよっ!」
こういうことになると熱くなっちゃうんだよなぁ。
俺も創作に関しては色々古傷があるのだ。それについてはここでは語るまい。
「そんなカンバスを用意してくれた先生に感謝しなきゃな」
「そんなこと思いもしなかった。先生にお礼言っとくね」
「まさかとは思うが」
「何?」
「そのカンバスを汚すような奴がいたら、とことん軽蔑していいからな」
「汚すって?」
「画用紙に『僕のお姉さんのエロい写真あげるから、君の妹のパンツと交換しましょう』って書かれただけのものとか」
「何それ!?エロいしキモいし最っ低じゃない!」
「いや、この際エロはいいんだよ。問題はこれは創作じゃないってことだ」
「あ・・・」
「インパクトはあるけど、恥ずかしいという壁を乗り越えていない。このカンバスに踏み込む資格がないんだ」
「皆の勇気を踏みにじるってことですね」
「そう。先生の想いや努力も、これまで必死に書いてきた皆の労力と汗と涙の全てを侮辱する行為なんだ」
「許せない」
「まあ、そんな無粋な奴はいないと思うよ。もしもの話だ」
「もしいたらどうしたらいいの?」
「先生ならそれがどこの誰なのかは分かるだろう。そして個人が特定できたらこう言ってやれ『囮○○御苦労さま』ってね」
「なにそれ?」
「下衆の勘ぐり、大人の事情だよ」
気を取り直して裕未の短冊をめくっていく。
驚くべき作品数だった。
これだけの量を書けるというのは素晴らしい才能だと思う。
中には首をひねったり失笑を誘うものも多かったが、最後の一つが俺の心を鷲掴みにした。
『 ありがとう ずっと大好き お父さん 』
「裕未」
「へへへ、さっき創ったんだよ」
「これ、学校に出すのか?」
「だめ?」
「いや、さすがにこれは、恥ずかしいだろ」
「だからこそ創作なんでしょ?」
「はい、その通りでした」
やっぱり俺はもう少し考えて喋るべきだ。嗚呼、成長しないなぁ、俺。
「そっかー、じゃあ私、これやめよっかな」
「ん?どうしたんだ亜季」
「これ、すごく上手く出来たと思って、その、自信作っていうか、そんなに恥ずかしいってのがなくて」
「そりゃそうだろうな」
「他にも物語書いてみたんです」
「へー、どんな話?」
「結婚の約束をしていた幼馴染の間に同級生の女の子が割り込んで、男の子を奪っちゃうっていう略奪愛の話です。これはちょっと恥ずかしくて」
「それは小学校に出していい内容なんだろうな」
「新婚初夜の描写に10ページ使いました」
「出せるか!俺が買うわ!」
「そんなにエッチな内容じゃありませんよ。でも元々婚約してた女の子が可哀相すぎるかなと思って完成させてないんです」
「何が可哀相なんだよ」
「相手の男の子が、婚約のことを綺麗さっぱり忘れてたって行があって」
「そりゃないだろ、いくらなんでもそんな間抜けな男はいない」
「ですよね。七歳の時に結婚式(仮)までしてるんですけど『そんな昔のこと覚えてねーよ』って。酷すぎますよね」
「許せないな。男の風上にも置けない。そんな奴は人間ですらない」
「ですよね・・・」
しかしながら、自由創作とは粋な宿題を出してくれる。
自由研究とは別にあるってのがいい。先生もよくわかっている。
自由研究は実験や観察といった実体験を伴う事実を取りまとめたものでなければならない。いわば体験報告だ。
それに対し自由創作は実体験を伴う必要がない。空想の産物、妄想の権化でいいのだ。
似て非なる両者に小学生たちがどのような答えを出し、先生方がどのように導くのか、とても楽しみである。

ふと二人を見るとランドセルを背負って遊んでいた。
「・・・」
なんだかなー、これは、イカンな。
ランジェリーショップの店員さんは少女をその気にさせるのが上手なようで、身長が150㎝あると言って喜んでた亜季を家で測ったら148㎝だった。じゃ裕未はと測ったら153㎝だった。
それぞれ2㎝上乗せされていて、笑ってしまった。
まあそれもあと数か月のことで、あっという間に大きくなってしまうのだろうから、それはそれで親切なのかもしれない。
どちらにせよ二人ともクラスでも成長の早い方で、身長もさることながら、その体つきがどうにも女の子になっちゃってるので、ランドセルが似合わないのだ。
「おい、お前たち」
「なーに?」
「今日、ランドセルいるのか?」
「いらないよ、手提げ袋でいいもん」
「ならいいけど」
「どうしたの?ランドセルが何か変?」
「いや、その、二人とも、もう胸が目立つから、ランドセルがあると余計強調されて、なんかエロいなって」
「やーだー、お父さんのエッチ」
「でも、裕未はブラウスも小さいんじゃないのか?すごく目立つ。こんなの他の男に見せたくないんだが」
「あ、それも溺愛?」
「そうともさ!裕未が可愛くて俺は心配で心配で」
「嬉し♪」
ぴょんと飛びついて抱きついてくる。わざとやってるのか、その目立つ胸の膨らみを押し付けるようにぎゅっとしてくる。
そんな裕未が堪らなく可愛い。
会社に連れて行こうかと思うくらい可愛い。
「こらこら、制服に皺がよっちゃうぞ、もう俺行かなきゃ」
「うん、気を付けて行ってきてね」
本当に可愛い。
ついついふわっと抱きしめておでこにチュッをした。
デへへとゆるゆるの笑顔を見せられ、俺の心もゆるゆるになっていた。
「たっくん、気を付けて」
「おう、二人とも仲良くな。車と不審者には気を付けろ」
「はーい」
その様子を亜季は見ているだけだった。特にチャチャを入れることも手厳しい突っ込みを入れることもなかった。
ちょっと大人しくなりすぎてるような・・・。


 会社に着く直前、ホーコからメールが入った。
『昼に花屋に来て。お昼おごる』
思わず二度見してしまった。
あはは、こいつ打ち間違えてやがる。
『かたじけない。蕎麦がいいな』
と送り返す。すぐに返信が来て、おごれに訂正されてるのかと思いきや、
『わかったよ』
だった。
何か変だなと思いつつ、昼に花屋に行くと、ホーコとたまちゃんが綺麗な花篭を作っていた。
「よお」
「あ、貴志」
と振り向いたホーコが、その、まあなんだ、すごく可愛らしく見えてしまったんだな。
若く見えるんじゃない。こいつ、間違いなく若返りしている。
「ちょっと待って、もうできるし」
「ああ、急がなくていいよ」
ホーコが花屋らしいことをしているのを見るのは初めてだったりするので、なんとなく新鮮に映ってボーっと見ていた。
たまちゃんとのコンビネーションも上々で、なんだか、凄く楽しそうだった。
5分ほどで作業が終わり、どこかへ行くのかと思ったらそのまま二階へ案内された。
花屋の二階に入るのは初めてだった。
店はイマドキな造りで新しいのに、ドア一枚中に入れば、そこはなんとも古式ゆかしい日本建築で、黒光りする階段と手すりの感じからして築後百年近いように思えた。
「どうぞ」
大きくて重そうな襖を開けて俺を誘導する。
中に入ってちょっと面食らってしまった。
何もないのである。
テーブルも卓袱台も座布団もない。
赤い壁と障子と畳だけの部屋。
床の間はあるけど、そこには香炉が一つあるだけで、活花もない。掛け軸は掛かっているけれど、それには何も描かれていなかった。
花屋なんだから、花ぐらい活けとけばいいのに。
「適当に座って」
と言われて、その場で胡坐をかく。
変な部屋なんだけど、なんだか懐かしい。
ホーコは香炉に香を焚いてくれた。お気に入りの香なのか、ホーコの顔がほころんだ。
「ねえ貴志」
「ん?」
「私と・・・したいの?」
「な、なんだよ、いきなり」
「え?でもだって、昨日、ほら・・・」
「あれは!違うっ、偶々だ」
「タマタマ!?」
「そのタマタマじゃない!偶々だ!」
「ふーん・・・そりゃそうか。貴志が私に欲情するわけないもんね」
「なんだよそれ」
「あんたって由希子以外に興味無かったもん」
「・・・昔のことだ」
「あはは、ここにきてようやく他の女に興味持つようになったと思ったら、小学生女子なんだもんなー」
「亜季に仕込まれたんだ」
「あ、亜季ちゃんのせいにした。裕未も可愛いしね~、今はもっと可愛いだろうしね~」
「な、何をおっしゃってるのかな?意味がわかりません、裕未は実の娘ですよ」
「あれ?顔が赤いぞ」
「うるさい!」
「二人とも花が咲く瞬間って感じの魅力が溢れてるもんね。本当は女が一番輝くのってあの年頃なんじゃないかって思うよ」
「おぬし、その発言は現代社会では危険だぞ」
「ふふふっ」
ホーコが思い出したように笑った。
「なんだよ、気持ちわりーな」
「いやいや、奈々摘ちゃんも可愛かったなーって思って」
「な・・・や、やめろよな」
「へ~、気にしてるんだ」
「当たり前だろ、俺だって何であんなことになったか分からないんだから」
「ごめんごめん、別に責めてるわけじゃないのよ。やっぱりちゃんと覚えてるんだね」
「お前・・・奈々摘ちゃんのこと、その前から知ってたよな」
「え?あ、うん」
「俺があの子に何をしたかも?」
「貴志は肉体的には何もしてないんだよ」
「は?」
「あの子に関しては、何も気にしなくていいんだ」
「なんなんだよそれ、分かるように教えてくれよ」
「もし年端のいかない女の子に対する愚行を悔いてるんだとしたら、奈々摘ちゃんよりハルちゃんの方がアウトだと思うがね」
「え?」
「ん?」
「ハルちゃん?」
「そう、ハルちゃん」
「・・・うっわ!」
「ん?」
「うっわ!」
「何よ」
「何でもかんでもお見通しっての、やめてくんない?俺のオナニーのおかずまで知られてそうでオマエに会うのが嫌になるじゃねーか」
「あ、うん、ごめん」
「なんでハルちゃんのことまで知ってんだよ」
「これこそ偶々なんだって。あんた達が遊んでた露天風呂、垣根の真横だったでしょ?」
「あ、ああ、そうだったな」
「女湯も左右対称で同じ構造なんだけど、その垣根沿いの浴槽に私がいたんだよ」
「あっはっは、何を言ってるのかオジサンにはさっぱりわからないな~」
「丸聞こえでした」
「あっはっは、そんな事があるわけがなかろう、お譲ちゃん、ウソはいけないよ~」
「『勃起させてやろうか』なんて即逮捕だよね」
「大変申し訳ありませんでした。心からお詫び申し上げます。ごめんなさい、許してください、何でもします」
「『食べてごらん』なんて全国ニュースで実名報道されても仕方ないよね」
「私がその大罪人です。実名報道される前に裕未と親子の縁を切っておきたいと思います。裕未の事、よろしくお願いします」
「『おじさん、小さくなっちゃったよ』で手を叩いて笑わせていただきました」
「一回500円です。領収書は出ませんのでご了承ください」
「じゃ警察行こうか」
「うん・・・」
もう無理だった。限界を超えていた。
赤面し俯いて後悔の涙をボトボトと落とすばかりの俺38歳であった。
「あ、いや、ま、まあ、ハルちゃんの方が積極的だったんだから、ほら、貴志はその要望を無視できなかったっていうか、ほら、その、これもアンタの優しさの一つってことで」
「死にたい・・・」
「それに、あんたらのエロ会話は私しか聞いてないんだし、もしこれを裕未や亜季ちゃんが聞いてたら、間違いなくあんたの人生は終わってたんだ。ほら、幸いもあるじゃないか」
「わたくしの生殺与奪権を握った感想をお聞かせください」
「そんなんじゃないって、私はあんたを恐喝したいわけじゃないんだよ、もう、いつまでも泣いてないで」
「恥ずかしい・・・」
「あ、うん、それはそうだと思う・・・」
「警察連れてってくれ」
「貴志、ごめん、冗談なんだから、あんまりめんどくさいボケ続けないでくれる?」
「俺は真面目に反省してるんだ!」
「誰も被害を受けてないのに警察行ってどうすんのさ」
「でも、ハルちゃんに舐めさせて、実の娘とWe can JASで、奈々摘ちゃんとは契ってしまっています」
「あれ?亜季ちゃんは?」
「あいつは異端だ。ロリコンの変態とは無関係だ」
「それが原因なんだと思うんだけど・・・ま、あんたは色々気にしてるみたいだけど、何もやましいことはしていない。清廉潔白な親切なオジサンなんだよ」
「俺が清廉潔白な訳がなかろう!世のロリコンの皆様はノータッチを厳守してても犯罪予備軍というレッテルを張られ、肩身の狭い思いで生きてらっしゃるのだぞ。なのに俺が清廉潔白では申し訳が立たぬではないか!」
「私ね、こないだ女子高生に間違われちゃった」
「ん?それは仕方なかろう、どんな魔法を使ってるのか知らないけど、俺と歩いてて親子に間違われても俺は怒らない」
「それなりの格好したら中学生でも通るかも」
「そうかもしれんが・・・何が言いたい?」
「私に何かしてみるか?合法だぞ」
「フン、合法ロリはロリではない。ロリ道は見た目の問題ではないのだ」
「よし、警察いくぞ」
「ごめんなさい」
冗談で済まされそうだけど、ホーコにとんでもない弱味を握られてしまったのは間違いないのだ。
その昔チン○を握られて、今は弱味を握られて。
俺と柿畑穂子、どうやら死ぬまで友好を深めるしかなさそうである。

「さて、本題に入るか。これ、見てみ」
棚から折りたたまれた新聞を取り出して差し出された。
日付が十日前になっている。
「どの記事だよ」
「これ」
そこには親子三人が失踪と書かれていて、事件か事故に巻き込まれた可能性もあるとみて警察が動いているとの内容だった。
「これなら知ってるよ、わりと近いんじゃなかったっけ」
「それ、西港さんなんだよ」
「えっ?」
「二週間前から行方不明でね。別れた旦那が異変に気づいて捜索願を出してその記事になったんだ」
「おまえ、なんでそんなこと知ってんだよ」
「私の本業と関係があってね。でね、アンタには知っててほしいから言うけど、それ、最悪の展開になったんだ」
「え?」
「結論から先に言うけど、奈々摘ちゃんは、もう亡くなってる」
「はあ!?」
「母親が痛い人でね、自意識過剰の被害妄想で一方的に離婚しておきながら、すぐに男に走って育児放棄。父親が親権を欲しがってたんだけど、自分が産んだんだから自分の物だと言って聞かなくてね。結局母親は新しい男にクスリ浸けにされて捨てられて・・・」
「なんだそれ・・・DQNもいいとこじゃないか」
「DQNで薬物中毒の母親、年頃の娘、経済的に破綻、後は言わなくてもわかるよね」
「やめろよな、奈々摘ちゃんが、そんなこと」
「そう、あの子はまじめないい子だ。でも、弟を人質にとられてね」
「な!」
「最悪だよ。弟を守ろうとしてあの子は身を売ったんだ」
「・・・」
「心だけは犯されまいと頑張って耐え抜いて、弟を連れて帰れると思ったらクスリ入れられちゃって」
「そんな・・・」
「あいつら、弟にまでクスリ入れやがって。三歳児がそんなもん耐えられるわけないのに」
「ウソだろ」
「ものの数分で白目剥いて泡吹いて死んじゃったんだ」
「死んだ・・・夕日朗が・・・」
「それを見てお奈々摘ちゃん、狂っちゃって・・・」
余りに酷い話で俺の理解を超えていた。
そのせいか、次々と語られる惨状に、俺の感情はあまり動かなかった。
「・・・あれ?でも、俺、一週間前にあの姉弟に会ってるんだぞ?おかしいじゃないか」
「うん」
「お前が何か勘違いしてて、本当は今も元気に暮らしてるんじゃ」
「やめて・・・辛くなる」
「・・・じゃ、じゃあ、何だ、何なんだ、俺が会ったのって」
「わかりやすく言えば、幽霊・・・だね」
「あんなハッキリした幽霊なんか聞いたことねーよ!お前だから言うけど、夕日朗は抱っこできたし重さもあったし汗かいてたし、ななちゃんだって触れたし温かかったし会話も普通にできたんだぞ」
「うん、知ってる。っていうか、そう出来るようにしたの、私だし」
「は?  そ、そんなもん、どうやってやるんだよ」
「企業秘密」
ホーコのスキルが謎過ぎる。
職歴や資格が多岐に渡りすぎてるのは知っていたが、陰陽師か霊媒師か潮来まで網羅しているとは思わなかった。
何でもアリ過ぎないか?
ここまで凄いと、ホーコそのものが人間なのか疑わしくなってくる。
「生きてる人間は生きてるだけの責任があるように、死んだ人間にも責任があるんだよ」
「死んだ責任?」
「ちゃんと死ななきゃいけないってことだね。奈々摘ちゃんみたいに」
「俺が、あの子を、ちゃんと死なせた、ってことか?」
「弟くんもね」
「あの子たちを騙した?」
「騙したんじゃない。救ったんだ。こういう無慈悲な酷い死に方をした子供の霊って、往々にして災いを撒き散らす悪霊とか怨念になるんだけど、それを防いだんだから大したもんなんだよ」
「よくわからんが・・・そういえば、すごく寂しそうだった。弱い子だった。弟が大好きで、弟もななちゃんを大好きで・・・」
「あの子たちは今も貴志の分身と一緒にいるよ。すごく仲のいい家族みたいにやってるよ」
「・・・でも、何で俺なんだ?ななちゃんにとってはオッサンだろうに」
「裕未の友達なんだよね?あんた何かまた無責任に優しくしたり楽しい思い出作ってあげたりしたんじゃないの?」
身に覚えがあった。
海に行ったり川に行ったり、花火したりお菓子教室開いたり、お泊りした時は耳掃除までしてあげたっけ。
あの時既に家庭に不和を抱えていたのなら、それはとても残酷なことだったかもしれない。
そして、その記憶が念となって俺の前に現れたってことか・・・。
「あの子はね、アンタに憧れてアンタのような男と幸せに暮らしたいって願ってたんだと思う。だから強烈に貴志に執着できたんだと思う」
「確認なんだが、俺は、奈々ちゃんに、酷いことをしたわけじゃないのか?」
「酷いどころか、あの子の体と心を浄化して完了させたんだ。凄く善いことをしてあげたんだよ」
「そうなのか・・・」
「凄く難しい役目だったんだけど、アンタはあっさりと、しかも完璧にこなしちゃった。本当に凄いと思う」
「俺はただ・・・感じたままに・・・」
「意志薄弱な変態ロリコンの子煩悩ってね、時として貴重な存在になれるんだよ」
「あははは・・・素直に喜べないなー」
ホーコは何も描かれていない掛け軸をじっと眺めていた。
その横顔は穏やかで優しいものだった。
「昨日久しぶりに会ったけど、亜季ちゃん、雰囲気変わったね」
「そうか?いつもの通りだと思うけど」
「もう一人の、と言うか、本当の亜季ちゃんが眠ってないんだよ」
「え?あのポワっとした方?」
「ポワってしてないでしょ?でも、眠ってない。今までは巣の中で由希子に暖めてもらってるだけだったんだけど、もう孵化して雛として急成長してる感じだね」
「由希子の目的が達成されつつあるって事か?」
「うん。貴志、いよいよ頃合だけど、大丈夫?」
「何が?」
「亜季ちゃんに由希子を見てたんなら、寂しくならないかな、って」
「あは!由希子を追い求めてたのは否定しないけど、それはもう昔の話だ。亜季は由希子じゃないし、それに、裕未がいる」
「そっか。整理できてんだね」
「俺達が生きてることへの責任があるように、死んだ者には死んだ責任がある、でいいんだよな?」
「そう」
 この後、近くの蕎麦屋に行った。
予約してあったのか、するすると個室に通され、ほとんど待たずに豪勢な膳料理を出された。
「おいおい、俺、そんなに持ち合わせないぞ」
「おごるって言ったでしょ。貴志にはさっきの花篭を買ってもらおうかな」
「あー、たまちゃんと作ってたやつ?」
「そ。あの姉弟に贈るのに作ったんだ」
「へー、おまえ、いい奴だな」
「あんた程じゃないよ」
「なんだよ、くすぐったいな」
「食べよ♪ここの天ぷら、美味しいんだぞー」
「ああ、いただきます」
「いただきます」
普段賑やかなホーコが、食事中は一言も喋らない。
息つく暇ないぐらいにがっついて食べてる訳じゃなくて、食事に対して真面目というか真摯というか、物凄く礼儀正しく向き合ってるって感じだった。
俺もちょっと真似してみたけど、この食べ方、凄くいい。

急に庭から蝉がけたたましく鳴き始めた。
かなり近いのか凄くうるさい。
なのにホーコは顔色一つ変えずに静かに食事を進めるのだった。






  

 
2014/08/06 09:18:36(lQGfwMwe)
27
投稿者: (無名)
没ルート、没にしただけはあるつまらなさだった。

たかしさん、残念だけどあなたの文章力ではどこに出したって通用はしないよ。
14/08/12 16:23 (hDZjeZM6)
28
投稿者: ししとう ◆mlWKfiIW4s
この作者さん、ええ人やわ。
番外編、おもろかったです。
じゅうぶん血行の促進させてもらいました。

しかしながら、こんなふうに分岐して没られたエピソード、他にもいっぱいあるんと違いますか?
それも興味あるし、本編の結末も気になるし。
まあこんな場所には勿体ないお話でした。
引っ越し先が決まったらプロフィールにでも書いといてください。
お願いします。

14/08/13 22:28 (N.ivF3je)
29
投稿者: (無名)
官能小説でなくても最後まで読みたい作品です。
ぜひ完結してください。
個人的にはこのまま続けても良いと思いますが、新しい所で発表されるのでしたらコメント欄にレスお願いします。
14/08/13 23:09 (3ORRzstk)
30
投稿者: (無名)
飛ばし読みしてしまう。飽きた。

大体子供に何かする時点でクズなのに、主人公の人がいい人ぶってるのがありえない。


もうちょっとクズ感だしてくれたらいいのに。

14/08/14 11:05 (llG8h4Ql)
31
削除済
2014/08/15 20:47:07(*****)
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