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ただならぬ雰囲気を纏って亜季を睨みつけたものだから、これから何が始まるのかと身構えてしまったが、次の瞬間には、亜季から目を逸らして俺の方を向いて近づいてきた。
「ねえ、お父さん、お腹ペコペコ?」 「え、あ、まあ」 「後で私が作ってあげるから、先にお風呂入ろうよ」 「いや、でも、亜季が折角作ってくれたんだからご飯にしようよ」 「私が作ったご飯なんか食べたくないんだ・・・」 「だれもそんなことは言ってないだろうに、裕未が作ってくれるご飯も美味しいよ」 「でも、亜季の方がいいんでしょ」 なんでこんな面倒くさいことになってしまってるんだ。 裕未、お前はどこを向いてどんな歩幅で歩いているんだ?俺にはさっぱり見えてこないよ。 「な、亜季も食べ物は粗末にしちゃダメだって言ってくれよ」 その瞬間、亜季は目をカッと見開き、俺を見つめたまま、ワナワナと震えだした。 驚きと言うより落胆。俺に対する落胆だった。 俺はバカだ。裕未との関係は俺がどうにかしなきゃいけない事なのに、あろうことか一番被害を被ってる亜季に助けを求めてしまった。 みっともない失敗だった。 俺がヘタレと言われるにはそれ相応の理由があるのである。 「もういいです。裕未ちゃんに作ってもらってください。いらなかったら捨ててください」 と言うや、剥ぎ取って丸めたエプロンを握りしめて、二階へ駆け上がって行ってしまった。 テーブルには茄とお肉の味噌炒めと、大根おろしを盛ったぶっかけそうめんが並べてあってすごく美味しそうで、裕未の席にだけ可愛い水ようかんを付けてあった。 亜季も必死だったのが伺える。 食べ物に対して俺以上に執着のあった亜季にとって、捨ててくれなどと言うのは異常中の異常で、そんなことをさせてしまったのが俺の不甲斐ない発言かと思うと、いたたまれなかった。 亜季自身、カッとなったとはいえ、自分が食べ物を捨てろと言ってしまったことを瞬時に悔いたのだろう、走り去る前にものすごく情けない顔で涙を零していた。 「あ~あ、捨てろだって、食べ物捨てちゃダメなのにね」 裕未は嫌味もなく言うのだった。 「亜季ってダメな子だよね」 だから、裕未よ、お前はどうしたいんだ、どうしてほしいんだ、俺に分かるように言ってくれよ。 「ねえ、お風呂入ろうよ、お父さん」 あっけらかんと楽しそうに俺の腕をつかんでくる裕未の笑顔は、本当に天真爛漫だった。 何かしらの悪意が感じ取れたなら、まだよかったのだ。 裕未は、ひたすら楽しそうだった。 テーブルの上のそうめんは早く食べないと伸びてしまう。亜季の手料理なんだから美味しいのは分かりきってるし、お腹も空いていたから先に夕飯にしたかった。なのに、裕未を窘めることができない俺がいた。 未だに裕未への取っ掛かりが見い出せずにいたのである。 二階に上がってしまった亜季が気がかりだったけど、裕未のペースを壊せないヘタレな俺は、なし崩し的に脱衣所で服を脱いでいた。 「そんなとこ置かないの、後で洗うんだからちゃんと洗濯機に入れてよね」 いつの間にかこんなしっかりしたことを言うようになってる。 それはそれで嬉しいんだけど、俺の汗臭い作業服や肌着が放り込まれたところに、裕未の可愛い下着がふわふわと置かれる様は、なんだかそれだけでイケナイ事をしている気分にさせられる。 「ブラはネットに入れて洗わないといけないんと違うか?」 「さすがお父さん、後でそうするよ、ありがとう」 うるさいなーとか言われると思ったのに、褒められた上に感謝までされてしまった。 うん、これは反抗期の欠片もないぞ。 スッポンポンで俺の腕を掴みにくるもんだから、その可愛い膨らみがどうしても当たってしまう。 こうならないために、わざわざあんな遠くの小学校まで行ったのに、何の効果もないなんて・・・。 亜季がしてくれたのだろう、浴槽には綺麗なお湯が張られていた。 手慣れた感じで俺にシャワーをかけてくれる裕未は、髪をくるっと束ねて大きなクリップで止めていて、いわゆる簡易アップなスタイルで、一段と色っぽく見えた。連日の朝シャワーで毎日見ているとは言っても、殆ど見ないようにしているので、ちらちらと見えるその肢体は、綺麗とか可愛いとかというよりも何よりも、邪な好奇心を掻き立てるばかりだった。 さっきの亜季への失言といい、今の裕未への邪心といい、本当に、俺はあの時死んでおけばよかったとつくづく思った。 「はい、お腹の防水シールも剥がれてないし、浸かっていいよ」 これ幸いとばかりに俺は湯船に入った。その湯加減はさすが亜季といった絶妙さで、溜まった疲れが溶け出していくようだった。 裕未はご機嫌なまま自分にシャワーをかけて汗を流している。そのままシャンプーに移るのかと思ったらシャワーが止まった。 「お父さん、ちょっと寄って」 「え?」 ドギマギしている間に、裕未が湯船に入ってきた。 さすがに前を向いて堂々と脚を開くようなことはしなかったが、可愛いお尻をこっちに向けて浴槽の縁を跨ぐ動作は、その、えーっと、位置的に俺の目線の高さに裕未の、その、女の子としての大切な部位があって、それがとてもよく見えて、見ちゃいけないと思いながらも、裕未があっちを向いているのもあって、結局、その、ガン見した次第でございます。 「あ~、気持ちい~」 俺の脚の間に入り込んで、背中を向けて寄りかかりながら、裕未はホケ~とした息を吐いた。 「お父さん、お父さん」 「ん?」 「こうやって一緒に浸かるの、すっごい久しぶりだね」 「あ、そうだな、シャワーは一緒にしてたけど、湯船には浸かってなかったもんな」 「二年振りぐらいだよ」 「そんなに経つか?」 「だって、部屋にベッド入れてもらったの四年生の夏だったし」 「あ、そうなるんだ」 裕未が友達から囃し立てられて俺と手を繋がなくなったタイミングで、お風呂も寝るのも別々になっていったんだった。 娘が父親を嫌うのはどちらかというと成長期や思春期の標準装備だと思ってたので、寂しくはあったけど、覚悟はしていたんだ。 だから、裕未からの申し出に対して、俺は素直に部屋で寝起きできるようにしてやり、風呂も裕未の後に入るようになった。 「二年かぁー、どうりで大きくなるはずだ」 「えへへ、大きくなったでしょ?」 「なったなった、巨大すぎて俺が潰されそうだよ」 「でも、もう止まって欲しい」 「ん?何が?」 「これ以上大きくなりたくないなーって」 「何でよ」 「だって、これ以上大きくなったらお父さん、一緒にお風呂入ってくれないでしょ?」 なんてこった! 美しい乳房にしっかりした陰毛を湛えた裕未は、自分がまだ子供で通ると思っていた! まぁ、確かに子供ではある。 だけど、俺的には、子供カテゴリーに属したいのであれば、ツルペタの無毛で身長は140cm未満が望ましい。 このところの裕未への羞恥心取り除き運動は、効果が有りすぎたようである。 「今でももう限界だと思うがな」 「えー、そんなこと言わないでよー」 と甘えた声で振り向きながら背中を押しつけてくる。背中が押し付けられるということは、その下にあるお尻も押し付けられるということで、その感触をモロに食らったピー様が暴れ出さないように『モンスリーを妊娠させたあとにラナにお祝いされて落ち込むダイスを真似するムスカ』の構想に集中しようとして、あの作品が中年のロリコンが更生するまでの物語だったことに気づいて、一人感動してしまった。だからN○Kで放送されたのかー・・・。 「ねえ、お父さん」 「ん?」 「もしかしたらだけど」 「なんだ?」 「お父さん、意識してチンチンが硬くならないようにしてる?」 「は?」 はい、思考停止いただきましたー。 裕未様が、チンチンと申しました。 それが硬くならないのはわざとかと申しました。 さーて、もう朝まで寝るとするか♪ 「お父さん!しっかりして!こんなとこで寝ちゃだめだって!」 「ん、お、ああ、綺麗なお花畑だった」 「勝手に三途の川渡らないでよ!そんなだから離れられないんじゃない。もう、嫌い、お父さんなんか」 いかん。本当に涙ぐんでる。 ゆったり座ってた裕未が起きざまこちらを向いて俺の顔を触っていた。 俺が死にかけたってのは、裕未にとって本当に重大事件であって、あの時の恐怖が今なお時々蘇ってはパニックを起こすようであった。 もし本当に俺が死んでたらどうなってたか、想像するのも恐ろしい。由希子が死んだ時のホーコ以上に乱心するのは確実なようである。 それだけ愛されてるというのは嬉しい気もするけど、やっぱりいつかは死ななきゃいけない身としては、かなり心配な娘である。 「ごめんごめん、ウソだって、ごめんな」 「もう、死んじゃ嫌なんだからね」 「わかってるって、死なないって」 ポロッと涙をこぼしながら抱き着いてくる裕未を、ふわっと抱きしめた。 鼻をすする音が聞こえて、本当に申し訳ない気持ちになる。 ふっと顔を上げた裕未が、優しく見つめてくる。 「おとーさん」 「ん?」 おでことおでこがくっついた。 「おとーさん」 「ん?」 鼻と鼻がくっついた。 「大好き」 「ん」 ちゅ・・・・・。 そのー、なんだ。 つまり、あれだな。 もしも。もしもだよ。 娘がいてだな、父親である自分に死なないでって泣きついてきてだな、守ってあげなきゃって思わずにはいられない泣き顔でだな、大好きって言われながら、ちゅーされたとして、どーゆーリアクションを取るのが正しいのか教えてくれる人って、この世にいるのかね? いたとしたら、是非とも教えて欲しい。 俺は、動けなかった。 拒絶できなかった。 裕未を引き剥がせなかった。 黙って受け入れるしかなかった。 小さな子供がやるような、唇を尖らせてのチューだったけど、裕未が自分の意志で能動的にしてきたのだ。 夜中に寝ぼけてとかじゃない。頬ずりに紛れての事故でもない。 とうとう娘からの熱いキスを、それも口に、受けてしまった。 「こーら」 「ちゅ」 「ふざけてないで」 「ちゅ」 「裕未」 「ちゅ」 そしてまた首にしがみつくようにして抱き着いてきた。はぅーんと幸せそうなため息をついてじっとしてる。 俺は、そんな裕未を、ふんわり抱きしめるだけだった。 放心状態ではない。 興奮状態でもない。 不思議と罪悪感もなくて、背徳感もない。 物凄く意識して避けてた事態であるにも係わらず、絶望感もないしやっちまった感さえない。 とても意外だったんだけど、裕未とのキス(チュー)は、俺にとって、なんでもない事だった。 「久しぶりだねー」 「ああ」 「昔は、おはようも、ただいまも、おやすみも、全部ちゅーだったもんね」 「そーだったなー。俺がうっかり忘れるとお前、怒る怒る」 「あはは、覚えてるわー、おやすみのちゅーをしてくれなかったんだよね」 「裕未」 「なあに?」 「お前、部屋で一人で寝るの、ちょっと早かったみたいだな」 「・・・うん。そうみたい」 「また俺の部屋に戻るか?」 「いいの?」 「布団は別々だぞ」 「えー」 「えーじゃないよ、もう大きいんだから、一つの布団じゃ無理があるって」 「ダブルサイズ買っちゃう?」 「俺の嫁にでもなるつもりか?」 「やだ、娘にプロポーズしないでよ、危うくOKするとこだったじゃない」 「確かに危ういな」 「どうしてもって言うなら、私はいいよ、お嫁さん」 「どうしてもって言わない」 「言ってよー」 「あのねー、俺たち親子なの。正真正銘の実の親子なんですよ。結婚なんかできるわけないでしょうに」 「えへ、そうでした」 「なあ・・・、裕未」 「え?」 「亜季を許してやれないのか?」 「・・・」 「そんなに憎いのか」 「・・・ううん」 「じゃどうして」 「私、亜季を突き飛ばした」 「ん、そうだな」 「あれで亜季、怪我までした」 「治療中だ。良くなってるよ」 「なのに、亜季って怒らないの」 「ん?」 「お父さんも怒らないの」 「んん?」 「なんで怒ってくれないの?」 「裕未・・・」 「私、悪いことしたんだよ。お父さんの大好きな亜季を怪我させたんだよ。なのに怒られないなんて、おかしいよ」 そういうことか。 なるほど、裕未の言う通りだ。 俺は裕未がショックを受けて可哀相にと思うばかりに、裕未の罪を見落としていた。 あいつは誰かを殴ったり蹴ったりしたことは今まで一度もなかった。 ありがたいことに由希子が持ってた血の気の多さも攻撃性も受け継いでおらず、平和を愛するのほほんキャラだったのだ。 そんな裕未が、全力で人を突き飛ばし、壁に激突させて失神させたあげく数か所に及ぶ打撲を与えてしまったのだから、本人としてはとんでもない罪悪感に苛まれたに違いないのだ。 悪いことをしたという自覚があって、それを見た人と被害者が身近にいて、それで御咎めなしというのは、ある意味理不尽な仕打ちであろう。 まだ幼い心は、それが不思議で、そして気持ち悪かったに違いない。 まるで俺と亜季が陰でこそこそ話し合って、あの子は可哀相な子だからそっとしておきましょう的な口裏合わせがあったと勘ぐったかもしれない。 親の愛情を感じられずに育った子供へのアンケートで『叱られたことが無い』というのが非常に多かったと聞く。 子供のことを大切に思うからこそ、子供の将来を心配するからこそ、親は子を叱るのである。 俺はそれを怠った。 父親失格もいいとこである。 「すまなかった、裕未」 「え?」 「俺はお前を叱るべきだった。叱られなかった分、悪いことをしたという自責に随分と苦しめられたんだろう」 「じせき?」 「自分で自分を責めることだ。これは叱られるより苦しい」 「うん、わかる」 「俺から大切に思われていないのかなとか考えなかったか?」 「思った。どうでもいい子なのかなーって」 「そんな訳ない。お前は大切な愛する我が子だ」 「お父さん」 「死にかけてゴメン。叱るの忘れて、ゴメン」 「ホントだよ。ちゅーを忘れるより酷いよ」 「でもな、俺は裕未を大切に思うのと同じように亜季も大切なんだよ」 「・・・うん」 「あんな辛そうな亜季、見てられなくて」 「うん」 「許してやってくれないか?あいつ、どうしようもない過去を背負っちゃってるんだよ」 「許すも何もないんだと思う」 「え?」 「なんか亜季って、怖い」 「何が?」 「あんな過去があったなんて、無茶苦茶じゃない」 「うん」 「なのに、すごくちゃんとして立派で優等生やってるでしょ?」 「あ、ああ」 「おかしいよ、絶対」 亜季の過去を知ってしまったら、いつかはそこに考えが及ぶだろうと思っていたことだった。 以前の学校では成績も最下位で、発達障害さえ疑われていた。 なのに今や県内トップクラスである。 どんなにお婆さんが有能な家政婦だったとしても、あんな短期間に料理や家事のスキルが身につくはずもない。 亜季に由希子の人格が、って話は裕未にはしないと決めている。 裕未のママは、もう死んでいないんだ。 今更ママの思い出を作っても仕方ないじゃないか。 ずっと一緒にいられるならまだしも・・・。 「あいつはあいつでかなり大きな問題抱えてるんだ。なんとかしなきゃと思って頑張ってる」 「うん、知ってる。ホーコさんも何かしてくれてるんでしょ?」 「ああ、ホーコは本当に頼りになる」 「マブだね」 「マブだ」 「でな、亜季の人格障害を解決したら、亜季はまるっきりの別人になってしまうかもしれないんだ」 「前にちょっとだけなったあれ?」 「そう。あの亜季が、本当の亜季だと思う」 「本当の・・・亜季」 「虐待を受けてた亜季だ」 「それで、私に虐めるか訊いてきたんだ」 「あの亜季は、俺には怒るかどうか訊いてきたよ」 「なんか怯えてるみたいだね」 「怯えてるんだよ。だから、お前に無視されてるの、かなり堪えてると思う」 「無視なんかしてないよ!無視なんか・・・」 「どう見たって無視だろ、アレは」 「だって・・・何から話したらいいかわかんないんだもん」 「ん?」 「許して欲しいのは私の方だよ」 「ん?」 「だって、私の方が酷いもん。なのに亜季の方から許してって言ってくるから、私が謝るタイミングがなくて」 「なんだ?それで意地張っちゃったのか?」 「そんで今日の小学校でしょ?あんなのずるいよ。完全に私が悪者なんだもん」 「俺が間に入るから、悪かったって思ってるなら、まずそれだけでも伝えろよ」 「・・・うん、わかった」 「そうだ、裕未は素直ないい子だ」 「まだお父さんを許してないよ」 「マジか!どうする?叱って欲しい?」 「今更叱られても、ねえ」 「どうしてほしい?」 「うーーーーん」 「お尻ぺんぺんか?」 「それもいいけど・・・」 「いいのかよ」 「そうだ!許してほしかったら1分ちゅーね」 「うっわ、懐かしい」 「お父さんが私のプリン食べちゃったとき以来だから5年ぶり?」 「6年ぶりじゃね?」 「して」 「ちゃんと60まで数えろよ」 「わかんなくなったら最初からだったよね」 「今のお前がそうなったら俺は泣くぞ」 「よーい」 「ちゅー」 裕未の幼少期、俺たちはそんなことをしては遊んでいた。 すっかり忘れていたけど、色々なことを思い出した。 小さな子供だからといって、特に意識せずにやってたけど、改めて考えてみるに、かなり際どいことをやってたんだと思い知る。 お風呂で抱き合ってチューなんて、裕未が保育園児の時には毎日のようにやってた。 由希子が留守がちで俺と過ごす事が多かった裕未。 最近の行動は、あの頃の再現をしようとしているのではないだろうか。 だとすればセックスや妊娠なんて心配する必要なかったんじゃないのか。 目の前でちょっと照れくさそうに顔を赤くして唇を尖らせている娘は、図体こそ大きくなってるけど、何のことはない、中身は保育園児のまんまだったのだ。 「はい、1分」 「えー、ちょっと短い」 「そんなことないぞ、ちゃんと数えてたし」 「へへへ、これで元気になるかな」 「ん?何が?」 「お父さん、1分ちゅーすると元気になるんだーって言ってたじゃない」 そうだった。 裕未は素直すぎた。 俺の口から出まかせを鵜呑みにしては何でも言うことを聞いていた。 このところ感じていた、俺がエロい要求をしても黙って許してくれそうな雰囲気というのは、つまりは昔の俺を疑わない性質が出てきてしまっていたということだ。 「元気だよ、傷の治りも早いし、バリバリ働けるし」 「でも、カチコチンコになってないよ」 「・・・」 「お父さん、無理に我慢してるんだったら、そんなのしなくていいのに」 「ばかもの。娘にそんなもの見せられるわけなかろう」 「お父さん、寝てる時にいっつもなってたんだよ」 「は?」 「疲れてる時や具合悪そうな時はふにゃふにゃのままだけど、元気なときはカチコチンコ」 「それって、つまり、俺が眠ってる間に、チンコがカチコチになってましたよって話か?」 「そうだよ」 「それ、いつから知ってたんだ?」 「いつからも何も、昔からだもん」 「俺は知らないぞ」 「眠ってたもんねー」 「触ったのか?」 「そりゃ、なんだこりゃ!ってなるから」 「触ったんだな・・・」 「遊んだり・・・枕にしたり・・・」 「はぁー・・・」 俺の完全体は、カチコチンコという別名を与えられ、裕未の中でとっくに認識されていたのであります。 しかも玩ばれて枕にまでされていたというのでありますから、とんでもないを通り越して、申し訳ないの限りでございます。 自己暗示型自己嫌悪法という名の自己満足型自己肯定法などする必要などなかったのであります。 「・・・」 裕未が俺の勃起を知っていた。 幼少の頃から知っていた。 その事実を知らされたことで、物凄く気が楽になってしまった。 『なーんだ』となってしまって、裕未に隠す必要などないんだ、と思ってしまった。 「俺はまた、あんなもの見せたら、裕未の教育上よくないと思って必死に隠してたんだぞ」 「男の子のペニスが勃起して~ってもう習っちゃったし、教育上も何も、隠す方が恥ずかしいんでしょ?」 はい、それは俺のセリフでしたね。もっと考えて喋るべきでした。 「俺のチンコがカチコチになってないから、俺が元気じゃないって思ってたのか」 「うん」 「カチコチンコ見たら安心するか?」 「する!見たい!」 「よし、ちょっと立って」 「え?なんで?」 「可愛い裕未の姿を見て元気をもらうんだ」 「えへへ、うん」 浴槽で立ち上がった裕未。 艶々して張りのある肌は、お湯をコロコロと弾いて小さな水玉にしてしまう。 それがまるで宝石をちりばめたようにキラキラして、ただでさえ可愛く美しい裕未の裸体を余計に魅力的にしていた。 ――恥ずかしがる方が恥ずかしい ――俺も隠さないんだからお前も隠すな ――人間なんだから成長するのは当たり前だ 根が素直な裕未は、俺や亜季からの助言の通りに、すごく恥ずかしがって隠していた裸体を、俺の眼前数十センチに惜しげもなく晒してくれた。 まだちょっと照れるのか、頬を染めて前髪で顔を隠すように俯いてはいたけれど、口元は微笑んでいた。 「裕未の体は本当に綺麗だな」 「えへへ、そう?変じゃない?」 「小さいころはどこを触ってもすべすべでプニプニしてたんでよく触りまくってたけど、こうなるとレディとして扱わないといけないな」 「えー、レディなんかいいよぉ、触って触って」 目の前に丸くなった腰つきと少し縮れ始めた陰毛があり、ちょっと見上げると亜季より大きいけど控えめな形のいい乳房が、やや外向きに膨らんで先端の乳首はまだ小さく柔らかそうだった。 その上に、ハニカミながら俺を見下ろす優しい瞳。 亜季との間では成立している『もう勃起を隠す必要がない』という感覚は、男としてのエネルギーの解放というか、とても自由で、自信を与えてくれる。 目の前の異性に対して、理性を持った人間として対峙するのではなく、ただの男としてあっていいというある種の解禁の解放感があるのである。 裕未に促されるまま太ももを触り、お尻を触る。 「お餅みたいなお尻は健在だなー」 「触って触って」 「この弾力は食べたくなるなー」 「食べて食べて」 くるっと向きを変えて俺の目の前にお尻を持ってくる。 恥ずかしながら、これも裕未の幼少期によくやってたことで、プニプニの裕未のいろんなところを俺は噛んであぐあぐしていた。それを裕未は覚えていたということだ。 あぐあぐ・・・あぐあぐ・・・ 裕未の腰に手を添えて、俺は、裕未のお尻を噛んでいた。 幼少期の遊びの再現なのだろうけど、誰が見たって完全にアウトなビジュアルだった。 小学生とはいえ、ブラジャーがいるほどに発育した12歳の娘と入浴し、その娘を立たせてそのお尻をあぐあぐ噛んでいる父親の図・・・。 もしこんなところを亜季やホーコに見られたら俺も裕未も撲殺されかねない。 「きゃはは、くすぐったいよぉ」 「あぐあぐ、あぐあぐ」 「ねえ、お父さん」 「なんだ?」 「私のお尻って気持ちいいんでしょ?」 「ああ、もちもちして最高だ」 「おっぱいとどっちが気持ちいいと思う?」 「そんなものお尻に決まっとる。おっぱいなんかなかったもん」 「今の話だよ」 「今?」 そういうと裕未はまた向きを変えて、俺に覆いかぶさるようにしてきた。 「おっぱい、膨らんでるでしょ?」 「あ、ああ」 「ぺったんこじゃないでしょ?」 「そうだな」 「比べてみて」 「どうやって」 「あぐあぐして」 その可愛くて美味しそうな乳房がもう目の前にあった。 「娘のおっぱいを食べる父親なんて聞いたことないよ」 「じゃあお父さんが最初で最後でいいじゃない」 「でもなー」 「はやくぅ」 「しょうがないな、まったく」 あぐあぐ・・・あぐあぐ・・・ 「はう・・・」 裕未の華奢な胴体に手を添えて、俺は、裕未のおっぱいを噛んでいた。 一番ボリュームがあるところを口に入れたので、必然的に乳首が口の中にあった。時々それが俺の舌に触れてくる。 「お、父さん」 「あぐあぐ、あぐあぐ」 「どう?」 「あぐあぐ、れろれろ」 「あん、くすぐったいよぉ」 「あぐあぐ、はむはむ」 「お父さん、まだ?」 「まだだ。あむ、れろれろ、れろれろ」 「あうぅ、だめ、それ、なんか電気走るみたい」 「ぷはー。うん、やっぱお尻がいいな」 「さんざんあぐあぐしての結論がそれですか」 「ほれ」 「え?」 「カチコチンコになったぞ」 「えっ」 嬉しそうにしゃがんで、とても自然な感じで手を伸ばしてきた。 すっと触って、ふっと握る。 「うわーカチコチンコだー、懐かしい」 まるで旧友に出会ったかのようである。 俺のピーも、まさか裕未に握られ『よっ、久しぶりっ』的な扱いを受けるとは思ってもなかっただろう。 いや、ピーは知ってたのか。 知らなかったのは俺だけだったんだ。 「昔と一緒か?」 「うん、これこれ、可愛いなぁ、カチコチンコ」 「フニャチンも可愛いと思うけどな」 「あれには人格がないもん」 裕未語録に登録決定だ。 フニャチンには人格がない・・・・・・。 カチコチンコにもないんだけどな。 「お前、これで遊んでたって言ってたけど、どんな風にして遊んでたんだ?」 「やったげる」 そう言うと裕未は俺を跨いで膝立ちした。 そして躊躇することなく、カチコチンコを自分の股間に押し当てた。 それは女性が騎乗位になって自分で挿入しようとする動きと全く同じだったのだけど、余りにスムーズな動きだったので、俺は何の反応もできなかった。 「こうやってね、私のお股にくっつけてたの」 「はい?」 「だって、こんな可愛いのに私には生えてこないなんてズルいって思っちゃって」 「はあ」 「私のお股にくっつけたら私の物にならないかなーって」 「はあ」 「一度ハサミで」 「やめてくれよ!身の毛がよだつっ!」 「だから私にも生えろ生えろって言いながら、お股にくっつけて遊んでたの」 「あの、そこの裕未さん?」 「ええ、何かしら、お父様」 「それって、パジャマ越しですよね」 「それじゃ何もできませんわ」 「と、いうことは、着衣は」 「もちろん取り払っておりますわよ」 「俺も、裕未も?」 「当たり前ですわ。そうでなければくっつきませんもの」 「それって、もう、その」 「へへへ、ほとんど、セックスだよね」 「ですよね」 「赤ちゃんができる仕組みを習った時、びっくりしちゃった。私、これしたことある!って思ったもん」 「でも、い、い、入れて、ないんだろ?」 「そりゃこんな大きなもの、入るわけないでしょ」 「はー、よかった」 何がよかったんだか。 まさか裕未が俺のピーで疑似セックスをして遊んでいたとは思わなかった。 お人形みたいに振り回して話しかけてる程度だと思ってたのに想定外も甚だしい。 でも女の子って、自分にチンコが無いことに不満を抱く場合が多いらしいな。 弟のを見て不公平だと騒いで、それを理由に虐める姉がいるというのを聞いたことがある。 そうすると、ハルちゃんみたいなチンコ星人って、実のところ物凄い数が潜んでいるのかもしれないぞ。 現に裕未が言ってることとやってることは立派なチンコ星人だ。 「・・・ねえ、お父さん」 「ん?」 「今なら、入るかな」 「は?」 「あの頃は私小さかったし、女の子にそんな穴があるなんて知らなかったし、でも、今なら」 「だめだめ、何を言い出すんだよ、この子は」 「おとーさん」 「ん?」 「私のファーストキスは、お父さんだよ」 「そんなもんカウントするな」 「私の初めては、お父さんがいい」 「馬鹿な事言ってんじゃないよ」 「でも、もう、くっついてるよ」 「離れなさい」 「お腹がジンジンするんだもん」 「ダメだ」 「おとうさん」 「こら、やめなさい」 裕未はうっとりとした顔で腰を沈めにかかった。 このポジションそのものが危険極まりないのは分かってたんだけど、幼少期の遊びの再現をしてるだけだと思って完全に油断していた。 さっきからキスしたりお尻を噛んだり乳房を舐めたりしていたのは、もう残念なぐらい愛撫だったのだ。 その上、俺の知らない昔話を聞かされ、その衝撃的な内容を整理している間、裕未はカチコチンコをずっと股間に擦りつけていて、いつの間にか膣口に正確に導かれていたのだ。 まだ数回しか機能していない若い卵巣から吐き出された新鮮な卵子が、その目的を果たすべく精子との出会いを求めて卵管を転がり、若く清らかな子宮は着床の準備を整え、未開の膣は、充血し熱く潤っている。 裕未の細胞の全てが俺を求めているかのような感覚に包まれ、どんどん力が抜けていった。 これだけは避けないとと思ってるのに、これを避けるために頑張ってきたのに、どうして力が湧いてこないんだ。 「あ、入るよ」 「こら、ダメだって!」 「あううっ」 「こら!裕未!」 「ああん、お父さんの、大きい・・・」 カチャ 「あー、今日も暑かったなー、汗かいたなー、疲れたなー」 キュッ、ザーッ 「シャンプー、シャンプー」 ガシガシ、ゴシゴシ 「フンフンフン♪ フフフンフン♪」 キュッ、ザーッ 「トリートメント♪コンディショナー♪タオルで蒸し蒸しフンフンフン♪あ、どうぞ続けてください、私のことなど御気になさらず」 ゴシゴシ、ゴシゴシ 「やっぱりボディソープは牛乳石鹸に限るねぇ~、あーきもちい」 ゴシゴシ、ゴシゴシ 「あれあれ~、私がいれたお風呂なのにいっぱいですね~、私がいれたお風呂なのに私が入れないなんて、おかしな家ですね~」 キュッ、ザーッ 「やれやれ、まあ今夜も暑そうですし、シャワーだけで済ませますか」 シャコシャコシャコシャコ、グジュグジュペッ、ガラガラガラガラ~ペッ 「ふー・・・・・・・・・・・そこの親子。キモいにも程があります。もうこんな家には住めません。出ていきます。さようなら」 カチャ スタスタスタ・・・ 「ちょっと待ったー!」 助かった。 亜季が入ってこなかったら俺が裕未の中に入ってしまうところだった。 復活したパワーで裕未を跳ね除けて亜季を追った。 「待て!待ってくれ、亜季!」 「何ですか?もう荷物はまとめてあるんですから邪魔しないでください」 「助かった、よく来てくれた、感謝する」 「触らないでください、汚らわしい」 「それは否定しない!だが、待ってくれ」 俺はどうしていいか分からないまま亜季に土下座した。 「裕未!お前も来い!」 俺の叫び声に素直に反応した裕未が小走りにやってきて並んで座った。 「亜季、出て行かないでくれ」 「亜季、いろいろごめんなさい」 床に額を擦りつける俺たちをどんな顔して見てたのかわからないけど、亜季はその場に居つづけてくれた。 「あなた達、何をしてたんですか?」 「その、裕未が小さかったころの遊びを、だな」 「裕未ちゃん、本当ですか?」 「本当です」 「二人とも姿勢を正してください」 「はい」 俺と裕未は上体を起こし、亜季に向き合った。 「たっくん、それはなんですか?」 「それと言いますと」 「体の中心でヒクヒクしている一つ目小僧のことですよ!」 「わーお!」 なんてこったい、フル勃起したまんまだった。 「裕未ちゃん、それを自分の膣に入れようとしてましたね?」 「い、い、いえ、滅相もございません」 「ああん、お父さんの、おっきい、って聞こえましたけど、どんなシチュエーションならそんな言葉が出るのか教えてくださいよ」 「あ・・う・・」 「入れようとしたんでしょ?」 「・・・」 「それとも、もう入れちゃったんですか?」 「い、いえ、まだ」 「まだ?じゃあ入れようとしたんじゃないですか」 「はい・・・しました」 バチン! びっくりした。 物凄いビンタだった。 裕未の首が吹っ飛んだかと思った。 あまりに強烈だったので裕未もキョトンとしているじゃないか。 「阿呆!」 「あ、亜季」 「こんな優しいお父さんを捨てる気ですか!」 「・・・」 「もう、信じられない、こんなの、親子で、気持ち悪い・・・・」 「ごめんなさい」 「いい加減にしてください」 「ごめんなさい」 「わたしも、ごめんなさい」 「う、う、うぇええーん」 「うわぁぁーん」 裕未が亜季に謝って泣いた。 亜季が裕未に謝って泣いた。 俺は、床に手を着いたまま、そんな二人を見ているだけだった。 人間、生きていると何が起きるかわからないのであります。 とある田舎の夏の夜、オッサン一人と小学生女子二人が、スッポンポンのままで妙な時間を過ごしております。
2014/05/10 17:17:04(Gk3E4rip)
投稿者:
(無名)
そろそろ禁断症状がでてきてます。
次作をカリ首をながくして待ってます。
14/05/30 22:10
(UNtOnhPE)
正直、私自身も圧倒的多数意見と同じで、あくまで、フィクションの官能小説家だから、読み手が満足出来れば良いと思いますよ!続編も期待して待ってますね(*^^*)
14/06/04 00:02
(70R8sQvl)
投稿者:
ヒロミ
たかしさん、続編楽しみにしてますねー。^^
14/06/07 02:06
(bQoDjmHd)
投稿者:
愛読者
上げ
19/01/18 11:08
(Zdt92FbD)
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