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可愛い弟子 40
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ロリータ 官能小説   
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1:可愛い弟子 40
投稿者: タカ ◆mqLBnu30U
――第40話――



いつの間にか横になっていたらしい。
何かあったのかしらと、心配しているうちに、シホは、うつらうつらと眠り込んでしまった。
ファミレスで別れたきり、タカは戻ってこない。
驚かせようと思っていたから、部屋の中は真っ暗なままだった。
テレビの電源も切ってある。
暗闇の中にぼんやりと視線を漂わせた。
さっきまで眺めていた白い裸体が、暗い空間に残像のように甦る。
久しぶりに見たミノリは相変わらず細くて白かった。
意外なほど子どもらしい顔つきだったミノリは、ペニスを頬張る仕草にも、まだ初々しさがあった。
当たり前だ。
きっとあれは、ツグミと一緒にいた頃のミノリなのだ。
笑うと口元に八重歯が覗く可愛らしい子だった。
いつもツグミの傍から離れなくて、姿が見えないと泣いてばかりいた。
そのくせツグミを奪われそうになると、豹変したように凶暴になる。
よく揉め事を起こして和磨から折檻されていた。
母親と一緒に脱走したと聞いたときは正直ホッとしたけれど、まさかコトリと同じ施設に収容されていたとは思わなかった。
そのミノリがコトリの首を絞めて殺しかけた。
間違えたのだ。
きっと、ミノリはツグミとコトリを間違えたのに違いない。
似ているけれど、ふたりは違う。
ミノリは、Thrushにいた頃から、少し精神を病んでいた。
とても気の弱い子だった。
哀れには思うけれど同情は覚えない。
理由はなんにせよ、コトリを手に掛けたことだけは絶対に許せない。
あのひとが教えてくれなければ、そんな恐ろしいことがあったことさえ、わたしは知らずにいるところだった。



4年前・・・。

『コトリがっ!?』

父に言われて、五所川原のメモリーカードを重丸に渡す役目を任された。

『ちょっと待って!どうしてあの子がそんな目に!?』

重丸と会っていたのは、彼が指定してきたホテルの地下駐車場。

『詳しい原因はわからん。だが、取りあえずコトリちゃんの命に別状はないから安心しろ。』

安心って・・・。

『安心できるわけないじゃない!あなたを信じて置いてきたのに、こんな事になるならわたしと一緒にいたほうが安心できたわよ!』

そんなことができないことは、わたし自身が一番わかっていた。
あの子をわたしと同じ目に遭わせたくない。
その思いだけで必死に堪えていた時期だった。

『落ち着け。取りあえずコトリちゃんは無事なんだ。首を絞めた子も今は違う養護施設に送致してある。同じ事件が起きる心配は、もうないんだ。』

園を出てから4年が経っていた。
たまにこっそりと物陰から眺めたりしたことはあったけれど、あの子を腕に入れなくなってから久しかった。
胸に抱いていた頃の温もりは、いつまで経っても消えてくれなくて、思いっきりコトリを抱きしめることのできない切なさに枕を濡らす日々が増えていた。
会えば不幸にしかならないとわかっていたけれど、どうしてもあきらめることができなかった。
そんなときにコトリが殺されかけたと聞かされた。
普通でいられるわけがなかった。

『誰なの?・・・。』

コトリに手を掛けた相手の子が許せなかった。

『それを知ってどうする?お前には関係ないことだ。』

『関係ないわけないでしょ!?コトリはわたしの子なのよ!ねえ!誰なの!?いったい誰がコトリにそんなひどいことをしたのよ!?』

相手の子を殺してやりたい。
ううん・・そんなこと、ほんとは思ってなかった。
あの子のそばにいてやれない自分が情けなかった。
そばにいて助けてあげられなかった自分が、呪わしかった・・・。

『お前にそんなことが言えるのか!?お前は、あの子を捨てたんだぞ!あの子を見捨てて、アイツの元に帰ったんだぞ!』

その頃の重丸は、わたしの素性を知っていた。
再会した彼に、ある程度の事情は打ち明けていたからだ。
父と旧知の仲だったことはわたしも驚いたけれど、それは重丸も同じだった。
いいえ、彼のほうが何倍もショックを受けていた。
高校時代のライバルはヤクザになり、まだ幼い自分の娘に売春を強要するようなひとでなしになっていた。
正義感の強い彼がショックを受けないはずがなかった。
でも、すでに政界に転じようとしていた彼に、打つべき手なんてなにもなかった。
彼の頼みとしていた政治家たちは、みんなうちの顧客だった。
何もできないとわかっていたから、事情を打ち明けることもできた。
それは、父からコトリを守ってもらうためだった。

『仕方がないじゃない!そうしなければコトリだってわたしと同じ目に遭わされるのよ!置いてくるしかないじゃない!助けたいから置いてきたんじゃない!』

半分はほんと、半分は嘘。
コトリを守りたかったのは嘘じゃない。
でも本当のところは父に会いたくて、自分から逃げ出したのだ。
もし、あのときわたしがコトリを連れて一緒に逃げていたら、重丸が運ぶトランクの中に入っていたのはわたしではなく、コトリだったのかもしれない。

『お前が、正直に打ち明けてさえくれていれば・・・あのとき、アイツのことを教えてくれてさえいれば、まだ、救うことはできたんだ・・・。』

確かにそうかもしれなかった。
出会って間もない頃であったなら・・まだ父が政治家たちを後ろ盾としていない、あの時期であったなら・・、彼にだってなんとかすることはできたのかもしれない。
でも、再会した頃の重丸には、もはやそんなことは不可能になっていた。
その頃の彼は、身の丈に合わない大きな力を手に入れようとして、自分の信念を曲げざるを得ない状況に追い込まれていた。
だから、彼だって、わたしを責めることなんてできなかった。
案の定、彼はすぐに口を噤んだ。
わたしがコトリを捨ててしまったことを後悔していたように、重丸もまた、強大な力を得るために自分の信じる正義を捨ててしまったことを後悔していた。
重丸と久しぶりに再会した日のことは、今でもよく覚えている。
県の臨海工業地帯造成工事が決定する2ヶ月前、意外なところで、わたしたちは再び巡り会うことになった。



父が五所川原に食いついてから3度目のプレイをしていた日だった。
ホテルの一室で、わたしはいつものように五所川原のオモチャにされていた。
何をされても逆らうなと、父から言われていたわたしのお尻の穴には大きなバイブ。
後ろに回した両手には手錠をはめられて、胸には幾重もの縄が巻かれていた。
お尻は鞭で打たれて真っ赤になっていた。
ヒリヒリと痛むお尻を強く握られながら、わたしは五所川原のお腹の上で喘いでいた。
お爺ちゃんだから、簡単に大きくはならなかった。
大きくならないくせに、五所川原は自分の身体でわたしを虐めたがった。
五所川原の腰に巻かれていたのはペニスバンド。
大きなディルドで下から串刺しにされ、お尻の穴にバイブまで入れられて、わたしは五所川原のお腹の上で悶絶していた。
子供にあんな非道いことがよくできる。
でも、それが彼らの愉悦。
興奮しきって、わたしを突き上げることをいつまでもやめようとしない五所川原の心臓が、いつ止まってしまうのではないかと、そればかりが気がかりでならなかった。
どんなに非道いことをされたって、慣れていたから苦じゃなかった。
身体は未熟なままだったけれど、セックスはベテランになっていたし、変態的な行為にも慣れていた。
父の愛し方に比べれば、あんなお爺ちゃんがしてくることなんて子供のお遊戯みたいなもの。
だから、全然平気だった。
精一杯、身悶えながら泣いてあげた。
甘い声で、許してくださいと、壊れたテープレコーダーのように何度も繰り返してあげた。
皮膚が乾燥しきった染みだらけの老人は、終始、喜悦に歪んだ笑みを消すことはなかった。
そこは誰にも邪魔されない彼だけの城だった。
ホテルのオーナーから提供されていたプライベートルーム。
そこで五所川原は、父が差し出す子供を気の済むまで嬲り、犯すだけでよかった。
もっと極端なことを言えば、子供を殺してしまうことだってできた。
彼には、それだけの権利が父から与えられていた。
利権絡みの情報と引き替えに与えた権利だった。
もちろん警戒心の強かった五所川原は簡単に情報を漏らさなかった。
だから、わたしが送り込まれた。
彼の性癖を満足させて、なおかつ彼の口走る情報を生きて持って帰ることのできる子供。
そんなことができるのは、わたししかいない。
不思議と身体は幼いままだった。
背も低いままだったし、胸は膨らんでいたけれど、標準的なサイズからいえばずっと小さな方だった。
おかげで娼婦らしく派手なメイクをしてしまえば、年齢なんか簡単に誤魔化せた。
きっと五所川原は、最後までわたしを子供だと信じていのに違いない。
もう16歳になっていた。
でも、わたしはいつまでも子供の姿のままで、そして、いつまでも父の傀儡のままだった。
その日もトリヤマが、トランクに詰めたわたしを部屋まで運んでくれた。
でも、帰りは違う男がわたしを運ぶことになっていた。
本間会と繋がりのあった五所川原は、阿宗会の一員であった父たちとの接触を嫌い、わたしの受け渡しを第3の男にやらせることにした。
五所川原の地盤を引き継ぐかもしれない期待の新人、彼の子飼いの部下。
五所川原には、その新人に足枷をはめる目的もあったのだと思う。
主人の蛮行を知って、なおも口を噤むようならば、これからも信用できる。
でも、そうでないのなら、期待の新人くんは、父たちの手によってすぐにでもこの世から消されていたかもしれない。
ドアがノックされて、期待の新人が現れた。
そこに現れた男の顔を見て驚いた。
銀縁メガネの奥に輝いていた涼しげな瞳。
シホお姉ちゃんと同じ目をした男は、五所川原のお腹の上で無様に悶えるわたしの姿をその瞳に映して、真っ先になにを考えたのだろう。
重丸は、目を見開いて声を失っていた。
予想もしていなかったことだから、わたしだって悲鳴を上げることさえ忘れていた。
結果的には、それが良かった。
顔を背けて俯いてしまったわたしを、五所川原は恥ずかしがっているものと勘違いした。
わたしと重丸が知り合いだなんて気付きもしなかった。
驚いていたのは重丸も同じだったけれど、すぐに平静を装い、表情に出さなかったのはさすがだと思う。
五所川原は、やめるなと、わたしにいった。
拒むことはできなかった。
でも、もう声を出すことはできなかった。
震えるわたしが五所川原には面白くてならなかった。
いつになく乱暴に突き上げて、愉快げに声を出して笑っていた。
重丸は、ひと言も声を出さなかった。
彼は、彼の後ろ盾とする醜悪な老人の蛮行が終わるのを、ひたすら声を殺して待ち続けた。
無表情な重丸の態度が、五所川原にはつまらなくなったらしい。
ようやく飽きてくれて、わたしは解放された。
手錠が外され、重丸の見ている前でアナルからバイブを抜いた。
その太さと大きさは、彼の目にどのように映っていただろう。
胸に巻かれた縄を外すのに苦労していると、重丸が手伝ってくれた。
わたしの背中で黙々と縄を外す重丸の姿を五所川原は満足げに眺めていた。
子飼いの部下は、完全な忠犬となった。
五所川原の為に汚れ仕事もこなす忠実な犬であることを証明した。
重丸は、五所川原のテストに合格したのだ。
重丸の見つめる目の前で着替えた。
床に落ちている縄やバイブを拾って、トランクの中に仕舞い込んだ。
来たときと同じようにその中に隠れると、ふたを閉めてくれたのは重丸だった。
彼は一切、わたしに話しかけなかった。
目を合わせようともしなかった。
ただ一度だけ、トランクのふたを閉めるときに見上げていたわたしと目が合った。
その時の彼は、怒っているような悲しんでいるような不思議な目をしていた。
重丸にトランクを引かれて、わたしは部屋を出た。

『生きていてよかった・・・。』

エレベーターに乗せられて下に運ばれるとき、やっと重丸が口を開いた。
悲しげな声だった。

『コトリちゃんは、元気だ・・・。』

その声を聞いて、わたしは泣いた。
もし、コトリのことがなければ、わたしは重丸とこれほど深い接触を繰り返すことはなかったかもしれない。
それからというもの、重丸からは、ことある毎に父から離れろと忠告されてきた。
青春時代をともに過ごしながらも、その頃はすっかり敵同士だったふたり。
何を言われても、わたしは耳を貸さなかった。
父を欲しがって堪えきれない夜を過ごしたあすなろ園での暮らしが身に染みていた。
あの時の切なさがいつまでもわたしを父から離さなかった。
でも、コトリが大きくなるにつれて会いたい気持ちが大きくなっていくと、いつからかわたしは父とコトリを天秤にかけるようになっていた。
そして、次第にコトリへの傾斜が大きくなり始めていた頃に、コトリの事件が起きたのだ。

『2週間ほど前に駅で保護した女の子だ・・・。』

『え?・・・。』

重丸は、興奮していたわたしを落ち着けようとしたのかもしれなかった。
溜め息を吐きながら、コトリを襲った女の子のことを教えてくれた。

『深夜の駅をさ迷っていたんだ。真っ白な服を着て、裸足でホームをうろついていた。今のお前と同じくらいの歳の女の子だ。お母さん、お母さんと言うだけで、他には何もしゃべらない子だった。だから、その子が何者なのか、今もほとんどわかっていない。どうしてコトリちゃんにあんなことをしでかしたのかも同じだ。精神的に不安定そうな子だから、発作的にあんな・・・。』

『ミノリだ。』

真っ白な服と聞いて、すぐにわかった。

『え?』

『それってミノリだ。』

ミノリは、異常に白い服ばかり着たがる子だった。

『お前・・・その子を知ってるのか?』

意外そうな瞳が見つめていた。
その瞳を見つめ返しながら、頷いた。

『2週間前にうちから逃げ出した子。今もみんなで捜してる。』

『逃げ出したって・・・どこから?』

わたしはすぐに口を噤んだ。
重丸には、ほとんどのことは話していたけれど、Thrushのことだけは、ひたすら存在を隠していた。
だから、わたしたちがデリバリーされることは知っていたけれど、その供給元がどこであるかまでは掴んでいなかった。
あそこだけは口が裂けても言えなかった。
Thrushの存在を教えてしまったら、わたしの帰るところがなくなってしまう。
押し黙ってしまったわたしを見て、重丸は大きな溜め息を吐いただけだった。
政治家の傀儡に落ちていた重丸は自分の無力さをわかっていた。
わかっていたから、彼はできもしない大言壮語を吐いたりはしなかった。
それだけでも、彼の誠実な人柄がうかがえる。
本当の悪人とは、できもしないことを平気で口にするひとだ。
騙すことに慣れているから、どんな大きな嘘だって平気で口にできる。
これまで嫌というほど、そんな大人たちを見てきた。
政治家なんて、まさしく嘘つきな大人の代表みたいなものだ。
その政治家に、わたしは命を狙われていた。

『どうして?・・・。』

『お前らは、やり過ぎたんだよ・・。越えてはならない一線を越えてしまったんだ・・。』

重丸は淡々と話してくれた。
五所川原を騙したことでわたしがとても危険な状態にあること。
タイペイマフィアがわたしを捜していること。
そして・・・。

『なあ、ツグミ・・。』

みんなは、わたしをツグミと呼んだ。
父もトリヤマも、Thrushにいたみんなも、そしてわたしの素性を知ってからはこの重丸でさえも、わたしを「ツグミ」と呼ぶようになった。

『お前に話したかったのはコトリちゃんのこともあったが、もうひとつ大事なことがあるんだ。』

あの日、重丸がわたしにだけ、そっと教えてくれたこと。

『和磨は、明日から消える・・・。』

その企みをわたしは父に教えなかった。
父を愛していたけれど、それよりもコトリと一緒に暮らしたい気持ちが強かった。
コトリが殺されかけたと知ってからは、なおさらだった。
それを期待して、重丸は教えたのだろうけれど・・・。

『ずっとコトリと・・・一緒にいられる?』

『ああ・・・。』

向けられていたのは、シホお姉ちゃんと同じ瞳。
わたしは決めた。

『三日後だ。三日後に必ずコトリちゃんと一緒に迎えに来る。』

その言葉を信じた。
ううん、シホお姉ちゃんを信じたんだ。
わたしを守ってくれたやさしいお母さん。
コトリの名前を授けてくれたマリア様。

『今日から僕が、君たちのお父さんだ。命に替えても必ず守ってやる。だから、僕を信じてくれ。』

約束の三日後、大言壮語を言うことのなかった重丸が自信満々に約束してくれた。
罪深さはあったけれど、後悔はなかった。
その日、わたしは長年住んだ街を重丸とともに離れた。
腕に中にしっかりとコトリを抱きしめながら・・・。



 
2015/06/08 21:42:26(PGv6IB01)
7
投稿者: タカ ◆mqLBnu30U
――第46話――



どうしよう・・・・。

浮かれていた自分が悔やんでも悔やみきれない。
でも、ここで悩んでいたってしかたがない。
シホは、外に飛び出して、助けを呼ぶべきかと考えた。
もし、父が襲いに来たのなら、事態はかなり切迫している。
トリヤマたちも、たぶん一緒だ。
過去にも、何組かの母子を誘拐したことがある。
手際がよくて父が褒めていた。
もし、彼らも一緒なのだとしたら、とても逃げられない。

でも、そうじゃなかったら・・・・。

都合のいい展開がシホの頭に浮かんでしまう。
間違いだったら、人騒がせな近所迷惑をかけてしまうだけになる。
信じたくない気持ちが、無理に気のせいだとシホに思い込ませようとした。
2階の隣りに住んでいるのは、海上保安官の家族。
以前、緊急な呼び出しを受けたらしく、やはり今と同じように夜中に慌ただしく出掛けていったことがあった。
今夜も、きっとそうに違いない。
無理に思い込もうとしたけれど、今夜は出掛けたのではなく、こちらに向かってきた。
2階に上がっていった足音は、あれからまったく聞こえてこない。
シホの部屋は、2階の南側にあって、タカの部屋は1階の北側にある。
対照的な位置にあるから、床の軋む音もまったく聞こえてこなかった。

やだやだやだやだ・・・。

泣きたい気持ちになった。
でも、ここにじっとしているわけにもいかない。
部屋には、コトリがひとりで眠っている。
あの子をこのまま放って置くわけにはいかなかった。
足を震わせながら、シホはそっと窓に忍び寄って外の様子を確かめようとした。
そのときだった。

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッァァッッ!!!!!」

突然聞こえてきた叫び声。
あれはまさしくコトリの悲鳴。

コトリっ!!!

下着姿なのも忘れて、シホは裸足のまま玄関を飛び出した。

「コトリっ!!!」

外に飛び出して見上げてみると、どたん!ばたん!と、もの凄い音が自分たちの部屋から聞こえてくる。

なに?いったいなにが起こってるの!?

その時、不意に視界を塞いだ黒い影。

「お前、ツグミだな・・・。」

見知らぬ男が、目の前に立っていた。



15/06/08 21:56 (PGv6IB01)
8
投稿者: タカ ◆mqLBnu30U
――第47話――



小さな口から放たれた、ものすごい悲鳴。
鼓膜が破れるどころか頭蓋骨が割れるかと思った。

「うぉおおおおおおおおおおっっっっ!!!!」

咄嗟に耳を塞いでも、まだ頭の中に響いてきやがる!
超音波兵器かよっ!
タンとハツは、悲鳴を上げながら床の上を転げ回った。

「誰だ、お前ら!」

やっと悲鳴が止んだときには、コトリがベッドの上で仁王立ちになっていた。

「こ、こら、おとなしくしろ!」

コトリを捕まえようとハツが咄嗟に掴みに掛かる。

「ごへっ!」

途端に顔が仰け反り、悲鳴を上げた。
下から思いっきりあごを蹴り上げられていた。

「なにしてんだバカ野郎!」

タンが腕を広げて捕まえようとしたが、容易くかわされ、するりと逃げられてしまう。

なんて、すばしっこいガキだ。

「お前ら、ドロボウだな!うちには盗るようなおかねなんて、どこにもないからね!」

自慢になるか、ガキ!!

コトリは寝室から逃げ出して、今度はリビングテーブルの上に仁王立ちになっていた。

「いい子だから、おとなしく来い!」

タンが凄んでみたが、まったくの無駄。

「コトリ、いい子じゃないもん。」

怖がる様子もない。

「さっさと捕まえろ!」

二人がかりで追いかけた。
リビングは狭い上に、テーブルやイスが邪魔をして、なかなか捕まえられない。
おまけに、ふたりとも大男だから、肉厚の身体が邪魔をしてうまく回り込めない。
加えてコトリの並外れた身体能力。
ようやく追い込んで両側から挟んで捕まえようとした。
タンとハツが呼吸を合わせ、1,2で突っ込んでいくと、いきなりコトリの小さな身体が消える。
上に跳んでいた。
目標が不意に消えて、目の前にあったのは互いの顔。
たいそうな勢いで飛び込んでいったものだから避けようがなかった。
ごつっ!と派手な音がして、目の前に火花が散った。
タンとハツが床の上で悶絶しているところに、上から聞こえてきたのは「バーカ」と勝ち誇ったコトリの憎まれ口。

「このガキ!!おとなしくしねえと、ケツ引っぱたくぞ!!」

「あら?SM?ちょっと興味あるかも。」

どこまでませたガキなんだ。

目の前にあった足を捕まえようとタンが飛びかかるも、たちまちコトリの姿は消えてしまう。

くるりと一回転して、コトリの身体は手の届かないところに。

テメエは、猿か!!?

「ハツ!入口塞いどけ!!」

退路を断って追い込むことにした。
ハツが鼻を押さえながら、逃げ出さないように玄関口に立ち塞がる。
これなら逃げ出せまい、とタンが余裕の笑みを浮かべたのもほんのわずかのこと。
笑みを浮かべたのはコトリとて同じ。
どちらかといえば、こっちのほうがずっとズルくて悪どい顔だった。
ニヤリと笑ったコトリが、玄関を塞ぐハツに向かって照準を合わせる。

ああ?

だんっ!、とコトリが床を蹴った。
構えたコトリを訝しむ暇もなく、あっという間に小さな身体がハツの目の前に跳んでくる。

「あちょーーー!!!」

ものすごい跳躍力。
鋭く突き出していた片足。
速過ぎて反応する暇もなかった。

「ごわっ!!」

コトリのかかとが、ものの見事にハツの顔面にめり込み、100キロを超す大男が玄関を突き破って豪快に吹っ飛んでいく。

「ハツ!!」

慌てたのはタンだ。

「このガキャぁぁっっ!!!」

怒りに我を忘れて飛びかかったところでアウト。
コトリにひょいと身体をかわされ、おまけに足まで引っ掛けられて、タンも勢いそのままに外に転がりだした。

「コトリちゃんを舐めんなよ!!!」

廊下の手すりの柵に引っ掛かって、重なるように尻餅をつくふたりの目の前で、勝ち誇ったように立っていた女の子。
顔の愛らしさにすっかり騙された。
タンもハツもすっかり忘れていた。
ふたりを見おろしていたのは確かにツグミの娘だが、同時にあの方の落とし胤。
そう、こいつは間違いなく、あの人類最強ティラノサウルスの娘。


15/06/08 21:57 (PGv6IB01)
9
投稿者: タカ ◆mqLBnu30U
――第48話――



(キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッッッッ・・・)

トリヤマが、今や遅しと合図を待ち構えていたところに、突如聞こえてきた、まさしく絹を裂くような女の悲鳴。

な、なんだぁ?・・・。

ウインドウを閉め切った車内の中まで、はっきりと聞こえた。
アパートまでは、およそ100mの距離がある。
何事かと目を凝らしていると、そのうち大男がふたり、玄関から転がり出てきた。
まさしく、すっ転びながら飛び出してきた。

な、なにやってんだ、あいつ等・・・。

「トリ!!出せっ!!」

驚いてる暇はなかった。
異常を察した和磨の反応は素早い。

「へいっ!」

素早くシフトレンジをドライブに入れた。
一気にアクセルを踏み込んだ。
ものすごい白煙を上げて、後輪が空転する。
バックシートに背中がめり込む。
黒い車体が、どう猛な猟犬のごとく走り出す。
トリヤマは、ハンドルを握りながら、猛然とベンツをアパートへ突っ込ませていった。



15/06/08 21:58 (PGv6IB01)
10
投稿者: タカ ◆mqLBnu30U
――第49話――



パールピンクの車体が流れるように国道を走っていく。
いや、流れてたのは他の車だけ。
やたらと追い越していく車の多かったこと。
ハンドルを握っていたのは、将来の女性警察官シノちゃん。
文武両道、才色兼備な大和撫子は、制限速度だってちゃんと守れる、しっかりとした良い子。

気持ちは、わかるんだけどね・・・。

まあ、遅かったこと。
制限速度40キロって、こんなに遅いものだとはじめて知ったよ。
あまり大きな声では言えないが、日頃からこの倍の速度で移動していたオレ。
ちょっとした新鮮な驚きだったね。
おかげで新しい牛丼屋ができたことも知ることができたわ。
感謝、感謝。
なんて思うわけない。
市街地を走っていた。
病院からレンのマンションまでは、およそ車で20分の距離。
ただし、オレが運転していれば、の話し。
すでに病院を出てから20分以上が過ぎていたが、レンのマンションには、まだまだ辿り着けそうにない。
遅かったのはシノちゃんの性格もあるが、やたらとその日が混雑していたせいもある。
日頃はそれほど混まないはずの国道に、なぜか車両が溢れて所々渋滞していた。
それから5分ほど走って、ようやく理由がわかった。
道路脇で他車を威嚇するように回転していたパトライト。
それも1台だけじゃない。
ずらりと列を成していた真っ赤な回転灯。

なんだ、あれ?

近づくにつれ、はっきりと見えてきたのは蛍光塗料で書かれた「ご協力ください」と「検問」の大きな文字。

検問?

市街地の出入口付近に緊急配備線が敷かれていた。
車道の端にすべての車が誘導され、当然、オレたちもその列に並ぶことに。
順番が来て、近づいてきた警官にシゲさんが訊ねた。

「何かあったんですか?」

対応した警官は顔見知りだったらしく、相手がシゲさんとわかるなり、いきなり直立不動になった。
それを見ていた周りの警官も、シゲさんに気付いて慌てて姿勢を正す。
シゲさん、すげっ!

「すいません。子供の誘拐がありまして車両検索を実施中です。誠に申し訳ありませんが、重丸先生もご協力ください。」

「それはかまわないが、誘拐とは穏やかじゃないね。」

「はっ、本日19時頃、仙台インターサービスエリアで6歳の女の子が行方不明になりまして、その少女を乗せたと思わしき車両が、ここから数キロ離れたインターチェンジで下りたとの情報を得て、現在捜索をしているところです。大変申し訳ありませんが・・・。」

「ああ、わかったから、早く調べてくれ。ちょっと急いでるんだ。」

「はっ!申し訳ありません!失礼します!」

ここでも春雷重丸の異名は健在だな。
シノちゃんが、ラゲッジドアのロックを外すと、複数の警官が後ろを調べはじめた。
しかし、誘拐とは穏やかじゃない。

「怖いわね・・・。」

シノちゃんが、不安そうな顔をしていた。
大丈夫です。
あなたを狙うのは、よほどのアホか自○志願者しかいません。
ハンドルを握る美しい才女は、剣道の現役女子大学生チャンピォン。
ふと、シノちゃんの横で、シゲさんが怖い表情になっていることに気が付いた。
しかめっ面をして、なにかを考えた顔をしている。

「シゲさん、どうしたの?」

シゲさんは、しばらく黙ったままだった。

「いや、なんでもない・・・。」

返ってきたのは素っ気ない答え。
あ、そ。
そうは見えないけどね。

「ありがとうございました。」

2分とかからずに、検問から解放される。
それから、またドン亀ドライブの始まり。
ようやくレンのマンションに辿り着いたのは、病院を出て1時間近くも経ってから。
やっと再会できる我が愛車。
車から降りようとしたときに、ちょうどシノちゃんのケータイが鳴った。


15/06/08 22:02 (PGv6IB01)
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