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1:可愛い弟子17
投稿者:
タカ
◆8pDveiYQdk
空気が、揺れた・・・。
誰?・・・コトリか?・・・。 自室に戻っていた。 鍵は、言われたとおり秘密の場所へ。 狭いベッドの上。 微睡みながら、コトリが帰ってくるのを待っていた。 寝不足の頭。 意識は、知らず知らずのうちに、ゆっくりと深い谷間へ墜ちていく。 起きているつもり。 でも、脳は、すっかりレム状態。 ぼんやりとおぼろな意識の中に、かすかに足音だけが聞こえている。 玄関の鍵は、掛けてなかった。 コトリなら、当たり前のように入ってくる。 だから、可愛い・・・。 意識が、開かない。 傍らに佇む気配。 おいで・・・。 ちゃんと、跨ってくる。 可愛いヤツ・・・。 シャツの上からでもわかる、柔らかい肌。 ん?でも・・・重さが違う。 コトリじゃ・・ない。 シホ? いや・・・・・。 シホでもない!! 「誰だ!!!」 目を開けた途端、視野に飛び込んできたのは、固く握り締められたナック ル。 寸でのところでかわして、とっさに腕を伸ばし、相手の襟を掴んだ。 力任せに引きづり倒し、入れ替わるように身をひるがえす。 素早く回り込んで、背後をとり、相手の喉に腕を差し込んだ。 「誰だ、お前?」 羽交い締めにしながら、腕で喉を締めつけた。 脳裏にあったのは、コトリを狙う正体不明の謎の男の顔。 だが、目の前にいたのは・・・。 えっ?女の子? 艶やかな黒髪。 鼻に飛び込んでくる甘い匂い。 ちょっとでも力を入れたら、すぐにでも折れてしまいそうな細い首。 思わず、腕の力を弛めていた。 「くっ・・離せ、このヤロー!」 途端に暴れ出す小柄な身体。 えーと、あなた、誰ですか?・・・。 うわっ!そんなに暴れないで・・。 どこかで、見たことがある。 誰だっけ? 「は、放せ!この馬鹿ヤロー!!」 地団駄を踏むように、足をバタバタ。 女の子は、逃れようと必至。 「ちょっと落ちつけって・・。」 話なんか聞いちゃいない。 「放せ!ヘンタイ!!この、痴漢ヤロー!!」 あらま、大変な言われよう。 もう、しょうがねえな・・・。 手首を掴んで、身体を回し、床に押し倒した。 素早く腹の上に跨り、マウントポジションに。 「やめろ!!馬鹿ヤロー!!変なことしたら承知しねえぞ!!!」 乱暴されると思ったのか、女の子が、顔色を変える。 襲わねえって・・・。 「誰か!!・・・・ウウゥッ!!・・・」 少し黙ってなさい・・。 細い両手首を片手で床に押さえつけ、もう片方の手で口をふさぐ。 女の子は、目を見開き、必死の形相であがきつづけている。 あんまり、うるさくすると、鼻もふさぐよ・・・。 口を覆った手のひらで、顔は上半分しかわからない。 でも、見覚えのある目元。 うっすらと化粧をした、幼さの残る顔。 どこかで見た。 それもつい最近。 どこだっけ? オレの母校のセーラー服。 改造したスカートは、超短い。 暴れて、裾がめくれ上がり、大人びたパンティが、はっきりと露わになって いる。 健康そうに素直に伸びた白い素足が、目にまぶしかった。 あら、いい眺め。 「誰だ、お前?」 顔を近づけ、凄みを効かせて睨みつけた。 汚らしいものを見たくないように、目を背ける。 お前、ほんとにイタズラするぞ。 気の強そうな顔。 瞳の中で燃えさかっているは、憎しみの炎。 あのね、中学生に恨まれる覚えは、ないんですけど・・。 うん?中学生? ・・・・・・・・・ あっ!思い出した!! お前は! 「タァァーカァー・・・。」 その時、背後から聞こえた、地獄の底から湧き出るような声。 あら? 恐る恐る、振り返った。 うわっ!こっちは、もっと、すごい炎が燃えさかってますけど・・・。 「違う!違う!これは・・・」 言い訳できないシチュエーション。 ちょっと待った! カバン下ろすな! 構えんな! おわっ!!! 右の回し蹴りを、かろうじてダッキング。 と、思ったら・・・。 ごすっ! あら?・・・なんで左から・・交差蹴りか?・・いつの間にそんな高等技術 を? あ・・・教えたの・・・オレだ・・・。 次に目覚めたときは、また、床の上。 額にある、ひんやりとした冷たい感触。 辺りを見回すと、ついさっきまでと、まったく同じ光景。 違うのは、傍らでコトリが心配そうな目を向けていることだけ。 額に乗せられていたのは、家庭の常備品アイスノン。 「タカ、大丈夫?」 どのくらい寝てたんだ? もう、あの女の子の姿は、なかった。 あの子、アイツの妹だ。 あのニート君のマンションで、お小遣いをもらってた女の子。 なんで、オレの部屋に?・・・・。 それに、どうしてオレを?・・・・。 あっつぅ・・。 ちきしょう・・こめかみにカカトが入ったか・・。 コトリだと思って油断した。 まさか、あんなに早く左を切り返してくるなんて思わなかった。 ナイスタイミング。 角度もばっちりだったわ。 ちゃんと、練習してんだね・・・。 って・・・。 ふざけんなよ!!お前ぇっ!!!! 有無を言わさず素っ裸にひん剥いて、それから1時間ほど虐めまくり。 問答無用。 ほんとに、やっちまうぞ・・・・。 「エッチしようとしてたんじゃないの?」 「いきなり襲われたの!」 「タカが、襲ったんじゃなくて?」 ほんとに、ぶっ飛ばずよ、お前・・・・。 ベッドの上。 まだ、ふたりとも裸のまま。 コトリは、ぐったりしたアイツを、手のひらに握って、弄んでる。 さっきまで口の中。 いっぱい虐められて、泣きながら口にしてた。 「あの人、知ってるの?」 「いいや。でも、知ってるのかな?」 「なにそれ?」 「顔は知ってる。でも、どんな子かは知らない。」 コトリが、大事そうに、チュッてキスしてくれる。 さっき、ちゃんと飲んでくれたもんね。 小さな身体を持ち上げた。 ちょっと、重くなったかな。 まだ、身長測ってないね。 今度、道場で測ろうか? 包むように腕の中に入れてから、枕元のケータイに手を伸ばした。 「どこに電話するの?」 「あの子のお兄ちゃんのところ。」 着メロが流れ出すと、すぐにアイツが出た。 「タカ?・・・どうしたの?こんな時間に。」 そっか、お前に昼間電話するのって、滅多にないもんな。 「あのさ、お前の妹って、今、そっちにいる?」 「ううん。いないけど、どうして?」 「いや、ちょっと確かめたいことがあったから。」 コイツに、確かめたいことは、ふたつある。 「もしかしてさ・・妹のヤツ、タカのところに行った?」 あれ、知ってやがる。 「ああ、来たけど、なんでわかる?」 「いや、実はさ、昨日アイツがマンションに来て、ボクの顔を見るなり、誰 にやられたんだって、すごかったんだよね。えらい剣幕で怒っちゃってさ。 それで仕方なくてタカの住所を教えちゃったんだ。」 教えんなよ・・・。 「で、タカのところに仕返しに行くって、きかなくてさ。包丁まで持ち出し たから、必至に止めたんだけど・・・。」 げっ!包丁だと!? 危なかった。さすがに刃物で寝込みを襲われたら、ケガくらいじゃ済まなか ったかもしれない。 「ほんとに、大丈夫だった?」 「ああ、別に何ともないよ。相手は、女の子だからな。」 「そっか・・・良かった。ちょっと心配だったんだ。包丁は取り上げたんだ けど、タカは空手の有段者だって教えたら、途中でナイフ買う、って言って たから。」 げろっ!ナイフだとぉ!! 「頑固なヤツだから言っても聞かないし、その時は、もう仕方ないかなっ て、諦めてたんだけど、ほんとに、何もなくて良かった・・・。」 良かねえよ!!! 諦めてんじゃねえ!! なんとしても阻止せんかい!!! 「ごめんね、タカ。妹を許してやって・・。不良っぽく見えるけど、根は、 そんなに悪いヤツじゃないんだ。ただ、ウチはちょっと複雑な事情があっ て、アイツも居場所がないから、荒れてるだけなんだ・・・。」 「なら、お前が面倒見てやれよ。」 床面積100平方mの豪華なマンション。 使ってるのは、ほぼコレクションルームだけ。 「うん・・・何度か一緒に住まないかって、言ったんだけどね・・・。」 「断られたのか?」 「うん。妊娠したくないから、嫌だって言われた。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 だろうね・・・・・。 「ところで、昨日、お前に頼んでた件だけど、何かわかったか?」 「ああ、サカイ先輩の・・・。だいぶ、わかったよ。今から、ウチに来れ ば?」 「そうだな・・・。」 コトリがいるから、あんまり行きたくないけど、いつ状況が劇的に変わるか わからない。 余裕のある今のうちに、情報を仕入れておく方が無難か・・・。 「じゃあ、これからこっちを出るわ。もうひとり、連れて行くから部屋ん 中、掃除しとけよ。」 「えっ!?もうひとりって誰?」 「可愛い女の子。」 「ええっ!!!?女の子ぉっ!!!?」 「お菓子とジュースもよろしく・・じゃな。プチッ」 アイツ、コトリ見たら発狂するな・・・。 ちっきしょう・・・。 やっぱり、ナイフ買っておけば良かった。 あんなに強いなんて、わかるわけないって。 もっと、ちゃんと教えておけよ馬鹿アニキ。 別にアニキなんて、どうだっていいって言うの。 でも、わたしのモノを勝手に傷つけたのは、許せない。 アイツは、わたしだけのモノなんだからね。 わたしが自分の力で手に入れた、わたしだけのモノなんだ。 それを、知らないヤツに傷つけたりされたらマジ、ムカつくっての。 ああ!マジでヤダ! アイツ、ほんとに殺してやりたい。 ちっ!誰だよ、こんなときにメールなんて。 げっ! 最悪だ・・・。 なんで、よりによってコイツなんだよ・・・。 ああ、マジで今日って、最悪・・・。 「い、いらっしゃい・・・。」 なに緊張してる? 「入れ、コトリ。」 「こんにちは~。」 ニート君のマンションの中。 「コトリ・・・コイツは、オレの中学時代からの同級生で「レン」だ。こっ ちは、オレと同じアパートに住んでる女の子で、コトリちゃんだ。」 「はじめまして~。いつも主人がお世話になってます~。」 「しゅ、主人!!?」 「はは・・ジョーク。イッツジョーク・・・。」 どうしてコイツは、つまんないことばっか覚えるんだろうね・・。 お前も、口を閉じろ。ハエが入っても知らねえぞ。 おお、だいぶキレイにしてるじゃん。 いつも、そんなに散らかってないリビングだが、今日は特に、念入りにキレ イにしてある。 テーブルの上はピカピカ。 山のようなお菓子が、カゴの中に詰めてあった。 コトリにどんだけ食わせる気だ? 「なあ、コトリ・・隣の部屋に綺麗なお人形がたくさんあるから、見てくれ ば?」 話しの性格上、コトリに聞かせたくはない。 レンと、ふたりきりになりたかった。 「ちょ、ちょっとタカ・・・。」 なんだ?マズイのか? それとも、ヤバイもんでも置いてんのか? まさか、妹が隠れてるわけじゃあるまい? 「大丈夫だろ?」 「う、うん。」 「綺麗なお人形って?」 「まあ、見てくればわかるよ。」 背中を押すようにして、コトリを隣の部屋へ行かせた。 「あんまり時間がねえんだ。早速だが、わかったことを聞かせてくれ。」 時計は、5時を過ぎたところ。 いつも通りなら、シホは、今日も6時半には帰ってくる。 帰りの時間を考えれば、少なくとも6時前には、ここを出たい。 オレの切羽詰まった顔に、レンも緊張の表情を見せる。 「ああ、じゃあ、わかったことを手短に話すよ。ほんとは、見てもらいたい モノもあったんだけど、あの子がいると、ちょっと・・・。」 「見てもらいたいモノって?」 「実は、サカイ先輩の出てたビデオって、あれ、シリーズ物なんだ。」 「シリーズ?」 「うん、他にも、あと8本、同じようなタイトルで出てるんだ。」 「それって、キョウコ・・・サカイ先輩が、また出てんのか?」 「いや、違う人。子供も違うね。」 「子供って・・・あれと同じように母親と一緒に出てるってことか?」 「そうだよ。だってタイトルが『おかあさんと一緒』だもん。」 「それが、違う人間で、9つあるってことか?」 「そう。それで、その内の1つが、昨日手に入ったから、それをタカに見せ ようかと思ってたんだけど・・・。」 「昨日?ずいぶんと簡単に手に入るな。」 「簡単じゃないよ。お金もすごくかかるし、解凍用のプログラムも必要だか ら。」 「それって、もしかしてネットから落とすのか?」 今じゃ、何でもネットで用事が足りる時代だ。 「うん。でもネットって言ってもインターネットじゃないよ。独自のサーバ ーを使った草の根的な回線だから。」 「つまり、公にはなっていない回線からダウンロードするってことだな。」 「その通り。アクセスするにも、パスワードが必要だし、アクセスしたから って、すぐにダウンロードできるわけじゃない。ダウンロードするために は、日毎に変わるパスワードを入力しなきゃダメだし、それもタイトル毎違 うから、そのパスワードも必要。おまけに解凍プログラムにもパスワードが あるから、それらを全部手に入れるだけでも一苦労だよ。」 さあ、今パスワードを何回言ったでしょう? えらい厳重なシステムだな。 「そのパスワードってのは、どうやって?」 「まず、入金して、それからメールで通知されるんだ。このメールも、どこ の国から出されたものか、わからないようなメールだけどね。」 「先に金を払うのか・・・。よほど信用がねえと出来ねえ商売だな。」 「でも、超アングラサイトだから、その辺の信用は固いよ。」 「ふーん、お前が言うんだから間違いねえんだろうけど・・。ところで、1 本幾らぐらいするのさ?」 「タイトルによってマチマチだけど、サカイ先輩のは150万したよ。」 「ひゃ、150万!!?」 「まだ、新しいからね。ちなみに昨日落としたヤツは30万。」 「さ、30・・・。」 「同じシリーズだけど、初期の物らしくて、ちょっと画像も荒いんだ。で も、コピーで劣化したってよりも、カメラの性能が悪いって感じかな。顔 は、はっきりと判別できるよ。DVDに落として向こうの部屋に置いてある から、アパートに持って帰って確かめるといいよ。」 「ああ・・・ありがと。」 「でも、コピーして誰かに配布するとかしないでね。すぐにどこから出た か、わかっちゃうから。アクティベーションのプロテクトがかけられてい て、向こうは、一本一本管理してるみたいだよ。だから、もし海賊版が出た ら、すぐばれちゃうから。」 「アクティベーション?」 「要するにダウンロードしたビデオのデジタルコードの中にシリアル番号が 入ってるわけ。だから、コピーしたのが出回ったら、それが誰に売った物な のかすぐにわかるってこと。」 徹底した管理ぶりだな・・・。 まあ、内容が内容なだけに、これが大量に出回ったりしたら、警察も黙っち ゃいないからな・・・。 「強烈なコピーガードがかかってて、ほんとうは、DVDもコピーワンスで しか、出来ないんだ。」 「つまり、他のメディアでは、1枚しか作成できない。」 「うん。そうだね。」 「じゃあ、コピーされる心配もないだろ。」 「他の人はね。」 「と言うと?」 「ボクは、もうプロテクト外したから。」 「外しちゃったの?・・・。」 「うん、なかなか良くできたプロテクトだったけど、ボクには通用しない よ。」 あっそ。 「だから、何枚でも複製できるけど、さすがにシリアルコードの変更は出来 なかったから、コピーして売るのだけは勘弁して・・・。」 お前、オレがそんなことすると・・・・思ってるから言うんだよな。 「ところで、そのアングラサイトの方からは、何か掴めたのか?」 「うーん。それがね、そこはダウンロードさせるだけで、制作とは無関係み たい。」 「今、アクセスは、出来るのか?」 「今は無理だね。アクセスできる時間帯が決まっていて、今の時間は繋がら ないよ。それに、そこから追いかけるのは難しいと思うよ。それよりも、面 白い話しを聞いたんだ。」 「面白い話し?」 「うん。普通、こういったビデオって主に、関西でつくられることが多いん だけど、どうやらサカイ先輩のビデオは、どうも、そうじゃないみたい。」 「と言うと?」 「うん。関西でも関東でもなくてね。どうやら東北らしいよ。」 「東北?」 キョウコは、青森に移ったと言っていた。 東北で創られたってことは、つまり、まだ青森にいる可能性が高いってこと だ。 「それは、どこから?」 「ボクのネット仲間から。こういうのに詳しい人がいてね。あ、ミタライ氏 って、言うんだけどね。その人が、昨日チャットで教えてくれたの。あのシ リーズが一番最初に出たのは、8年くらい前だって言ってた。立て続けに6 本くらい出たらしいけど、それからぱったり出なくなって、また、最近にな って新しいのが出回り始めたらしいよ。」 空白の期間があって、最近復活したってことか。 「他には?」 「タカも薄々気づいていると思うけど、こういったビデオってほとんどが暴 力団絡みなんだ。直接は関係なくても元を辿っていくと、だいたい最後に は、暴力団の名前が出てくる。このビデオも例外じゃなくて、創ったのは、 秋田を中心に勢力を広げてる阿宗会の末端じゃないかって話しだよ。阿宗会 については、ネットで調べてファイルにして綴じてあるよ。今、わかってる のは、そのくらいかな?」 そっか・・・。 やっぱり、暴力団が出てきやがったか・・・。 面倒くさいことにならなきゃいいが。 しかし、キョウコが、まだ青森近辺にいるらしいとわかっただけでも、大き な収穫だ。 どこかへ移ってたら、もう探しようがないからな。 あと、もう少し絞れれば・・・。 「なあ、そのミタライって奴から、もう少し話を聞いておいてもらえない か?」 「いいけど、でも、とても繊細でナイーブな人だから、あまり根掘り葉掘り 聞くと、いやがられるかも・・・。」 わかる、わかる・・・お前らって、そう言う人種だもんな。 「とにかく、貴重なネタを、ありがと。感謝するよ。」 「ううん、タカの役に立てるんなら嬉しいから・・・。」 へへっ・・嬉しいこと言ってくれんじゃん。 でも、オレには、そのケはないからな。 「ねえ、タカ・・・」 「ん?」 「ところで、あの女の子だけどさ・・・タカのなんなの?」 「なんなの・・・って、ただ同じアパートに住んでて、面倒を頼まれるだけ さ。」 「ふーん。あのね、あの子の写真取らせてくれないかな?」 「だめ。」 「タカに訊いていないよ。あの子に聞いて欲しいんだ。」 「ダメ。」 「なんで?」 「お前、アイコラとかして遊ぶつもりだろ。」 「うっ・・・。」 図星かよ。 本物が目の前にいるのに、なぜ2次元に走る・・・。 ネットにでも流れさたらマズイからな。 お前のアイコラ技術は、シャレにならねえんだから・・・・。 「さてと・・・じゃあ、そろそろ帰るわ・・。」 「えっ!?もう、帰っちゃうの・・・」 「用事があるんだ。悪いな・・・・。」 そんな、寂しそうな顔すんなって。 「おい、コトリ・・・。」 コレクションルームのドアを開けると、コトリは、部屋の真ん中に、ぽつり と座り込んでいた。 こちらを向いているが、顔は、何かに釘付けになっている。 虚ろな表情。 目がとろりとなっていて、痴呆のように口を半ば開いている。 ときどき眼球が、右へ左へとせわしなく動いていた。 なに見てんだ? コトリの視線の先を追いかけた。 ドアのすぐ横、オレの立っている隣に、46インチのでかい液晶モニターが 壁に据え付けられている。 コトリの目は、そこに向いていた。 なにげに映し出されている映像を、横から覗き込んだ。 げっ!やばっ! 「レン!!」 ばっか野郎・・・。もっと、ちゃんと隠しとけよ。 「あっ!!」 呼ばれて、やってきたレンも驚きの声を上げる。 画面の中で、四つの裸体がもつれ合っていた。 ふたりは男、もう、ふたりは女。 しかし、片方の女には立派な乳房があるが、もう片方には性毛さえも生えて ない。 「コピーが成功したか確かめるために、デッキに入れっぱなしにしてたん だ・・・・。」 「いいから、早く取り出せ・・・。」 レンが、すぐさまモニターの電源を切って、慌ただしくデッキからディスク を取り出す。 「コトリ、大丈夫か?」 画面が真っ暗になっても、コトリの表情は変わらなかった。 まるで魂が抜けたようになっている。 「コトリ!!」 「へっ?」 肩を揺さぶりながら、耳元で叫んだら、コトリは、ようやく我に戻った。 「大丈夫か?・・・。」 「えっ?なにが?」 なにが・・・って。 「ずいぶんと熱心に見てたな。この、エロ娘。」 「え?ああ・・へへっ・・・。」 良かった。いつものコトリだ。別に変わりはないようだ。 コトリには、何度かスケベなビデオを見せたことがある。 だから、ある程度免疫はあるが、ここまでえぐいのを見せたことは、さすが にない。 ちょっと驚いたのかもしれない。 「ひとりで、こっそり、こんなもの見てんじゃないよ。」 「違うよ。テレビつけたら、勝手にやってたんだもん。」 「レン・・・。」 「ごめん、画面だけ消して、デッキの方は止め忘れてたんだ。それで、リピ ート再生されちゃったんだと思う。」 まったく、気をつけろよ、お前・・・。 「ほら・・コトリ、帰るぞ。」 「うん。」 コトリが、ゆっくりと立ち上がる。 「どうだった人形は?本物みたいで、すごかったろう?」 「うん、びっくりしちゃった。でもね、あの子、なんかタカと同じ匂いがす るよ。」 コトリが指差した先には、レンのお気に入りの、幼いリアルドール。 「同じ匂い?どんな?」 「チンチンの生臭い匂い。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 夕べは、あの子がお相手だったわけね・・・。 ちゃんと始末しておけよ。 呆れてレンに振り返ったら、レンも奇妙な目をオレに向けていた。 ん? あっ! 「ほら!コトリ!帰るぞ!!」 逃げるように、慌ただしく退散。 「タカ、忘れもの。」 玄関を出ようとしたところで、レンが例のディスクとファイルを手渡してく れる。 「サンキュ・・。」 「ねぇ・・・すぐに調べるから、また、遊びに来てね。」 「ああ・・・。」 心配すんなって。何度でも遊びに来てやるよ。 「ああ、それとさ・・。」 「ん?」 「ビデオに撮りたくなったら、ウチのマンション使っていいからね。ボクが カメラマンしてあげるから・・。」 あ、ああ・・・・。 そんときゃ、よろしく頼むわ・・・。 その前に、お前の眉間に正拳突き決めて、息の根止めてると思うけど・・。 レンは、エレベーターのドアが閉まるまで、見送ってくれた。 とても嬉しそうな顔をしながら・・・・。 アイツ、同類が増えたと思ってんだろうな。 エレベーターが下降し始めた。 「ねえ、タカ・・・・。」 「ん?」 なんだよ、爆弾娘。 コトリは、レンの部屋を出てから、なぜか、ずっとすがるように、オレのシ ャツを掴んでいる。 ん?なんだお前、なんで青い顔してんだ? シッコか? エレベーターが、ゆっくりと下降していく。 「あのね・・・。」 「なに?」 なんだ、その泣きそうな顔は? シッコが、我慢できないのか? エレベーターは、もうすぐ地上へと着く。 「コトリね・・・。」 軽い揺れ戻しがあって、1階に到着した。 チン! 到着を知らせるベルの音。 エレベーターのドアが、静かに開いていく。 青ざめていた顔。 脅えていた瞳。 震える唇が、おののくように開かれた。 「あの女の子、知ってる・・・。」 エントランスの向こうで、時期外れの夕立が、激しく地面を叩いてい た・・。 ・・・・・・・・・・・ な、な、なにぃっ!!!!!!!
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2009/09/23 20:31:26(HI2MsU7.)
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