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1:可愛い弟子Ⅵ
投稿者:
タカ
◆8pDveiYQdk
「まだよ・・・・・。」
泣きたいほどのあどけなさ。 じっと悩ましげな視線に見つめられ、息をすることさえも忘れた。 まるで無垢な童女を思わせる無邪気な笑顔。 瞳の奥には、男を喰い殺そうと企むがごとき妖しげな光。 童女と娼婦が同じ肉体を共有したとき、そのすさまじいエロティズムにかな う男は、存在しない。 「まだ・・・だめ・・・・・。」 まるで愉しむように、女は笑った。 これほど焦がれているのに、まだ許してはくれない。 涙腺がゆるみ、視界がかすむ。 伸ばした腕が、瘧(おこり)にかかったごとく震える。 なぜ、与えてはくれない?。 与えないのなら、なぜ見せた!? 泣いている自分が、不思議だった。 ひれ伏してもかまわない・・・・・・。 心の底から、そう思えた・・・・。 「生は・・・・だめ・・・・・。」 むろん、そんなつもりなど、毛頭ない。 ただ、欲しいだけ・・・・。 心の底から、欲しがっているだけ。 女が、再び笑う。 オレの腹の中を見透かすように・・・・。 無邪気な笑みに、殺意さえ覚える。 オレを、これほどまでに狂わせる悪魔のような女・・・・。 女は、名を「シホ」と言った・・・・。 換気扇、回しません? 目が痛っ! 「お肉、焦げてるよっ!」 となりでコトリちゃんが叫ぶ。 マジでウェルダンどころか、炭になるってっ! ああ・・・・上等なサーロインが・・・・ 「ちゃんと、火を通さないと、お腹の中で虫がわくのよ・・。」 いったい何年生まれだ!!! がばいばあちゃんでも、今どき、そんなこと言わんわ!! あんた、ほんとに料理できんのか!? やっと、食卓に上がってきた頃には、極上のサーロインが見るも無惨なワラ ジに。 黒すぎて、でかいゴキブリに見えるんですけど・・・。 「遠慮なく、たくさん食べてね♪。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ コトリちゃんが、お昼食べない理由が、なんとなくわかったよ・・・・・。 金曜の夜。 練習を終えて帰ってくると、すでに駐車場には、コトリちゃんのお母さんの クルマが。 チッ! 仕方なしに、愛車の中で、ちょっとコトリちゃんとイチャついてから、部屋 に送っていくと、 「よろしかったら、晩ご飯、一緒に食べていきませんか?。」 と、思いがけぬサプライズ。 実は、お母さんも密かに狙っているオレ。 断るわけがない。 近づいた肉布団。 あこがれの親子丼。 ニューヨークへ行きたいかぁっ! 別に行きたかないけど、お母さんにはあんなコトや、こんなコトしてみた い。 食卓に上ったでかいゴキブリ・・・・もとい、極上ステーキ3皿と、山のよ うに盛りつけられた付け合わせのサラダ。 それに、なぜか味噌汁に赤ワイン。 時計を見たら、10時過ぎ。 帰ってきたのは、9時前くらいだっけ? 気の弱いお父さんなら、腰が引けてしまうようなメニュー。 「お母さん、料理へただよ。」 コトリちゃんが、そっと耳打ち。 はっきり言う子だね・・・。 でも、君は正しい。 サラダつったって、キャベツとレタスしか入ってないじゃないか。 しかも、山のようにマヨネーズときたもんだ。 これは何か?創作料理か? 顔が可愛ければ、何でも許されると思ってるのか? ジーーーーー。 許す♪ コトリちゃんに、ほんとによく似てる。 二重まぶたの大きな瞳。 ぷっくらとした唇。 目は、お母さんの方が垂れてるね。 その分、あどけなさが、これでもかってくらい増してるわ。 目元なんて、まるで瓜双子。 ギリギリ三十路前。 オレと3つ違い。 年齢的には、ほぼ互角。 二人が結婚したところで、それを咎める者は、誰もいない・・・。 コトリちゃんは、シホさんが二十歳のときに出来た子。 もしオレが父親だったら・・・・。 校舎の窓を叩いて割る人だったら、ギリギリセーフか? 「ほんとに、いつもすみません。いつか、お礼しなきゃって、ずっと思って て・・・」 で、今夜なわけ? もう、10時半ですけど・・・。 「早く、食べよう。」 コトリちゃんが急かす。 確かに。ってか、もう子供は寝る時間・・・。 「じゃあ、取りあえず乾杯しましょうか?」 なんかシホさん、微妙にテンション高い。 「では、これからも、ヨロシクお願いします。かんぱーい!」 って、グラスを空けてから気がついた。 「あの・・・。」 「?」 シホさんのつぶらな瞳が、オレに向けられる。 ハッとするほど、可愛らしい顔。 「あの、フツーに飲んでますけど・・・。」 「?」 「コトリちゃん・・・。」 コトリちゃんに目を向けて、シホさんも、やっと気がついた。 「あーーーーっ!!!」 すでに、コトリちゃんの顔真っ赤。 オレも気付かなかったわ。 だって、グラスがフツーに並べてあるんだもん! やっぱりグラス一杯でも子供には効く。 コトリちゃんは、10分もしないうちに酩酊状態。 立てないくらいフラフラ。 「タカと、・・・一緒にいるうぅ・・・。」 ほぼ寝言。 仕方なしにベッドへと運んだ。 大丈夫かな? 取りあえず、寝かせて様子を見ることに。 「タカ・・・タカ・・・。」 赤い顔で、ずっと呻ってる。 可愛いヤツ。 「大丈夫かしら?」 「たぶん・・・・」 オレも、子供の酔っぱらいには、お目にかかったことはない。 「タカ・・・・。」 苦しげに眉をしかめるコトリちゃんの手を握ってあげた。 「ここに居るよ。」 凶暴さと、可愛らしさを両立させた女の子。 ずっとずっと傍にいてあげたいよ。 想いが、コトリちゃんに届いたらしかった。 「・・・タカ・・・・チューして・・・」 口から心臓が出たね。 後ろには、シホさんの姿。 怖くて、振り返ることも出来なかったわ。 「ほんとに・・・、あなたのこと好きなのね。」 予想外だった優しい声。 シホさんも、コトリちゃんがオレを気に入ってるのは、知っている。 苦笑いしかできないオレ。 まだ、ギリギリセーフか? いつ、またこの爆弾から、危険なセリフが飛び出すとも限らない。 さっさとフケよ。 そう、思ったときだった 「やっぱり、親子って、似るのね・・・。」 あらぬ方向で、意外な爆弾が炸裂して、まったく身動きの出来なくなったオ レだった・・・。
レスを見る(7)
2009/08/24 23:36:38(xm/Zxm3S)
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