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1:男喰い
投稿者:
(無名)
本好きが講じて出版社に就職した敦也は、希望の通りに作家の担当者になった。
まずは先輩の補佐について学び、飲み込みの良い彼はその器量の良さからある作家の担当者に抜擢されることになった。 小説家と聞いて、小躍りしたい気分になった。 いつかは読者から作家を担当者へと、その作品に携わる側に回ることが夢だった。 その夢が叶うと分かって身の引き締まる思いになったのに、小説のジャンルを聞いてテンションが一気に下がる。 官能小説だなんて、考えもしなかった。 悲しいかな官能小説という存在は今も昔も一定の人気があり、消えることはない。 敦也が担当することになった相手は女流作家と聞いて、複雑な気持ちになった。 彼女は他のジャンルで挫折して官能小説へ流れ、やがては消えていく作家とは違い、最初からこのジャンルに飛び込んできた異色の作家なのだという。 女性目線から切り込んだ表現は男性作家にはないソフトさと、その心情を生きた言葉で具現化させて読者を魅了させるので売れっ子の位置にいる。 ただ担当者がコロコロ替わり、女性の担当者を寄せ付けない気難しさから歴代の担当者は全て男性らしい。 この会社も売れっ子でなければそんな我儘を許さないのだろうけれど、それも若い男性じゃないとヘソを曲げるらしく、まことしやかに男好きとして噂されていた。 噂の域を出ない理由は担当を外れた者は皆、一様に憔悴しているからだ。 腑に落ちないのは精神を病む訳ではないのに、その本当の理由を知る者は一部しかいないこと。 そしてその理由を知る人間で話は止まり、下まで降りてこないことである。 そうなると嫌でもあることが想像され、嫌な汗が脇の下に滲んでくる。 敦也が生まれる前の遥か昔、女性担当者が作家の餌食になっていたなんて都市伝説がないわけではないけれど、火のないところに煙は立たないように全てが嘘ではないと思うのだ。 それともかなり風変わりな女流作家なのだろうか、気難しい作家は珍しくはない。 どちらにせよ売れっ子作家だから、失礼のないようにしなければならない。 今の時代に紙の原稿にペンを走らせる人と聞いて、風変わりなのは間違いないのだから………。 マンションの入口でインターホンを押すと、無言で開いた硝子の扉を通される。 ドアの前まで来ると見計らったように、厚いドアが開けられる。 どんな気難しい小太りの中年女性が出てくるかと思えば、スラリとした女性だった。 彼女はプロポーションの良さを惜しげもなく披露するように、薄手の黒いニットとスカートを身に着けて、無表情の顔に黒いフレームの眼鏡が作家らしい雰囲気を漂わせていた。 部屋に通されると壁際に本棚が並び、反対側に机と椅子、自分のような担当者が待機する為なのかソファーのセットが見える。 作家の姿が見えないのは、トイレのために席を外しているからだろうか。 キッキンに軽食とコーヒーが用意してありますから、いくらでも自由に利用して下さい。 いつ仕上がるかは分かりませんから、トイレのほうもいちいち断らないで使って構いませんから。 この人は秘書なのだろうと、勝手に思っていた。 驚くことに彼女は簡単な説明を終えると、机に向かい椅子に腰を下ろしてしまった。 40前後なのか、この辺りの女性の年齢は今いち掴めない。 40代というにはいささか若く、30代というには妙に大人の色香が強く漂っている。 予想が当たっていたのは中年女性というだけで、やや感じる気難しさは初対面だからだろう。 二重顎に二段腹の小太りの女性は虚像に終わり、紙にペンを走らせる音だけが静かな空間に流れていく。 1時間ほどが経ったころ、椅子から立ち上がった彼女が言った。 コーヒーを飲みたいだけよ、貴方もいる……? 慌ててこちらがさせて頂くと言ったのに、彼女は聞く耳を持たなかった。 座ってばかりだとアイデアが出ないの、だから気にしないで………。 キッキンから両手にコーヒーカップを持って戻って来た彼女は、一方を敦也の前に置く。 その際に身を屈めた彼女の胸元が緩み、魅力的な乳房を包むブラジャーが黒いニットに映えて鮮やかに見えた。 垂れ下がった髪の毛を片方の耳に掻き上げながら机の前に戻る彼女を、男の目で追う自分を敦也は自制しなければならなかった。
2025/06/30 17:22:42(NJyA1Nuq)
投稿者:
(無名)
男、男………オトコ……。
考えてみれば男という存在を、冷静に味わったことがないとの思っていた。 感じてしまえばその世界に入り込み、夢中になるのだからどうしょうもないのだけれど、興味が湧いてしまうと検証したくなったのだ。 愛の営みなんてロマンチックなものではないし、そもそも興味を持つこと自体、小説家として女として普通ではないのかもしれない………。 美味しいものに舌鼓を打つかのように敦也の分身を味わい、分筆液を舌の上に広げて上顎に擦り付ける。 飲み下すごとに喉の粘膜に纏わりつき、戻しそうになって涙で視界が滲む。 そんな苦しみさえも、官能的に感じてしまう。 敦也もスイッチが入ったのか、瑞稀のショーツをずらして女の花園に舌を這わせて丹念に舐め回していた。 それが瑞稀の情欲を掻き立てさせ、敏感な蕾に吸いつかれる快感に腰を落ちつかせられない……。 意識を持っていかれないように自分を保ち、敦也を攻めるべく頭を上下に振っていく。 女の意地を集中させて甘味な感覚を振りほどくのは容易なことではなかったけれど、若い敦也が先に音を上げた。 正直なところ瑞稀は少しの差で敦也に競り勝ったにすぎず、もう少しで口からペニスを吐き出して悶絶する寸前で助かっていた。 男なのに情けない声を出して喘ぎ、自分の恥部に熱い吐息を吐きかけながら彼こそが悶絶している。 冷静に相手を分析しながら追い詰めていく過程が楽しくて、悪い女になった気分も悪くない。 もう少し……あと少しで、あのとろりとした生臭い男のエキスを味わえる………。 唇がペニスの凹凸を捉えながら、顎の疲れを無視して首を動かしていく………。 あと少し、あともう少しだったのに……。 瑞稀の癇に障るバイブレーションのあの独特でいで無機質な音が鳴り響き、2人の世界が止まる。 敦也の鞄の中で携帯が振動しているらしく、背中越しに振り向いて彼の顔を見やる。 出たほうがいいんじゃないの………? 貴方の上司でしょ、いいから出なさい………。 敦也はそのままの格好で腕を伸ばし、鞄の中を弄って取り出した携帯を耳に当てる。 彼の受け答えからせっかちな上司なのは明白で、新人の部下に最もらしい理屈を捏ねて、自分の溜め込んだストレスを解消するクズである。 それは歴代の担当者たちが口を揃えたように同じことを吐露していたから、間違いない。 このクズから連絡が入ると彼らは静かにこの部屋を出て、ネチネチと小言を聞かねばならないからしばらくは戻っては来ない……。 瑞稀も辟易していたので彼から携帯を奪い取り、余っ程この声の主に嫌味のひとつでも言ってやりたかったけれど、彼は立場を無くすかもしれないと思うと悔しくてそれは出来ない。 瑞稀の目の前で彼のストレスを伝えるかのようにペニスがピクリと動き、透明な粘液が一筋の雫となって流れ落ちていく………。 若い彼の悶える顔が見たい………。 獲物に狙いを定めた猛禽類が翼を広げたように、立ち上がった瑞稀は身体の向きを変えて敦也を跨ぎ直す。 目の前から卑猥な涎を垂らしたもう一つの女の口が無くなり、明るくなると仁王立ちした瑞稀が見下ろしていた。 ゆっくりとしゃがみ込む先には自分の下半身があり、瑞稀がペニスを持て起こし始めるのを見て手に持った携帯を落としそうになった。 敦也は表情と仕草で駄目です、避妊具を着けてませんと瑞稀を必死に止めたつもりだった。 なのに彼女はこちらを見ながら、聞く耳を持たないとでもいうように自分のそこにあてがう……。 携帯から漏れ聞こえる嫌味は、耳を素通りしていく………。 瑞稀は妖艶な微笑みを顔に浮かべ、淫らな下の柔らかい口に咥えさせて………。 必死に首を振って見せた敦也の願いも虚しく、その飲み込まれていく感触に声を詰まらせる………。 膝裏をソファーから浮かせ、沈みゆくペニスが奥に到達してやっと接地する……。 何をしているんですか………? 表情でそう訴える敦也を嘲笑うかのように、腰を前後に揺らしはじめる瑞稀………。 生の粘膜が亀頭を撫で上げ、密着したカリ首に纏わりついて息が止まる……。 携帯を耳に当てたまま泥濘の中で溺れる分身が伝えてくる、その甘い刺激が思考を奪う……。 ゆっくり自分の中で窒息していく感覚を表情に浮かべる彼を見て、ふふふっ……っと笑う瑞稀。 その彼女も次の瞬間には目が座り、口を半開きにさせて長い吐息を伸ばして目を閉じていた。 膣道に沿ってピタリと密着する敦也の硬いペニスが、女を酔わせる甘さを連れて来る……。 時々瞼を開けて自分の支配下にある彼が悶える姿を見て、自分の両手をお腹から胸の辺りまで這わせてキャミソール越しに乳酸を鷲掴む……。 前後させる下半身の中で息も絶え絶えのペニスをゆっくりと咀嚼し、その味わいに子宮が異性の持つ何かを要求するかのように、粘度の強い分筆液を吐き出す……。 顔を真赤にさせた彼が必死に堪える姿が瑞稀をさらに欲情させ、両手を彼の脇の下に付いて本格的に腰を打ち付け始めた……。 声を詰まらせながら携帯の向こうの相手に彼が短い受け答えを健気に続け、固く目を閉じて何度も顔を左右に倒す……。 瑞稀が腰を打ち下ろすたびにヌチャッ……っと営みの音が響き、ペニスが擦る甘さ、膣の粘膜に抱きつかれる甘さが双方から冷静さを奪っていく……。 眼鏡がずれた瑞稀の顔は眉根を下げて打ちのめされたかのような表情を浮かべ、そのくせ下半身は別の生き物のように忙しなく躍動させていく……。 目を閉じて自らの肩に顎を乗せ、耐えられなくなったように俯いて、次の瞬間には眉間にシワを刻みながら顎を上げる………。 その瑞稀の身体の下で歯を食いしばる敦也がもう駄目だとでもいうように、口を開けて動かなくなった……。 敦也が足の指を開いたとき、痺れるような甘さを伴って何かが勢いよく飛び出した。 自分の意志とは関係なく何度も瑞稀を突き上げ、顎をガクガクさせる瑞稀が口を閉じることなく、その唇を震わせていた。 力を減り絞るように腕を伸ばして彼から携帯を奪い取り、勝手に通話を切って力尽きたように敦也の身体の上に突っ伏した。 自分の中でペニスが脈動する感触がまだ続き、彼もまた亀頭に触れる膣壁がふにゃふにゃと動くその感触に、搾り取られるような感覚を覚えていた。 若い男の興奮させる汗の匂い、年増の女の甘ったるい汗の匂い、双方がその心地良さの中に漂いながら心臓の鼓動が伝わってくる。 そしてキャパシティが上回る瑞稀が、腰の躍動を再び目覚めさせる。 若い敦也を捕食する悦びが、瑞稀を貪欲にさせていく。 まるで、女豹のように………。
25/07/08 02:55
(nZKNAhGX)
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