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ホトトギス(2)
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:人妻熟女 官能小説   
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1:ホトトギス(2)
投稿者:
前戯で一度絶頂に達したとは言え、充分に潤ってすぐにでも俺を迎え入れることが可能であるはずだが、俺が次の行為に移行するかとを我慢したのは、単に性急にことを進めたくなかったからだ。15年という月日を飛び越えて、突然目の前に訪れた現実をゆっくりと槌みしめたかった。

腰の上までまくり上げられたスカートの裾を、元の位置に戻すカサコソと音がした。萌は呼吸ももはやほぼ整って自分を取り戻したようだ。
俺の胸の上に頭を乗せ、萌が鼻にかかった甘えた声で言った。
「もおぉ、課長ったら私の弱いところ忘れてなかったんだ、私、最後って一瞬意識とんじゃった。いやらしいこの人差し指が今も健在って感じ・・」
そんな風に話しながら俺の右手の人差し指をもてあそぶ。

「ねぇ、今度は私が課長にしてもいい?昔みたいに、ここ‥」
そう言ってジャージのパンツ越しに、俺の昂まりを上下にそっと撫で上げた。俺は返事もしないで萌のなすがままに任せた。
俺の唇に萌のそれを押し付けながら、ジャージとトランクスのゴムを潜り抜けて、ペニスにじかに手を添えてきた。ペニスの硬度を確かめるように軽く握ると、若干びっくりしたようにおどけた口調で耳元でささやいた。
「うわっっ、すっごぉぉい、硬―い、おっきー、課長のこれ・・・、あの頃とちっとも変っていない」
両手でジャージとトランクスを脱がせにかかった萌に、俺も協力して腰を若干持ち上げた。スルスルと器用に膝までずらし、そのまま足首から抜き取った。萌は悪戯っぽそうな眼差しを俺に向けてから、ペニスを2,3回上下にしごくと『チュッ』と先端をついばむように唇を当てた。そして静かに深くへと飲みこんでいった。そして口に咥えたペニスを、チュパチュパと音を立てて顔を上下させている。片手はペニスの根元を掴み、もう片方の手で柔らかく袋をもてあそんでいる。萌の口の中では舌が俺をいやらしく舐っている。楽しむようにフェラチオを続けている萌に、俺は悪戯を仕掛けることにした。ストロークが一番深くなるところで若干俺の腰を突き出したのだ。ペニスがのどの奥まで達した瞬間、萌は『うげっ』とえずいて、次の瞬間ペニスから口を離しゲホンゲホンとせき込んだ。
「ゴメン、ごめん、苦しかったか、あんまり夢中になっている萌見たら、つい悪さしたくなって」
「ばかぁ、本当に苦しかったんだからぁ」
そう言ってまだ咳をしながら俺の胸に飛び込んできた。
「もう、いいか?」
「課長、して・・もう入れて・・」
二人同時に言葉を発した。

俺がその気になった時、大事な事に気が付いた。この家にはコンドームはない事と、主のいないこの部屋にはティッシュ箱がない事をだ。
コンドームがない事は何とか自制心で制御できるとしても、ティッシュは情事にはなくてはならない。しかし階下まで取りに行くのはせっかく盛り上がったムードに水を差しかねない。
「萌、ごめんよ、ちょっと待ってくれ」
俺は苦肉の策で二階のトイレのペーパーを使うことにして、萌をそのままにして取りに行った。そんなわずかの時間だったが、俺が部屋に戻ると萌はスカートを脱ぎ、ブラジャーも外して先ほど俺が脱がせたショーツと一緒に枕もとに置いて、全裸で俺を迎えた。俺もペーパーを枕元に置いて慌ててジャージの上着を脱ぎ、裸になって萌の横に身体を置いた。
萌は恥じらいから片腕で両目を覆っている。萌の両脚を開いて間に入り込み、ペニスを秘唇にあてがった。もう愛液でしとどになったそこは、いつでも受け入れる準備はできていた。俺はペニスを片手で持って先端で秘唇を数度こすり上げた。
「課長、じらさないで、お願い、ちょうだい、早く私の中に来て・・」
十数年の時の隔たりを取り戻すのには、もう少しだけ悪戯をしたくなった。本当は今すぐにでも挿入へとペニスはいきり立っているのに。

蜜壺にペニスの頭をほんの少しだけ潜り込ませる。
「アッ、ううーーん」
萌の口から小さな喘ぎ声が漏れる。
一旦身体を引いた。そしてまた少し進む。それを数度繰り返した。
萌は自分の腕を顔から外し、切ない目で俺をにらんだ。
「お願い、課長、はやくぅ‥」
「萌、どうして欲しい?」
「課長のばかぁ、もういれて、もっと奥まで入れて」
「なにをだい?何を入れるの、どこへ??」
「課長のオ〇〇ンをー、私のお〇〇んこの奥までー」
「こうかい?」
受け入れ準備の整って濡れそぼった萌の秘芯は、簡単に侵入を許す。まだじらしたくて途中で止める。
「ほーら、入ったよ、これでいいか?」
「もっともっと奥まで、前みたいに一杯に――」
奥まで一気に突き入れた。
「うーーん、そう、これーー、課長が奥まで入ってる、奥にあたってるぅ」
そう告げて尖った顎をつきあげて『くうぅぅぅん』と子犬のような声を上げた。

それからは自分があたかも十数年の昔に帰ったような勢いで萌を攻めた。激しく蜜壺の奥を突き、腰でこねて萌を狂わせた。萌の中は昔より締め付けは欠けていたが、それよりも俺のペニスにまとわりつく粘着感は歳を経た女の履歴だった。
「いく、いく、いくぅっ、いちゃう逝っちゃう、これだめ、きつい、おかしくなっちゃう、やめて、動かないで、課長、だめ――」
そう激しくよがりながらも、俺の腰に巻き付けた萌の両下肢は、きつく俺に絡みついて決して離そうとはしなかった。
「嗚呼あぁぁぁ―っ」
長い余韻を残して萌が悲鳴を上げた。どうやら二度目の絶頂を迎えたようだ。蜜壺の中は熱く、ヒクヒクとうごめいてペニスに自分の快感を俺に伝えていた。俺も射精感が高まってきたが、まだまだ萌を解放する気はなく、コンドームもないことも相まって必死にこらえて、呼吸を整えながら一旦萌の鎮まるのを待った。

 
2023/05/23 10:22:35(fACWSZ/d)
2
投稿者: (無名)
数分後、萌に覆いかぶさったまま軽くキスをした。
けだるい表情で両目を開けると、このキスが次の行為への合図だと察したのか、再び目を閉じた。
俺は両脚を萌の太ももの下に押し付け、両脇に腕を差し入れるとゆっくりと抱き起して俺の胡坐の中に招き入れた。二人は繋がったままだ。一連の動作で緩んだ結合を感じて萌の腰を引き寄せると、蜜壺の奥をピクンと反応させ俺の首にしがみついてきた。
「課長、すごかったぁ、ワタシ死んじゃうかと思った、ねぇ私うるさかった?一人で騒いじゃったね、ごめんなさい、でも課長はまだ逝ってないんでしょ?あのぉ、課長、私今日は大丈夫の日だから、中で逝ってくれていいよ、あの時、最後の日みたいに・・」
そう耳元でつぶやくと「クスッ」と笑った。その息が耳朶にかかって、俺はブルッと身震いした。
この座位は結合の度合いは弱いものの、お互いの鼓動を感じるにはちょうど良い体位だ。萌が合わさった二人の下腹に手を差し入れて結合部分を確かめた。
「課長のが入ってる、私の中にしっかりと・・」
そう言って私の唇にキスをして俺の両肩に手を置いてゆっくりと前後に腰を動かしてきた。俺は萌のなすがままに任せた。もはや2度も逝った余裕からか、萌は静かに動きを続けた。
またも俺にいたずら心が湧いてきた。両手で萌をペニスが抜け落ちないよう若干持ち上げて俺の両下肢を伸ばし、俺は上半身を倒して寝そべった。そして萌の身体が浮くほど下から突き上げると「グッ」とくぐもった声を出して前のめりに俺にしがみついてきた。

「ウッ ウッ ウッ ウッ」
強い突き上げでピストンを繰り返すたび、萌の喘ぎ声が漏れる。感情の高ぶりを抑えるかのように俺の唇にむしゃぶりつき、そのまま舌を俺の中に差し入れてきた。
喘ぎは萌の鼻から漏れるだけになった。
やがて萌は俺の両手の指を探り当て、自分のそれを絡めて両腕を突っ張り、上半身を起こした。今度は萌が主導権を取り、自身の下半身をこすりつけるように前後させた。顎先から汗が俺の腹に落ちた。
「ふうぅぅぅ―――」
大きくため息をはいて萌の動きが止まった。
その態勢のまま少しの休憩の後、萌に体の位置を修正するよう無言で促した。昔は一連の動きの中でルーチンのように繰り返してきたことだ。萌はそれをいち早く察してのろのろと俺の上で後ろ向きになった。もちろん挿入は外さないのでペニスの皮が軽くねじれるような感覚がある。おそらく萌の秘唇のあたりにも似たような感覚があるに違いない。完全に後ろ向きになって、前かがみに俺の膝に両手をつくと、後ろを振り返り甘えた声で聞いてきた。
「これでいい?これで課長の好きな私のエッチなところ見える?」
尻タブを両手で分け開くと、目の前には薄く茶色がかったピンクの綺麗な尻のすぼみが見えていた。
そこは俺だけが特権として見ることを許された秘所だった。以前俺がそれを口にした時から萌は、当たり前のようにすぼみを目の前にさらすことに恥じらいを捨て、むしろ愛されていることの証のように、自分から進んでそれをするようになった。
「ああ、萌、前と変わらずにそこ綺麗だよ、俺だけのものだ」
萌は大きくコクコクと頷いた。

先ほどの騎乗位とはまた趣を異にする、この背面騎乗位でも自分が主導権を取っている萌が、今度はゆっくりと身体を前後させる。ペニスを咥えた萌の秘芯が動きに合わせて静かに捲れたり、すぼんで中に引き込まれたりしている。穏やかなうねりにゆったりと身を任せて、久しぶりの俺のペニスを味わうように時折、小さなため息を漏らしている。
小さく逝ったのか蜜壺の奥でかすかにうごめくものがある。俺はそのままにして萌が落ち着くのを待った。

23/05/25 08:39 (TggEdh0x)
3
投稿者: (無名)
しばらくして大きくため息をついた萌を見て、俺は上半身を起こし背中に軽く口づけをしながら萌の腰を軽く両手で押した。
やはり勘のいい女だ。俺の次の行為を察してゆっくりとペニスを外し、
俺の足先に身体を移し、向こう向きにうつぶせの姿勢から形のいい尻を高く差し上げた。俺は身体を起こして膝立ちに萌の後ろに位置し、片手で腰を掴みもう片方の手でペニスを尻の間に差し入れた。そのまま前に腰を進めると、萌は頭を下げてより腰の位置が高くなるように調整して俺を迎え入れた。
奥まで達した瞬間、ガクンと頭を後ろにそらせた。重ねた両手の上に顔を乗せて、快楽にゆだねる姿勢で俺のピストンを待った。今度は俺のリードの番だ。両手で腰を掴み奥深く送り込み、引き抜きそんな抽送を激しく繰り返した。だんだん萌の口からは『クーーン、クーン』と子犬の鳴き声のような喘ぎの声が漏れだし、やがてそれは『アアアーーン、アアーーン』と絶叫に変った。部屋には二人の下半身がぶつかり合う『パンパン、パンパン』と音が響いている。
萌の声がかすれ始めたのを感じ、右足を片膝立てした。そして新たな角度でピストンを繰り返した。
このバックのアレンジは蜜壺の中をこする位置が違って、全く別の感じ方がすると萌が言っていたことを思い出したのだ。
「 ダメ、ダメ、ダメ・・ 」「 アアアーーー 」「 ウッ、ウッ、ウッ、ウッ 」
「ダッメェーー、イッチャウウーー」
今日一番の喘ぎ、悶えだった。
俺のペニスから逃れるように萌の体が徐々に前のめりになり、ついには両足を延ばして完全にうつぶせの姿勢になった。それでも俺は萌の身体に馬乗りになって腰を動かし続けた。もはや萌の唇からは激しい息遣いのみで声はなかった。
ペニスを収めたまま後ろから密着すると、萌が顔をひねって俺の口づけをせがんだ。
「萌、俺も逝ってもいいか、もう限界だよ」
そう聞くとけだるそうに頷いて同意を示した。
ゆっくりとペニスを外した瞬間「ああーん」と甘えた声を漏らして、のろのろと仰向きに姿勢を変えて俺を待った。
俺は萌の両足を肩に担ぎあげて改めて蜜壺にペニスの頭をこすりつけ、そのまま一気に腰を押し付けて挿入を果たした。そして立て続けにピストンを繰り返えすと、十分に潤いに満ちた蜜壺は『ぴちゃぴちゃ』と卑猥な音を立てた。俺の絶頂感はたちまち訪れた。
「萌、いくぞ、本当にそのまま萌の中にいいんだな!」
萌は大きくうなずいて俺の肩から両足を外し、腰にしっかりと巻き付けて答えた。
「いいの、課長を全部ちょうだい、私の中に一杯ちょうだい!」
萌の中にどくどくと激しく俺の精を送り込んだ。こんな俺のどこに蓄えられていたのかと自分でも不思議に思うくらい沢山放出した。

ぐったりと放心したように仰向きに寝そべる萌は、体全体が汗で光っている。俺はトイレットロールを手繰って千切り、萌の股間にあふれ出た愛液と、俺の精子を拭き取ってやる。手元が誤って軽くクリトリスに触れた瞬間『びくっ』として萌は我に返り、俺の手を押さえる。
「ごめんなさい、課長、私自分でします。今、何が何だか分からなくなっちゃって、どうにかなっちゃってたみたい、すごかった、本当にすごかったわ、こんなの初めてーー」
萌は矢継ぎ早に話しながら俺の手からペーパーを奪い取って、自分の股間の始末を始めた。足りない分、ペーパーを新たに巻き取って続ける。一段落ついたところで俺に抱き着いてきた。
「課長、ありがとう、今日こうしてここを訪ねて来て本当に良かった。私、課長と別れたあの日から一日だって忘れたことなかったの。こうしてもらえたなんて夢みたい。ずっと好きでした、今も好きです、誰よりも・・」
萌を見ると両方のまなじりから涙があふれている。
俺も萌のことを忘れようとして葛藤を続け、そのことが延いては妻との離婚につながったことを萌は知らない。しかしあえて今それを口にするのはやめた。

23/05/26 17:25 (dRwVx/bL)
4
投稿者: (無名)
しばらくそのままの状態で二人は時の過ぎるのを待った。
「課長、シャワー借りてもいいですか?」
「いいよ、階段降りて右に曲がった突き当りが風呂だよ、ラックのバスタオルを使うといい」
「ありがとうございます、遠慮なく使わせてもらいます」
萌は脱ぎ捨てられた下着とスカートを胸元に抱えて部屋を出て行った。昔より丸みを帯びたものの、相変わらず格好のよい尻を左右に振りながら。

シャワー上がりの上気した萌と、居間で改めて昔の思い出話や近況を話し合った。意外に簡単に話は尽き、うつむきがちに見つめる萌と、氷だけになったグラスをカラカラともてあそぶ俺が、時間を持て余していた。
かといってそれが決して心地悪いものではなく、先ほどセックスの余韻もあって時折顔を見合わせては、意味もなく微笑みあったりした。

突然、娘の残していったカラクリ時計が3時のディズニーのメロディーを奏で始めた。
「アッ、私もうそろそろお暇しなくっちゃ」
そう言ってそわそわと帰り支度を始めた。
引き留める言葉もなくて、黙ってそれを見ているしかない俺だった
「次はいつ来れるの?」
尋ねた俺に曖昧なほほえみを返して、大きくうなずいた。
「また必ず来ます、課長に会いに、課長が嫌でなかったら、必ず」
萌はそう強く断言した。
そう大きくもないトートバッグを手にして、萌は静かに立ち上がった。
居間を出ていく萌を玄関まで送ろうとして、後姿の萌のニットスカートに浮かび上がった尻の形を見て、俺はまたも欲情した。あれほど大量の精を放ったというのに。後ろから抱きしめると萌はそのまま立ちすくんだ。
「もう一度、萌を欲しい」
耳元でささやくと萌は大きくため息をついた。
左手で右の乳房を大きく掴み、右手でスカートを手繰り上げ、股間にそのまま手を押し付けると、そこはかすかに熱を帯びて俺を待っていた。
萌の両手を壁に押し付け、そのままショーツを膝まで押し下げると、自分のパンツを脱ぐのももどかしく、尻のはざまにペニスを押し当てて一気に挿入した。
先ほどのセックスの余韻か、萌の秘芯はあっけなく俺の侵入を許した。
あとは無言の時間だった。そしていつしかそれは萌のむせび泣きに変った。

〈エピローグ〉
まるで夢の中の出来事のような萌とのひと時からもはや2年が過ぎた。
あの後は全く萌からの音沙汰は絶えた。俺はあれが一体何だったのか不可思議な思い今日までいる。ナンバーメモリー機能を持たない俺の固定電話には、萌の電話番号が記憶されていないし、別れ際あえてそれを問いかけもしなかった。また次の機会を決して疑わないあまりにも濃い時間、ひと時だったからだ。総務の山崎女史に尋ねる手段もないわけでもなかったが、あえてそれはせず萌から全くのなしの礫の2年だった。

休日のある日、相も変わらず暇を持て余して、時間つぶしの洗車をしている時だった。家の前でタクシーが止まり、降りてきた少女がメモを見ながら家の門柱の表札を確認している。少女がおずおずと玄関の呼び鈴を押した。水道のホースを投げ捨てて少女に近づいて尋ねた。
「はーい、ここにいますよ。ウチにどんなご用件ですか?」
ビックリした表情で俺の方に身体を向けた少女の顔を見た時、心臓が止まるかと思うほどの衝撃で息をのんだ。妻とともにこの家を出て行って、久しく顔を出していない長女の、若い頃の面影に少女は瓜二つだったからだ。体つきといい全体的に醸し出す少女の雰囲気は、タイムマシンで移動してきた昔の娘かとまごうほどだった。
キャラクターのポシェットを斜め掛けにした少女は、メモと俺の顔を交互に見ておそるおそる尋ねてきた。
「○○さんですよね、こちらは‥」
「はい、そうですよ、あなたは、どちら様?」
「すみません、わたし山川萌の娘で結愛といいます。母からここに来るよう言われて、それで今日来ました、突然でごめんなさい」
そういえば両眼のあたりに萌の面差しがなくもない。しかし苗字は俺たちが知り合ったころの萌のもので旧姓だ。それにしても少女は極めて利発そうな子だった。
あの時のように、狐につままれた感じでいた俺が我に返って返事を返した。
「どんな要件か分からないけど、とにかく家の中に入るかい?おじさんは一人暮らしで、誰もいなくてもいいのならどうぞ、お入りなさい・・」
「はい、お邪魔します」

少女は何の警戒心も抱いていない様子で、案内した居間では不思議な空間にいるように、キョロキョロと部屋を見渡していた。あの時の萌の様子にそっくりだった。
酔い覚めに常に用意してあるオレンジジュースを、少女の緊張をほぐすようにコップについで差し出した。
「あのぉ、お構いなく」
妙に大人びた佇まいの子だった。萌と出会ったころより若干の子供といった感じか。
少し時間を置いて俺は少女に尋ねた。
「ところであなたのお母さん、萌さんはお元気ですか?」
少女は一瞬困ったような仕草で、うつむいてしまった。
「それにしてもよくここが分かったね?ところで、今日はどういった御用件かな?お母さんからの頼まれ事ってどういうこと?」
矢継ぎ早にはなった俺の質問に、少女は俺の住所と名前の書かれたらしい小さなメモをテーブルの上に置くと、伏し目がちに一言つぶやくように俺に告げた。
「ママは半年前に亡くなりました・・」
「はぁ?」
俺はとんでもなく間の抜けたあほ面をさらしていたに違いない。心の中で大きく少女の言葉を反芻した。
『ママが亡くなった?!ママが亡くなった?!・・萌が死んだ?!半年前に・・・』
少女がポシェットから小さな封筒を取り出してテーブルの上に置いて俺の方に差し出した。
「ママが亡くなるちょっと前にこれをおじさんに渡してくれ、ってメモとこの封筒を私に手渡したんです」
「開けてもいいかい?」
少女はきっちりと頷いた。
封筒の中から出てきたのは、あめ色に変色した念珠だった。
思い出した。これは昔二人で訪れた奈良の室生寺の売店で、萌に買い与えた柘植の念珠だった。般若心経の刻まれた念珠は、萌が大変喜んで肌身離さず身に着けていた。確か2年前ここに来た時も、萌はそれを左腕に着けていた。
俺がその念珠を手にしてしみじみと見つめていると、少女が話し始めた。

萌の子宮に腫瘍が見つかったのは2年前の年明けだった。別にさしたる症状はなかったのだが集団検診で異常を見つけられ、精密検査の結果はステージ3も随分と進行していたのだ。若いがゆえに余命は一年と宣告された。
ガンが判明した萌のショックの大きさは計り知れないが、そののち何を思ってか萌は夫と協議離婚、結愛は萌に、弟は父親に引き取られた。萌たち親娘は独り暮らしの結愛の祖母の家に転がり込んだ。萌は医師の強力な勧めにもかかわらず、一切のガン治療を断固断って祖母の家で最後を迎えた。余命宣言を1年余りも伸ばして、さほど苦しむこともなく、最後は経皮モルヒネに頼った一週間で、極めて穏やかな死に顔だった。萌が最後を迎える間際に、結愛に念珠の入った封筒を俺に渡すよう、住所を書いたメモとともに託した。結愛は萌の死後しばらく迷ったが、萌の意思を尊重するために今日ここに来た。

これが少女の話した今日の訪問の顛末だった。

心ここにあらずで少女・結愛の話を聞き終えると、俺は小さくため息をついた。それを結愛に聞かれたかもしれないが、今は結愛から聞かされた話の衝撃さに、心ここにあらずで聞き咎められることも気にはならなかった。

あの日、萌がここを訪ずれたのはガン宣告から半年後のことだった。あれは自分の死を覚悟して、俺へのお別れの訪問だったのか。俺は萌の素振りや、昔よりやや丸みを帯びた身体つき、積極的で奔放にふるまったセックスからは、全く想像がつかなかった自分の無神経さに今更ながら歯噛みをした。

結愛は萌の思い出をとつとつと話し続け、俺はただ相槌を打つだけだった。

時間の経過にも気づかずにいた俺が我に返って、結愛のグラスが空な事に気づいて、お代わりを勧めた。
「あぁ、気が付かなくってゴメン、ジュースもっと持ってこようか?」
「ありがとうございます、でも、私もう結構です。ちゃんとママとの約束果たせて安心しました。だからもうこれで失礼します」

結愛はポシェットをたすき掛けにすると、静かに立ち上がった。俺も力なく立ち上がって結愛を玄関に送ることにした。
「ああそうだ、今度は、おじさんから君に頼みたいことがあるんだけど」
それまで無意識に俺の手の平でもてあそんでいた柘植の念珠を結愛に差し出した。
「もしよかったら、コレ、君がおじさんの代わりに持っててくれないか、いやだったら無理にとは言わないけれど・・」
そう話すと結愛は目を輝かせて俺の方に両手を差し出した。
「本当ですか?嬉しい、以前ママが丈夫だったころ、私、この念珠を欲しいっておねだりしたことがあるんです。だってすごく可愛いから。でも『これだけは結愛のお願いでも絶対だめ、ママの大事な宝物だから』ってママに断られたからあきらめたんです。」
結愛は俺から念珠を受け取ると、そのまま自分の左手にはめ空中に透かして俺に見せた。俺は『ウン』と頷くことしかできなかった。

「帰りはどうするの?ここらはタクシー見つからないし・・よかったら家までおじさんの車で送ろうか?」
「本当ですか?嬉しいです。じゃあ○○ショッピングセンターまで乗っけて貰えますか?おばあちゃんに頼まれた買い物があるし・・」
洗車途中の愛車で結愛を送ることとなった。結愛が隣のシートに身を沈めた時、少女らしいさわやかなシャンプーの香りとともに、俺は懐かしいにおいをかぎ取った。
「アナイス・・」そう唇でつぶやくと
「ママが使っていたパルファムです。これは結愛にまだ早いから、大人になったら使いなさいって私にくれたんです。今はハンカチに少し垂らしてるだけ、おじさんわかりました?」
俺は黙ってうなずいた。

ショッピングセンターの駐車場で、結愛を降ろす前に話しかけた。
「もし君が嫌でなかったら、いつでもおじさんのウチに遊びにおいで、休みの日には大概ウチで暇しているから、でも来るときは電話で連絡くれるとありがたいな」二人の初めてのわずかな時間だったが、なぜか結愛が以前からの身近な身内のような不思議な錯覚に陥っていた。
「本当ですか、ぜひまたお邪魔させてください、なんかあのオウチ居心地いいし」

結愛は車のドアを閉め窓越しに俺を覗き込んだ。ウインドウを下げると、深くお辞儀をしてから嬉しそうな声でこう告げた。
「今日は突然にお邪魔してすみませんでした。会ってくれて本当にありがとうございました。私、本当にまたおじさんのおうちへお邪魔しますね」
俺も手を上げて軽く会釈を返した。
結愛は踵を返し立ち去ろうとしたが、微笑みながら一旦振り返って、最後に俺の心に強烈に残る一言を残し、駆け去っていった。

「それじゃ、また、お父さん・・・」


23/05/26 17:26 (dRwVx/bL)
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