こんな世の中だから近くに住んでいる信頼できる人間はとても有り難いし罹患したり濃厚接触者になったりしても　あまり大っぴらにはしたくないし　色々と理由つけて人を叩きたくて仕方の無い匿名の人間が溢れている。　私の友人の相川君は素晴らしい行動力と頭の良さでSNSでもかなりの数のフォロワーもいるし　感染経路を特定されたりしても大きな会社の人間も巻き込む可能性が出てきたので　私は日頃お世話になっていることもあって　彼ら夫婦のケアをすることに　仕事は家からできるからいいし　食事はデリバリーで全部済ませられる　奥さんの綾子さんにはすぐ検査してもらって陰性だったので　ホテルにしばらく宿泊してもらうことに　その予定だったが　そこの従業員からでてしまって　急遽別のホテルにって思ったのだが　不特定多数の人間と会うという点’でリスクが大きいと相川は判断した、都合がいいというか　間違った信頼があるのか　私の仕事場兼住居のマンションに綾子さんは滞在することになった　スレンダーで清潔感があって髪は短め　顔はそうだなあ　目が離れ気味だけれど　可愛らしい　とはいっても親友の奥さんだということもあるし　それ以上に彼女にとって有意義な時間にしてもらいたいという思いが強い。
「この和室は綾子さんのプライベートな空間ということで　来客用の布団は押入れに　洗濯とかは　もし気になるなら近くにコインランドリーもあるし　食事はどうしようか　自炊してるけれど　君の家はどんな感じ？」　共同生活ってのが久しぶりでどうにも感覚が思い出せない。
「前の彼女と同棲してたんじゃなかったけ？」ああ　そうだけどね　三年前の話しだし半年でダメになった　別れた理由は簡単だ　もっと素敵な男性が現れてしまった思い出すと口の中に苦い味が広がるのは条件反射のような錯覚だ　珈琲にこだわるとこのある女だった　あんなに愛していたのにもう細かいところが思い出せない　豆から焙煎すると違う　それはわかるけど素敵なトラウマを残してくれた　何か苦手な食材が無いか聞かれて　こんな話しをする僕は面倒くさい人間なのだ　綾子さんは慣れてると余裕だ　そうなのだ私の親友はそこで同類なのだ　いちいち細かく説明しないと気がすまないのよね　適当に流せるスキルはばっちり身につけてるから問題ないからと　そこは受け入れられているから気が楽だ　ランチはどうやら毎日彼女のおごりにしてくれる宿泊費の代わりらしい　それに他にも理由がある　ああそう言えば確かにこんなことをしている　お洒落な店で愛妻とランチしてるアピールだ　その写真を撮りに付き合う　店からしてみたら私は浮気相手に思われるかもよといらない心配をすると　それもそうと不在の彼が普通に行動しているようなアリバイを創作することに僕達の興味は移っていく　だが僕達の渾身の写真を彼に送るとどうやら彼の美学に沿わなかったのか評価は芳しくなかった
それに彼が期待していることは私とはだいぶ違っているようで　私達が学び合って影響しあって成長できるのではないかと　そういうことを起こしたがる性格なのは知っていたが　男女なんだからそこへの心配が無いのが少し不満ではある　上手に口説いてくれたら考えると綾子さんもどうやら余裕だし
自分の男性的な魅力がそれほど即物的でないのは自覚があるので　こういうのはそれこそそういう現場で比べるのが早いし　とても早くて衝撃的だ
あれは銀座だったナンパで有名なとても安い店に行った時に思い知った　こういう場所ではわかりやすいことが必要だと思ったし　男女のわかりやすい自己表現は記号としてとても有用なのだ　会話の入り口はどうでもよくて相手の反応を見るそこからだと　私をエスコートしてくれた仕事の関係者はすぐに女性二人組と楽しそうに話し始めた　30分も眺めていれば充分だった。そんな事を思い出すのは　横に女性がいるせいかなと　自分にいつもと違う影響がおよぼされてることに自覚的になろうとする　
　私は私だけれども　変化は受容するしそれが当然なのにきっともう彼は私に慣れてしまって刺激を求めているけれど結婚生活ってそういうことじゃないのに彼は理解できないみたい　私もこんな顔で悩まれるくらいに惚れてもらえたら本望だなという思いを先に説明するが　そうやら誤魔化そうとしていると受け止められてしまったか　せっかくのテラスでの美味しいランチが無味になるくらい　彼女は怒りの表情を隠そうとしないが　部屋じゃなくて良かったと思う実はこんなに激情型だったのかと思いを巡らす　これから数日は二人きりの可能性が大だが　自信は一瞬で失われた　こんな時は高校の時のクラスメイトを思い出せば奮い立つことができる　深刻な問題を体に抱えていた彼はその病状が隠せなくなるまで　私達を上手に騙し通した　今日で人生最後の日だと思えばどんな事だって我慢だって頑張ることだってできるさ　人間できてるなって皆んなでバカにしていたけど彼は実践していたし　僕の心の中に今でも彼は生き続けている。　僕は若きあの時の僕にそして彼に恥ずかしく無い大人に成れているのか自問する　現実に上手に合わせて適当に生きているそれ自体はそれで充分だとも思えるけれど夢を追うって事をしないこの人生に突然恐怖心を覚えた　いつか生きていたら綾子さんのような素敵な女性と幸せになんてそんな可能性は皆無だ。　家から徒歩で来れる店でよかった　お酒を飲んでも問題が無い　実はそれほど呑めないから私がグラスワインを頼んで綾子にも付き合わないかと聞くと彼女は先程までの怒りをおさめて反省の表情にこれが私の冷静な怒りだと勘違いしたようだ　それが違うことを説明したあとに　先程思い出した病気で先に人生を卒業した友人の話をした　そして僕は高校生の時にはSF小説を書きたいって思っていたのにそれをすっかり忘れて生きてきたそれを思い出した君のおかげだと　まくし立てたら眉をひそめて私をじっくりと観察してきた　たったワイン一杯で　彼女の頭の上に？マークが出ているのが見えるようだった　部屋に戻って私が仕事を友人にふって　これからしばらくのスケジュールを空けたのを見るにつけ私が本気だということに納得して　お互い自由な創作活動に費やすのが健全だと宣言して押し入れの中からダンボールを出すその中には名作のSFが一通りは入ってるはずだ　感覚を取り戻そう　そう思い立ってすぐに私の行動は文字が小さすぎることで止まってしまった。彼女は提案する　名作のお試し読みで最初の部分だけで　だって感覚取り戻すって　そういうことでしょう　私は私でちょっと平安時代に行ってきますので　夕ご飯の時に意見の交換しましょう
　iMacが結局作業しやすい　二台並んでいるので　彼女の画面がとても気になる　くずしたひらがなを綾子は読めるってことを知った　
　　水島新司が言っていた　書いていたら自分の意志に反して漫画のキャラが試合進めてしまって　まさかここでホームラン打つなんてと嬉しそうに話しているのを思い出した。　このまま行くと　エッチなシーンまでかかりそうだ　できたら今晩いい雰囲気になって欲しいって筆者は思うのだが
　主人公は宇宙船の推進方法の現代的な表現の資料をネットで集め始めた　綾子は枕草子　源氏物語　百人一首　から広げて行く作業に取り掛かった
　まずは短編　簡単なストーリー　というより宇宙船を建造する理由のパターンを考えて　それに呼応するかのように綾子も自分で短編の恋愛小説を書こうかと　夕ご飯は簡単に済ませることにした　食事よりもしたいことが沢山できたというか　したいことを思い出したり　思いつくか　最初の夜は
そこに立ち返ることになってしまった　そこで彼女が僕の今まで興味持ったこと全て思い出せる限り教えてと言い出した　それで脳に刺激を与えようと　心理学だったり　脳科学に一時期興味持って様々な本を読んだことがある　意外だった　子供の頃の記憶から　最近の興味　ブラウザーで検索し続けると　それに近しい案件も出てくるから　無限に数珠つなぎだし　自分だけでしていたらただのネットサーフィン　最近言わなくなったね　ネットサーフィン　彼女も確かに死語だと　なんで使われなくなったか調べていた　久しぶりに完全に脳が疲れ果てるまで使った　彼女に思いつく限りの経験を伝えれたかはわからない　どこで寝てしまったか　何時に寝落ちしたのか　それは記憶されていない　僕は廊下側の寝室のベッドにいつのまにか横になっていたし
　ただ淫夢を見たような気がする　サキュバスに襲われて　搾り取られたような　それが夢じゃないことことを確実に覚えてるのは綾子だけだから　彼女が無かったと言ったら　この行為は世界から無くなる　きっと。
　二日目の朝　彼女の提案は私を驚かすのに充分でそして常識やモラルを軽く越えてきた　昼には奈良に私達はいた。　とってもそういう気分になったから　奈良京都ってのは　関東の人間からしたら修学旅行の定番で　大体の高校生はまだ寺社仏閣　仏像のありがたみは理解できていない　僕もそうだったから　一旦　宇宙船のことは片隅に追いやって　大人の修学旅行を楽しむことにした　
そしてその夜に泊まることになったホテルで　幽霊騒ぎに巻き込まれること　続く

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