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1:母親とラブホで働こう!
投稿者:
タケイチ
『タカぁ~?お母さんとこに来るぅ~?』
3年以上勤務していた会社を勝手に辞め、その後の仕事も長続きをしない僕に、ついに母が見兼ねてそう言って来ました。 母も誘うのは本意ではありません。それはラブホテルの清掃、あまり薦めたくはなかったからです。もちろん、僕も一度は断ります。 『ラブホの清掃って…。それも親子でって…。』と、僕にもプライドはあります。しかし、行く宛のない僕は、最後には返事をしてしまいます。 『とりあえずやで。すぐに辞めるかもしれんで?』 ラブホの清掃は午前なら9時~17時、夜なら18時~深夜1時まで。54歳になる女の母も、このシフトを繰り返しています。 その初日。僕は母に連れられ、午前9時前にホテルに着きました。出ていく若いカップルにも見られ、向こうは変な顔をしています。 54歳のおばさんと22歳の男が一緒にホテルに入って行っているのです。母も気にしているようですが、彼らには見向きもしません。 2階の事務所に向かうと、フロントのおばさんに紹介され、『紀ちゃんの息子さん~?よろしくねぇ~。』と声を掛けられます。 本当は嫌で仕方がないのに、紹介してくれた母の顔を潰す訳にもいかず、『よろしくお願いします。頑張ります。』と心にもない返事をするのでした。 母に連れられ、エレベーターで最上階の4階へ上がります。客室が並ぶ中、ある部屋の扉が開きました。それは、従業員さんの控え室。 むかし客室だった部屋を、そのまま控え室にしたような部屋です。このホテル、客室は35部屋ありますが、24部屋しか使っておらず、この控え室もその1つ。 余った部屋は倉庫になったり、それこそそのままホコリを被ったままになっていたりと、今では24部屋あれば充分なようです。 作業開始まで母と控え室で待っていると、突然扉が開き、『おはようっ!』と60歳近いおはさんが入って来ました。 名前は『安藤さん』と言い、今日はこの方と一緒に清掃をするようです。『紀ちゃんの息子?イケメン~。』と言われました。 安藤さんは、60歳近いのにかなり気は若い方のようです。 そして9時になり、清掃作業開始です。掃除用のカートを押しながら、『掃除待ち』のお部屋へと入って行くのです。 客室へと入りました。そこでラブホの異様さを味わうことになります。ベッドは乱れ、コンドームの袋は床に捨てられています。 ゴミ箱はティッシュの山になり、破り捨てられたであろうストッキングが転がっています。安藤さんは、『お兄さん、こっち。』と僕を連れ出します。 最初の最初なので『刺激が強いか?』と思って、風呂場へと連れ出してくれたのです。しかしその風呂場もスゴいことになっていました。 排水口には何が大量に溜まっていて、それが人の毛であることは明らかでした。風呂場の毛、それが陰毛であることは僕でも分かります。 きっと女性の毛が、ここで剃られたのです。それを見た安藤さんは、『こっちもかぁ~。』と照れたような顔を見せます。 しかし、彼女を思いやり、『大丈夫ですよ。』と返すのでした。 午前中の作業も終わり、仕事内容は同じなので、僕もすぐに仕事を覚えます。午後からは、更に手際よく出来るはずです。 昼食となり、母の作ってくれた弁当を安藤さんと食べます。そこで、『お茶忘れた。』と言う安藤さんのために、2階の自販機へと走ったのです。 職員用階段を降り、2階の廊下へ顔を出します。しかし、そこには部屋へ入るカップルの姿が見え、僕はすぐに隠れました。 『カチャ。』と扉が閉まるのを待って、再び廊下へと出ます。自販機へと向かいますが、さっきの部屋に入った女性の顔が浮かんでいました。 35歳くらいのスタイルの言い、モデルのような女性でした。ハイヒールも高かったのか、かなり身長が高く感じたのです。 午後の作業となり、僕達は2階へと向かいました。『もう慣れたから。』と思い、僕のやる気も少しですが出始めています。 向かったのは、さっき出くわしたあのカップルのとなりお部屋。モデルのような女性も『今頃、いいことしてるだろうなぁ~。』と、どこか気にもなるのです。 部屋に入り、僕は任されたお風呂の掃除を始めます。もう5部屋目なので、慣れたものです。洗剤を掛け、スポンジで擦りあげます。 お風呂の掃除も終わり、母と安藤さんのいるベッドへと向かいました。ところが、二人が苦い顔をして僕を見るのです。 僕は安藤さんの顔を見ました。僕を見る彼女の目が、隣の部屋との壁を気にしています。 『アァ~ン!…、アアアァ~ン…!…、オマンコ逝くぅ~!…、オマンコ最高ぉ~!アアァ~ァ~ン…!…、』 と、隣の部屋から女性の喘ぐ声がしているのです。それはとても大きな声で、隣の部屋どころか、廊下にまで響いていました。 『さっきの女性…。』、見てしまっただけに、その声はとても生々しいものでした。あのモデルのような美人が、こんなにも激しく声をあげるのです。 母も、僕を見ていました。やはり、これを心配していたようです。このホテル、かなり防音が薄く、隣まで聞こえてしまう部屋があるのです。 母の苦そうな顔が、妙に心に残りました。 次の日から、僕は一人でホテルへと向かいます。すでにシフトが組まれていて、毎日毎日母と一緒に仕事をする訳ではないようです。 清掃員は、僕を含めて全部で7人。慣れた方なら、一人で作業をされる方もいるみたいです。そして、男性は僕ともう一人たけ。 男性二人が一緒になることはなく、この方と僕は顔を会わせることはほぼ皆無でした。余程の忙しい時でないと、シフトを組まれないのです。 しかし、その男性と初めて顔を合わせる時が来ました。忙しい土曜日の夜、僕と母のサポートとして、男性が現れました。 名前は『大林さん』という35歳くらいの男性。一も笑顔を見せてくれていて、とても好感の持てる方です。 僕を『タカくん、タカくん、』と呼んでくれて、すぐに仲良くなります。親しみやすいお兄さんって感じです。 土曜日の夜はやはり忙しく、僕達3人は清掃に終われます。大林さんから、『タカくん、先にお風呂回ってくれん?』と言われました。 とにかく、ラブホの掃除で大変なのはお風呂の掃除です。それを急がせるのは、速く清掃を終わらせるコツだとも言えます。 『確かに…。』、大林さんの的確な判断で、僕は一人で各部屋のお風呂の掃除を先に回ります。かなりの重労働です。 汗も掻き、疲れもします。しかし、それでも新入りの僕を信用してくれた大林さんのためにも、どこか頑張ってしまう僕なのでした。 風呂の掃除をかなり先行させた僕は、後から追ってくる母と安藤さんの方へと向かいます。頑張りすぎたのか、彼らはこのフロアーまで降りてきていません。 エレベーターを上がり、3階の一番奥の部屋の前に掃除用のカートを見つけました。お客の迷惑にならないように、ゆっくりと廊下を歩きます。 そして、扉が開かれたままの部屋を覗き込むと、奥のベッドの横に立っている大林さんを見つけます。『こっち手伝います!』と言い掛けたその時…。 彼が、その手から誰かを離しました。僕に気づいた彼は僕を見ます。彼の手が誰かを離し、それは誰かを抱き締めていたとしか思えません。 僕はその場を離れました。少し距離をとり、お客さんの迷惑をかえりみず、大きな足音をわざと立てて再び部屋へと向かいます。 中から、『ガタガタっ』と音が上がり、部屋から出てきたのは母でした。すぐに大林さんも現れ、そしてこう言うのです。 『タカくん、掃除出来たぁ~?』
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2018/12/10 15:08:07(n.9bxlw6)
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