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「あ~ぁ なんか強烈な刺激が欲しいわねぇ」 日曜日の混雑しているカフェで、突然突拍子もない言葉を口に出した真由に、私は思わず周りを見渡していた。 「やだ、真由ったら、声が大きいわよ」 彼女は学生時代から私の大の仲良しで、唯一親友と呼び合える仲です。 私の名前は冴子、大学を卒業して3年ほどお勤めした後に結婚したのですが、子どもには恵まれず夫と二人暮らしの専業主婦です。 真由は30歳前に一度結婚したのですが、2年足らずで別れて今はお仕事だけに没頭しているキャリアウーマン。 「冴子は刺激が欲しくないの? 毎日が退屈だって言ってたじゃない。 私たちもう40歳になっちゃったのよ。 今のうちに色んなことをしておかないと、直ぐに誰にも相手にされなくなっちゃうのよ」 「確かにあなたの言う通りだけど… 真由はどんな刺激を望んでるの?」 「そりゃあやっぱり男よ」 「結婚はもう充分だって言ってたくせに」 「ばかねぇ、結婚する気なんて全然無いわよ でも肉体的な欲求は別物なの」 真由のあからさまな表現に私は頬が熱くなる思いでした。 「聞こえるわよ」 「聞かれたって平気よ、それに冴子だって旦那に不満があるって言ってたじゃない」 何でも話し合える彼女に私は愚痴をこぼしたことがありますから、夫との夫婦生活に対する私の不満について、彼女は理解してくれていました。 「そりゃあ確かに言ったけど、だからといってどうにかなる問題じゃないでしょ」 「そうだっ! 今日は二人でナンパしない? 男を逆ナンするのよ」 「ええ~っ 何を言い出すのよ」 学生の頃から行動派の真由は、思い立ったら直ぐに実行に移すタイプでした。 仕事柄出張が多い夫は明後日に帰宅する予定でしたから、その日は何の支障もなく真由と行動を共にすることが出来ます。 「でも逆ナンなんて…」 「大丈夫よ、私に任せておきなさい」 夕方の早い時間から私たちは、真由が2、3度訪れたことがあるというワインバーに繰り出しました。 落ち着いた内装の趣があるお店のマスターが、優しくワインについて語ってくれて、お薦めのワインを傾けているうちに、私も真由もほんのりと目元を赤く染め上げていました。 声を掛けてきた若いサラリーマン風の二人連れと言葉を交わしていた私は、浮かない表情の真由に気づいていました。 「どうしたの? 気分でも悪くなったの?」 「冴子…あれはダメよ」 「え?」 「あんな若い男は問題外だからね」 彼女は耳打ちをするように言葉を続けます。 「目標はロマンスグレーよ 女とやりたいだけのがっついた男なんて、絶対に相手にしちゃダメなの」 私が若い男性とはしゃいでいたように見えたのか、真由は釘を刺すようにじっと見つめて言ったのです。 「おじさまとのセックスを経験して覚えたら、冴子も夢中になると思うわよ」 彼女の大きな瞳に妖艶な光が宿っています。 「カウンターの右端の二人…」 真由に言われた方に眼をやると、50歳前後の男性と部下と思しき若干年下の男性が、にこやかに談笑しながら呑んでいました。 「あの二人なら絶対に安全よ、何も問題ないわ」 二人連れの様子を窺いながら独り言のように呟いた真由は、私の方に振り向いて言いました。 「あの人たちとセックスするとしたら、あなたはどちらの男にする?」 突然そんなことを訊かれても私には答えることができません。 だって…結婚以来夫以外の男性とそんな風になった事がありませんから。 「真由…」 「今夜は私に付き合いなさい 旦那とはずいぶんしてないんでしょ?」 それも私から真由に話していたことですから、彼女は私の夫婦生活を誰よりも熟知していました。 「そんな…知らない人となんて…」 口ではそう言いながら私は身体の中に熱いものを感じていました。 「覚悟を決めなさい、あなたは今夜初めて夫以外の男に抱かれるのよ」 まるで死刑宣告でもするかのように、真由が毅然として私に言い放ったのです。 もう考える余裕などありませんでした。 「あっ! チャンスだわ 待っててね」 年輩の男性がトイレに立ってもう一方の方が独りになると、真由は彼に近寄り隣に腰を下ろしました。 二人が話をしながら時折私の方を見て笑顔を送ってきましたが、やがてもう一人が席に戻ると、しばらく何事か話し合った後に、3人揃って私の席にやって来ました。 簡単な挨拶と自己紹介をしてから、4人で乾杯をして改めて呑み直しました。 二人の紳士的な振る舞いにいつしか私の警戒心も解れ、まるでずっと前からお付き合いがあったかのように打ち解けていました。 酔いに任せた真由の際どい話題にも、二人の男性は話を合わせながらも節度を守ってくれた為に、私は心を開放することができていたと思います。 「ちょっと真由、もうやめなさいよ」 ハイペースでグラスを空ける真由を心配した私が嗜めても、彼女は一向に気にする様子を見せないで、隣に座った若い方の男性にしなだれ掛かっています。 「この後はどうする? 食事にでも行くかい?」 呑みながら色々つまんでいた私も真由も、とても食事など食べられない状態でした。 「それよりもおじ様ぁ」 「真由っ おじ様だなんて失礼よっ」 「はは…いいよ、いいよ、 君たちから見たら私は充分おじさんだからね」 「おじ様ぁ ホテルをとって…」 真由の言葉に私の全身から汗が噴き出してきました。 顔は青ざめていたかも知れません。 真由がおじ様と呼んでいる年輩の男性は高崎さん、もう一人は部下の松山さん。 高崎さんに指示された松山さんがホテルの予約を入れる為に席を外し、真由がトイレに立って行きました。 「初めてなんだってね? もしも嫌だったなら途中で帰っても構わないからね」 そっと耳打ちをされて私は驚きました。 そんなことまで真由は話していたんです。 「二部屋用意しました」 すぐ近くのシティホテルに予約を入れた松山さんが戻って来て、私たち4人は歩いてホテルに向かいました。 「冴子は高崎さんとね…」 そっと囁き掛けてきた真由の言葉に私はホッと安堵していました。 内心では望んでいましたから。 (続)
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2018/02/25 06:14:54(DdKcp0OK)
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