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1:第三章 妻として、母として
投稿者:
マイペース
◆e5QcYAlxuU
『1』
暗闇に包まれ、外灯の明かりだけが照らす田舎道。 午後十時過ぎ、外を出歩く者は少ない。 そんな道を、一台の紺色の軽自動車が走っていた。 フラフラと蛇行しながらの不安定な運転で、何とかある場所に車を停めた。 奥には一階建ての民家があり、周りにはコンクリート塀が敷地を囲っている。 車を停めた隣には、黒いセダンが既に停められてあった。 紺色の軽自動車はエンジンを止め、車のドアが開いた。 しかし、すぐには降りてこなかった。 シーンとした空間が、辺りを包んだ。 そして、ようやく一人の女がゆっくりと車から降りてきた。 牧元幸子だ。 表情は見るからに生気を失い、憔悴しきっている。 それも当然だ。 ほんの一時間前まで、幸子は犯されていたのだから。 典夫と西尾、常に幸子の周りを彷徨いていた二人の淫獣の手によって徹底的に犯されたのだ。 綺麗に整えられていた髪は乱れ気味で、服装も少し雑に着こなしている。 あれからの記憶は、あまり憶えていなかった。 よく事故を起こさず、無事に帰ってこれたものだ。 だが、幸子にとって本当に辛いのはこの後だった。 家族と顔を合わす、今の幸子にこれ以上の酷な事は無いだろう。 犯され、汚された姿のまま愛する者達と対面するなど耐えられるはずも無い。 とはいえ、いつまでもこうしている訳にもいかないのだ。 (・・・) 幸子は、意を決して玄関を開けた。 静かに開いた玄関の扉、それに過剰に反応して居間から足音が聞こえてきた。 最愛の夫、由英だ。 「・・・今まで連絡もしないで何してたんだ!事故にでも遭ったんじゃないかと心配してたんだぞ!」 自分の事を心の底から心配してくれている。 幸子は、罪悪感に苛まれた。 「ごっ、ごめんなさい・・・」 「まぁ、とにかく無事でよかっ・・・ん?幸子、その目はどうした?腫れてるじゃないか!」 「え?」 泣いた影響で、幸子の瞼は腫れていたのだ。 「泣いたのか!?」 由英は、再び不安そうに幸子に問いかけた。 家族を捲き込むわけにはいかない。 幸子は、咄嗟に誤魔化した。 「これは・・・あっ、映画。映画を観てきたの。感動して思わず泣いちゃったわ」 何て健気なのだろう。 「助けて!」 由英にその一言が言えれば、どんなに楽な事か。 しかし、それは絶対に許されないのだ。 幸子は、全て一人で抱え込むしかなかった。
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2013/04/28 16:02:16(tbXGQouy)
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