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1:百花繚乱~女教頭とPTA~5
投稿者:
乱歩
「……身の振り方を考えて置いてくれ。」
「っ!! なんで私だけが…」 「君の投資案件の回収率を見れば分かりそうなものだけどね。」 「しかし!! 私だけが‥」 「話は終わったよ。 後は君が"それ"を自主的にするか、会社がするかだけだ。」 「‥‥っ!」 「さあ、要件は済んだ。 席に戻ってくれ。 ‥‥仕事は自分で探せるだろう?」 かつての部下や同僚の密やかな哀れみと嘲笑の視線の中、屈辱で身を震わせながら憲子は自分の席に戻った。 不動産関連の法律規や、各種データ集が整然と置かれた机に置かれた憲子のスケジュール帳は先週から全くの白紙だった。 "イケニエ" 青くなった頭に浮かんだ言葉は、要はそういうことだった。 強い日本経済が誘う無限の投資が産み出す、土地を始めとする価値の際限ない上昇。 "絶対に外れない宝くじ"という神話の崩壊の時に必要とされた生贄に、自分は選ばれたらしいことを、怒りで白濁した意識の中に僅かに残った理性の部分が理解した。 三前銀行に限らず、投資による資金増を宿命とする金融界は全ての企業が限界を迎えていた。 破綻回避のため、裏表問わず公的資金の投入が避けられない状況で、対象の金融機関はそれを受ける為の資格である経営努力を目に見える形で示す必要があった。 その"目に見える形の努力"とは生贄を捧げることで、近いうち"哀れな誰か"がそうなることは憲子も確信をしていた。 ただ、その"哀れな誰か"に自分がなることを、"外側"は全く予見も受入も出来なかった。 (‥‥ワタシガコワレル‥‥) 負け犬のように舞台から退場する自分の姿が頭によぎったとき、憲子の"外側"は割れるような警戒音を発した。 「ソレハ、誰ニモ話シテハダメダゾ」 父が、怒りと痛ましさの交じった表情で、幼い憲子に言った時、曖昧な姿ではあるが"内側"と"外側"が分離を開始した。 それは、大人の言うことを聞くと誉められる事を知っている"良い子"な憲子が、知らないおじさんの言うことを聞いた時に言われた事だった。
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2011/03/15 00:17:14(RCozMHhm)
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