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1:誘惑のつもりが 1
投稿者:
みや子
これは本当にあったお話です。初めは有望な学生実業家を誘惑しようと思ってしたこと でした。それが私自身にとんでもない災難をもたらすことになってしまうとは夢にも思い ませんでした。 私はタヒチアン・ノニ・ジュースっていう健康飲料を売る仕事をサイドビジネスとして やっています。私が紹介したお客さんが商品を売れば私にマージンが入る仕組みで、その お客さんがまた誰かを紹介して、その人が売ればまた私にマージンが入る仕組みで、下に つく人が多ければ多いほど私の儲けも増えるので、いかに多くの紹介者を開拓できる顔が 広い積極的な人間を仲間に引き入れるかが、その後の私の稼ぎに関わってくるのです。 私は一人の大学生に目を付けました。まだ19歳の2年生ですが、高校の頃は駅伝で有 名な高校の陸上部でインターハイでも注目されたポーツ万能の好青年で、卒業後は有名国 立大学に入学し、学生でありながら父親のやっていた損害保険の代理店を手伝い、潰れそ うな代理店を一年で前年度10倍以上の新規契約をとって代理店会の表彰を受けたほどの 若者です。私も以前から損害保険の代理店を開業していましたので、T海上火災の代理店 会や研修会で彼と知り合い、彼ほどのガッツのある人物がサイドビジネスとして私の下で 頑張ってくれればと思っていました。 40代の私と20歳前の彼とでは釣り合わないかもしれませんが、彼も私に好意を持っ てくれているようで、何度かお茶に誘ってくれたり、たわいもない内容のメールを送って 喜ばせてくれていました。 私は主人が出張中の日に彼を自宅に昼食に誘いました。代理店会で表彰されたことのお 祝いをするという理由でした。 でも本当の目的は、もちろん彼にこのビジネスに参加してもらうためです。正直言って 女の魅力で彼を惹き付けて契約させようと思っていました。そのためにはある程度男女の 関係になることも覚悟はしていました。私は自分で言う事は出来ませんが、美人のほうだ と思います。高校生の頃から周りの男の子達からちやほやされていましたし、交際を求め られたり、モデルにスカウトされた経験は数え切れないほどありました。今は主婦ですが 年齢のわりにはスタイルはもちろん、肌の白さや張りも衰えていないつもりです。保険契 約を取りにいく時にも女の武器として色気を使うことは当然のことでしたから何の抵抗も ありませんでしたが、今回は本当のところ契約よりも彼に抱かれたかっただけかもしれま せん。この頃、真面目すぎる主人と何もない夜を過ごす苦痛に耐えられなかったのも事実 です。この若い男を誘惑して女の悦びを取り戻したかっただけかもしれません。 服はあえてセクシーなものは選びませんでした。敬くん(彼の名前です。)にとっては 私はあくまでも同業種の先輩であり、気兼ね無く話せるお姉さんみたいな存在であること を離れたくなかったのです。ですからなるべく質素な服を選びました。ローズピンクのち ょっと短いタイトスカートを履いて、身体の線がでるようにスレンダーな白のブラウスを 着て、その上にスカートと同じローズピンクのカーデガンをはおりました。お化粧もなる べくナチュラルメイクで、色を抑えて、それでもこれからの展開を考え、彼を私の魅力の 虜にして契約を取ることを考えると身震いし、身体が熱くなるのを感じました。 「ほんとうにおめでとう、よかったわ。なんか私、敬くんが表彰されているのを見てて涙 が出ちゃって。」 そう言いながら流す涙は、あながち嘘泣きでもありませんでした。彼のこの一年間のが んばりや、途中お母様が亡くなられた事を思い出すと、本当に涙が出てきました。 「いやだな、みや子さんが泣いてどうするんですか。」 そんな話をしながら彼のために用意した食事も、彼の旺盛な食欲のおかげであっと言う 間に終わりになってきました。 「敬くんモテるから大変だったでしょ。バレンタインとかチョコいっぱいもらったんじゃ ないの?」 「はははは、けっこうね、それは否定すると嘘になっちゃうけど、でも俺、彼女いるから チョコをくれる子に悪くて、」 「えっ、彼女いるの?」 「えぇ、お話ししませんでしたか、うちのお店の西田志穂さん。」 「え~っ、西田さんって、メガネかけた?、だってすごいおとなしいそうな子じゃない。 あの人、敬くんよりずっと年上でしょ、」 「あはははは、同い年ですよ。高校二年の時に中退してウチで働きだしたんですよ。志穂 が中学に入るまで、ウチの近くに住んでいたんで、母親どうしが友達ですし、幼なじみみ たいなやつですよ。」 「それで、敬くん達って、もうやったの。」 「えぇー、みや子さん、そんなこと聞くんですか。まだですよ。俺、けっこう奥手なんで すよ。ははは、」 「今まで他の女の人とは、」 「っていうか、今まで、なりゆきで二、三回デートした子はいたけど、志穂が悲しむか な、って思うとね、彼女だけは大切にしているんです。よく言えば純愛?悪く言えば安全 牌っていう奴?」 そう言うと、また大きく笑いました。 話は思わぬ展開になってきました。このままでは今日私が描いてきたシナリオが壊れち ゃう。そう思うといらいらしてきました。 「それじゃあ敬くん、まだ童貞なんだ。」 「童貞って、うん、まあ大きな声じゃあ言えないけど、志穂を大切にしてるから、純愛っ てやつですか。」 敬くんは、また大きな声で笑いました。 「なんかそれって、オママゴトみたいね、」 「オママゴト、ですか?」 「そうよ、だって男と女の関係って、そういうものではないわ。」 「愛しているなら、お互いの身体が欲しくなるのもあたりまえでしょ。」 「敬くんたち、本当に愛し合っているのかしら?」 さすがにこれは言い過ぎだと思ったし、敬くんもムッとする代わりに黙り込んで俯いて しまいました。どうしてこんな風になっちゃったんだろう。取り乱しているのは完全に私 の方だし、敬くんが俯いているのは、ショックを受けたのではなくて、私から離れようと して心を閉ざしているのがよく分かりました。 「敬くん、ごめんね、私、言い過ぎちゃった。」 「コーヒー入れましょうね、敬くん、ちょっとソファーの方に行っていてくれる、ここ片 づけて、コーヒーあっちに持って行くわ。」 テーブルの上のお皿やグラスを片づけて、コーヒーメーカーのスイッチを入れてから、 寝室にお化粧を直しに行きました。 『どうしてこんな風になってしまったんだろう、これでは話がめちゃくちゃだわ。』 暗 い寝室に入り、鏡に映った自分は、まるで醜いオニババでした。気分を変えるためにも落 ちてしまった口紅を塗り直そうと鏡の前に座りました。 鏡の中の私を見つめているうちに、またあの考えが頭をまたげてきました。 『もう甘いことは言っていられないわ、なんとしてもあの少年を誘惑して私の物にするの よ。敬くんを私の身体の虜にして、これから先、私の身体無しではいられないようにする わ。』心の中でそうつぶやくと、鏡台の引き出しからお化粧道具を取り出しました。 口紅は真紅に塗り直しました。人を喰ったような赤。アイシャドウーも空色のものにし て瞼全体たっぷりとグロスを塗って、鏡の中の私はだんだんと魔女のように怖ろしく、だ けど妖艶な美しさが現れてきました。 まとめていたストレートの髪をほどいて、ブラウスを脱ぎ、ブラジャーをはずし、上半 身裸になりました。自慢の形の良い大きな乳房が鏡に映ります。この胸に敬くんの頭を押 しつけるのよ、そんなことを考えながらブラジャーを着けずに再びブラウスをはおり、上 のボタンはひとつせずにおきました。 『これから、あの敬くんを誘惑するんだわ、彼の唇を貪り、すべすべした肌を味わい、筋 肉質の胸に顔を埋めるよ。この胸を揉まれ、前進にキスをさせて、それから‥‥、』そう 考えると喉がからからになってきます。
2003/07/19 12:38:07(loJR.wFi)
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