第１話　狙われた学園アイドル



【1】



「紀子、いきがってんじゃないよ……」
髪を脱色した不良少女の頬を、平手で二度三度と張り飛ばす。
「いいかい……二度と生意気させないよ」
スケバンは髪の毛を掴んで凄んでみせた。

「うっ……」
鼻からツーと鮮血が伝う。
激しい平手打ちに、ガックリと少女の身体から力が抜けた。

「お前、根性ないねえ……」
スケバンは煙草に火をつけると、吸い込んだ煙を少女の顔に吹き掛けた。
「ほら、腕貸しな……」
咥え煙草で少女の細い腕を剥きあげる。
「ひぃ……ッ」
喉をしぼった少女の腰が、思わず後ろへ引いた。

「紀子……ジタバタするんじゃないよ」
スケバンは嗜虐的な笑みを浮かべた。
「ああ、いやっ……」
少女はビクッと震え、スケバンの手から逃れようと、あわてて腕を縮めようとする。
だが、それよりも早く煙草の先が押しつけられた。

「うっ……うぐぐぅっ」
低いうめき声をもらしながら、小柄な身体がくの字に曲げられる。
眉間が苦しそうに寄せられ、幼さの残る顔から白い歯が覗いた。

「あ？……根性はどうしたんだよ……ヤキ入れられたくなかったら、生意気するんじゃないよ……いいかい……今度バックレたら、ドテ焼くよ」
「き、きいい……ッ！」
少女は、喉の奥からしぼり出されるような悲鳴をもらすと悶絶した。

「ひっ……」
女子生徒たちの脚がすくむ。
（……ひ、ひどい）
藤井和美の瞳が大きく見開かれた。



　悪名高い不良高校の昼休み――

　スケバンの背後には、高い詰襟に裾の長い学ランを着た男がふたり。
渡り廊下をふさいでいた。

（あれは……）
ひときわ目立つ男。
百八十センチはあろうか。
パンチパーマに樽のような体型。

　ひと目で番長の佐山だとわかった。
暴走族連合の総長だと聞いたことがある。

「お前……詫び入れろよ」
もうひとりの男は、低い声で冷酷に命じていた。

（……不良の矢崎だわ）
剃り込みを入れた坊主頭。
小柄だが、がっしりとした体格をしていた。
下級生ながら札付きのワルだ。
その極悪ぶりは、番長格の佐山とともに他校にも知られていた。

「総長……可愛い子猫ちゃんたちが、通りてえみたいっすよ」
坊主頭の矢崎が、横目で見ながらニヤリと笑う。
「はぁッ!?……」
パンチパーマの佐山は、ジロリとふり返った。

「やっ……」
強く突き刺すような冷酷な眼つきに、たまらず背筋がのけ反った。
女子生徒は和美を含めて五人。
肩を寄せ合うと身を縮めた。

「ふふ……いい身体してやがるぜ」
佐山はうなるように言った。

　五人とも、白色の体操シャツと濃紺のブルマーを着用していた。

　脚の付け根まで露出するブルマーは、肉づいた女子高生の太ももを細やかに浮かびあがらせる。

　むっちりとした太ももに、引き締まった太もも。
ほっそりとした太ももと、形や大きさ、肌の色もそれぞれに個性があって、佐山の眼を飽きさせない。

　もちろん、すべての女子がタイプではないが、ブルマー姿を前にすると、どれもが魅力的に見えてしまう。
それが可愛らしい好みのタイプだとすれば、性的な興奮をかき立てられる。

（やっぱり、藤井和美だな……相変わらず可愛いぜ）

　背丈は百六十センチを切ったくらいか。
ぜい肉のついていない、すらりとした体つき。
ふんわりと分けられた肩まで届いた黒髪は、つややかでまぶしい。

「す、すみません……と、通してもらってもいいですか」
和美は意を決するように口を開いた。

　優しさあふれる三日月形の目は、今にも泣き出しそうだった。
しっとりと透明感のある柔肌は引きつっているし、薄桃色に輝くふっくらとした唇もわなわなと震えていた。

「あっ、ごめんごめん……みなさん、これから体育みたいで」
どうぞどうぞと、いやらしい笑みを浮かべた矢崎が手招きをする。

（見ないで……）
和美たち五人は体操シャツの裾を握りしめた。

「それにしても、みんないやらしい身体しているぜ……ひひ」
「矢崎……こいつら、身体はすっかり女だな……メスだぜ」
不良連中の前まで来ると、卑猥な言葉が浴びせられた。
「ひぃ……っ」
女子生徒のひとりが小さな悲鳴をもらした。

　佐山たちはヘラヘラと笑ってはいるが、眼はギラギラと血走って、欲情もあらわに迫ってくる。
（こ、来ないで……）
和美たちは体操シャツの裾を引っ張ると、すり抜けるように逃げ出した。

「おぉぉ……藤井のやつ、いい匂いするぜ」
なびいた黒髪から、清潔感あふれる石鹸の香りが漂ってきた。

※荒れた80年代の時代背景で書いてます
※鬼畜なブルマー同世代の方、続きはメールですか

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