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彼氏が初出演する舞台は、渋谷の外れにある、それなりに大きいところだった。歌手としてグループ活動をしている彼は、事務所の意向で、苦手な演技に挑戦したので、緊張すると言っていた。彼のデビュー前からそれを見守っている私は、苦手なこともやらなければならないのは可哀想だと思ったけれど、大舞台に出られるようになった現実に興奮している。
彼女だとバレないように、関係者席ではなく一般の席で観覧し、感動をしながら、客席を出た。千秋楽の今日は、身内の打ち上げがあるそうだ。それに来てくれと言われているので、少し離れた場所で、迎えの車を待った。 もう見慣れたグループのメンバー全員が乗っている。黒塗りのワゴン車に乗せてもらい、メンバーのひとりの家に向かう。 「澪ちゃん、久しぶり! どうだった?」 「すごいよかったよ!」 彼氏である寡黙な悠斗ではなく、ほかのメンバーにばかり感想を言った。わいわいと騒ぎながら、グループのなかでも陽気なキャラクターで売っている、関西出身の拓磨の家についた。マネージャーが用意してくれていた酒を広げ、デリバリーしたつまみも並べ、乾杯をする。 私は、彼氏の隣に座って、缶ビールを飲んだ。 舞台稽古のきつさを話しているメンバーたちに相槌を打ちながら、悠斗を見ると、もう眠ってしまっていた。そのへんに寝転び、小さくなって熟睡している。 「あらら、寝ちゃった」 悠斗に毛布をかけてやり、もう少ししたら帰ろうかな、なんて思っていたが、彼が起きる気配がないまま、打ち上げのほうが先にお開きになってしまう。どんどんメンバーが帰っていき、拓磨と、私と悠斗だけになってしまった。 「悠斗起きひんし、泊まってけば?」 まだひとりで飲み続けている拓磨は、けらけらと笑って、気軽にそう言った。 「私はいいけど……明日の仕事は?」 「明日は全員オフやで」 「そっか。でも悠斗が起きたら帰るよ」 仕方なく、拓磨とふたりで酒を飲む。陽気な性格の彼の話がつまらないなんてことはなく、なんだかんだで楽しんでしまった。酒のペースが早くなり、少しだけうとうとしてしまう。 「澪ちゃんもおねむやん。寝てええよ。シャワー浴びるか?」 「そんな……悪いし」 「つっても、女の子をそのへんで寝かすわけにもいかんから」 拓磨は、私の腕を引いて、腰を抱いてエスコートしてくれた。ぐっすり眠っている悠斗を横目に見ながら、リビングの隣の寝室に案内された。大きなベッドがひとつ、真ん中に置いてある、シックな部屋だった。 「どうぞ、ご自由に使うて」 拓磨が、私をベッドに座らせる。せめて、寝具を使わせてもらうのならシャワーくらい浴びたほうがいいかも……なんて思っていたら、急に肩を掴まれた。 「えっ、何」 「前から思っててんけど、澪ちゃん、顔がエロいねん」 「はぁ?」 整った顔が、私の目の前にある。エロいと言えば、拓磨のほうが、ファンに「セクシー大王」と言われるくらいの顔立ちだ。その彼が、私の顔を見て、目を三日月型に歪ませた。 徐々に近づいてくる顔。このままではキスをされてしまう、と思い、顔を後ろに引くと、その勢いのまま押し倒された。見上げると、拓磨の前髪が私の顔の前に垂れ、彼のにやけ顔を少し隠している。 「あーあ、押し倒されてもうたなぁ」 寝室のドアは、少しだけ空いている。リビングからの光が線のようになって、差し込んでいる。そのドアのすぐ向こう側には、悠斗がいるのだ。抵抗をしようと、拓磨の肩を押すけれど、身体を押し付けられて、敵わなかった。 「拓磨っ、だめ、やめて……」 小さい声で抗議を唱えたが、拓磨の動きは止まらない。胸を掴み、ガシガシと揉み始めた。 「ちょっと……本当に」 拓磨は、両手を使って私の胸を寄せて上げる。そのうち、親指が乳首の位置に当たり始めた。 「抵抗しないやん」 「違っ、早くやめて……悠斗が起きちゃう」 「大声出せば起きるんちゃう?」 混乱した。前に「拓磨はイケメンだよね」と悠斗に話して、少し喧嘩になったことがあるのだ。今のこの状況を見られてしまったら、私が誘ったと疑われてしまうかもしれない。それだけは嫌だった。好きなのは悠斗だけであり、拓磨は恋愛対象と思ったことなどない。 「お願い……拓磨、本当に……」 小声で何度もお願いしながら、手でなんとか拓磨を押し返そうとする。けれど、わしわしと胸を揉む手の動きが変わることはなかった。そのうち、拓磨の手が、下半身に向かいはじめる。 「待って、お願い」 身体の密着が少し緩くなったので、ここぞとばかりに起き上がると、勢いよく、着ていたワンピースの裾を捲られた。腹まで露出させられてしまい、もっと混乱した。拓磨に身体を見られたことより、彼氏に見られないかどうかばかりが気になる。咄嗟に、ドアの隙間の光を見てしまったら、その間に、拓磨はワンピースを無理やり脱がそうとしてくる。 「やだっ」 攻防が続いたが、最終的に、襟元から顔を出されてしまった。しかし、袖は通ったままなので、拓磨ザイをしている体勢で、両腕を抑えられる。キョロキョロと周りを見渡した拓磨は、近くに投げてあった自分のベルトで、私の腕をワンピースごと巻いた。 「あっ、あ……ちょっと、ねぇ」 両腕を拘束されてしまったら、あとはもう足しか動かない。必死に抵抗をして、拓磨を蹴ったけれど、笑いながらその膝を捕まえられ、股を開かされた。その股の間に身体を入れ込んだ拓磨は、勃起した陰茎を、布越しに押し付けてくる。 私は、顔を歪めて、拓磨を睨みつけた。それすらも楽しそうに見つめてくるので、悔しくなり、結局、泣いてしまった。 「はは、かわええな」 私の涙を舐めた拓磨は、そのまま舌を動かし、唇を舐め、首を通り、鎖骨もなぞる。ブラジャーをずらされ、あらわになった乳首にも舌を当てられた。 「やめて……お願い……」 両手で乳房を揉みながら、左右交互に乳首を吸われた。そのピチャピチャした音が響くので、悠斗が起きないか心配で、気が気ではない。 「う……ううぅ……」 うめきながら泣いていたら、拓磨の動きが止まる。やっとやめてくれた、と思って、瞑ってしまっていた目を開けると、彼の陰茎が露出されたところだった。 「あ、え」 悠斗のものよりひとまわり以上、大きい。邪悪なものが、私の股の間でそそり立っている。 「だめっ……」 身体を起こそうとしたけれど、腕を拘束されたままでは無理だった。足も震えてしまい、思うように動けない。力が入らない私の足は、拓磨によってゆっくりと動かされ、下着を抜き取られてしまう。 「だめ……! お願い! 拓磨!」 少しだけ大きい声を出すと、「バレてまうで?」と、言われた。もう、助けを求めたほうがいいと思った。「悠斗」と、叫ぼうとすると、半笑いのままの拓磨の手が、私の口を強くふさぐ。 「んんっ」 「まだ起こさんといてやって。疲れてんのやから」 私の股を割って、拓磨のものが入ってきた。濡らされていないそこは、受け入れが悪く、痛かった。拓磨も、思うように入らないことが嫌だったのか、片手に涎をつけて、自分の陰茎に擦り付けた。途端に潤滑していく陰茎が、奥まで刺さる。グッと入れ込まれると、悠斗との大きさの違いで、苦しくなった。 「うっ……ん」 「ちっさいなぁ……まぁ、悠斗のもん、ちっさいもんな。ワイので慣らされたら、浮気したのバレてまうよ」 「ん、んん」 口を塞がれながら首を振った。拓磨の手は、私の涙で濡れて、すこしズレやすくなっている。 「声出さないって約束すんなら、すぐ終わらせてやんで」 耳元でそう囁かれたので、私は必死で首を縦に振る。「いい子やね」と言われ、口を解放してもらえた。約束どおり、声を出さないでいたのに、拓磨はねっとりとした動きしかしない。まるで射精するようには思えなかった。 腰を揺らし、私の膝を掴みながら、結合部に何度も涎を垂らして、滑りをよくしている。相変わらず拓磨のことを睨みつけていたけれど、その私の顔が、少しずつ歪んでいくのがわかった。 「なぁ……濡れてきてへん?」 拓磨は、その言葉とともに、腰の動きを速くした。ベッドのシーツの衣ずれの音に、クチュクチュとした水音が混じる。 「ちが……う」 「そおかぁ」 拓磨の両手が、私の両方の胸を掴んだ。親指と人差し指で乳首をつままれながら、乳房全体を揺らされる。腰の動きもどんどん強くなり、肌と肌がぶつかる、パンパンした音に変わっていく。 「んっ」 陰茎の亀頭が、私の中のどこかを擦っている。ビリビリした快感を自覚してしまった。咄嗟に、拘束された腕で自分の口を抑えて、声が出るのを止めた。 「あーあ、感じてもうてるやん」 首を振って否定したけれど、乳首は明らかに立ち上がっているし、膣内が収縮しているのもわかる。泣きながら、必死に、口を抑えていた。 すると、リビングから物音がする。 「拓磨……?」 悠斗の声だ。私は、必死になって、拓磨の頭を何度も叩く。けれど、拓磨は至って冷静に、腰の動きを続けていた。 「……俺帰るぞ。邪魔して悪いな」 「おん、お疲れさん」 違う! と叫びたかった。けれど、どうしていいかわからず、結局何も言えなかった。悠斗は、拓磨が私じゃない女を連れ込んでいると思い込んでいるのだろう。私が先に帰ったと思っているのだろう。 バタンと扉が閉まる音がして、やっと両腕の拘束を外してもらえた私は、拓磨の頬を引っ叩いた。 「最低」 そう言うと、感情が弾け、涙が一気に出てきた。嗚咽を出しながら、子どものように泣いて、顔を覆う。 「ああああ……抜いて、お願い……もうやだ……」 私の両腕をもう一度掴み、ベッドに押し付けた拓磨は、至近距離で目を見てきた。泣いている顔を観察されながら、彼の興奮の吐息を間近で感じる。 「ワイは最高に興奮しとる」 はぁはぁと、セクシーな息を吐きながら、拓磨が射精のために素早く腰を動かした。 「んっ、ああああ、っうぁ、あ」 背を反って反応してしまったけれど、これは、泣き声だと信じたい。甘い感度が混じっているなんて、思いたくなかった。
2021/08/13 22:58:55(EJxr3MWY)
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