笑うとき、妻の面影を感じる
何より親切な仕草と声が妻に良く似ている

妻にはマゾの気質が濃く見られる
とはいえ私は決してその扉を開けない
肉欲まみれの家庭に魅力は感じないから

妻の実家に帰る度に心が疼く
私が妻に好まれたということは、少なからず義母の好意を得る要素は備えているのだろう、と思うから
現に結婚して数年になるが、義母の親近感の表現が本当に妻に似ているのを感じる

その度に心が疼く

義母を連れ、妻と３人で買い出しに行くことも増えた
トイレに急ぐ妻を先に下で降ろし、義母と屋上駐車場へ向かう
車を停め、談笑の空気を収め、徐ろに真面目な顔で義母を見つめる

自分でも抑えが利かず情けない
いっそ張り倒してほしい

そう懇願しながら義母の鼻頭に、ゆっくり私の鼻頭を当てる
少し驚く義母の唇が、それでも拒絶しないのを確かめてから、更に慎重に唇を、ふわりと重ねる

鼻頭を当てたまま、唇を離す
ようやく「娘に悪い」と突き放す義母
その顔はまるであの時の妻のよう
私に究極の二択をもたらした時の
飼育ではなく安寧を選択して、手放した可能性

同じ可能性を、義母の表情から感じている
あの時、もしこちらを選択していたら
どうなっていたのだろう
私の淫欲が、私を執拗に引き摺る

「ごめんなさい」

耳元で囁く声に義母の吐息が混ざる
懸命に取り繕うので、私も見過ごす

もう私から求めたりはしない
そう懺悔し、車を降りる

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