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1:母と兄を偲ぶ
投稿者:
とくちゃん
それを目撃したのは遠い昔、まだ私が中学に上がったばかりの事だったと記憶している。
まだ日も高い午後の早い時間に帰宅した私が家の入ると居間のテレビは点いたままなのに 人の気配がなかった。 すると家の奥から微かに母の声らしきものを感じそちらに向かった。 その小さく微かな声は近づくにつれ大きくなり母の呻き声なのが判った。 私は母に大事があったのかと思い、ドキドキしながら母の寝室の襖を開けた。 「母ちゃん、大丈夫!?」 言うや否や目に飛び込んできた光景は心臓が止まるかというものだった。 グチャグチャになった布団の上で四つん這いになった肥え太った母に 浅黒く日焼けした17歳年上の兄が片膝立ちでペニスを突き刺している姿だった。 全裸で顔を歪め兄を迎える母と険しい表情で母を見下ろす兄。 あまりの動揺にその場に立ち尽くすだけの私に気付いた二人の視線が向けられた。 目を剥いて驚いたのも一瞬、母は顔を隠すように布団に顔を押し付け 兄の顔は先ほどよりもいっそう険しい目つきで私を睨むように怒気を含んだ声で 「オイッ、何見てんだ向こう行けッ」 そう言って顎をしゃくる様に私の指図すると再び腰を振り始めた。 「ちょッ、あんた・・・、やめッ・・、ダメッ」 兄の思わぬ行動に狼狽した母が兄を制止しようと試みるも余りに力無く 兄のされるがままに、次第に息遣いが荒くなり、私の顔を見られない様に だろう、両肘をついて俯いたまま兄の動きを受け止めるだけになった。 母への攻めを行いながらも兄の険しい眼光は私に向けられたままだった。 私は睨まれれば睨まれるほど体が硬直し体が動かせなかった。 「勝男(兄の名)、勝男・・、お願いだから・・ねっ、もう勘弁して」 私の表情を見せまいとしていた母が兄を見上げ懇願するように弱弱しい訴えをすると 兄は何かを察したように 「逝きそうなのか?」と母の問いかけた。母は何も答えなかったが、兄は母絵の攻めを激しくした。 「ダメッ・・和人(私)が見てる、和人が見てるからぁ~」 母の願いにも兄はお構いなく 「構わねぇ、逝っちまえ、逝っちまえ、オラァ」 と凄まじい連打を母に浴びせた。昂った母はもうこらえきれなかったのだろう。 「ダメッ、ダメよッ、・・ンクッ、ンクッ、ングアオォォ~~ン」 果てた母は、全身の力を失った様に崩れ落ちた。母から離れた兄が私に近づく 半殺しにでもされるのかと思い心臓が潰れそうな思いだったが、兄の目が 急に優しくなり、 「兄ちゃんと、母ちゃんはお取込み中だ向こうでテレビでも見ててくれねぇか」 そう言って静かに襖を閉じた。 これが私の見た唯一の母と兄の性交現場だった。当時12、3歳だった私も思春期を迎え それが男と女の営みであることは理解できていた。多分、近親相姦という禁忌の関係に当たるということも 解ってはいたと思う。 しかし、(当時の)私からすると現実に見た母と兄の絡み合いにおぞましさや、嫌悪感は感じなかった。 それはきっと、当時の若い私にとって17年の離れた兄は兄でありながらも父親代わりという色合いが強く 30前後の兄と50前後の母の性交は成熟した大人同士の営みに思えたのだと思う。 だからその後も、母兄にさほどの嫌悪感も抱くことなく家族として過ごせた。 それほど、その後は母と兄の秘めた関係を感じることもなく母と兄との三人家族として生活してきた。 それから、大分時間が過ぎ私も実家を出て10数年たった頃だろうか。すっかり実家の敷居が遠のき 顔を合わせるのも何年振りかとなり、私の20代の後半になっていた頃だ。 本当に久しぶりの帰省も兄は私を一目見ると 「オウ、久しぶりだな、母ちゃん心配してたから、いっぱい話してやれ」 と言って出かけてしまった。 とりとめもない話を幾つかしたけれど、会話が途切れ何となくその時、母に話を振った。 「ねぇ、変な事聞いていい?」 母はギョッとした顔を私に向け私に聞き返した。 「兄ちゃんの事?」 私は躊躇いながらも頷いた。母の表情が冴えないものになった。私は思い切って聞いてみた。 「兄ちゃんとは・・、その・・いつまで続いてたの?」 愚かなのか私は、当時60半ばの母の年齢を考えて兄とはもう関係はないのだろうと思っていた。 が、しかし目を丸くした母は私を暫く見た後、視線を下に落として、少し恥ずかしそうに 「・・・・、今も・・・・・時・・・・々、・・・ね・・」 私はその答えの心底驚いた。 「エッ?、あの時から?ずっと?、もう15、6年だよ!、だってそれより昔からなんでしょ?」 思わず驚きの声をあげてしまった。母はどこかバツが悪そうに 「うん、あんたがまだ小っちゃい時からだからもう25、6年・・」 自分の年齢とそうそう変わらない年月を母と兄は親子ではなく男と女として暮らしてきた。 そもそも、私には母親と息子という間柄でどんなきっかけでそのような関係になるのか想像できなかった。 「ね、何で母ちゃんと兄ちゃんはそう言う関係になったの?」 私はあまり深く考えず、否思うととても酷な事を口にしたと思う。 「聞きたいの?」 母は私に問い直し、少し思案に耽った後、深呼吸をして切り出した。 「あんた、父ちゃんの事は覚えてる?」 私に父の記憶はない、母の問いかけに首を振った。 「そうだよね、あんたが1歳か2歳の時、父ちゃん死んで、途方に暮れて 父ちゃんと母ちゃんは駆け落ち同然だったから頼る相手いなくてね。 母ちゃんも心が弱ってたんだよ。だからつい兄ちゃんに体許しちゃって」 それでも私には、何故相手が兄だったのか長きにわたって関係を継続させているのかが判らなかった。 「あたしは、奥手だからね。男は父ちゃんと兄ちゃんしか知らないんだよ。 よその男なんて怖くてね、でも誰かに頼りたいし・・・。 悩んでる頃、あの頃、奥のあたしの寝床で兄ちゃんとあんたと3人で寝てたんだよ。 先の事考えると寝付けなくてね、兄ちゃんに手繋いでもらったり、一緒の布団で寝てもらってる 内に段々とね、」 母がここまで赤裸々に語ってくれるとは思いもよらなかったが、私の興味も尽きることはなかった。 「でもさぁ、息子とスルッて、どうなんだろ。一回や二回じゃなくて随分長いじゃん」 若かった私は、親に対してとはいえ心をえぐるような質問をしたものだと今は思う。 母は、少し涙声になり、時折花を啜りながら、私に対して。 「あんたにはこんな、母親で済まないと思ってるけど・・・、けど、正直な気持ち言わせてもらえれば 母ちゃんは兄ちゃんに惚れとるんよ、勝男を男として好きになってしまったの。」 「兄ちゃんは、・・・兄ちゃんは母ちゃんの事、愛してるの?」 私の問いに母は 「そんな事・・・、そんな事はいいんだよ。もう随分長い事、こうなって来て、あの人には救われたし 満たされても来た。親としても女としてもね。だから、もうこんなくたびれた体でもあの人が欲しがれば 差し出すぐらい何の事も無いさ。」 私は母がそこまで兄に対して女としての愛情を注いでいるとは思いもよらなかった。又、兄の一本気な性格 からして、兄もまた母への強い愛を持っていたのだろう。母はこんなエピソードを教えてくれた。 「って言ってもねぇ、やっぱりあたしが勝男の人生狂わせたのかとおもうこともあったわ。 ちょうどあんたに見られちゃった頃、私はあの人に満たしてもらう事で見失ってたんだけど、あの人は 勝男なんだって、私が生んだ子供なんだって。だからこのまま(兄の)将来を奪うような関係はおわらせなくちゃって でもあの人は、全然ほかに女を作る気配もなかったし、知り合いに頼んで何べんもお見合い話持ち掛けたんだけど、 でもそのたびに怒り狂って、『もう俺は用済みかッ』『俺に飽きたってのかッ』て逆に怒られて」 懐かしそうに、どこか嬉しそうに語った。 私は母の表情を見ると、母と兄が親子の関係の上にプラスして異性関係というより強固な関係を育んできたのかを 見た気がした。と同時にもともと同じ屋根の下で暮らした家族のはずなのに、どこか疎外感を感じ母と兄は私と かけ離れた遠い存在のような気持になった。あの二人の間には身内の私も入り込む余地のない世界があるのだと。 しかしそんな母と兄の関係も数年後母の死によって、終焉を迎えた。 通夜を終えた夜、私は兄と斎場に泊まり込み兄弟として初めての二人きりの夜を過ごした。 缶ビールでささやかに酒を酌み交わす。すると兄は切り出した。 「おめぇと二人きりなんて初めてだなぁ、・・・なぁカズ、・・・・おめぇ、俺の事どぉ思ってる?」 「ん?、どぉって?」 「実のお袋とできちまった、出来損ないの兄貴をどぉ思ってる?」 私は、兄のその一言で母と兄のお互いに対する揺るぎない愛情の一方で、倫理に反した関係への背徳感を 抱えている事を察した。それでも私は思いを正直に兄に話した。 「兄ちゃんには、感謝してるよ。大学まで行かせてもらったし。おかげでそこそこいい会社で働くこともできた。」 「そういう事じゃねぇよ、実の親とできちまった男がお前の兄弟だって所だよ」 「あぁ、それ?、愛し合ってたんだろ?俺がどうこう言う事じゃないわ」 「おめぇ、あっさりしてんなぁ・・俺はずっと汚らしい兄貴だと思われてると思ってたよ。」 私は兄の言葉を聞いたとき、思えば不思議と二人に対してふしだらだとか、汚らわしいと思ったことはなかった。 「あぁ、そういえばそう思った事無いね。中学の時見ちゃった時も、キツネにつままれたような感じだったし、 母ちゃんに聞いた時までそんな長い間、続いてるなんて考えても無かったから」 「ん?、おめぇ、母ちゃんからなんか聞いたのか?」 「あぁ、もう6~7年前かな実家に行ったでしょ、その時に」 「んあぁ?、何聞いた?、全部聞いたのか?」 私はその時、母と話した話を覚えている限り兄に話した。 「そうかぁ、けっこうあからさまに話したんだな」 私は兄からも話を聞き出したいと思ったのでさらに突っ込んでみた。 「そう、最初は布団並べて手握るだけだったんだよ。それが夜毎に一緒の布団に入り 次の日は腕絡めて、次に抱き合うだけで、次の日は体を擦り合って・・・ そんな事続けてると相手実の親なのにお袋の体舐め回す様になって、手で扱いてもらったり 口で始末してもらったり、10日もたった頃にはお袋と繋がってた。」 「でも一回じゃすまなかったんだ?」 「あぁ、俺も10代だったからな、休みの日になりゃお袋に服着る暇も与えねぇ位遣りまくったよ。 飽きる位にな、でも飽きたと思ってもまた抱きたくなるずっとその繰り返しで気が付いたらこの年だ」 「兄ちゃんは、母ちゃんの事どう思ってたの?、愛してたの?」 「あぁ、愛なんて言葉照れクセェけど、お袋は親としてもそうだが、女として唯一無二だ、生まれ変わっても また一緒になりてぇ」 兄のその少し照れながらもしみじみとした語り方で母への情の深さが感じられた気がした。 しかし、その心の拠り所であった母が他界し兄はこれから何を糧に生きていくのか心配だった。 「なぁに、男やもめ気楽に暮らすさ、のんびり・・・、のんきに・・な!」 そんな兄も一昨年鬼籍に入った。 私は今日、かつて家族3人で暮らした故郷の実家にやってきた。 主の居なくなったその古びた家屋は近々取り壊されることになった。私は 中に入り各部屋を見て回った。そしてやはりこの部屋で足が止まる。 母と兄が数えきれないほどの回数愛し合ったであろう狭く感じる6畳間の 擦り切れた畳を眺め私はふと思った。 私は母、兄のおかげで大学まで行け、それなりの会社で家庭も持ち子供もいて 一見してままある中流の生活を送ることができている、しかし日々仕事に追われ 夫婦の間には倦怠感が漂う、心の幸福度でいうとそれほどの幸福感を感じれているのだろうか? 対して、母と兄は世間的には確かに後ろ指刺されるような外道といわれる関係かもしれない。 しかし、私から見て母と兄の間には確固たる男女としての愛が存在していたような気がする。 それはただ単に肉体的な情交を交わすのみならず、非常に純粋な思いをお互いにぶつけあい 受け止め合ったからなのだろう。 そう思うととても、母と兄がうらやましく思えてくる「あの人に惚れたんよ」といって 涙を浮かべた母、「お袋は、唯一無二、また一緒になりたい」といった兄。 二人はあの世で会うことができたのだろうか、どうか幸せであってほしいと思居ながら実家を後にした。
2020/03/11 23:38:17(P5gZXZgn)
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