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1:妹の愛美
投稿者:
タケイチ
『どっち~?』
妹の『愛美』がLINEを送ってきたのは、土曜日のお昼前のこと。『ナビがあるから、分かるわぁ。』と言っていたが、結局はたどり着けなかったようだ。 仕方なく、『今、どこ~?』と送り返そうとしたが、その前に彼女から電話が掛かってくる。 『どこぉ~?わからん…。』 『ナビで来れるって言ってたやろ~。』 『分からんのぉ~!』 『今、どこや?』 『ファミマ。』 『どっちの~?』 『知らんわぁ~。スタンドがあるわぁ。はよ来てやぁ~。』 土地勘のない愛美は説明にそう答えたが、近所にある二つのファミマからは、どっちもガソリンスタンドが見えるのだ。 僕はマンションを飛び出し、近い方のファミマに向かった。 3分後。ファミマに着いたが妹の姿はなく、『あっちだったかぁ~!?』と立ち去ろうとした時、店内からガラス越しに手を振る女性の姿に足を止めた。 その女性は、立ち読みしていたファッション誌を棚に戻すと、あのファミマの玄関音と共に外に出てくるのだ。愛美だった…。 5ヶ月ぶりに会った妹は、妙に大人っぽく見えました。上は黒のニットのワンピース、下に茶系のワイドパンツを履いていて、どちらもダブダブである。 それが、雑誌のモデルのように、ちゃんと着こなせているのだ。今年高校卒業の妹もおしゃれをして、着実に大人になっていることを感じるのでした。 『ケイちゃんっ!』、僕の顔を見て安心したのか、僕の知っている愛美の顔になる。少し大人っぽく見えても、やはり妹は妹です。 そんな妹に、『これぇ~。』と手渡されたのは、大きな封筒。それは父からの言伝てで、中身が書類であることは分かっている。 『郵送してよ。』と頼んだのだが、遊びに出たい妹がわざわざ持って来たのでした。 『マンション行くか?』と聞いてみた。しかし、僕の部屋にはあまり興味はないよいで、『ごはん…。お腹空いたぁ~!』と甘えるように云ってきました。 『ごはん=僕のおごり』、したたかな妹はちゃんと計算づくなのだ。 僕は、近くのお気に入りのスパゲッティ屋へと、妹を連れて行くことにしました。それがどこにあるのかも知らないのに、『行こぉ~!』と声をあげる妹。 その時、不意に手に冷たい感覚を覚えました。愛美の手が、僕の手を握るのです。5ヶ月会わないだけで、忘れていました。 妹は、普通にこんなことが出来るヤツなのです。兄貴とは言え、異性です。少しくらい恥ずかしがりそうなものですが、妹はあまり気にならないようです。。 スパゲッティ屋に入りました。僕らが入り、ほぼ満席になった感じがします。お互いに注文を終え、久しぶりに家族との話を楽しむのです。 『親父は?』 『仕事してる。元気。』 『そうか。ならええわ。』 『ケイちゃんは?』 『ちゃんとやってるわぁ。』 『うん。』 『愛美は?彼氏でも出来たか?』 『出来んよぉ~。みたいな人はいるけど…。』 『ほぉ~。ついに、男が出来たかぁ~。よかったなぁ。』 半分うれしく、半分はどこか寂しい気もしていました。そこそこの顔をしている愛美ですが、あまり彼氏の存在を聞いたことがありません。 彼女が『お兄ちゃん子』と言うのは分かっていましたから、やはり妹の口から『彼氏』と聞くと、ちょっと複雑なのです。 しかし、それ以降は照れくさいのか、その彼氏の話は一切しませんでした。あまり語りたくはないようで、そんな顔をしています。 隣の席には、カップルが座っていました。その男性の視線に気がつきます。愛美でした…。その男性は、愛美をチラチラと見ているのです。 その男性だけではありません。向こうの方に座っている男性二人まで、食事をしながらチラチラと愛美に視線を送っていました。 そこで気がつくのです。『こいつ、ちゃんと大人になってるんだぁ~。』と… 結局、愛美とはこの町で半日過ごし、駅までのタクシーに乗せ、別れることになります。久しぶりの家族を感じられ、僕の明日からの栄養にもなりました。 タクシーを止め、『ちゃんと元気でやれよ?』と兄らしい言葉を掛けてやります。 その時でした。『ケイちゃんっ!』と彼女が声を掛けて来たのは。僕より10センチ近く背の低い彼女が、寄り添い背伸びをしていました。 何をしようとしているのかは、すぐにわかりました。僕は逃げることはせず、なぜか妹がしようとしている行動の補助をしてしまうのです。 それが間違ったことだと分かっていても…。 愛美が去っても、僕の唇にはストロベリーの香りが残っていました。それは、彼女が唇に塗っていたリップクリームの香りでした。 マンションに帰っても、僕は妹のキスの意味を考えていました。突然のキスよりも、彼女が目に溜めていた涙の意味が分からなかったのです。 3時間半後。愛美は実家に到着をしていました。1時半は、どこかで時間を潰してきたようです。 父に『圭次は?』と聞かれた彼女は、『元気でやってたよ。』と報告をしてくれていました。 『遅くなったけど、これ、すき家で買ってきたから。ご飯にする?』と言った愛美は、電子レンジへと向かいます。 『まだ食ってないんか?』と聞く父に、『お腹すいて、途中でパン買って食べた。』と答え、父のためにレンジのスイッチを押します。 『ワシ、もう食べたぞ。どっちでもええぞ?』と答えた父。それでも、レンジは妹の買ってきた牛丼を温めていました。 しかし、それが電子レンジから取り出されることはなかったのです…。 父の唇は、愛美の黒い髪へと押し付けられ、着ていたニットのワンピースは胸元へと押し上げられていました。 『お父さん…、いかんって…。』と嫌がる妹でしたが、『マナちゃん…、マナ~…、』と求めてる来る父に、今日も彼女は抵抗することをやめてしまうのでした。
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2019/03/25 06:32:38(npXKxp5V)
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