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1:淫華 35
投稿者:
影法師
「もう戻らないと・・。」
「そうだね・・かなり時間過ぎてしまったね。」 真理子が俺にしがみついたまま、去りがたい表情を見せる。 「真理子」 「何?」 俺の口から素直に彼女の名を呼び捨ていた。 真理子の返事も自然と出て来た。 「一緒にならないか?」 俺は自分でも予想しなかった言葉が口から飛び出していた。 当然、真理子がその言葉に驚いたのは当たり前だ。 俺は何も応えない真理子に、更に言葉を続けた。 「今でも再婚を考えた事ないの?」 「私には良治がいるのよ、彼方はそれを忘れているわ。」 真理子は身体を預けたままだ。 「そんな事はないよ、真理子が良治君を手放せない事も判っているつもりだ よ。」 「なら・・如何してそんな事言えるの?」 真理子が顔を上げ、俺を見て言った。 「真理子が好きだからじゃダメかな?」 その時、あの企ての事が頭の中を過った。 「嘘よ、彼方は嘘をついている・・。」 「真理子を好きなのはウソじゃない、でも・・今は言えないけど、真理子に も悪い話では無いと思う。」 俺はまだ真理子に母との事を話す時ではないと思った。 「私には良治が全てなの、判るでしょう、私が居なければあの子は・・。」 真理子は良治とは絶対に離れられないと改めて言った。 「来月、又あの温泉に行く事になると思うよ。」 俺は話題を変えた。 「本当に・・?」 「逢えるよね?」 俺は真理子に訊ねた。 「どこに行けば良いの?」 真理子は迷わなかった。 「連絡するよ、その時、真理子に是非逢わせたい人がいるのだけど・・君の 事、誰よりも理解出来る人だと思う。」 「私の事を・・?」 真理子は俺の言う意味を理解できない様だが、 「先程の事、少しは考えて見てくれないかな? 俺は本気だから。」 真理子はジッと俺を見ると、黙って肯いた。 「もう行くわね・・。」 真理子がベッドから抜け出すと、身支度を始めた。 「真理子、良治君の様子を確認したら、もう一度此処に戻って来ないか?」 身支度を終え、ドアから出て行こうとする真理子の背中に語りかけた。 真理子は立ち止まり、少し間を空けて振り向くと、黙って頷いた。 再び真理子が俺の部屋から自室に引き上げたのは朝方の事であった。 その間、俺達は何も考えず、ただ一心不乱に愛し合っていた。 真理子親子に帰りの切符を買い与え、二人が乗った電車を見送った。 「本当にありがとう・・連絡待っているから・・。」 真理子の顔は真剣そのものだ。俺を心から信じてくれた様だ。 昨夜の交わりは・・真理子を唯の女にした。 彼女の中にある、母親と言う立場、許されぬ親子愛を繰り返している罪悪 感、 そんなものを彼女から取り去り、一人の女として真理子に全てを忘れさせて いた。 「彼方を愛してしまいそうで・・怖い。」 全てを終えた後で、真理子が囁いた言葉だ。 俺は黙ってその言葉を聞いた。
2009/09/27 13:13:03(6/v2FaMT)
早く続編をお願いいたします。読んでいると引き込まれます。楽しみにしてますから、早くお願いいたします。
09/09/27 18:48
(/DMWrNet)
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