私の胸に抱かれ、姉が潤んだ瞳で私をじっと見つめ、私はその瞳に釘付けになり、一瞬たりともその目を離すことなどできなかった
姉弟でありながら、いや、あるからこそ伝えられなかった想い
お互いがその想いを持ちながら、長い年月をひたすら苦しみ、時には別の者を抱き、抱かれることによって心を紛らわしてきた二人
やっと真の伴侶と一つに交じあえるこのとき、私たち姉弟はずっと待ち続けていたこのときを、もしかすると、現世においては叶わなかったのかもしれないこの瞬間を、私たちは身体を熱くしながら、心静かに迎えた

長女：ゆうちゃん・・・
　　　おねえちゃんねぇ、おねえちゃん、ずっとこうなることを待ってたの・・・
　　　ゆうちゃんと、こんなふうになれるなんて・・・ずっとないと思ってたのに・・・
私　：俺も・・・俺もずっとおねえちゃんとこうなりたかった
長女：いつからか分からないけど、おねえちゃんの中にはずっとゆうちゃんがいたの・・・
　　　色んな人と出会って、ゆうちゃんのことを忘れよう、忘れようって思ったけど、やっぱりダメだった
私　：俺、おねえちゃんが結婚したとき、あーこれで終わらなきゃって思った・・・
　　　でも・・・もっとおねえちゃんのことを考えるようになってた・・・
長女：そうなの？
私　：うん・・・
　　　高校生のときね・・年上の彼女がいたんだ・・
長女：うん、知ってる・・・アルバイト先の人でしょ・・・背が小さくて、大人っぽいコ
私　：うん・・・
　　　その彼女とつきあってるとき・・・ずっとおねえちゃんって呼んでんだ・・・
　　　彼女も、俺の気持ちを知って、ずっとおねえちゃんの振りをしていてくれた・・・
長女：そうだったんだ・・・
私　：うん・・・

姉はこれまで一時も離さなかった目を伏せ、私の胸元にそっと顔をつけた
姉の呼吸が私の胸にあたり、その一点は少しずつ暖かくなり、ジワジワとその周辺をも暖かくしていった

長女：・・・ごめんね
　　　おねえちゃん・・ゆうちゃんのこと忘れたくて・・結婚したの・・・
　　　ゆうちゃんが・・・想ってくれてるなんて思わなかったから・・・
私　：俺も同じだよ
長女：ううん・・
　　　おねえちゃん・・結婚する前からも・・・結婚した後も・・・
　　　ゆうちゃんのこと忘れたくて、色んな人に抱かれたの・・・
私　：いいよ、そんなこと・・・
　　　今、こうしていられるんだから・・・

私はそうつぶやきながら長女の言った言葉に少しだけ躊躇した
結婚した後・・・おそらくあの若い男、離婚するきっかけとなった男のことを言っているのだろう
しかし、結婚する前にも何かあったのだろうか
姉は初めての恋人との間に子供をもうけ、結婚した・・・私はそう思い込んでいた
だが、あの頃の姉はハタチ・・・それ以前に恋人がいても不思議ではない
私がまだ小さかったこともあり、また、恋人の存在など、家族が知らない場合のほうが多い
高校生の頃に誰かに抱かれている可能性も当然あるだろう
いや、結婚しているときだって、あの男以外の者と浮気をしていたのかもしれない
離婚した後もそうだ
女として最も成熟していた３０代・・・恋人、いや、体だけの関係であっても、そのような者がいてもおかしくはない
長女は姉との会話で、私の知らない姉の恋人たちのことを聞いたことがあるのだろうか
それとも、この行為の中だけのフィクションなのだろうか
私は、考えること自体が意味のないものであると思い直し、長女との会話を続けた

長女：ゆうちゃん・・・忘れさせて・・・
私　：おねえちゃん・・・

姉は身体を起こし、仰向けになった私に顔を近づけた
私の頬に、私の瞼に、私の鼻に、私の額に、何度も柔らかなキスをし、最後に唇に触れた
姉とのはじめての口づけ
夢の中でしかできなかった姉との口づけ
他人にはおぞましく見えるであろうその行為、しかし私には、いや、私と姉にとっては、夢にまで見たキス
唇を中心に四肢の先まで何かが走り、私の中でずっと守ってきた城壁が崩れ落ちた

私は姉の頬を両手でおさえ、顔の角度をあらゆる方向に変えながら、姉の唇を貪った

私　：おねえちゃん・・・おねえちゃん・・・
長女：ゆうちゃん・・・ゆうちゃん・・・