通夜で１０年ぶりに再会した親戚のM恵さんと車でお酒を買いに行った。なんせ田舎なので、酒屋までしばらく走らないといけない。車内にM恵さんとの、重い空気が漂うが、
　『K子ちゃんは元気？』と、M恵さんが切り出した。それから、空気も和み、お互いの今の事などや、昔話などを話した・・。
　酒屋にようやく着き、缶ビールや、日本酒を買い、お寺に戻る。
　『A雄くん、あの時はごめんね・・怒ってる？・・』とM恵さんが謝る。ふいに言われたものだから、何の事かとっさに返事が出来なかった。
　『あぁ！起こってないよ、安心してよ！』と慌てて答えた。すると、M恵さんは先日、結婚を約束した彼氏と別れたばかりだと言った。
　『あたしって、男に縁が無いのかなぁ・・』とポツリと言う。そんな事ないよ、たまたまだよと返すのが精一杯だった・・・。
　『ねぇ・・・』
　『うん？』
　『あの公園に寄ってみない？』とM恵さんが言うので、お寺と逆方向に、車を走らせた。
　
　公園の駐車場に車を停めた。あたりは真っ暗で人っ子一人居ない。ふと、M恵さんを見ると涙を流していた。そして、僕に抱きつき、キスをしてきた。１０年前の出来事がオーバーラップする・・・。
　『今日だけ・・、もう二度と言わないから・・・、抱いて・・。』とM恵さんが言う。僕は断ったが、この気持ちは、A雄しかわからないと言う。僕は今日だけだよと言って、こちらからキスをした。僕の頬に、M恵さんの涙が一筋つたって流れ落ちた・・・。
　

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