結婚1年目夫が修習を終え新潟の地検に赴任して7ヵ月後に事件は起きました。義母がくも膜下出血で倒れ、緊急手術となったのです。幸い一命は取り留めたものの言語機能と下半身が麻痺し、寝たきりの生活になってしまいました。定年間際の義父は、献身的に義母の介護をしていました。夫には28歳の妹がいるのですが、既に名古屋に嫁ぎ、当時1歳9ヶ月の赤ん坊を抱え、第2子が妊娠7ヶ月、とても千葉で暮らす義母の介護ができる状況ではありませんでした。仕方なく、当分の間、私が週に2回新潟から千葉に通い手伝うことになりました。1ヵ月後、義父は60歳の定年を迎えました。東京にできる法科大学院の教授という再就職話を断って、千葉で妻の介護に専念する決断をしました。義父は律儀でけじめを重んじる人で、汚れ物の洗濯や下の世話は、一切私にさせようとしませんでした。はじめ煙たく思っていた無口で堅物の義父に対し、私の心の中で、尊敬と思慕の感情が芽生えていったように思います。父親の愛を知らずに育った私にとって理想の父親像だったのかもしれません。

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