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1:背徳の微笑み
投稿者:
ジャイロ
新年度の朝、校内はどこか浮ついた空気に包まれていた。
まだ制服の着こなしがぎこちない新入生たちが、緊張の面持ちで先輩たちに挨拶を繰り返している。 その中でひときわ目を引く人物がいた。 完璧に整えられた髪型、優雅な立ち振る舞い、そして誰にでも穏やかな笑顔を向ける生徒会長の朝霧蓮(あさぎりれん)だ。 彼の存在は、まるでこの学校のシンボルそのものだった。 「朝霧先輩、書類はこちらです!」 上級生の一人が手渡した書類を、蓮は上品に受け取りながら微笑む。 「ありがとう。助かるよ」 その姿に、新入生たちが感嘆の声を漏らす。「あの人が生徒会長なんだ」「さすが、すごく優しそう……」そんな声があちらこちらから聞こえてくる。 しかし、その中のひとり、佐伯翔(さえきしょう)は違う意味で目を奪われていた。 入学早々、忘れ物を取りに戻った職員室で、偶然彼を見かけたのだ。 その一瞬、彼の背後に見える空気の色が変わった気がした。 まるで何かが彼を包み込み、周囲と一線を画しているような……そんな印象を受けたのだ。 それが、蓮の本性だのかもしれない。翔は直感的にそう思った。 そして同時に、それを暴きたいという強い欲求に駆られたのだった。 「朝霧先輩、今日は何か用事ありますか?」 新入生歓迎会の日が近づいたある放課後、翔は思い切って声をかけた。 偶然を装って蓮に近づいたものの、その眼差しに宿る好奇心を隠すことはできなかった。 「いや、特にはないよ。生徒会の仕事が終わったら帰るくらいかな」 蓮は表情を変えず、淡々と答える。その表情からは真意を読み取ることができない。 「そうなんですか?じゃあ放課後一緒に帰りませんか?」 翔は思い切って誘うことにした。その眼差しに宿る好奇心を隠そうともせず、上目遣いでじっと見つめる。しかし蓮は動じることなく答えたのだった。 「……いいよ、一緒に帰ろうか」 こうして、二人は初めて言葉を交わしたのだった。
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2024/11/17 18:00:11(xeodhiww)
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