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幸せな妻のふりを、彼だけが見抜いた

カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:女性向け官能小説
ルール: 女性目線のエロス、恋愛要素を含むなど、女性向けの小説をご投稿下さい
  
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1:幸せな妻のふりを、彼だけが見抜いた
投稿者: なみきち ◆e6Mv2w7nzY
夫は優しい。
それが、時々つらかった。
休日には重い荷物を自然に持ってくれる。
私が少し咳をすれば、薬を買ってこようかと聞いてくれる。
記念日を忘れることもなく、派手ではないけれど、花を一輪買って帰ってくるような人だった。
だから、誰かに不満を言うことはできなかった。
「いい旦那さんだね」
友人にそう言われるたび、私はちゃんと笑った。
「うん。ありがたいと思ってる」
それは嘘ではない。
夫を嫌いになったわけではない。
結婚して十一年。大きな喧嘩もなく、生活は穏やかで、家に帰れば灯りがついている。
休日には一緒にスーパーへ行き、夕飯の献立で少しだけ迷い、同じソファで別々のスマートフォンを見る。
平和だった。
平和すぎるくらいに。
「美奈子、これ安いよ」
スーパーの通路で、夫が洗剤の詰め替え用を手にして振り返った。
「ほんとだ。二つ買っておこうか」
「置く場所ある?」
「あるよ」
そんな会話をしながら、私は笑っていた。
夫の隣にいる私は、穏やかな妻だった。
でも、女ではなかった。
そう感じる瞬間が、少しずつ増えていた。
夫が私に触れないわけではない。
肩を軽く叩くこともあるし、寒い夜には毛布をかけてくれる。
けれどその手は、家族に向ける手だった。
心配してくれる手。
労わってくれる手。
大事にしてくれる手。
でも、私を女として見ている手ではなかった。
贅沢な不満だと思う。
夫は悪くない。
悪くないからこそ、私は誰にも言えなかった。
寂しい、と。
まだ求められたい、と。
そんな言葉を口にしたら、自分がひどくわがままな女に見える気がした。
その夜、私は仕事関係の小さな懇親会に出ていた。
以前勤めていた会社の人たちが集まる、気軽な飲み会だった。
懐かしい顔がいくつもあり、昔の話で何度も笑った。
その中に、槙野さんがいた。
昔の職場の先輩。
当時から落ち着いた人だった。
よく話す人ではなかったけれど、必要なところで短く言葉を置く。
若かった私は、その静かな余裕に少しだけ憧れていた。
「美奈子さん」
会の終わり、店の外で声をかけられた。
振り向くと、槙野さんが傘を手に立っていた。
「久しぶりですね」
「槙野さんこそ。全然変わらないですね」
「それは嘘だな」
少し笑って、彼は私を見た。
「美奈子さんは、変わった」
胸が小さく跳ねた。
「そうですか?」
「うん。無理して笑うのが上手くなった」
雨の匂いがした。
店の軒先に、細い雨粒が落ちている。
誰かの笑い声が背後で遠ざかっていく中、私は返事を探せなかった。
「少し歩きますか」
彼が言った。
「駅まで」
「……はい」
断る理由はなかった。
駅までは十分ほど。
傘を差すほどではない雨で、私たちは屋根のある通りを選んで歩いた。
「結婚して、もう長いんですよね」
「十一年です」
「旦那さん、優しそうだった」
「会ったことありましたっけ?」
「写真で見た。前に誰かが見せてた」
「ああ」
私は少し笑った。
「優しいです。本当に」
「うん」
「不満なんて、ないはずなんです」
自分で言って、言葉の終わりが少し揺れたことに気づいた。
槙野さんは歩く速度を変えなかった。
「不満がないことと、満たされていることは違う」
雨の音が、少し大きく聞こえた。
私は立ち止まりそうになった。
「……そんなふうに言われると、困ります」
「困る顔をしてたから」
「してません」
「してる」
槙野さんは横目で私を見た。
「寂しいって言えない顔」
喉の奥が詰まった。
その言葉は、誰にも触れられないように奥へしまっていた箱の蓋を、静かに開けるようだった。
「夫は、悪くないんです」
私は言った。
「分かってる」
「本当に優しい人で」
「うん」
「だから、私がこんなこと思うのは、おかしいんです」
「おかしくない」
その返事が早すぎて、私は彼を見た。
槙野さんの目は、少しも揺れていなかった。
「優しくされたいだけじゃないんだろ」
胸の奥が熱くなる。
「何を……」
「女として見られたい」
私は息を止めた。
「求められたい」
「やめてください」
声が小さくなった。
本気で止めたかったのなら、もっと強く言えたはずだった。
でも私は、彼の言葉が怖かった。
怖いのに、続きを聞きたかった。
「美奈子さん」
名前を呼ばれる。
夫も私を名前で呼ぶ。
けれど、槙野さんの声に乗った私の名前は、家の中で呼ばれるものとは違っていた。
妻ではなく、一人の女を呼ぶ声だった。
「帰るなら、ここで駅に向かえばいい」
槙野さんが言った。
「俺は送る。それで終わりにする」
目の前の交差点を渡れば、駅はすぐだった。
帰ればいい。
家には夫がいる。
たぶんソファでニュースを見ながら、私の帰りを待っている。
帰れば「寒くなかった?」と聞いてくれるだろう。
その優しさを思うと、胸が痛んだ。
それでも私は、足を動かせなかった。
「でも」
槙野さんの声が、雨の中で低く響いた。
「その顔で帰ったら、今夜眠れないと思う」
図星だった。
私は傘を持つ手に力を入れた。
「そんな顔、してますか」
「してる」
「どんな顔ですか」
「帰らなきゃいけないのに、帰りたくない顔」
恥ずかしさで、視線を落とした。
否定したかった。
でも、否定すればするほど、嘘になる気がした。
「少しだけ」
私は言った。
「少しだけ、話したいです」
槙野さんは、すぐには返事をしなかった。
その沈黙が、私の言葉の本当の意味を確かめているようだった。
「少しだけ、で済む?」
私は答えられなかった。
彼はそれ以上聞かなかった。
駅とは反対側の、小さなバーに入った。
古いビルの二階にある店で、窓際の席からは雨に濡れた通りが見えた。
店内の灯りは暗く、グラスの縁だけが静かに光っている。
向かい合って座るには近すぎる席だった。
私はコートを脱ぎ、膝の上で手を重ねた。
槙野さんはその手元を見ていた。
「緊張してる」
「してません」
「嘘」
彼は淡々と言った。
「指に力が入ってる」
言われて、私は慌てて手を緩めた。
そんな小さなことまで見られている。
それが恥ずかしいのに、どこかで嬉しかった。
誰かに、こんなふうに見られたかった。
家の中で、私はいつもちゃんとしている。
買い物をして、洗濯をして、夫の体調を気遣って、仕事の予定を確認して、疲れていても笑う。
妻としての私は、たぶん悪くない。
でも、その奥にいる私を、誰も見なかった。
いや、私自身も見ないようにしていた。
「旦那さんに不満はない」
槙野さんが言った。
「はい」
「でも、満たされていない」
「……そんな言い方」
「違う?」
グラスの中の氷が、小さく鳴った。
私は唇を結んだ。
違う、と言えば済む。
けれど、槙野さんの目を見ていると、嘘をつけなかった。
「夫は、私を大事にしてくれます」
「うん」
「でも」
そこで言葉が止まった。
槙野さんは待っていた。
急かさず、逃がさず、私が自分で言うまで。
「女として見られている感じは、もうずっとありません」
言ってしまった瞬間、胸の奥が痛んだ。
それは夫への裏切りのようで、同時に、自分への告白のようでもあった。
「寂しかったんだな」
槙野さんの声は、責めていなかった。
それが、だめだった。
責められたら反発できる。
軽く笑われたら怒れる。
でも、そんなふうに受け止められると、ずっと我慢していたものがほどけてしまう。
「そんなこと、言わないでください」
「どうして」
「泣きそうになる」
「泣いてもいい」
「だめです」
「誰の前なら、だめじゃない?」
私は返事ができなかった。
槙野さんは、テーブル越しに私の手に触れた。
強く握らない。
逃げようと思えば、すぐに離せる触れ方だった。
だからこそ、離せなかった。
「帰るなら今だよ」
彼が言った。
「ここから先は、何度も聞かない」
その言葉に、心臓が大きく鳴った。
一度だけ差し出された逃げ道。
そこを選ばなければ、この先はもう言い訳ができない。
私は夫の顔を思い出した。
優しい人。
何も悪くない人。
私を傷つけたわけでもない人。
それなのに私は今、その人では満たされない場所があることを、別の男の前で認めようとしている。
「帰りますか」
槙野さんが聞いた。
私は首を横に振った。
「声で言って」
喉が震えた。
「帰りません」
彼の指が、私の手を包んだ。
「どうして」
意地悪な問いだった。
でも、私はもう逃げられないと分かっていた。
「……見られたいから」
「誰に」
「槙野さんに」
「何を」
胸の奥が熱くなる。
言えない。
でも、言わなければ、きっとこの人は進まない。
私の口から、私自身に認めさせようとしている。
「女として」
ようやく言うと、槙野さんの目が少しだけ深くなった。
「やっと言った」
その一言で、私は目を伏せた。
恥ずかしかった。
でも、同時に救われた気がした。
ずっと言えなかった言葉を、ようやく外に出せたから。
店を出ると、雨は少し強くなっていた。
槙野さんは傘を差し、私をその中へ入れた。
肩が触れる。
ただそれだけで、体が固くなる。
彼は何も言わなかった。
けれど、私の小さな反応を見逃していないことだけは分かった。
「美奈子さん」
歩きながら、彼が言った。
「今ならまだ、一人で帰れる」
「……帰れます」
「帰りたい?」
私は答えられなかった。
その沈黙が答えだった。
次に入ったのは、駅から少し離れた静かなホテルだった。
ロビーの灯りは柔らかく、雨に濡れたコートの肩が少し冷えていた。
槙野さんは、私を急かさなかった。
でも、迷わせもしなかった。
エレベーターの扉が閉まる。
狭い空間で、彼の気配が近くなる。
「怖い?」
「怖いです」
「俺が?」
「違います」
「じゃあ、何が」
私は唇を噛んだ。
「私が、こんなことを望んでいたこと」
言葉にすると、胸の奥が熱く痛んだ。
槙野さんは笑わなかった。
からかうこともなかった。
ただ低い声で言った。
「ずっと我慢してたんだな」
その瞬間、目の奥が滲んだ。
部屋に入ると、薄い灯りだけがついていた。
窓の外で、雨に濡れた街の光がぼんやり滲んでいる。
私はバッグを握ったまま立ち尽くしていた。
槙野さんは、私の前に立った。
近い。
けれど、まだ触れない。
その触れない時間が、ひどく苦しかった。
「今日、何度も鏡を見ただろ」
「……見てません」
「嘘」
彼の視線が、私の口元に落ちる。
「その口紅、誰に見せるために選んだ?」
顔が熱くなった。
「そんなつもりじゃ」
「じゃあ、俺の手を離して」
いつの間にか、彼の手が私の手に触れていた。
強く握られてはいない。
離そうと思えば、簡単に離せた。
でも私は、離さなかった。
槙野さんの目が、静かに私を捕らえた。
「それが答えだろ」
言い返せなかった。
私はバッグを床に置いた。
小さな音が、部屋に響いた。
その音は、私が自分で一線を越えた合図のようだった。
「美奈子さん」
名前を呼ばれる。
夫に呼ばれる時とは違う。
家の中の役割ではなく、私の奥にあるものを呼ばれる声だった。
「誰に求められたい?」
私は目を閉じた。
言えるはずがなかった。
でも、言わないままではいられなかった。
「槙野さんに」
「ちゃんと言って」
「槙野さんに、求められたいです」
言葉にした途端、何かがほどけた。
彼の手が頬に触れる。
急がない。
でも、もう迷っていない触れ方だった。
頬から耳の下へ、首筋へ。
服越しに伝わる指の圧。
息が近くなる。
私は彼のシャツを掴んでいた。
押し返すためではない。
離れないために。
「美奈子さんは、ずっと女だったよ」
槙野さんの声が耳元に落ちた。
「ただ、誰にもそう扱われてこなかっただけだ」
その言葉で、私は完全に崩れた。
崩されたのではない。
ずっと固く閉じていた場所を、自分で開いてしまったのだと思った。
服が肩から滑り落ちる。
ブラのホックを外される指が熱い。
「夫に、そんな顔見せたことある?」
「ない……」
「違うって言うなら、俺の手を離して」
離せない。
指が胸の先端を優しく、でも容赦なく刺激するたび、背筋が震える。
膝に力が入らない。
「見られたくないのに……見てほしい」
頭の中で矛盾が渦巻く。
夫への罪悪感。
でも、こんなに体が熱いのは、初めてだった。
「俺に見せて。妻の顔じゃなくて、美奈子の顔」
「槙野さん……もっと……」
自分から体を押しつけてしまった。
彼が私を抱き上げ、ベッドへ。
ゆっくりと、でも逃がさない手つきで。
熱いものが、私の中に入ってくる。
「あっ……!」
ゆっくり、でも深く。
「ずっと我慢してたんだな」
槙野さんの声が優しいのに、容赦ない。
腰がぶつかる音。
私の喘ぎ声。
「帰りたいのに……帰れない」
「断れるのに……断らない」
槙野さんが私の頰を撫でる。
「美奈子が欲しがってる顔、全部見えてる」
体が震える。
一番奥を突かれるたび、頭が真っ白になる。
「槙野さん……好き……」
言ってしまった。
夫には言えない言葉。
頂点が近づく。
「槙野さん……いきそう……」
「声で言って。誰にいきたい?」
「槙野さんに……槙野さんにいきたい……!」
体が弓なりに反る。
熱い波が一気に押し寄せて、意識が飛んだ。
……どれくらい時間が経っただろう。
気づけば私は、窓際の椅子に座っていた。
槙野さんが差し出した水のグラスを、両手で受け取る。
指先が少し震えていた。
「大丈夫?」
「……はい」
声が掠れていて、また恥ずかしくなった。
槙野さんは何も言わず、私の髪をそっと直した。
その仕草が、一番胸に刺さった。
終わった後に雑にされなかったこと。
乱れた私を、みっともないものではなく、大事なもののように扱われたこと。
それが、想像していた以上に胸を締めつけた。
「帰れますか」
彼が聞いた。
「帰れます」
「帰りたい?」
私はグラスの水面を見つめた。
帰らなければならない。
でも、帰りたいかどうかは別だった。
「帰らなきゃ、いけないです」
「うん」
「夫が、待ってると思うから」
「うん」
「でも」
言葉が止まる。
槙野さんは、待っていた。
「帰ったら、また幸せな妻の顔をするんだと思います」
「できる?」
「できます」
私は少し笑った。
「ずっと、してきたので」
槙野さんの目が、少しだけ痛そうに揺れた。
その顔を見て、胸がまた苦しくなった。
「でも今夜、自分が満たされていなかったことは、もう知らないふりできません」
言ってしまうと、胸の奥が少し軽くなった。
部屋を出る前、彼は私のコートを肩にかけた。
「寒いから」
何気ない一言だった。
けれど、それがひどく優しくて、帰る足を鈍らせる。
駅の近くで別れる時、槙野さんは私を追わなかった。
「美奈子さん」
「はい」
「今日のことを、後悔するならしていい」
私は彼を見た。
「でも、自分が寂しかったことまで、なかったことにしなくていい」
その言葉を抱えたまま、私は電車に乗った。
窓に映る自分は、いつもの私に戻りかけていた。
髪を整え、口紅を直し、コートの前を合わせる。
それでも、完全には戻らなかった。
目の奥に、槙野さんに見られた顔が残っていた。
家に着くと、夫はソファで眠っていた。
テーブルの上にはメモが置かれている。
『おかえり。温かいお茶、ポットに入ってます。無理しないでね』
胸が痛んだ。
夫は優しい。
本当に、何も悪くない。
私はメモをしばらく見つめ、それから静かに洗面所へ向かった。
鏡の前に立つ。
そこには、幸せな妻の顔をした私がいた。
でも、その奥にもう一人いる。
寂しいと言えなかった私。
求められたいと認められなかった私。
今夜、槙野さんに見抜かれた私。
夫は何も悪くない。
それなのに私は、洗面台の鏡の前で、まだ彼に見られた顔をしていた。
幸せな妻のふりは、きっと明日もできる。
でも、自分が満たされていなかったことだけは、もう知らないふりができなかった。
……そして、私はもう一度、この顔を見られたいと、静かに思っていた。
 
2026/05/11 00:29:58(7VfwWxxZ)
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