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春先の夕方、駅前の通りにはまだ少し冷たい風が吹いていた。
青年はショーウィンドウに映る自分の姿を一度だけ確かめる。 (普通に見えるか……) どこにでもいる会社帰りの男。 手ぶら。背広。少し疲れた顔。 だが胸の奥では、別の緊張がゆっくりと脈打っていた。 ——パンストを買う。 それだけのことなのに、心臓はやけに速い。 彼はガラス戸を押して、リサイクルショップに入った。 店の奥のワゴンに、衣類が無造作に積まれている。 古いスカート、ブラウス、そして靴下。 その中に、透明なビニール袋に入ったパンストがいくつか見える。 青年は何気ない顔で近づいた。 指先で一つ持ち上げる。 「M〜L」 (……小さい) 彼はそっと戻す。 隣の袋をめくる。 「L〜LL」 (これでもまだ……) 自分の足の長さを思い浮かべる。 生地が引き伸ばされる感触。 太ももで止まるかもしれない、という不安。 青年は棚の奥まで探したが、結局それ以上のサイズはなかった。 レジへ持っていく勇気も出ない。 袋を元に戻し、何も買わずに店を出る。 外の空気が妙に軽い。 同時に、胸の奥に小さな焦りが残った。 次に向かったのはショッピングモールだった。 エスカレーターを上がると、 明るい照明の下に靴下専門店がある。 壁一面に整然と並んだパッケージ。 色、柄、厚さ。 そしてパンスト。 青年は一瞬、足が止まった。 (ここなら……) 店内は女性客ばかりだ。 彼は棚の端に立ち、商品の表示を目で追う。 S-M M-L L-LL 指先が自然にパッケージへ伸びる。 薄いベージュのパンスト。 透明な窓から見える、静かな光沢。 (もし履いたら……) 布が足首から上へ滑っていく想像。 太ももを包む均一な圧力。 光沢が、動くたびにわずかに反射する。 その想像だけで、胸が熱くなる。 だがサイズはやはり L-LL までだった。 店員の視線を感じた気がして、 青年は急いで商品を戻す。 何も買わずに店を出る。 最後に入ったのは、駅前のスーパーマーケットだった。 ここには衣料品の小さな棚がある。 安価な靴下。 作業用手袋。 その片隅に、数種類のパンスト。 青年は期待せずにパッケージをめくる。 そして、指が止まった。 「JM-L」 大きめサイズ。 思わず周囲を見回す。 誰もこちらを見ていない。 彼はゆっくりと一つ取り上げた。 パッケージ越しでもわかる、 わずかな光沢のある生地。 (これなら……) 胸の奥に、奇妙な静けさが広がる。 青年はその箱を買い物カゴに入れた。 たったそれだけの動作なのに、 何か大きな一歩を踏み出したような気がした。 レジへ向かう途中、 彼はカゴの中をもう一度だけ見下ろす。 薄い箱。 ただのパンスト。 けれど彼にとっては、 密やかな世界への入口のように思えた。 部屋に戻ったのは、夜の九時を過ぎていた。 青年はコートを椅子に掛け、テーブルの上に買い物袋を置く。 中には、あの小さな箱が入っている。 パンスト。 たったそれだけの物なのに、部屋の空気が少し変わった気がした。 彼はしばらく袋を開けずにいた。 テレビもつけない。 スマートフォンも触らない。 静かな部屋の中で、袋だけがそこにある。 (本当に買ってしまったんだな) 指先で袋を引き寄せる。 カサリ、と軽い音。 箱を取り出す。 JM-L パッケージの文字を、なぜかもう一度確認する。 店で見たときよりも、ずっと現実味がある。 彼はゆっくりと箱を開けた。 中から薄い紙のような包みが出てくる。 慎重に広げると、黒い生地が現れた。 思ったよりも軽い。 ほとんど重さを感じない。 両手で持ち上げると、 生地は柔らかく垂れ下がる。 街の光が窓から入り、 その表面がわずかに反射した。 (こんなに薄いのか……) 青年はしばらく、それを見ていた。 靴を脱ぐ。 靴下も脱ぐ。 床の冷たさが足裏に広がる。 一瞬だけ、ためらう。 誰も見ていない。 それでも、妙な緊張がある。 まるで何か秘密の儀式を始める前のような。 彼はパンストのつま先部分を指で広げた。 片足をゆっくり入れる。 生地が足先を包む。 するり、と滑る感触。 (……) 思っていたよりも静かだ。 派手な感覚ではない。 ただ、薄い膜が肌に触れている。 彼は少しずつ生地を引き上げる。 足首。 ふくらはぎ。 ぴたりと沿う。 布なのに、まるで空気の層のようだ。 もう片方の足も同じように通す。 両脚に生地がかかったところで、 青年は少しだけ笑った。 (こんなものか……) だが、立ち上がって数歩歩いた瞬間、 その感覚が変わる。 太ももをかすめる生地。 歩くたびに、わずかな摩擦が生まれる。 光が当たると、脚の表面が静かに光る。 彼は部屋の鏡の前に立った。 黒いパンストを履いた脚。 見慣れない。 だが、不思議と違和感だけではない。 むしろ—— ずっと前から知っていたものを やっと手に入れたような感覚がある。 青年は鏡を見つめながら思う。 今日、 リサイクルショップに入り、 モールを歩き、 スーパーの棚を探したこと。 あれは単なる買い物だったのだろうか。 それとも。 もっと前から続いていた、 小さな衝動の終点だったのか。 彼は椅子に座る。 脚を組む。 その動きで生地がわずかにきしむ。 部屋は静かだ。 けれど青年の胸の中では、 何か新しい扉がゆっくり開いたような気がしていた。 パンストは、ただの衣類だ。 それでも。 この夜から、 彼の中の何かが少しだけ変わる。 そんな予感が、静かに広がっていた。 それから数日後の夜。 青年は浴室の鏡の前に立っていた。 電気の白い光が、タイルに反射している。 手にはシェーバー。 少し迷ってから、脚に泡を広げた。 これまで何度も考えたことはあった。 パンストを履くなら、きっとその方がいい。 けれど実際にやるとなると、 一線を越えるような気がしていた。 刃を当てる。 静かな音。 毛が少しずつ消えていく。 すね、膝、太もも。 鏡の中で、脚の色が均一になっていく。 不思議な感覚だった。 自分の身体なのに、 どこか新しいものを作っているような。 脚が終わると、 彼は少しだけ躊躇してから、もう一度泡を足した。 背中を丸め、 見えにくいところにも手を伸ばす。 すべて終わった頃には、 肌がすっきりと軽くなっていた。 シャワーで泡を流す。 水滴が脚を伝う。 その滑らかさに、 思わず手で触れて確かめる。 (こんなに違うのか) 部屋に戻り、 引き出しからパンストのパッケージを取り出す。 前よりも、 箱が少し特別なものに見える。 ゆっくりと取り出す。 黒い生地。 薄く、柔らかい。 椅子に座り、つま先から足を通す。 今日は、感触がまるで違った。 毛のない肌に、 生地が直接触れる。 するり、と上がっていくたびに 均一な感覚が脚全体に広がる。 足首。 ふくらはぎ。 膝。 太もも。 引き上げるたびに、 布が肌にぴたりと寄り添う。 青年は立ち上がった。 脚を動かす。 ささやかな摩擦。 わずかな圧力。 けれどそれが妙に心地よい。 鏡の前に立つ。 黒い光沢が、 脚の形に沿って静かに反射している。 彼はしばらく見つめていた。 胸の奥に、 満足感のようなものが広がる。 同時に、少しだけ高揚もある。 (このまま……) ふと、そんな考えが浮かぶ。 外の空気を感じてみたい。 夜の街を、 この感覚のまま歩いてみたい。 しかし当然、 この格好のまま外に出るわけにはいかない。 青年はクローゼットを開けた。 そこからスポーツウェアを取り出す。 ナイロンのトレーニングパンツ。 軽いウィンドブレーカー。 着替えて歩いてみる。 シャカ、シャカ。 ナイロン特有の乾いた音がする。 その内側で、 パンストの生地が静かに脚を包んでいる。 外からは、誰にもわからない。 それが、少しだけ面白かった。 青年はスニーカーを履く。 玄関で立ち止まる。 ドアノブに手をかける。 ほんの小さな冒険のような気分だった。 ドアを開ける。 夜の空気が流れ込む。 彼は階段を下り、 静かな通りへ歩き出した。 ナイロンのシャカシャカ音。 その奥で、 パンストの柔らかな感触。 二つの感覚が重なりながら、 夜の街へ溶けていった。 部屋に戻ると、青年はそのまま浴室へ向かった。 スポーツウェアを脱ぎ、 鏡の前で自分の脚を見る。 黒いパンストは、 夜の外気をまとったまま静かに光っている。 少し迷ってから、 彼はそのまま浴槽に湯を張った。 湯気がゆっくりと広がる。 足先から、湯に入る。 温かい水がパンストの生地を通して染み込んでくる。 思っていたよりも不思議な感触だった。 布が肌に密着する。 水の重さと、 生地の柔らかさが混ざり合う。 青年は静かに湯船に沈む。 脚を少し動かすと、 水の中で生地がゆっくり揺れる。 (こんな感覚になるのか……) しばらくそのまま浸かっていた。 やがてボディーシャンプーを手に取り、 パンストの上から泡を広げる。 透明な生地の上に、 白い泡がゆっくり広がる。 軽くこすると、 泡が細かく立ち、脚を包んだ。 湯気の中で、 その光景はどこか現実感が薄い。 風呂から出ると、 青年は濡れたパンストを脱いだ。 柔らかく伸びた生地が、 足からゆっくり外れていく。 タオルで身体を拭き、 裸のままベッドに入る。 部屋の明かりは消してある。 天井を見ながら、 青年はため息をついた。 (ああ……) また履きたい。 さっきまで脚を包んでいた感触を思い出す。 あの均一な圧力。 滑らかな生地。 だが、新しいパンストはもうない。 濡れたものが、 浴室に掛けてあるだけだ。 (明日、買いに行こう) そう思う。 けれど。 その「明日」が妙に遠く感じる。 今、欲しい。 今すぐ。 青年はベッドから起き上がった。 裸のまま机に座り、 パソコンを起動する。 モニターの光が部屋を照らす。 検索画面に 「パンスト」と打ち込む。 いくつもの通販サイトが表示される。 その中で、 ある商品が目に留まった。 中国製 オイリータイプ 写真を見ると、 生地が独特の光沢を持っている。 サイズも大きめ。 値段も安い。 青年はしばらく画面を見ていた。 そして、クリックする。 カートに入れる。 どうせなら、と まとめて数足選ぶ。 そのとき、 別のページが目に入った。 黒いエナメルのパンプス ヒールは十センチ。 光沢のある黒。 画面の中で、 それは静かに輝いていた。 少しだけ迷う。 だが値段を見ると、 それほど高くない。 (……まあ、いいか) 彼はそれもカートに入れた。 購入ボタンを押す。 注文完了の画面が表示される。 青年は椅子にもたれた。 静かな部屋。 モニターの光だけが残る。 自分の脚を見る。 まだ少し、 パンストの感触が残っている気がする。 青年は小さくつぶやいた。 「僕は……どこに行くんだろう」 答えはまだない。 ただ、 その問い自体が どこか少し楽しみにも感じられていた。 その日の夜。 玄関のドアを開けると、足元に小さな箱が置かれていた。 置き配の荷物だ。 送り状を見るまでもない。 数日前、夜中に注文したもの。 胸の奥が少し速くなる。 だが、青年は一度深呼吸をした。 (先に食事だ) そう思うのだが、どうにも気持ちが落ち着かない。 料理をする余裕などない。 冷凍ご飯を電子レンジに入れる。 レトルトカレーを湯せんする。 いつもなら味わう夕食が、 今日はただの作業のようだ。 数分で食べ終える。 皿を流しに置き、 すぐに玄関の箱を部屋へ持ってくる。 カッターでテープを切る。 段ボールが開く。 中から、いくつかの小さなパッケージが現れる。 その一つを取り出す。 チャコールグレーのオイリータイプのパンスト。 袋越しでも、生地がわずかに光を反射している。 青年は慎重に取り出した。 思ったより薄い。 指で持つと、 ほとんど重さを感じない。 (これが……) 椅子に座り、足を通す。 つま先からゆっくり。 するり、と生地が上がっていく。 毛を処理した脚に、 薄い膜が均一に広がる。 太ももまで引き上げて立ち上がる。 鏡の前に立つ。 チャコールグレーの色は 黒よりも柔らかく、しかし光沢がある。 グロスというより—— 艶めかしい反射。 光が脚のラインに沿って流れる。 青年は数歩歩いてみる。 生地が滑らかに動く。 (これは……いい) 次に箱の中から靴を取り出す。 黒いエナメルのパンプス。 ヒールは高い。 サイズは少し大きめを選んだ。 立ったまま、靴ベラを使って履く。 かかとを押し込んだ瞬間、 ぐらり、と身体が揺れる。 慌てて机に手をつく。 「危ない……」 少し笑ってしまう。 鏡を見る。 細いヒール。 エナメルの光沢。 チャコールグレーの脚。 だが、そこで気づく。 (鏡が小さい) 上半身しか映らない。 全身を見たい。 大きな鏡が欲しいな、とふと思う。 そしてもう一つ。 上半身が裸なのが、 妙に落ち着かない。 脚は整っているのに、 上が空白のようだ。 青年は椅子に座り、 またパソコンを開いた。 通販サイトを見て回る。 衣装。 服。 何か合うものはないだろうか。 画面の横に、 動画サイトの広告が表示される。 そこに映っていた衣装が、 ふと目に留まった。 ハイレグのレオタード。 白。 薄く透ける素材。 照明の下で、布が柔らかく光っている。 青年は画面をじっと見た。 想像してみる。 チャコールグレーの脚。 黒いエナメルのパンプス。 そして白いレオタード。 奇妙な組み合わせかもしれない。 けれど、 どこか完成する気がした。 マウスを動かす。 商品ページを開く。 サイズを確認する。 少し迷う。 だが、数秒後には 購入ボタンを押していた。 注文完了の画面が出る。 青年は椅子にもたれた。 静かな部屋。 脚にはまだ オイリーな生地の感触。 ヒールの高さ。 そして、これから届く衣装。 彼は小さく笑った。 どうやら—— まだ、この物語は 続いていくらしい。 数日後の夕方。 帰宅して郵便受けを開けると、 紙袋が一つ折りたたまれて入っていた。 思っていたよりも、ずっと小さい。 取り出してみると、軽い。 部屋に戻り、机の上で開く。 紙袋の中には、透明なOPP袋。 その中に、白い布が小さく畳まれている。 そして小さな伝票が一枚。 (こんな小ささで……本当に入るのか?) 青年は少し不安になる。 布は驚くほど薄く、 指で持つと軽く伸びる。 けれど今すぐ試すには、 まだ落ち着かない。 とりあえず食事を先にする。 冷凍ご飯を温め、 またレトルトのカレーを開ける。 同じ夕食なのに、 今日は妙にそわそわしている。 味もあまり覚えていない。 食べ終えると、 すぐ浴室へ向かった。 シャワーを浴びながら、 青年はもう一度体毛を剃る。 まだほとんど伸びていない。 それでも刃を当てると、 肌がさらに滑らかになる気がする。 湯を流し、身体を拭く。 浴室を出ると、 すぐにパンストを取り出した。 チャコールグレーのオイリータイプ。 脚を通す。 するり、と滑る感触。 生地が脚を包むと、 肌の温度が少し変わる。 それから、机の上の袋を開く。 白いレオタード。 思っていたよりも薄い。 慎重に足を通し、 ゆっくり引き上げる。 肩まで通すと—— ぴたりと身体に沿った。 (よく伸びる……) 鏡の前に立つ。 白い布が身体に密着し、 照明の下で少し透ける。 胸のあたりを見ると、 うっすらと輪郭が浮かんでいる。 青年は少し照れくさく笑った。 (やっぱり……鏡が欲しいな) 今の部屋の鏡は小さい。 全身が映らない。 週末に買いに行こう。 頭の中に、 ふと一つの店が浮かぶ。 IKEA あそこなら大きな鏡がありそうだ。 洗面所へ行く。 壁の鏡に身体を映す。 だが、上半身を見ると 少し拍子抜けする。 胸は当然、平らだ。 当たり前のことなのに、 さっきまで頭の中では もっと丸みのある形を 勝手に想像していた。 青年は鏡を見ながら考える。 (もし……) シリコンの胸。 通販で見たことがある。 買うなら、どうせなら 少し大きめがいい。 それを付けて、 写真を撮る。 そう考えると、 妙に現実味が出てくる。 さらに—— 外にも出てみたい。 夜の街を。 この姿で。 だが今日はもう遅い。 少し疲れてもいる。 青年は部屋の明かりを消し、 ベッドに入った。 目を閉じる。 明日は金曜日。 その次は土曜日。 鏡を買いに行く前に—— もしかしたら、 一度くらい外に出てみてもいいかもしれない。 そんな考えが浮かびながら、 ゆっくりと眠りに落ちていった。 結局、通販を待つことはできなかった。 仕事帰り、青年は少し遠回りをした。 駅から離れた通りに、小さな店がある。 ネオンは控えめだが、 看板を見れば何の店かすぐわかる。 アダルトショップ。 入る瞬間、少しだけためらう。 だが一歩踏み込めば、あとは意外と静かだ。 店内は明るい。 棚には整然と商品が並んでいる。 青年は店内を歩きながら、 目当てのコーナーを探した。 やがて見つける。 シリコンの乳房。 思っていたよりも種類が多い。 サイズもさまざまだ。 一番大きいものを手に取る。 柔らかいパッケージの中で、 形の整った膨らみが並んでいる。 (これでいいか) レジに持っていく。 店員は特に表情を変えない。 それが少しありがたい。 袋を受け取り、店を出る。 だが、出口の近くで もう一つの商品が目に入った。 ハンガーに掛かった衣類。 パッケージには 「男の娘用」 と印刷されている。 グレーのプリーツスカート。 学校制服のような形だ。 青年はそれを手に取る。 布の重さ。 きれいな折り目。 しばらく迷ってから、 それもレジへ持っていった。 夕食は牛丼にした。 早く帰りたい気持ちがある。 頭の中では、 帰宅してからの順序がもう決まっている。 食べ終えると、 急いで店を出た。 帰り道を歩きながら、 ふと考える。 今夜、どこへ行くのか。 実は、薄々決めていた。 街の外れ。 工業団地の端。 そこに小さな公園があったはずだ。 昼間はほとんど人がいない。 夜なら、なおさら。 ただ、歩いていく距離ではない。 車が必要だ。 青年の頭に浮かぶのは カーシェアの駐車場。 家の近くのコインパーキングに 何台か置いてある。 その中には、 Mazda3 もあったはずだ。 スマートフォンで予約すれば、 すぐ借りられる。 そこまで歩いて数分。 だが問題は一つ。 そこまで、 どんな格好で行くのか。 頭の中で想像してみる。 今買ったスカート。 パンスト。 シリコンの胸。 夜とはいえ、 住宅街だ。 人とすれ違う可能性はある。 青年は歩きながら苦笑した。 (危ないことは……やめよう) まずは家に帰る。 それから考える。 焦る必要はない。 夜はまだ長いのだから。 公園は、思っていたより広かった。 入り口には小さな駐車場があり、 街灯の光がぽつんとアスファルトを照らしている。 車を停め、エンジンを切る。 しばらく静かだ。 遠くで虫の声がしている。 青年は車内でゆっくり着替えた。 パンスト。 レオタード。 プリーツスカート。 そして、最後にヒール。 シートに体を預けながら履き替えるのは 思ったより難しい。 何とか履き終え、 ドアの横に手を置く。 開ければ外だ。 だが、すぐには動けない。 (誰かいるかもしれない) 駐車場は暗い。 しかし完全に無人とは限らない。 遠くの遊歩道。 その奥に、 東屋の屋根がうっすら見える。 その近くには 自販機の光と公衆トイレ。 青年はしばらく考えた。 心臓が少し速い。 それでも—— 外を歩いてみたい。 この格好で。 車のドアを開ける。 夜の空気が入ってくる。 ゆっくりと外へ出る。 ヒールがアスファルトに触れる。 カツ。 小さな音。 周囲は静まり返っている。 大丈夫だろう。 そう思いながら、 遊歩道へ歩き出す。 コンクリートの道。 街灯は間隔が広い。 ヒールの音が 思ったよりはっきり響く。 カツ、カツ、カツ。 その音を聞くだけで 胸が強く高鳴る。 誰かに聞かれるのではないか。 誰かが急に現れるのではないか。 そんな想像が頭をよぎる。 同時に、 自分がこんなことをしている、 という恥ずかしさ。 その二つが混ざり合い、 妙に頭が冴えてくる。 やがて東屋に着いた。 コンクリートの机。 その向こうに 明るい自販機。 青年はポケットからスマートフォンを出す。 机の上に立てかける。 角度を調整する。 カメラの画面を確認する。 自販機の前に立つ。 ポーズを取る。 タイマーを押す。 数秒。 シャッター音。 画面を確認する。 ……しかし。 足先が切れている。 ヒールが写っていない。 せっかく履いてきたのに。 青年は思わず苦笑した。 もう少し後ろに下がるか。 それともスマホの角度を変えるか。 夜の公園はまだ静かだ。 もう一枚、 撮ってみてもいいかもしれない。 公衆便所の入口の前まで来たときだった。 中に人の気配がある。 こんな夜中に、と思いながら 青年は足を止めた。 わずかに見えた光景に、 思わず目を疑う。 セーラー服。 一瞬、本当に誰かの忘れ物かと思った。 だが違う。 人がいる。 便器の奥の配管に、 後ろ手で手錠をかけられている。 パンツの下には 何か装置のようなものが仕込まれているらしい。 口にはボールギャグ。 頭からマスクをかぶり、 口元だけが出ている。 そして—— 女性ではない。 男だ。 青年はしばらく動けなかった。 (……すごいことをする人がいるものだ) 世の中にはいろいろな人がいる。 頭ではわかっている。 だが、実際に目の前で見ると 妙な現実感の薄さがある。 相手はマスクをかぶっている。 こちらの顔は見えないだろう。 けれど—— 声をかける勇気はない。 もし何か言われたら。 もし動けない状況だったら。 いろいろな可能性が頭をよぎる。 青年はゆっくりと後ずさった。 そして、そのまま公園の出口へ歩く。 もう帰ろう。 今夜は、これで十分だ。 車に戻り、 ドアを閉める。 エンジンをかける。 その瞬間、気づく。 (着替えてない……) この格好のままだ。 さすがにこのまま街に戻るのはまずい。 青年は公園を出て、 少し離れた暗い道で車を止めた。 周囲には街灯も少ない。 車内で急いで着替える。 プリーツスカートを脱ぎ、 ヒールを外し、 ナイロンのトレーニングウェアに着替える。 シャカシャカと音のする素材。 それだけで妙に安心する。 深く息をついた。 ようやく普段の自分に戻った気がする。 時計を見る。 公園にいた時間は—— 思ったより短い。 一時間もいなかった。 それでも、 妙に長い時間だったような気もする。 ふと、さっきの光景を思い出す。 セーラー服の男。 (写真……撮ればよかったかな) そんな考えが一瞬浮かぶ。 すぐに首を振る。 いや、やめておこう。 あれはあれで、 誰かの秘密の夜なのだろう。 カーシェアの駐車場に戻り、 車を返却する。 歩いて家へ帰る。 部屋に入ると、 急に疲れが出てきた。 風呂はシャワーだけにする。 温かい水を浴びると、 夜の出来事が少しずつ現実に戻ってくる。 タオルで身体を拭き、 布団に潜り込む。 目を閉じる。 静かな部屋。 今日の夜は、 ほんの小さな冒険だった。 だが—— 世界には、 まだ知らない夜が たくさんあるのかもしれない。 夢を見た。 あの公園の、公衆便所。 冷たいコンクリートの壁。 白い蛍光灯。 そして—— 縛られているのは、自分だった。 パンスト。 レオタード。 スカートは腰までまくり上げられている。 身体は麻縄で縛られている。 腕は後ろ。 配管に固定されている。 逃げられない。 顔には濃い化粧。 アイライン。 長い付けまつげ。 厚く塗られたファンデーション。 鏡はないのに、 自分が派手な顔をしているのがわかる。 扉の向こうには 人の気配がある。 ざわざわと 小さな声。 誰かが並んでいるような気配。 夢の中の自分は—— それを怖がっていない。 むしろ、 扉の方を見て言っている。 「入ってきてもいいけど……」 「一人ずつね。」 声は落ち着いている。 自分でも不思議なくらい。 本当は—— 入ってきてほしいのだ。 扉の向こうで ドアノブが回る。 ゆっくり開く。 誰かが入ってくる。 その瞬間。 目が覚めた。 布団の中。 朝の光がカーテンの隙間から入っている。 土曜日。 静かな朝だ。 青年はしばらく天井を見ていた。 夢の感触がまだ残っている。 あの公園。 あの便所。 あの男。 昨夜の記憶が 夢の形になったのだろう。 布団の中で小さく息を吐く。 今日は土曜日。 予定は特にない。 昨日考えていたことを思い出す。 大きな鏡。 そして—— まだ試していない服。 青年はベッドの上で身体を起こした。 さて。 今日は何をしようか。
2026/03/30 23:58:03(Uw/UoJoR)
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