電話は「博士がアメリカのホテルで心臓発作を起こして急死した」という内容だっ
た。
そんなことは予想すらしなかった。
俺はどうなるのか、弘子に頼るしかないのか。研究所に急いだ。

「おい、弘子！おまえに頼むしかないけど、
あの金庫の中のＭＡＬＥ遺伝子を早く俺に打ってくれ」
「うふふふ、私もこんなことになるなんて信じられないわ」
「もう怒ってないから頼むぜ」
「うふふ、でも私は博士と違って出来ないのよ」
「じゃ、どうすればいいんだ、会社に言って他の研究所のえらい博士に頼んでくれ
よ」
「この研究は会社には秘密なのよ、特許を自分で出すためにね」
「このまま一生女のままでいろというのかっ」
「データと全部私のパソコンに残っているから
いつかは私が博士のように遺伝子処置が出来るわよっ」
俺は弘子のご機嫌を損なわないようにそれ以上は何も言えなかった。

数日後に会社から辞令が来た。
「八木弘子は、即刻自主退職か本社一般職勤務のいずれかを選択すること
石坂明は、研究所の閉鎖とデータの会社提出後に自主退職すること」
俺はいずれは職を失う。しかも博士も居ないのに会社にこの体はどう説明するの
か。
気の毒とは思うが、弘子は会社には雑用係程度にしか思われていなかったようだ。
でも俺と違って、一般職でも残れるのは幸せか。

「あなたが一般職ＯＬになってよ」何を言うのか。
「あなたはどうするつもりなの？そんな女の体で」
「俺は・・・」
「言葉が続かなかった」
「それにあんたにはデータの提出なんか出来るの？」
実際弘子の言うとおりだ。
「私があんたの名義でここに残って後の整理をするわ」
「俺はＯＬなんて出来るかよっ」
「でもここでしてたのよ、そんな仕事だったでしょ」

弘子のＩＤカードと俺のとを交換してパスワードも教え合った。
会社からの郵便物のこともあり、俺は弘子の家に籍を移されて
自分の家に居ながらも男としての俺は抹殺されたのだ。
明日から、俺は心だけが男のまま女の生活が始まるのだ。

セキュリティーを通り、辞令にあった部署へと行った。
「まずこの服に着替えてくれ給え」課長らしき男が言った。
「はっ、はい」俺は手渡された袋を持って女子更衣室へ向かった。
そこは出勤してきたばかりの女子職員で混んでいた。
「弘子さんね、あなたは一番手前のロッカーを使って」
俺は指定された一番落ち着かない場所のロッカーを開けて
私物をバッグらから取り出して中に整理して入れた。
「新入りさん、おはよう」愛嬌のある女の子が俺に話しかけてきた。

「弘子さんの体すてきね」初めての俺を見て回りの視線が集まっていた。
みんなと同じように、ショーツとブラジャー姿になって、素早く
ＯＬの制服を着ようとしていた。
タイトなスカートとブラウスはすぐ着ることが出来たが
胸元に大きくリボンを結ぶのにはとまどった。
「弘子さんはこんなの着たことないの？」さっきの子が手伝ってくれた。
最後にウエイトのきゅっと引き締まったベストを身につけて
俺は情けなさをいっぱいに感じながら初めてＯＬとなったのだ。

「はい、皆さん聞いてくださーい。
今日から皆さんと一緒に仕事をすることになった八木弘子さんです。
他の部署からの配置換えです。仲良くしてくださいね」
お局さんらしいＯＬに俺は紹介された。

「弘子です。何もわかりませんが一生懸命がんばります」

この会社のＯＬ制服は、インターネットのランキングでも評価が高く
確かに敷地内で見かけるＯＬには性欲を感じて
ペニスを勃起させたこともあった。

友達も「おまえとこのＯＬと一発やりたいよなー。あの制服のままよ」と
俺もそのうちかわいい子をとつきあって、
制服を脱がしながらセックスしようと思っていた。
その俺は今そのＯＬの制服を着て男の前にその姿をさらして、
男に「犯したいよな」とペニスを勃起させているのかと思うと屈辱だった。

Tweet