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「違う。そこ間違ってる」
「はいはい」 チョーク片手にアスファルトに線を引くこと1時間。書き始めたときはまだ 日は高かったのだが、日はすでに傾いている。 「まぁ、そんなところね」 ようやくお姫様のお許しがでた。チョークを放り投げる。 このよくわからない本片手に1時間あまり中腰での作業を強要した女。 名前は皆口舞。成績は常に上位で陸上では県大会出場を果たしている。 オレは沢渡文也。まぁ、成績は中ぐらいの位置をうろうろさまよってマー ジャンやスロットに精を出す。不良とまでは行かないまでも不真面目な高校 生。 一見、交差するように思えない二人だが諸事情により、友人をしている。 「っで、次はどうすんだ?」 「悪魔を呼び出すのよ」 舞の目は本気だ。成績がいいくせに非科学的なことを好む。 「じゃあ、これ埋めてきて」 「なにこれ?」 渡されたのはクッキーの箱。振ってみるとからからと音がする。 「灰やら骨。魔方陣の中央に埋めてきて」 「自分でやれよ」 「なにかあったら危ないじゃない」 「へいへい」 舞の言うとおり、魔方陣の中央に箱を埋める。 「これでいい……」 文句のひとつでも行ってやろうと振り向いたときだった。 舞の隣に女がいる。黒い羽を持つ女。妖艶な雰囲気をまとうその女は肌が 紫に近い色をしていた。 「あく……ま」 悪魔がオレを指差した。 ぶつぶつと何かしゃべっているが聞こえない。 いやな予感がした次の瞬間、オレの意識は闇に葬られた。 股間からぴちゃぴちゃと水音がする。 「お……さい」 誰かの声が聞こえる。 「き……い」 怒っているようだ。 「おきなさい!」 股間から全身に激痛が走った。 「ひぐぅ!」 涙でにじむまぶたを開けた。 一番に天井が見えた。 目を鳴らすためにあたりを見る。 見覚えのある熊のぬいぐるみ、勉強机、テーブル。どうやらここは舞の部 屋のようだ。 「やっとおきた」 目の前にはいやらしく口角を上げる舞がいる。その傍らには気を失う前に 見た悪魔の女。 「一度でおきなさい」 舞は腕を振りあげた。 「っ」 とっさに腕で防ごうとしたが腕が固定されていて動かない。 張り手を甘んじて受けることになった。 「くそ、なにし……あれ」 聞きなれた自分の声なのに違和感がある。楽器のように澄んだ声。まるで 女のような……。 「フフ、気づいた?」 自分の体を見る。目の前には不自然に膨らんだ胸があった。 「な、あ……うそ……だろ」 声が震えている。焦点があわない。視界がにじむ。 「うそじゃないわよ。ほら」 舞は指をかざした。 ぬらぬらと何かの液体が光っている。その液体をもてあそぶように指は動 き、銀の糸を引いた。 「沢渡の……ううん、文ちゃんのまんこからあふれた汁よ?」 「う、嘘だ! なにふざけたこと言ってんだよ!」 認められない。いや、認めたくない。 だってありえない。非現実的すぎる。そんな、男が、女になるなんて。 「じゃあ、さっきの痛みはなんなのかしら……ね!」 「いぎぃ!」 股間からの激痛。目を覚ましたときと同じ股間を蹴り上げられたような激 しい痛み。 「ほら! どうなの! 認める気になった!?」 「い、痛いぃ! やめてよぉ!」 なおも痛みを与え続ける舞。 「なら認めるの!?」 「み、認める! 認めるからぁあああ!!」 「そう」 ようやく、股間から舞が手を離した。濡れた指を自らの口に運び、液体を なめ取る。 「まったく、悪趣味ね」 悪魔の女が肩をすくめて言った。 「もうあなたに用はないわ。帰っていいわよ」 舞は悪魔の女をあしらうように言う。 「いわれなくても帰るわよ。それにしてもひどい女ね。契約の代償に自分の 父親を差し出すなんて。命までは必要じゃなかったのよ?」 「いいのよ。あのごく潰しでほしいものが手はいったんだから」 「そう。じゃあ、かえるわね。また契約したいときは言って。あなたみたい な大口の客は珍しいの」 「そうするわ。じゃあね」 「じゃあ」 悪魔の女は床に溶けるように消えていった。 「い、いまのひとは……」 恐る恐る舞に問う。 「ああ、悪魔よ。みたまんま」 「そんな……」 「嘘じゃないわよ。現に契約してあなたを女にしたわけだし。まぁ、料金は 父親の命だったけどどうでもいいわ」 「なんで……どうして」 「あんた、いつも冷めた態度でしょ。どんなことでも強気で。だから思った の。こいつの泣いた顔が見たいって」 「そんなことのために……」 「どうせならかわいい顔のほうがいいでしょ? 前のあんたは嫌いじゃなか ったけど女の子のほうが好きなの」 「……狂ってる」 「そうね。でもあんたが悪いのよ。私を狂わせたんだから」 そう言うと俺に覆いかぶさるようになる。 「だから見せてもらうわ。あんたが泣くところ」 舞は赤い舌を見せると俺の涙をなめ取った。
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2008/04/23 02:22:48(unE9Cs/R)
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