孝司は、地下の雑務課に着いた。
雑務課は、各部署で役立たずとして、クビになりかけた者達が集められている。孝司は、この駄目な者達の兄貴的存在として、慕われている。
雑務課の課長は、笹井課長である。元営業課の課長で、孝司は入社した時から、仕事を教わったり、悩み相談までのってもらったり、親父の様に慕っていた。孝司達が、クビになりそうになった時も、この雑務課に入れる様にしてくれた。
「おはようございます。」「あっ、先輩!おはようございます。」「あぁ、おはよう」「なんか、あったんすか?」「いや、ちょっとな。」「課長、おはようございます。遅くなりました。」「ああ、おはよう。いいよ。気にするな。」孝司は、血の気がひいた。課長のまわりに黒いもやが、かかっていたのだ。なぜか、恐くて震えが止まらない。「それよりも、営業課で仕事をしてきてくれ。」と、課長は微笑みながら言った。「はい、わかりました。」孝司は、そう答えて、不思議がる後輩達のあいだを抜けて、営業課に向かった。