あたしは子供の時にビルの10階から落ちて、二週間も意識不明だった。でもあたしは落ちる瞬間を覚えてる。きらきらした目の男の人が、じーっとあたしを見てた。スローモーションで落下した。植え込みがクッションになって致命傷を負わなかった。病院のベットで寝ている間、ずっとその人が、にっこり笑ってあたしと遊んでくれていた。 目が覚めてからしばらくは普通に暮らしてたけど、高校の時に飛び降り自殺しようとしていた人をじーっと見ていたらトラックが通って、その人は丁度その上に落ちて助かった。マンションのベランダから落ちそうだった子供とか、野球場のバックネットに登って足が絡まって逆さ吊りになった人とか、一年半に一度の割合で高い所から落ちる人があたしが見つめる事で助かってる。あたしの自由意志で使える魔法じゃないけど、また危険な人がいたら助けるよ。それが魔法を使えるあたしの使命だから。