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1:透明の影Ⅱ
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童貞の心
翌日、俺は優里の通う学校へと向かった。昨日優里の彼氏を見た時の違和感は何だったのだろうか。初めて会ったはずなのに初対面という感じがしなかった。男の素性を調べるべく、校門をくぐる。九時過ぎともなればもう授業は始まっている。優里が「先輩」と読んでいたから男は2年か3年生だろう。俺が教室を見て回り、数十分ほど捜すと昨日の男を発見することができた。クラス全員大人しく先生の話を聞いている。先生が話を終えると、採点を終えた前日の定期テストの答案を生徒に返し始めた。先生が一人一人名前を読んでいく中、俺は優里の彼氏が呼ばれるのを待った。
「柴崎」 「はい」 ようやく優里の彼氏の名が呼ばれる。俺は先生の元へ歩いていく男の姿を見ながら、必死に自分の記憶を辿った。柴崎柴崎・・・・・・・・・。答案をもらう男の姿を再度確認した瞬間、俺の身体に電気を流したような衝撃が走った。俺はこの男を知っている・・・。柴崎拓也。十数年前、孤児となった俺を引き取った親戚の苗字が確か柴崎だったはずだ。そして当時幼かった親戚の息子の名が拓也・・・。男の顔を見れば見るほど、幼少時の拓也の面影が浮かび上がってくる。こんなに大きくなったのか・・・。感傷に浸ると同時に、俺の中に十数年前の屈辱が蘇ってくる。当時まだ俺が幼かったために反抗することもできなかった過去。しかし今の俺には力がある。哀しみに満ちた過去は憎しみへと変わり、俺の中の醜い欲望を一気に増大させた。こいつにだけは優里をやるわけにはいかない。拓也には悪いが十数年分の恨みを今晴らさせてもらおう。俺は即座に計画を立て、拓也を初めて見た日からわずか2日後には実行していた・・・。 その日は休日だった。朝まだ優里が寝ている時間に、俺は優里の携帯を盗んだ。そして拓也をメールで以前使った廃工場に呼び出す。。30分後に拓也がノコノコと現れた。俺が背後から忍び寄り、薬品を嗅がせると拓也は膝から崩れ落ちるように倒れた。後は優里を呼び出すだけだ。優里の部屋に携帯を戻し、今度は拓也の携帯から優里へとメールを送った・・・。 拓也は薄暗い部屋で目を覚ました。優里に呼び出され、廃工場の中に入った直後意識を失った。そうだ、優里は・・・?動こうとするが柱に身体を縛りつけられ、首から下は全く動けない。薄暗い部屋の中感じ取れるのはカビ臭い匂いだけ。しばらくすると薄暗さにも目が慣れ、ようやく自分の目の前にベッドが置かれていた事に気付く。
2007/03/11 15:51:33(nJXplTTB)
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