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終電のあと、彼女は

カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1: 終電のあと、彼女は
投稿者: 夜文
十二年ぶりに会った美沙は、昔より髪が少し短くなっていた。

「変わらないね」

駅前の居酒屋で、彼女は笑った。

美沙は四十五歳。以前の職場の先輩で、当時の俺がひそかに好きだった女性だ。俺は四十二歳になっていた。

昔の同僚や仕事の話をしているうちに、終電を逃した。雨も強くなり、ようやく見つけたホテルには一部屋しか空いていなかった。

「俺はロビーにいるよ」

そう言うと、美沙は少し困ったように笑った。

「昔から変なところで真面目ね。嫌とは言ってないよ」

部屋に入り、美沙が先にシャワーを浴びた。戻ってきた彼女は、ベッドの端に座り、窓の外を見ていた。

「ねえ。十二年前、私のこと好きだった?」

突然の質問に、俺はしばらく答えられなかった。

「好きだった」

「過去形?」

美沙がこちらを向く。

「美沙さんは?」

「私も少しだけ好きだった。でも、あなたは何も言わなかった」

彼女は立ち上がり、ゆっくり俺の前まで来た。頬に触れた指が、少し震えていた。

「嫌だったら言って」

俺はその手を握った。

「嫌じゃない」

最初の口づけは短かった。離れたあと、美沙は俺の胸元をつかんだ。

「これで終わり?」

「十二年待ったから?」

「そうよ」

二度目は、彼女から唇を重ねてきた。

抱き寄せると、美沙の身体は思ったより熱かった。それでも急がず、髪や頬に触れながら、何度も気持ちを確かめた。

「後悔しない?」

「しない。明日のことは明日考える」

灯りを消すと、部屋には雨音と互いの呼吸だけが残った。

朝方、美沙は俺の腕の中で目を覚ました。

「終電、逃してよかったね」

「結果論だろ」

「でも、よかった?」

俺が髪を撫でると、彼女は昔と同じ顔で笑った。

「次は、十二年も待たせないで」
 
2026/07/26 19:28:41(fhTIo/qy)
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