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1:もう戻れない
投稿者:
直哉
「新郎新婦の入場です」
今日は、僕と愛梨の結婚式だ。 32歳になるまで、女性との交際経験の無く、童貞だった僕を受け入れてくれた優しい女性だ。 瑞稀はバツイチだが、そんな事は関係無かった。 高2の愛梨の娘、魔夜も僕を家族と認めてくれた。 扉が開き、愛梨が父親と腕を組んで現れる。 美しい愛梨の父とは思えぬ、厳つい顔の父親にも慣れた。 出会いは1年前、よく行く映画館だった。 その日は、人気映画の公開初日という事もあって満席だった。 映画が始まって20分位した時だった、隣の女性に席を代わって欲しいと頼まれた。 どうやら、彼女の隣に座っている男が、痴漢行為をしていたらしい。 耳に口を当てて、僕に訴える彼女の息に不謹慎な興奮を覚えながら、僕は席を代わってあげた。 余程怖かったのか、映画が終わるまでずっと、僕の腕にしがみついていた。 それが愛梨だった。 映画が終り、場内が明るくなり、彼女が恥ずかしそうに僕の腕から離れた。 「あの、この後お時間ありますか?助けて頂いたお礼にお食事でも如何ですか?」 特に用事は無かったが、女性と二人きりという状況に慣れていない僕は躊躇った。 「ごめんなさい、本当は、まだ怖くてひとりになりたくないんです」 よく見ると、出口付近にまだ痴漢男が立っていた。 「わかりました、僕で良ければ」 映画館を出て、ファミレスに入る。 「あの、こんな所でも大丈夫ですか?」 誘っておいて、大人のレストランとかじゃないのを気にしているのか、恥ずかしげに訊いてくる。 「全然、僕もオシャレなバーとかじゃなくて安心しました。」 「やっぱり、そういう場所の方が良かったですか?」 イヤミに聞こえてしまったのかと、慌てて否定した。 「違います、違います。そういう意味じゃなくて、実は僕、女性と二人きりなんて慣れてなくて、そんな場所だったら緊張しちゃって、どうしていいかわからなくなっちゃうんで、実は今も本当は緊張してます」 「うふふ、正直な方ですね」 やっと彼女が笑ってくれた。
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2026/01/28 13:51:00(/1eJ00NW)
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