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禁断
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:禁断
投稿者: (無名)
「はい、焼肉弁当、580円になります……ありがとうございます」

作業服を着た肉体労働者のお客が弁当の入れられたレジ袋を受け取り、照れ臭そうにその場を退いた。彼の背後にはまだ数人の客が列を成して並んでおり、そのほとんどがこの弁当店に通うファンなのは言うまでもない。

特段に価格が安いわけでもないが味とボリュームが口コミで広がっただけでなく、客の誰もが女性店員目当てに足繁く通う理由である。彼女はもう女の子という年齢がとっくに過ぎた女性であり、30代後半になったその見た目は落ち着いた大人の魅力を見せ、色気すら漂わせていた。

当の本人はそこまでの自覚は無いものの、ガテン系のお客たちを虜にするには十分だった。弁当やお釣りを手渡される際に、薬指に指輪をしていないことであわよくばという希望を抱かせるのである。

加納香住は37歳になり、昼は弁当店、夜はいわゆるホステスとして生計を立てていた。実は本業は別にあり、弁当店や夜の飲食店の客も気付かない程度の女優業だった。数多くのドラマや映画に出演をしていても、弱小事務所に所属する女優として貰える役は知れていた。

エキストラに近い役から台詞のない役が多く、例え台詞があったとしても一言二言がせいぜい。観る者に印象を残す前に映像が切れ変わったり、そもそも顔がろくに映らないことも珍しくないのだった。これでは香住の美貌は誰の目ににも止まらず、他の役者の影に隠れてしまうのは無理もなかった。

両親の反対を押し切って上京をした身としては、成功をせずして田舎へ帰ることはできなかった。だから希望を捨てずに歯を食いしばってきたけれど無情にも時は流れ、気が付けば若手女優の域を過ぎてしまっていた。ここまで来たのだからあと数年、40歳を機にひっそりと引退することを決めて生きていた。

そんな香住はある日、エプロンのポケットの中にある携帯電話の着信に気付き、事務所に呼び出されることになる……。


それは香住の耳を疑うような話だった。鬼才と知られている映画監督からのオファーだというのだから、なんの冗談かと思ったのだ。映画の題名、内容、相手役……聞けば聞くほど話は本当らしく、香住に緊張が走った。

まずこの監督の作品はとても過激なことで業界でも有名で、軒並みその評価は高かった。出演した女優たちは出世を果たし、今は一流女優の座を手にしている。

そして相手役の役者、これが問題脱だった。彼は台本を無視することで知られ、絶妙なアドリブで演じることで有名だった。しかもそのアドリブが高く評価され、彼の出演作品はどれもピッとするものだから誰もが敢えて止めず、むしろ彼が織りなすアドリブを期待するのは当然とされている。

ここからが業界内で留まる裏話、濡れ場を演じるシーンで女優が篩いにかけられるというのだ……。
事実、彼と共演した女優の中には出世を果たせなかった者たちもいて、彼女たちは芸能界から去っている。

その理由は前張りをする女優は、役者として不足と見なされることにある。どこまで自分と本気で演じる気があるかを見極め、濡れ場を演じる。
そして本気のティープキスから本気の愛撫を丁寧に行い、最終的には本当に挿入してしまうというのだ。

そう、彼は業界でも女癖が悪いことで有名なのだった。その手法は巧みに布団で下半身を隠しながらの演技を見せ、結合部を上手に見せないのだ。
その演技はある意味で演技ではなく、女優も忸怩たる気持ちの中で望まぬ快感を注がれ、画面の中やスクリーンの中で意図せずに喘いでいるのだ。

その俳優の性技や持続力、そして逞しいペニスが女優をただの女にさせ、その濡れ場の前後に展開されるシーンとが相まってドラマ制のある作品へと昇華する。いわゆるアダルト作品よりも卑猥なのは、誰もが知る俳優たちの濃密な絡みにある。

作品内ではフェラチオやクンニリングスも必ず行われ、ある作品では女優が彼の足の親指を口に含むシーンに敢えて差し替える手法で、物議を醸している。親指を咥えて頭を上下に振り、舌を絡めるなど描写があまりにも卑猥だからなのだ。

その差し替えのシーンと絡むシーンとを上手く繋ぎ合わせ、実際のシーンではカメラワークは女優の頭が上下に動く姿を後ろから撮影する。すべてはリアリティの為だとされているが、実際の現場ではスタッフたちの目に、本当にフェラチオが行われているのが常なのだ。

クンニリングスも同じであり、その俳優が酒に酔って鮑を舐めるシーンが使いながら、実際の現場では本当に恥唇を開いて舐めていた。カメラとしては両膝を立てた女優の股の間に顔を埋め、肝心な所は見せない巧みな手法で隠すのだ。

作品を観る者はあまりに大胆なシチュエーションに息を飲み、その臨場感と本気で感じて喘いでいるかのような女優の演技に、身体を熱くさせる。
言うまでもなく女優は演技ではなく本気で感じさせられ、喘ぎ声を出さざるをえないのである。

20代の経験値の浅い女優では稚拙な感じ方しかできないのに対し、それなりに経験値のある30代以上の女優では色気と迫力が違う。その懐の深さは享受する快感の幅が段違いであり、観るものを釘付けにさせる。

クンニリングスのシーンは実際にそれをすること自体がタブーなのに、その俳優はクリトリスを剥き出して吸い付きながら、舌を躍動させるのだから演技でもなんでもない。

その女優により敏感さの違いを感じ取り、最適の攻め方で達するまで続けるのだ。実際のシーンは編集で整えられてはいるが、現場では1度の絶頂では満足しない俳優が、続けて2度3度と女優が達するまで股の間から顔を離さないのだという。

そして満を持して避妊具も装着しないまま女優の中へ挿入し、持ち前の絶倫ぶりを発揮する。
女優はその色気を惜しみなく漂わせ、感じれば感じるほど、狂えば狂うほど演技力としての評価が上がる。

達しても達しても俳優の腰は止めどなく動きを続け、汗で額に髪の毛を張り付かせた女優の膣の中では、子宮口を圧迫するペニスが次のオーガズムへと誘っていく。

恥じらいを残した女優の掠れた喘ぎ声は危機迫るような本気の声へと変化し、啜り泣く官能的な女の喘ぎに変化。2度のオーガズムを経てなおも続く快感に獣のような咆哮と奇声を上げるようになっていく。

俳優の背中は女優が付けた爪痕で赤く血の滲んだミミズ腫れが刻まれ、喘ぎ狂う女優の顔を見下ろしながら腰を打ち付けていく………。


こんなシーンが作中で数回行われ、この監督作品はこうして18禁となるのだけれど、批判よりも女優の体当たりの演技が高く批判されるのだ。

作品の上映記者会見では女優の艶ぽさに注目が集まり、その後のオファーがなくなることはなかった。



所属事務所社長の説明をマネージャーとともに聞き終えた香住は、さすがに二の足を踏んでいた。
成功すればその後の道は約束される、けれど濡れ場を演じるのに前張りもこの時代に許さないなんて、どうかしている。

でも………。


もう若くはない香住に、選択肢は残されてはいない。この美貌もいつかは落ちる時がくる、今しかないのだった。業界の噂というものは尾ひれがつくのは、他の追随を許さない先人たちの目眩ましだという人もいる。

いくらなんでも大勢の制作スタッフの前で本気のセックスをするなんて、現実離れしている………。
そうだ、そうに決まっていると香住は迷いを振り払い、この仕事のオファーを受け入れる決心を決めていた。

社長も貧乏事務所の起死回生を願い、香住を近くのエステに通わせ本気度を伝えてきた。社長もこの作品と香住に賭けているのが分かる。失敗はできない、絶対に……。



そして香住はよく晴れた日に、撮影初日を迎えていた。


 
2026/01/01 22:20:32(kUK9c.09)
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