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1:ちんのみ
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(無名)
◆e.YwbpOdo.
【序章】
現代地球のパラレルワールド『恥丘』。 この恥丘では、女性こそが絶対的な存在であり、セックスの良し悪しこそが、男性の価値の全てであった。 ちんぽ of all All for ちんぽ。 ちんぽが世界を制する世界の日本国。 東京都新宿区のしみったれた繁華街で、ゴッドハンドと呼ばれた全てを持つ男【カズキ】と、童貞のまま30歳を超えたホームレスの【樹】が運命の邂逅を遂げる。 これは伝説の幕開けに過ぎなかった…。
2025/06/06 05:49:51(rQtWbdXr)
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(無名)
◆e.YwbpOdo.
東京・新宿。雑居ビルがひしめき合う路地裏の喫煙所。吐き出された紫煙が、鉛色の空へと吸い込まれていく。俺──カズキは、灰皿にもたれかかりながら、無気力に煙草を燻らせていた。今日もまた、女たちの煩悩を捌ききった疲労感が全身を覆っている。
ふと、視線を感じて顔を上げると、そこにいたのは、見窄らしい身なりのホームレスだった。よれたGパンに、何日も洗っていないであろうTシャツ。伸びきった髪からは、汗と埃が混じり合ったような匂いが漂ってくる。そいつは、俺たちの足元に転がる吸い殻を、慣れた手つきで拾い集めていた。 この世界では、セックスが全ての価値を決める。金も、名誉も、地位も、全ては優れたセックスの対価として与えられる。生まれながらにして、その才能を持つ者は羨望の眼差しを浴び、そうでない者は蔑まれる。格差は広がり、社会は常に性的なヒエラルキーによって支配されている。 だからこそ、俺のような存在は、この世界において特別な意味を持つ。かつて女性用風俗のキャストとして、「ゴッドハンド」の異名を取った俺は、今では自分の店を構えるまでになった。セックスの技術を磨き、女たちを恍惚の淵に突き落とすことこそが、俺の生きる意味であり、存在意義だった。 吸い殻を拾い続けるホームレスの姿を、俺は気紛れに眺めていた。こんな場所で吸い殻を拾うくらいだから、よほどの落ちこぼれなのだろう。俺とは対極に位置するような、みじめな存在。 「おい、それやるよ」 ポケットから新しい煙草を取り出し、一本、ホーレスに差し出した。ホームレスは一瞬、警戒するように俺の顔を見上げたが、やがて恐る恐る手を伸ばし、煙草を受け取った。 「ありがとうございます…」 掠れた声で礼を言うと、ホームレスはぎこちない手つきで煙草を口に運び、深く息を吸い込んだ。慣れない煙にむせながらも、その表情には微かな安堵が浮かんでいた。 「あんた、なんでこんなところで吸い殻なんか拾ってんだ?」 俺は興味本位で尋ねた。この男が、なぜこんなにも落ちぶれているのか、知りたくなったのだ。 「…俺には、才能がありませんから」 ホームレスは俯きながら、消え入りそうな声で答た。才能。この世界において、それはセックスの技術を指す。才能がない、ということは、つまり、女たちを満足させられないということだ。 「セックスが下手ってことか?」 俺の直接的な問いに、ホームレスはびくりと肩を震わせた。 「はい……小学校に上がる前から、ずっとそうでした。女の人には、一度も相手にしてもらえなくて……」 ホームレスは、自嘲気味に笑った。その顔には、深い絶望と諦めが刻まれている。 「俺の名前は樹(いつき)です。31歳。フリーターで、低所得で……そして、童貞です」 樹は、自らの惨めな境遇を淡々と語り始めた。小学2年生の時に母親を亡くし、それ以来、ずっと一人で生きてきたという。純朴で真面目な性格ゆえに、この「セックス至上主義」の世界では、ひどく生きづらかったに違いない。 「何度も、努力はしたんです。どうすれば女の人が喜んでくれるのか、本を読んだり、動画を見たり…でも、どれだけやっても、まるでダメで…」 樹の声は、次第に震え始めた。その瞳には、今にも零れ落ちそうなほどの涙が浮かんでいる。 「結局、俺には女の人を満足させられない。だから、誰からも必要とされない。そんな男は、この世界じゃ生きていけないんです……」 樹の言葉は、まるで彼の人生そのものを物語っているようだった。セックスが下手だから、誰からも相手にされない。だから、仕事もまともに見つからず、低所得のフリーターとして辛うじて生きてきた。そして今、ホームレスにまで落ちぶれた。 樹の話を聞きながら、俺は内心、苛立ちを覚えてた。バカバカしい。セックスが下手だから何だというのだ。そんなことで人生を諦めるなんて、愚の骨頂だ。この男は、自分に価値がないと決めつけて、努力することすら放棄している。 俺は、吸いかけの煙草を灰皿に押し付け、立ち上がった。そして、ジーンズのチャックを躊躇なく下ろした。 「おい、よく見ろ」 俺が晒したのは、勃起した陰茎だ。樹は、驚いたように目を見開いた。 「なんだ、その程度かよ。そんなもんで、人生諦めるなよ」 俺の陰茎は、樹のそれと大差なかった。いや、むしろ樹の方が立派なくらいかもしれない。俺は、この「短小」な陰茎で、これまで数え切れないほどの女たちを歓喜の絶叫へと導いてきたのだ。 「俺も、お前と同じだ。いや、もしかしたら、お前の方が恵まれてるかもしれない。俺は、これっぽっちの陰茎で、女たちを満足させてきたんだ」 俺は、樹の目の前で、自らの陰部を指差した。 「確かに、デカけりゃいいってモンじゃない。だ、俺はデカくなくても、女をイカせる術を知ってる。それが、俺の『ゴッドハンド』だ」 樹は、呆然とした表情で俺を見つめている。彼の瞳には、少しずつ、希望の光が宿っていくのが見て取れた。 「お前、まだやれるぞ。諦めるな」 俺は、樹の肩を掴んだ。 「俺の店に来い。女用風俗のキャストとして、俺がお前を育ててやる」 樹の顔に、驚きと戸惑いの色が浮かんだ。 「俺が……ですか? でも、俺は……」 「お前には、まだ伸びしろがある。それに、俺は見たぞ。お前の目に、まだ火が残ってるのをな」 俺は、ニヤリと笑った。この男は、きっと変われる。この世界で、成り上がることができる。 「俺が、お前を『ゴッドハンド』にしてやる。お前は、この世界で、女たちから求められる存在になるんだ」 樹の瞳が、力強く輝いた。彼は、ゆっくりと頷いた。 「はい……俺、やります。お願いします!」 その声には、確かな覚悟と、新たな人生への希望が満ち溢れていた。この男が、どこまで成り上がれるのか。俺は、密かに期待を抱いていた。
25/06/06 05:57
(rQtWbdXr)
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(無名)
◆e.YwbpOdo.
【敵を知り己を知れば】
東京・新宿。雑居ビルがひしめき合う一角に、俺の女性用風俗店はある。表向きはエステサロンを装っているが、一歩足を踏み入れれば、そこは女たちの欲望が渦巻く秘密の楽園だ。昨晩、喫煙所でスカウトした樹を連れて、俺は店に戻ってきた。 「まずはシャワー浴びてこい。匂いがきつい」 俺がそう言うと、樹は恐縮したように俯いた。たしかに、路上生活が長かったせいで、彼の体からは独特の生活臭が漂っている。 「はい……すみません」 樹は、素直にシャワールームへと向かっていった。その背中を見送りながら、俺はソファに腰を下ろした。これから、この男を一人前の「ゴッドハンド」に育て上げなければならない。簡単な道のりではないだろうが、俺の直感は、この男には何かがあると告げていた。 樹がシャワーを浴びている間に、俺は店の奥にある資料室に向かった。そこには、俺が長年培ってきた「女が好む男」に関するデータがぎっしりと詰まっている。過去に担当した客のカルテ、アンケート、雑誌の切り抜き、果ては女たちの間で流行しているネット記事まで、あらゆる情報を網羅していた。 タブレットを取り出し、いくつかのファイルを呼び出す。今日の講義は「清潔感」についてだ。女が男に求める清潔感は、男が思うそれとは大きく異なる。その複雑さと深さを、樹に叩き込まなければならない。 しばらくして、シャワーを終えた樹が戻ってきた。髪はまだ濡れているが、顔色は幾分かましになったように見える。俺は、用意しておいたレジュメを樹に手渡し、プロジェクターでパワーポイントを起動した。 「さて、第一回目の講義だ。テーマは**『清潔感』**。お前が今日から女性用風俗のキャストとして働く上で、最も重要になる要素の一つだ」 俺がそう言うと、樹は真剣な眼差しでレジュメを見つめた。 「女はな、まず第一に清潔感を求める。これは揺るぎない事実だ。だが、お前が思ってる清潔感と、女が思ってる清潔感は、まるで別物だと考えろ」 俺はスライドを一枚めくる。そこには、「男が感じる清潔感」と「女が感じる清潔感」という二つの言葉が並べられていた。 「男が感じる清潔感ってのは、要するに**『不潔じゃないこと』**だ。風呂に入ってるか、歯を磨いてるか、服が汚れてないか。最低限のことさえクリアしてれば、それで十分だと考えてるやつが多い。だが、女が求める清潔感は、そのレベルをはるかに超えてくる」 俺は声を張り上げた。ここが重要なポイントだ。 「女が使う『清潔感』という言葉にはな、『衛生的であること』に加えて、『異性として魅力的であること』、さらには**『一緒にいて心地よいこと』**といった、複雑な感情が入り混じってるんだ」 樹は、驚いたように目を見開いている。やはり、この概念は彼にとって新鮮だったようだ。 「例えば髭だ。男からすれば、無精髭はワイルドだとか、セクシーだとか、そういうポジティブなイメージを持つやつもいるだろう。だが、女からすればどうか? 多くの女は、無精髭を見ると『だらしない』『不潔』『老けて見える』といったネガティブな印象を抱く。たとえ手入れされた髭であっても、好みが分かれる。だから、最初のうちは髭は完全に剃り落とせ。これが基本だ」 スライドには、髭を剃った清潔な男性の画像と、無精髭を生やした男性の画像が表示されている。その対比は一目瞭然だった。 「次に髪型だ。これも男と女で感覚がズレる部分だ。男は、流行りの髪型とか、セットに時間かけたとか、そういうことを気にする。だが、女はそこまで見てない。女が重視するのは、『清潔感があるか』『顔に合ってるか』『手入れされてるか』だ。ワックスでガチガチに固めたり、やたらと派手な色に染めたりするのは逆効果だ。基本は短髪で、前髪を上げて額を出す。これが一番、清潔感があって明るい印象を与える」 俺は、様々な髪型の男性の画像を次々と表示し、それぞれの髪型が女性に与える印象を解説していく。樹は、食い入るように画面を見つめていた。 「そして、服装だ。これも非常に重要だ。男は、ブランド物とか、流行の服とか、そういうことを気にする。だが、女はそこじゃない。女が見るのは、**『サイズ感が合ってるか』『シワがないか』『汚れがないか』『全体のバランスが良いか』**だ。どれだけ高価な服を着ていても、サイズが合ってなかったり、シワだらけだったりしたら、それだけで不潔に見える」 俺は、さらに畳み掛ける。 「女が男に求める清潔感は、**『努力で手に入れられるもの』**なんだ。生まれ持った容姿とか、セックスの技術とか、そういうもの以前の問題だ。まずは、この清潔感を徹底的に追求しろ。それが、お前がこの世界で成り上がるための第一歩だ」 講義を終え、俺はタブレットの電源を切った。樹は、まだ茫然とした表情で、レジュメを握りしめている。彼の頭の中では、新しい知識が嵐のように駆け巡っていることだろう。 「ハナちゃん、ちょっといいか」 俺が呼びかけると、店の受付に座っていたハナちゃんが、めんどくさそうに顔を上げた。ハナちゃんは、俺の店の受付嬢で、辛辣な物言いが特徴の20歳の女性だ。しかし、女の心理を読み解くことにかけては、俺も認める才能を持っている。 「何? 面倒ごとはごめんだからね」 「面倒ごとじゃない。樹の服を選んでやってくれ。俺の服を貸すから、その中から一番清潔感があって、こいつに似合うやつを探してやってくれ」 ハナちゃんは、樹を上から下まで値踏みするように眺めた。その視線は、まるで獲物を品定めする猛禽類のようだ。樹は、彼女の視線に耐えかねたように、わずかに体を震わせた。 「ふーん。まあ、仕方ないか」 ハナちゃんは、立ち上がって俺のクローゼットへと向かった。俺の服は、どれも清潔感を重視したシンプルなデザインのものばかりだ。 「あんた、まずはこれ着てみて」 ハナちゃんは、樹に白いTシャツとジーンズを差し出した。樹は、言われるがままにそれらを身につけていく。ハナちゃんは、腕を組みながら樹の姿をじっと見つめている。 「うーん、悪くはないけど、なんか物足りないわね。次、これ」 次にハナちゃんが選んだのは、VネックのTシャツとカーディガンだった。樹が着替えるたびに、ハナちゃんは容赦ないダメ出しを繰り出す。 「あんた、首が短いからVネックは似合わないわね。次、これ。ワイルド系ね」 ハナちゃんは、樹に少しゆったりとしたシャツと、ダメージジーンズを渡した。樹が着替えるたびに、俺とハナちゃんは真剣な表情で彼の姿を吟味する。ワイルド系、さわやか系、シンプル系……。様々な系統の服を試していくうちに、樹の表情も少しずつ変化してきた。 「ねえ、あんた。意外とこういうのが似合うんじゃない?」 ハナちゃんが選んだのは、シンプルな白いシャツと、細身のチノパンだった。樹がそれを身につけると、それまでの彼の印象がガラリと変わった。だらしなかったホームレスの面影はどこにもなく、清潔感があり、どこか知的な雰囲気を醸し出している。 「おお…いいじゃないか、樹。別人みたいだ」 俺が感嘆の声を上げると、ハナちゃんも満足そうに頷いた。 「でしょ? やっぱり、清潔感って大事なのよ。これで少しはマシになったわね」 ハナちゃんの辛辣な言葉にも、今の樹は素直に頷いている。鏡に映る自分を見て、彼は自信に満ちた表情を浮かべていた。彼の目には、確かな輝きが宿っていた。この男は、必ず成り上がる。俺はそう確信した。
25/06/06 06:10
(rQtWbdXr)
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(無名)
◆e.YwbpOdo.
【話術を制するものはマンコを征す】
東京・新宿にある俺の女性用風俗店で、樹の「ゴッドハンド」への道は始まったばかりだ。清潔感を徹底的に叩き込んだ次は、話術だ。セックスの技術ももちろん重要だが、女は言葉にも敏感だ。どんなに良いセックスができても、会話が退屈だと評価は下がる。 「清潔感については分かったな? よし、次はお前が女を相手にする上で、もう一つ重要な要素、話術についてだ」 俺がそう切り出すと、樹は再び真剣な表情で俺を見つめた。昨日の講義で、彼はすでに多くのことを吸収していた。その成長意欲は、俺が思っていた以上だ。 「世の中には、話が上手い男はいくらでもいる。だがな、女が求める会話ってのは、男が思ってる『話が上手い』とは少し違うんだ」 俺はプロジェクターを起動し、再びパワーポイントのスライドを映し出す。今日の資料も、俺が長年かけて集めた「女の心理」に関するデータが詰まっている。 「まず、根本的な話からしよう。男と女じゃ、『会話』に求めるものがそもそも違うんだ」 俺はスライドをめくる。そこには、ネットで拾ってきた、狩猟をする男性のイラストと、村で会話する女性たちのイラストが並んでいる。 「人類の歴史を紐解けば分かることだが、男は、昔から仲間と連携して狩猟をしてきた。獲物を効率的に捕らえるために、具体的な情報交換や、論理的な指示出しが重要だった。つまり、目的を達成するための手段として会話を進化させてきたわけだ」 俺は指でスライドを指し示しながら、熱弁する。 「だから、男同士の会話では、結論を急いだり、問題解決に重きを置いたりしがちだ。たとえば、誰かが『体調が悪い』と言えば、『病院に行け』とか『薬を飲め』とか、すぐに解決策を出そうとするだろう?」 樹は小さく頷いた。確かに、男同士の会話ではそういう傾向がある。 「一方、女はどうか? 女はな、村で他の女性とコミュニケーションを取りながら、円滑に共同体を維持してきた。情報共有や感情の共有、共感が何よりも重要だったんだ。つまり、関係性を深めるためのツールとして会話を進化させてきた」 俺は、樹の目をじっと見つめた。ここが、男と女の会話における決定的な違いだ。 「だから、女同士の会話では、結論がなくても平気だ。むしろ、共感や感情の共有を重視する。誰かが『体調が悪い』と言えば、『辛かったね』とか『大変だったね』と、まずは相手の気持ちに寄り添おうとする。これが、男と女の会話の根底にある違いだ」 樹は、目から鱗が落ちたというような表情をしてた。 「じゃあ、女が男に求める会話ってのは、つまりどういうことか。結論から言うと、**『共感』と『感情の共有』**だ」 俺はスライドを次のページに進める。そこには、「女が求める会話の三原則」と書かれている。 「一つ目、『否定しない』。女が何かを言った時、たとえそれがおかしな意見だとしても、まずは否定から入るな。共感を求めている時に否定されると、女は『この人は私の気持ちを分かってくれない』と感じてしまう」 俺は具体例を挙げて説明する。 「例えば、女が『今日、仕事で嫌なことがあったんだ』と言ってきたとする。そこで『それはお前が悪い』とか、『もっとこうすればよかったんだ』なんて言ったら、女は瞬時に心を閉ざす。正論は求めてないんだ。まずは『そうだったんだ、辛かったね』と、共感してやれ」 樹は真剣な表情でメモを取っている。彼の真面目な性格が、この講義では良い方に作用している。 「二つ目、『質問で掘り下げる』。女が話している内容に対して、興味を持って質問を投げかけろ。ただし、『なぜ?』とか『どうして?』みたいな詰問するような質問はダメだ。相手の感情や状況に寄り添うような質問をするんだ」 「例えば、『辛かったね』と共感した後に、『具体的にどんなことがあったの?』とか、『それでどう思ったの?』と、相手の気持ちをさらに引き出すような質問をしろ。そうすることで、女は『この人は私の話に真剣に耳を傾けてくれている』と感じる」 俺は、さらに畳み掛ける。 「三つ目、『褒める』。女はいくつになっても、誰かに認められたい、褒められたいという欲求が強い。服装でも、髪型でも、ちょっとした仕草でもいい。些細なことでもいいから、具体的に褒めてやれ。ただし、上っ面だけの褒め言葉はすぐに見抜かれる。心からそう思ってることを伝えるんだ」 俺は、資料の最終ページに目を向けた。そこには、「会話において女が求めている返答」と書かれていた。 「女はな、必ずしも正解を求めてるわけじゃない。時には、ただ話を聞いてほしいだけ、共感してほしいだけ、認めてほしいだけなんだ。だから、『共感』『傾聴』『承認』。この三つを意識して会話しろ」 講義を終え、俺はプロジェクターの電源を切った。樹は、深く息を吐き出し、何かを考え込んでいるようだった。 「さて、理論だけじゃ身につかない。実践あるのみだ」 俺は、受付に座っているハナちゃんを呼び出した。 「ハナちゃん、ちょっとこっち来てくれ」 ハナちゃんは、いつものように面倒くさそうな顔でやってきた。 「今度は何? また面倒ごとなんでしょ」 「いや、面倒ごとじゃない。樹に、お前と打ち解ける会話をさせてやりたいんだ。もちろん、仕事の話はなしで、普通に雑談する感じでな」 ハナちゃんは、樹の顔を一瞥し、鼻で笑った。 「は? この人が私と打ち解ける会話? 冗談でしょ」 樹は、ハナちゃんの辛辣な言葉に、顔を赤くして俯いた。 「いいから。お前は普段通りでいい。樹、お前は今日の講義で学んだことを実践してみろ。まずは、ハナちゃんとの間に、壁を作らずに話ができるようになることが目標だ」 俺がそう言うと、樹は意を決したように顔を上げた。 「はい……頑張ります!」 そして、樹はハナちゃんに向き直った。ハナちゃんは、腕を組み、冷ややかな視線を樹に向けている。 「あの……ハナさん」 樹は、震える声で呼びかけた。ハナちゃんは、何も言わずに樹を見つめている。 「その……今日の服、とてもお似合いですね。そのブラウス、色合いがとても素敵です」 樹は、今日の講義で学んだ「褒める」を早速実践してきた。ハナちゃんの着ているブラウスは、シンプルなものだが、実際彼女によく似合っていた。 ハナちゃんは、一瞬驚いたような顔をした後、すぐにいつもの仏頂面に戻った。 「ふーん。で? それが何?」 ハナちゃんの容赦ない返答に、樹はたじろいだが、彼はすぐに気を取り直した。 「いえ、あの…本当に素敵だと思ったので。ハナさんは、いつもセンスがいいですよね」 樹は、さらに褒め言葉を重ねた。ハナちゃんは、わずかに口元を緩めた。その変化を、俺は見逃さなかった。樹の褒め言葉は、彼女の心に少しだけ響いたようだ。 「……他に何かあるの?」 ハナちゃんは、まだ警戒心を解いていないが、先ほどよりは幾分か柔らかな口調になっていた。樹の挑戦は、まだ始まったばかりだ。しかし、この一歩が、彼を大きく成長させるだろう。
25/06/06 06:24
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