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僕はどこにでもいる平凡な会社員。
仮に平凡じゃないとすれば、 一度だけ婚姻を解消したことがある。 2年前にこのマッチングアプリで募集をかけて、知り合った女の子がいる。 その当時、彼女は大学生だった。 彼女と初めて待ち合わせしたのは、 渋谷のTOHOシネマズの映画館。 GWで多くの観光客が賑わう人混みを 眺めながら待っていると、 背中越しに声を掛けられた。 その時の第一印象は、 距離感がとても近い子だなと感じた。 マスク姿ではあったものの、 とても可愛らしい目元をしており、 透き通るような白い肌の上には、 派手ではないお洒落な装い。 何より特徴的だったのは、 フランス人のような、 スッとした綺麗な鼻筋だった。 僕は学生時代、 モンサンミッシェルを観るためだけに、 フランスに一度だけ旅行をしたことがある。 フランス人女性は、 例外なくスッとした綺麗な鼻筋だった。 僕は彼女に会うたび、 その鼻筋をじっと見つめては褒めると、 彼女は照れながらも笑顔をこぼした。 二回目は池袋のパルコ、 三回目以降の数回は、昼間の歌舞伎町が続いた。 この騒がしい街を通り抜けるのは気が重い。 そう思っていた僕たちは、 その後、池袋が定番となった。 西口の交番前にあるマツモトキヨシ前で待ち合わせをして、 近くのホテルで過ごし、他愛もない話をした。 仕事の愚痴とか、彼女の恋愛相談とか、家族の話とか、そんな話だ。 僕は彼女のことをとても気に入っていた。 彼女には僕の他にも29人の「ファン」がいた。 僕もそのファンのうちのひとりに過ぎない。 彼女はその対価として、 僕の空っぽな時間を埋め合わせてくれた。ただ、それだけの関係だった。 それでも、 「またお会いしたいです」 と彼女のほうから連絡がくるのは、 悪い気がしなかった。 僕は彼女に求められている、と錯覚した。いや、本当はわかっていた。 彼女が欲しいのは僕じゃない。 そもそも、 若い子が中年の男と遊ぶことなど有り得ない。 でも、そんな現実を見ないふりをした。 意識の奥に押し込んで、 鍵をかけて、そっと黒い布をかぶせた。 「別にいいじゃないか」 「それなら何も言わないよ」 ********** 彼女には彼氏がいた。 僕と会うたびに、彼女は楽しそうに彼の愚痴をこぼした。 僕はその話を聞くのが大好きだった。 彼は、彼女が僕と会っていることを当然知らない。 もちろん、他のファンたちとも会っていることも知らない。 僕は、彼女の「知られざる顔」を知っていることで、妙な優越感を抱いた。 しかし、ある日、僕はふと嫌気がさした。「1/30」の自分に耐えられなくなった。 若い女性に浮かれる自分を、 みじめに思った。 彼女からLINEがくるたび、 返信しようとしては、 もうひとりの僕が耳元でささやいた ──「1/30」 僕はそれ以降、 彼女を避けるように 「ちょっと仕事が忙しくて」 と返信した。 働く大人の都合のいい言い訳だ。 年末が近づくと、彼女からの連絡は増えた。 けれど、 「時間の調整が難しい」 と返すと、彼女は決まって 「わかりました」 とだけ送ってきた。 感情のない、自動返信みたいなメッセージ。 僕はますます彼女との距離を感じた。 新年を迎えた一月二日、僕はふと思い立ち、彼女に新年の挨拶を送った。 それは、彼女の名簿から僕が削除されないために。 「明けましておめでとう。 今年もよろしくお願いします」 彼女の返信はいつもと変わらなかった。 「おめでとうございます。 今年もよろしくお願いします」 無味乾燥な言葉。 それなのに、僕はなぜか安心した。 それから1ヶ月が経ち、 彼女から 「またお会いしたいです」 と連絡がきた。 僕は会うことにした。 池袋のマツモトキヨシ前。 いつもの待ち合わせ場所。 いつもの場所に向かう前に、隣りにあるセブンイレブンに立ち寄る。 「何か買いたいものある?」 と一応聞くと、 「大丈夫です」 いつもと変わらない同じやりとりだった。 部屋に入ると、 僕たちはいつものように、 服を着たまま、ベッドの上で背もたれに背中を預け、 両足を伸ばした状態で隣同士になり、何を観るわけでもなくテレビをつけた。 彼女は言った。 「彼氏と別れました」 僕は驚きを隠せなかった。 「いつ別れたの?」 「年末に」 彼女からの連絡が多かった時期と重なるのは単なる偶然だろう。 別れた理由を尋ねると、 ずっと前から約束していた、ふたりの大切な旅行よりも、 後から決まった友人との飲み会を優先されたことがキッカケだと言った。 「それはひどいね」 僕は素直に共感した。 「でも、正直、彼のことを聞いてると変な男だなって思ってたよ」 「なんでですか?」 「君の前で他の女の話をしたり、 以前に好意を持っていた他の女性とのLINEのやり取りを見せつけたり、 お酒を飲むと君を罵倒したりしてたからさ」 「そう言ってくれれば良かったのに」 「君が彼との話を楽しそうにしてるのに、 僕が悪く言ったら気分が悪いだろうと思って」 彼女は静かにうなずいた。 「客観的な意見を聞きたかった」 部屋を出て、池袋駅の改札前で別れるとき、彼女は言った 「またお会いしましょう」 僕は彼女に向けて軽く右手を上げ、 「うん。さようなら、お元気で」 と僕は言った。 彼女のLINEをブロックし、アカウントを削除したのは、 その日の夜だった。 「友達に追加されました」という通知、 メッセージ履歴、バックアップデータ、 すべてを消去した。徹底的に。 そしてもうこれ以上はない、 大丈夫だ、と思った。 マッチングアプリの出会いは、 薄くて便利なデジタルだと思った。 それから、僕は彼女のことを毎晩考えた。 ベッドに入り、目を閉じると必ず。 彼女は、家が裕福だったことで学校の友達から妬まれ、小中学生の頃にいじめを受けていたらしい。 そして女子大の付属女子高校に進み、 そのままエスカレーターで大学に進んだ。 彼女が大学に入学した年、世界はコロナに覆われ、日本では初めての緊急事態宣言が発令された。 入学式はなかった。 大学のホールでのオリエンテーションもなかった。新しい友人の姿もなかった。 代わりに、画面越しの教授、画面越しのクラスメート、画面越しの講義があった。彼女の学生生活は、最初からデジタルだった。 思い描いていた大学生活とは全く異なるものだった。 僕はひとりの大人として、 申し訳ない気持ちになった。 朝、目覚めると、 まず彼女のことを思い出した。 彼女の卒業式はどうだったのか、 袴姿はきっと似合っていたに違いない。 台湾への卒業旅行はどれくらい楽しかったのか。 そこでどんなお土産を買って、 何と言って誰に手渡したのか。 公務員のお父さんは元気だろうか。 少し変わったお母さんは相変わらずなのだろうか。 就職先でうまくやれているのか。 5月病にはなっていないか。 そんな9ヶ月だった。 彼女は冷静に物事を考えられる女性だった。 僕が気づかないことを、するりと指摘してくれた。 たとえば、元妻のもとにいる次男と、 僕が引き取った長男の話をしたときのことだ。 「元妻が育てている次男に、うちの長男が学歴で負けるわけにはいかない」 と僕は言った。 「必ずいい大学に行かせたい。 これは、元夫婦のどちらが正しかったのかを証明するための代理戦争みたいなものだよ」 彼女は少し間を置いてから、 静かに言った。 「人によって価値観は違いますから」 「仮にお子さんがいい大学に入ったとしても、 もしかしたら元奥さんは、そのことで“負けた”なんて微塵も感じないかもしれませんよ?」 僕は何も言えなかった。 そうかもしれないな、と素直に思った。 少しだけ、心が軽くなった。 人生とは何かを、 20歳以上年下の彼女に教えられた気がした。 11月XX日、45才になった誕生日。 僕はマッチングアプリに再登録し、 彼女を探した。 名前は変わっていたが、 アイコンの写真は同じだった。 彼女のプロフィール欄には、 以前にも増してびっしりと文章が詰め込まれていた。 そこには彼女の個人的な歴史や価値観、希望、要望、興味などが綴られていた。 僕の知っている彼女とは、 どこか別の人間のように思えた。 まるで、長い間使っていた古いレコードを久しぶりに取り出してみたら、 そこに知らない楽曲が収録されていた、そんな感覚だった。 「LINE削除してしまい、すまない。お元気ですか?」 彼女からの返信はすぐにきた。 「お久しぶりです。なんとか社会人やってます」 僕はホッとした。 「自分で連絡を絶っておきながらアレだけど、 ずっと君のことが気になっていたよ」 「私もたまに思い出してましたよ。 でも、ご縁がなかったのかなって」 と送ってきた。 僕は迷った。 でも、結局こう送った。 「勝手なお願いだけど、また会えたら嬉しい」 彼女の返事は、 「ちゃんと連絡がとれるようにしてくださるのなら、私もお会いしたいです」 僕は再びアプリを退会した。 それから1ヶ月が経ち、 僕は彼女にまたメッセージを送った。 「あれから時間が経過してしまい、すいません。もし良ければお会いしたいです」。 1時間後、既読がついた。 でも、返信はなかった。 それから6日が過ぎても彼女からの返信はなかった。 僕は諦めた。 仕方のないことだと思った。 「当然だよな?」 「ああ、当然だよ」 もうひとりの僕が呆れたように囁いた。 ************* 7日目の翌朝、 スマホの画面に通知が残されていた。 「メッセージが届きました」 受信時間は深夜1時34分。 僕はアプリを開いた。 そこには彼女の名前があった。 「返信が遅くなり申し訳ありません」 もう返信は来ないと思っていた僕は、 ただ、素直に嬉しかった。 数か月もの間、彼女を無視していたんだ。 それを思えば、一週間の遅れなんて大したことじゃない。 そう思った。 なんて返そうかと考えていると、 もうひとりの僕がそっと耳元でささやいた。 送信ボタンを押したあと、 僕はスマホの画面を見つめたまま、 しばらく動かなかった。 深夜1時34分。 彼女がどんな気持ちでこの時間にメッセージを送ったのかを考える。 でも、それはわからない。 たぶん彼女自身もわかっていないのかもしれない。 送った時間に意味などないのかもしれない。 時計の秒針の音がやけに大きく聞こえる。 僕は深く息を吸い込み、 それから吐き出す。 大きな円を描くように。
2025/02/26 22:08:16(z9j34kqH)
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